天下無敵のレモネード@

 オカケンが、あたしの顔覗き込んでる。
 「まだ落ち込んでるの? あれから一体何日経ってると思ってんのよ。」
 いつものキツイ言い方。でも、もうあたし分かってる。オカケンがあたしを心配して言ってくれてるって事。
 あたしはゆっくりとうなずいた。
 「これからどうするの? もう店の片付けは済んだんでしょ。」
 「うん、今日で大体。掃除も済んだし、荷物も運ぶ場所決まったから。後は業者さんに来てもらうから、あたしはもう行かなくてもいいみたい。」
 売られていっちゃう。テーブルも椅子も、絵も額縁も、コーヒーミルも食器も焙煎機も。みんな。
 「これからどうすんの? 仕事は? なんかやりたい事あんの? 」
 オカケンの言葉に首を振る。
 「しばらく休もうと思って。ちょっとは貯金あるし、退職金も少しもらったから。・・・本当はバイトだからさ、退職金なんて全然もらえると思ってなかったんだけど、・・・奥さんが、くれたから。」
 「そう。ま、もらっておいてもいいんじゃない。・・・バチは当たんないよ。」
 オカケンがゆっくりと煙草の煙を吐きながら言った。アキラ君は黙ってあたし達を見てる。
 アキラ君も優しいね。前よりここに来るようになったのに嫌な顔しないで迎えてくれて。「いつもの」も出してくれて。
 「あんたが元気無いとこっちまで調子狂うよ。あんたって元気だけが取り柄な女じゃん。」
 オカケンの意地悪な言い方にも軽く笑うだけで精いっぱい。言い返せなくてゴメンね。
 長く感じた一瞬の後、あたしの中の気持ちを少しずつ言葉にしてみた。
 「・・・何だろうね。多分、あたしの中でまだよく整理出来てないんだと思う。まひろにも謝れてないし。」
 オカケンがあたしを見る。
 「あんた達、あれから普通に顔合わせてるじゃん。」
 「うん。でも、やっぱりちゃんと謝らないと。・・・だけど、言い出せなくって。それに、まひろ忙しいから、あんまり逢えないでしょ。たまに家に帰って来ても、夜は遅いし、朝は早いし。」
 グラスの縁を指でなぞりながら言った。
 「もう謝んなくても大丈夫なんじゃない? マヒロも気にしてないって。」
 「うん・・・。」
 でもやっぱり謝らなきゃ、きちんと。
 オカケンが怒ったように煙草の煙を吐き出す。
 「僕、マスターの事許さないよ。人は勝手に自分で死を選んじゃいけないんだよ。残された者の気持ち考えないなんてさ、サイテーだよ。」
 「マスターも・・・きっと悩んで・・・・・・。仕方なかったんだよ。」
 「でも、そのせいであんたは、そーやっていつまでも立ち直れないでいるんだよっ?」
 オカケンの言葉が優しすぎて、うつむいた。
 「あたしが弱すぎるだけだよ。あと・・・覚悟もしてなかったし・・・。」
 「まぁだ、そんな事言ってぇ・・・。」
 オカケンがちょっと恐い顔になった後、軽く微笑んで伸びをした。
 「どーすれば治るのかなぁ。この気まぐれお嬢ちゃんの落ち込み病は。」
 そだね。
 「あ、そうだ。カルチャーショックで治すってのはどう?」
 「・・・カルチャーショック?」
 アキラ君が驚いてオカケンを見る。
 「OKAKENさん、まさか・・・。」
 オカケンが席から立ち上がった。
 「あんたの見たがってたモン、見せてあげるよ。」
 「見たがってたもん、って?」
 オカケンが悪戯っぽく笑う。
 「イッツ・ア・ショー・ターイムっ。」
 そう言って、腰をフリフリ奥へ引っ込んでいった。
 「何? いっつ・あ・しょー・たいむって。」
 アキラ君を見る。
 「OKAKENさんのステージを見せてくれるって事っスよ。」
 「へ? 本当? あんなに嫌がってたのに・・・。」
 あたしはカシスソーダを口に運んだ。
 「ふうん。でも楽しみ。」
 アキラ君に向かって力無く微笑んだ。何故か暗い顔のアキラ君。
 「どうしたの。」
 アキラ君がゆっくりと口を開く。
 「OKAKENさんて、もしかしてミチルさんの事・・・。」
 「ん?」
