「何でまだ寝てんのよっ。」
オカケンの声で目が覚めた。
「僕が寝れないじゃないっ。」
朝っぱらから怒ってる、いつも通りのオカケン。あたしは毛布の隙間から顔を出した。
「いいじゃん、一緒に寝ようよ。」
ふっ、オカケン固まってる、おかし。
「冗談だよ、冗談。本気にしないで。」
あたしのセリフが空しく響いた。
「あんた、どうしたの。熱でもあんじゃないの。」
オカケンが手をかざして来る。
「だあーっ、ほっといてよ。」
あ、あたしって最低。オカケンに八つ当たりしてる。
「・・・ごめん。ちょっと今日は機嫌が悪いの。近寄らない方がいいよ。」
オカケン腕組み、いつもの癖。
「本当に変だよ? 何かあった? 僕で良かったら聞くよ。愚痴位なら。」
こんな時に限って優しいオカケン。オカケンはズルイ。いつもあたしが弱ってる時に優しい。頼りたくなる。でも。
「何でもない。ただ・・・疲れてるだけ。」
オカケン呆れ顔。
「あんたが元気がないと、ここの空気までドヨドヨして来るんだよねぇ。」
あたしは別にオカケンに迷惑かけてるつもりはない。嫌なら出て行けばいいんだ。
「よしっ、分かった。僕が気晴らしに、今夜、いいとこに連れてったげる。」
いいとこ?
「それまでぐっすり眠ってな、お嬢ちゃん。」
オカケンがウィンクをして出て行った。
ぞわぁわぁわぁあ。さぶいぼ立った。
「あんた、そんな格好で行く気?」
あたしは自分の服装を見直す。ヨレヨレのTシャツとクタクタのジーンズ。
だって、「いいとこ」って言ったきりで、どこに行くかも「着いてからのお楽しみ」なんて言うんだもん。どんな格好していいのか分からないよ。きっとオカケンが言う「いいとこ」なんて大したとこじゃないだろうし。それに汚く見えるかもしれないけどねぇ、このTシャツもジーンズもお気に入りの一品なんだから。ジーンズだって、こう見えても5万円もしたんだから。安いバイト代をコツコツ貯めて、食費を削って、やっとの思いで手にしたジーンズなのよっ。一本しか持ってないビンテージなのよっ。・・・履いてるスニーカーは、安モンだけど。
「ま、いいや、行こっ。」
オカケンがエレベーターのボタンを押した。
そういえば、オカケンとどっか出掛けるのって初めてだ。・・・・・・だからって別にどーしたって訳じゃないけど、さっ。
地下鉄を幾つも乗り継いで、やっと改札口を出た。
あへぇ、やっと着いたよ。もうっ、乗り継ぎばっかで、電車乗ってる時間より歩いてる時間の方が長かったんじゃないのぉ?
ヘトヘトしていると、オカケンが言う。
「あんた若いんだから、これ位で疲れないっ。いつも家と『サンクチュアリ』の往復だけだからいけないんだよ。どーせ仕事もチンタラチンタラやってるんでしょ。もっとサッサッと歩いて、体鍛えないと駄目だよ。」
「ったく、いつも説教ばっかり。説教オカマ。」
聞こえないように小声で言った。
「ん? 何か言った?」
「ううん。」
首を横に振りながら思った。地獄耳オカマだ。
湿っぽくて生臭い地下鉄の階段を上り、外に出る。外の空気が冷たくて気持ち良い。
あ、夜の匂いだ。
ネオンと車のライトが作るもう一つの星空。オーガンジーみたいな雲に隠れた本当のお月様。黒い歩道、黒い電信柱、黒い空缶、黒い空気、建物の中からあふれ出てくるたくさんの光達。
気分がワサワサしてくる。
「夜遊びするの、久し振りっ。」
あたしはオカケンに向かって言った。
「ワクワクするのはまだ早いよ。」
オカケンはすっかり夜の街に溶け込んでる。いつもより生き生きして見える。
こーんな夜の街の中で生きてんだもん、こんな格好にもなるよねぇ。
あたしはオカケンの服装をシゲシゲと見た。
黒くて体にフィットするラバー素材のTシャツ、キャラメル色の革のパンツ、重そうなペンダント、耳たぶにはピアス代わりのタトゥ、両手の指全部にごっつい指輪、黄色いレンズのサングラス。
なぁんか、あたし、凄い人と並んで歩いてるなぁ。知り合いじゃなかったら、こんな人と並んで歩くの絶対いやだ。
「ここだよ。」
オカケンが立ち止まって、地下に続く階段を指差した。真っ暗の中に裸電球がゆらゆらと揺らめいている。
うっ。
思わず後ずさり。
こ、怖いよぉ。一体どこへ連れて行くんだよぉ。
「何やってんの。行くよ。」
びびって動けなくなってると、オカケンがあたしの手を引っ張る。あたしは真っ暗の中へと引きずり込まれた。
ひーっ。
コケそうになりながら階段を降りると、そこにはどっしりとした大きな扉があった。「au Moulin Rouge」と金文字で書いてある。
「あう・もうりぃん・ろうげ?」
オカケンが冷たくあたしを見て、「ムーラン・ルージュだよ。」と言いながら扉を開けた。
「な、何? 眩しいっ。」
何でこんなに明るくしてんのよ! 目が開けられないじゃない!
