アップルタイザーの泡が次々に消えていくように
木蓮の花がばらばらと落ちていくように
粉雪が手のひらで溶けていくように
私の恋はきっと終わってしまう。
まだ始まってもないのに。
風が吹いて、風が吹いて
私のこのツライ想いがどっか飛ばされちゃえばいいのに。
ついでに彼のとこに飛んでいって、私の気持ちが伝わればいいのに。
私と彼はどこか似ている。
報われない恋をしている事。
好きな人の横顔ばかり見ている事。
ほら、
見すぎてるから何でも分かる。
隠してても分かる。
彼の本当の気持ち。
電話は鳴らない。当たり前だけど。
彼が想い続けてる彼女になりたくて、髪の毛を伸ばしてみた。
いつも明るくて、元気で、
私が好きな彼じゃないカレが好きな彼女。
私が彼女だったら、間違いなく、カレじゃなくって彼を選ぶのに。
鳴らないはずの電話が鳴る。
N504isのシルバーピンク。
彼を盗み撮りした待ち受け画面。
ダウンロードしたばかりのメロディが鳴ってる。
鳴るはずないのに。
こっそり真似した彼の着メロ。
彼からの電話を知らせる♪。
鳴る訳ないのに。
何で鳴ってるの?
「遅くなっちゃったけど、お誕生日おめでとう」
「え」
「この前、お誕生日だったんでしょ?」
「う、うん」
「おめでとう」
「う、うん」
ありがとうを言うのを忘れてしまった。
あなたのあの子にはなれないけど、今だけ夢見ちゃってもいっかな。
私のアンテナが君へと届く。
彼の声が私の耳元ではしゃいでる。
このおしゃべりは私達二人だけのもの。
繋がってる。つながってる。ツナガッテル……
昨日を越えて明日へと。