 「いや、何でもないっス。」
 アキラ君、慌てて目を伏せる。
 どうしたの? ・・・あ。
 「もしかして、何か変な誤解してるでしょ? あたし、オカケンには本当にヒドイ事ばっかりされてるんだから。キツイ事もしょっちゅう言われてるし。」
 アキラ君までマスターみたいな事言ってる。もしかしてマスターの霊が乗り移った? 生きてる時にムーラン・ルージュに来れなかったから今来てるのかな。
 あたしは上の方を探した。
 ・・・なんてね。
 「でも、取り巻き連中には『ショー見てって』っていつも言うのに、ミチルさんにはなかなか見せなかったし。」
 アキラ君がうつむいたまま言いにくそうに言った。
 「恥ずかしかったからじゃないの? あたしだってオカケンがバイト先に来た時、何かヤだったもん。恥ずかしいっていうか、照れるっていうか・・・。もうあたし達さ、何か家族みたいな関係になっちゃってるんだよ、きっと。だから普段見せてない姿見られるのが嫌だったんだよ。」
 まだうなだれアキラ君。
 あたしにヤキモチ焼いてるのかな。・・・こりゃ、オカケンの胸で泣いちゃったなんて事言ったら、もっと勘違いしちゃうだろうな。・・・オカケンの胸、温かかったな。思ってたより厚くって。あたし、いつもオカケンに助けられてる・・・。
 突然、後ろで黄色い声がした。振り向くと、ステージ上に誰かが現れた。スポットライトがその人を照らす。
 うわぁ、綺麗な人。色っぽい眼差し、大きく胸元が開いた白いドレス、頭の上でまとめられたブロンド、黒くて長い手袋、白い肌、真紅の口紅。
 曲が流れ出し、その綺麗な女の人がゆっくりとお辞儀をする。静かに開いた唇から流れ出るのは情熱的な歌。
 何だ、これ。どきどきする。すごい迫力。まひろの歌と同じ位スゴイ。
 まひろの声は地響きみたいに、地面を通って足から体の中心を揺さぶられる感じだけど、この女の人の声はまるで細かい粒みたい。霧になって舞い下りてくる。
 足が勝手に近づいていく。
 心臓に響くな。泣いちゃいそ。泣いちゃってもいいかな。全部出しちゃおうかな、枯れるまで。頬を伝わる涙。心地良い。まだ残ってたんだ。もう全部使っちゃったと思ってたのに。
 この歌、激しいけど、優しい。包み込んでくれる。あったかいよ。誰かに守られてるみたい。目を閉じる。暗闇の世界。あたししかいない。淋しい世界。でも、この歌声。あたしを見つめてくれてる。
 何だかくらくらする。あたしの中、空っぽになってく。涙も、想いも、弱さも、甘さも、全部、吸い取って。
 曲が、終わった。拍手が鳴り響く。あたしはうつむいて、涙が乾くのを待った。
 涙が乾いたら、後はもう立ち上がるしかない。あたしはアキラ君が待つカウンターに戻った。
 「今の女の人に、お礼が言いたい。」
 泣き腫らした目を隠さないで言った。
 「ミチルさん・・・。」
 「女の人もステージに出るんだね。今まで男の人しか見た事無かったから、ちょっと意外だった。」
 笑って肩をすくめた。
 「ミチルさん・・・言いにくいんスけど・・・。」
 「何?」
 「今のがOKAKENさんっスよ。」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 し、しまったぁ、よりによってオカケンの歌で泣いてしまうとはぁ〜。だってぇ、まさか女装してるなんて・・・。
 でも、オカケン、すごかったな。ちょっとカッコ良かった。フラフラ遊んで暮らしてるだけの人間だと思ってたのに。ちょっと悔し。
 でも、感動した。本人には死んでも言わないと思うけど。泣いてた事、アキラ君にバレてないかなぁ。
 アキラ君を見る。またグラスを拭いてる。
 「ねー、ねー。何でいつもグラス拭いてるの? 暇だから?」
 失礼だなぁという顔をしながらアキラ君が答える。
 「違うっスよ。磨いてるんスよ。『暇だから』なんて、ミチルさんと一緒にしないで下さいよ。」
 なぁにぃっ。喧嘩売ってんのか、こいつ。・・・ん?