下を向いて目を少しずつ開ける。白と黒の市松模様のフロアが目に飛び込んでくる。どっかのライブハウスみたい。でもきちんと線が引かれてないぞ。なんか、ひしゃげてる。目の錯覚の例に出てきそうな奴だなぁ。ううーっ、なんかクラクラしてきた。なんだぁ? ここは?
顔を上げると、一面のオレンジ、しかも蛍光色。目がチカチカちかりん。天井と壁が全部オレンジ色。
天井からは怪しげなシャンデリア。・・・シャンデリアって言っていいのかなぁ? なんか、やたらめったら大きいトゲトゲがぶら下がってる。白桃色に光ってるから、照明器具だとは思うんだけど、何でこんな形してるの? 上から落ちてきて刺さったら痛そ。死ぬぞ、きっと。
訳が分からなくてクラクラしているあたしにオカケンが言った。
「ここのロビーはギャラリーになってんだよ。若いアーティストに提供してんの。だから、絵とかオブジェとか一杯あるでしょ?」
オブジェ? オブジェってこれの事ですかねぇ。
あたしの目の前にキレ〜な人形が立ってる。顔は陶器で出来てるみたい。翼が生えてる。すんごい汚れたボロボロの翼。天使なのかなぁ。白いフワフワのワンピースが泥だらけで可哀相。・・・でも、なんで、体に引き出しが一杯付いてるんだ? 何入れんの? 宝物?
こっちには椅子が置いてある。・・・でも座れない。だって、一つは足がすんごーく長くて、座るところが天井近くにあるし、もう一つはベンチなんだけど、奥行きが超ぉーっ狭い。座ったら空気椅子状態になっちゃう。もう一個のは、足も普通だし、奥行きもちゃんとあるんだけど、座るところに、トゲトゲが一杯生えちょる。ケンカ売ってんのかぁいっ。座れる椅子置けぇっ。
奥には古い筒型の郵便ポスト(何故か黄色)があって、入り口の近くには、ぬいぐるみが山ほどくっついた洗濯機。駄目、あたしには理解出来んわ。
それに、なんだぁ、これ? 気持ち悪ぅーい。不気味だから見ないようにしてたんだけど、部屋の真ん中にドドーンって置いてあるんだもん、つい、見ちゃうよ。
「・・・・・・目・・・。」
あたしの目の前にドドーンと巨大な目玉が置いてある。抱き人形の目(寝かすとまぶたを閉じる、あれ)みたい。
「テーブルなんだよ、これ。」
「て、テーブルぅっ! 嘘っ!・・・・・・本当だ、脚がついてる・・・。」
けど、これのどこがテーブルなのよぉ。表面平らじゃないじゃん。物置けないじゃん。
しっかし、でかいなぁ。目頭から目尻までがあたしの身長と同じ位あるよ。まつげもちゃんとある。まばたきしたら(したら嫌だけど)バサッ、バサッって音がしそう。ガラスか何かで出来てるのかなぁ。すごいリアル。見つめられてるみたい。怖いよぉ〜。
オカケンの服の裾を掴むと、ニヤリと笑ったオカケンが振り向く。
「この目ねぇ、夜になると開くんだよ。昼間はねぇ、閉じてるらしいんだ。一度忘れ物を取りに戻った子が見たらしくってねぇ。」
背中に冷たい空気が走る。
「え? やだ、驚かせないでよ。・・・機械とかで、閉じたり開いたりするようになってるんでしょう?」
まあたぁ、びびらせようと思ってぇ。
「どこに機械が入ってるって?」
オカケンが腕組みをしながら、顎を「見てみれば」というようにクイッと巨大目玉の方に動かした。
こんなに大きいんだから、機械位入るでしょうにぃ。
・・・・・・・・・・・・。
あちこち覗いてみた。覗けば覗くほど、怖くなりそうだったので止めた。