 「そのクロスさぁ、変わってない?」
 アキラ君がグラスを外して、クロスを見つめる。
 「そうっスか。」
 じーっ。
 「・・・なんか。デカイ。」
 「ああ。手の油分が付かないように大きく出来てるんスよ。ほら、こうやって手を包み込めば、グラスに手の油分が付かなくて済むんスよ。」
 アキラ君が目の前で磨き方講習をしてくれた。
 「へぇ〜、そうなんだ。全然知らなかった。さすがプロだねっ。」
 アキラ君、呆れ顔。オカケンみたい。変なとこばっか似てきてる。
 「ミチルさんだって、ついこの前までウェイトレスやってたんじゃないっスか。」
 「あたし、バイトだもん。」
 「バイトでも、お金貰ってるんだからプロっスよ。」
 ぐさっ。いいのか、小原満っ。こんな年下の小僧にそんな事言わせておいて。・・・でも、何も言い返せないや。みんなすごいな。あたしには何にも無い。いいな、何か持ってる人は。そっか、オカケンは自分に自信があるからいつもシャンとしてられるんだ。
 「どうだった?」
 着替えを終えたオカケンが戻って来た。
 「ん? ・・・まあまあ良かったよ。」
 目を合わせないようにして答えた。
 感動して泣いちゃったなんて言えない。口が裂けて、口裂け女になっても言えない。
 「ミチルさん、『お礼を言いたい人がいる』って言ってたっスよねぇ。」
 ぎ、ぎくぅ。アキラ君め〜、余計な事を。
 あたしは顔の全部の筋肉を使って、アキラ君に「言うなぁ」と合図した。
 「何、それ。誰の事?」
 オカケンがアキラ君に聞く。
 うっ、やば。
 「今の曲、面白かったねぇ。メロディがあるようで、ないような・・・。」
 小原満得意の話変えちゃえ作戦っ。
 「ああ、シャンソンって言うんだよ。」
 作戦成功っ。やたっ。
 「イヴェット・ギルベールっていうシャンソン歌手がよく歌ってた曲なんっスよ。本家のムーランルージュによく出てた歌手なんっスよ。いつも黒い手袋をしてて・・・。」
 おっ、アキラ君も話に食い付いて来た。しめしめ。
 「へぇ、そうなんだ。だからオカケンも黒い手袋してたの?」
 オカケンがミネラルウォーターを飲みながらうなずいた。
 「OKAKENさんのオハコなんスよね。イヴェット・ギルベール。」
 ふうん、そうなんだ。
 「オカケンのお母さんも、もしかして歌手だったの? まひろん家みたいに。」
 オカケンとアキラ君、何故か顔を見合わせる。
 「・・・うちの親はショーガールやってたよ。」
 ふうん、ショーガール。
 「今は何してるの。」
 「・・・今はクラブのオーナー。」
 へぇ、そうなんだ。クラブのオーナーか。どんなクラブのオーナーなんだろ。オカケンのお母さんだったらムーラン・ルージュみたいなクラブのオーナーが似合いそうだよな。しっかしムーラン・ルージュのオーナー派手だよなー。まっ赤っかだもんなー。でもオカケンのお母さんもあーゆー派手な服着そう。オカケンも派手好きだから。きっと親子揃って派手好きで、友達みたいにタメ口で話してるんだ・・・・・・・・・。
 「もしかして・・・オカケンのお母さんって・・・・・・。」
 「ミチルさん、気付くの遅過ぎ。」
 アキラ君、またまた呆れ顔。
 「だってお母さんだなんて一度も言わなかったじゃなーい。」
 オカケンのせいにした。
 そういえば、「オーナーと従業員って関係だけじゃない」って、前にアキラ君が言ってたっけ。親子だって事だったのか。・・・もっと早く言ってくれれば良かったのにぃ。オーナーの事、ニューハーフだと思っちゃったじゃないかぁっ。
 「あんたが聞かなかったから言わなかっただけだよ。いっつもマヒロ、マヒロって、あんたの興味はそれしかないんだもんねぇ。」
 そっか、あたしオカケンと話すのはいつもまひろの事だった。オカケンの事なんかアウトオブ眼中だったしぃ。もちろん、今も無いけど。・・・あり?
 「ねーねー。オカケンのお母さんっていくつ? 凄く若く見えるんだけど。」
 「・・・42。」
 「ふーん、42ぃ・・・・・・ええっ?」
 やべ、大きな声出しちゃった。オカケンに背を向ける。そして指折り数えて計算--。い、一体いくつん時の子だぁーっ。
 ・・・あ。あたしいつの間にか元気になってる。大きな声出せるようになったし、顔の筋肉が動かせるようになった。ちょっとハイになってきたぞ。
 その時、あたしのケイタイの着メロが鳴った。
 ふっふー、最新の曲よ? まだリリース前。凄いでしょう。
 自慢してやろうと思って、オカケンを見た。
 「電話すんならロビーでやんなよ。」
 くっ、冷たい言い方。なにさ、言われなくっても、そうするつもりだったわよ。ジョーシキじゃない、ジョーシキ。マナーよ。あたしだって分かってるっつーの! もーっ、こんな時に電話かけてくるなんて誰よ。オカケンに怒られちゃったじゃない。
 ぶつぶつ文句を言いながらロビーに続く分厚いカーテンを開けた。
 たっ、まぶしーっ。ここ明るすぎっ! 目がチカチカするよ。ったくぅ、誰だよぉ。
 「もしもーし。お姉ちゃん?」
 あ。
 妹のナギだった。
 「あたし以外に誰が出るっていうのよ。」
 「冷たい言い方ねぇ。元気にしてた?」
 いつも電話なんかしてこないのに・・・。嫌な予感がする。
 「まあまあ元気。何か用?」
 「別にぃ。全然電話してなかったから、元気にしてるかなぁと思って。あ、そういえば引っ越したんだって? どこに住んでんの?」
 相変わらず自分のペースで話を進める奴だなぁ。どこに住んでたっていいじゃん。・・・・・・あ。
 「・・・お母さんに聞いてって言われたんでしょう。」
 「えー、違うよ。あたしはお姉ちゃんの見方だもん。」
 怪しい。怪しすぎる。そんな事言った事ないじゃん。思った事もないはずだ。
 「思ってもない事言わないで。」
 「ふふっ。でもそれ当たり。私はお姉ちゃんの見方ではない。あはは。」
 ハッキリ言う奴・・・。
 「お姉ちゃんがどこで暮らそうと、何の仕事しようと、私には関係の無い事だもん。もっとじゃんじゃん好き勝手な事してよ。」
 「何それ。」
 「だってさ、私が楽になるでしょう? お姉ちゃんがいろんな事して前例になってくれればさ。私が何かする時に、お父さんやお母さんに怒られたり反対されなくって済むでしょ? お父さんもお母さんも、お姉ちゃんに良いって言って私に駄目とは言えないだろうから。警察のお世話になるのは困るけど、それ以外だったらジャンジャンやっちゃってよ。例えば、すんごいしょーもない男と駆け落ちするとかさ。」
 「何よそれ。何であたしが駆け落ちなんかすんのよ。」
 「例えばの話よ、た・と・え・ば。だってお姉ちゃんがその位してくれれば、私がお父さん受けしない彼氏連れてっても大丈夫でしょ?」
 なんだ、彼氏出来たんだ。
 「相変わらずチャッカリしてるね。残念でした。あたしは駆け落ちする予定もないし、しょーもない男とは付き合ってません〜。」
 「え? お姉ちゃん、付き合ってる人いるの?」
 「え? ・・・ま、いなくはないけど。」
 「やだ、何? どんな人?」
 急に食いついてくんなよぉ。
 「どんな人って・・・・・・そりゃぁ、かっこよくて、優しくてぇ、大人でぇ、ちゃんと経済力もあってぇ。」
 「うそ? マジ?」
 「あったりまえじゃ〜ん。」
 鼻高々。付き合ってるって言っていいのか分かんないけど。
 「あぁっ、もしかしてぇっ、友達と住んでるって、その彼氏と2人で住んでるんじゃないのぉ?」
 ま、住んでるといえば、住んでるんだけど・・・・・・2人でじゃないのよねぇ。
 「そ、そんな事どうでもいいじゃん。」
 「え〜、教えてよぉ。お母さんには言わないからぁ。もちろんお父さんにも言わないよ。」
 「本当でしょうねぇ? あんた、いっつもそんな事言ってぇ。いっつも気付くと家中が知ってたりするんだよなぁ。小中高と私が好きだった人全員、お母さんもお父さんも知ってるっておかしくない?」
 「私が言ってる訳じゃないよ。お姉ちゃんが分かりやすいからバレちゃってんじゃないの?」
 そう言われると・・・・・・そうなのかなぁ。
 「付き合ってる彼がいるって事はぁ、そろそろ結婚とか考えちゃったりしてんのぉ?」
 なっ!
 「何言ってんのよ! ・・・・・・それはないよ。」
 「え〜? 分かんないじゃん。お姉ちゃんがそう思ってるだけで、突然プロポーズされるかもよ。」
 それはないな、絶対。
 「あんた、何さっきから結婚とかプロポーズとか・・・・・・ああっ!」
 「えっ? 何?」
 「もしかしてプロポーズされたんじゃないのぉ?」
 「ええ〜っ? そ、そんなぁ〜。」
 「・・・声がにやけてんだよ。」
 「あははは〜。バレたぁ?」
 「お父さんとお母さんは知ってんの?」
 ケイタイの向こうから深いため息が聞こえた。
 「まだ何も言ってない。・・・だからさぁ、先にさぁ、お姉ちゃんが結婚してくれればさぁ、ラクなのになぁって思って。」
 「そんなとこばっかり頼るな。」
 「だよねぇ。」
 「・・・・・・あたしからお母さんにそれとなく言ってみよっか?」
 「うーん。・・・でもいい。自分で話すよ。」
 「大丈夫なの?」
 「うーん。・・・分かんないけど。」
 ナギがこーゆーふうにモゴモゴ言う時はあたしに何とかして欲しい時なんだ。昔はそうだった。・・・でも今は違うのかもしれない。
 「しっかりしなさいよ。あたしだって、いろいろあって、いろいろ大変なんだから。」
 「へ? 何が大変なの?」
 あたしはマスターが死んでしまった事、しばらくは仕事がないという事を素直に話した。
 「ふう〜ん、大変だね。・・・お母さんに話したら、絶対に『帰って来い』って言うね。」
 「言うなよ?」
 「それはどうかな?」
 ったく、こいつは・・・。
 「姉がプー、妹が若くして結婚じゃ、お母さんもお父さんも泣き出しちゃうだろうね。あははははは。・・・お姉ちゃんっ! プーになったって事まだお母さんに言わないでねっ。」
 「何で?」
 言うつもりないけど。
 「お母さんってさぁ、世間体気にするじゃん? 『姉が無職じゃ、相手の親に何て言っていいか分からない』とか言ってさぁ、結婚延期しろとか言い出しそうじゃん?」
 無職って言い方、かなりグサっとくるなぁ。
 「うーん。言われる・・・かな?」
 「言うよ、絶対! 明日か、あさって位にお母さんからTELあると思うけど、言わないでよ?」
 「はいよ。」
 お母さんから電話かかって来るって知ってるって事は・・・・・・やっぱりお母さんから頼まれたなっ。

TOPです
 BBS  アンケート
 メール リンク