だって、全部透明なんだもん。黒目も半透明だしぃ。じゃあ、目が閉じるって言うのは・・・・・・
「嘘だよ。」
オカケンはそう言うと、スタスタと歩いていってしまった。
何だよ〜っ、もぉーっ、びびらせんなーっ。
はぁ。
オカケン、これが見せたくて連れて来たのかなぁ。・・・・・・来なきゃ良かった。期待はしてなかったけど。はぁ。こんなんで気分が晴れると思ったのかねぇ。
「何ぼーっとしてんの。早く行くよ。」
オカケンが奥の黒カーテンの隙間から顔を出した。
えっ、行くって、ここに来たんじゃないの? あ、そういえばさっき「ここのロビーが」とか言ってたな。げっ。じゃ、ここロビーなのっ。ロビーって・・・こんなとこでくつろげんぞ。
くらくらしたままオカケンに付いて行く。分厚いベルベットのカーテンの隙間に体を入れると、そこは別世界だった。
どっかの民族音楽みたいな曲が流れ、何か粉っぽい、いい匂いがゆらゆらしてる。左側にはカウンターバー。中央には半円の舞台、その周りを囲むように、テーブルと椅子が置いてある。
さっきのロビーが明ならここは暗、動なら静、ごちゃごちゃならシンプル。派手なタイムトンネル抜けて、知らない時代に迷い込んじゃったみたい。
あたしはオカケンの服の裾をくいっくいっと引っ張った。
「ねぇ、何なの、ここ。」
オカケンがあたしの手を払いながら(きっと服が伸びるのが嫌なんだ)いつもみたいに偉そうに答えた。
「クラブよ。まあでも、そんじょそこらのクラブと一緒にされたくないから、ここに来る客はみんな『ムーラン・ルージュ』って店の名前で呼んでるけどね。」
ふぅん、そっか。クラブって初めて来たけど、こーゆーとこなんだ。
なんか、いろんな人がいる。ビョウ付き革ジャンを着たパンクっぽい人、シルクっぽいブラウスのボタン全開にして胸はだけてる人、黒いピチピチのタンクトップ着たマッチョな人・・・・・・。
「取材拒否の店だから知ってる人しか来ないんだよ。新しい人が来たとしても、皆誰かの紹介だしね。一見さんお断りって奴ね。感謝しなよ、僕が連れて来てあげなかったら、一生知らないよ、こんな世界。」
「はぁ。」
とりあえず大人しくうなずいておく。
別に知らなくてもいいような気がするけど。
「OKAKENの連れ? 可愛いじゃん。」
長髪のスラリとした男の人が声を掛けて来た。
きゃ、可愛いだって。あたしの事よね、もちろん。
オカケンは、その人に向かって軽く手を上げた後、あたしをカウンターに連れて行った。
なんだよ。紹介位してくれたっていいのにぃ。ブーっ。おっ? なんか、その長髪の人以外にも視線を感じるぞ。あたし、もしかして凄いモテてる? 知らなかった。あたし、遊び人に人気があったんだ。
「よっ。」
オカケンがカウンターの中にいるバーテンの人に声を掛けた。
「おはようございます。」
バーテンさんは軽く微笑みながら、礼儀正しくオカケンに挨拶した。
へぇ、オカケン、常連なんだ。
椅子に座って飲み物を注文する。オカケンはマティーニ、あたしはカシスソーダ。
「ねぇ、ねぇ、何だかあたし、モテてるみたいなんだけど。」
オカケンに小声で言った。オカケンは冷めた顔、何にも言わない。
「まぁた、そんな顔しちゃってぇ。あたしが一人でモテてるから悔しいんでしょ。」
オカケンを肘でウリウリ突つく。
「いいの?」
「何が?」
オカケンが長ぁいメンソールに火を付ける。
「言い忘れてたけど、今日『ゲイNIGHT』なんだよ。女の子、ミチル一人でしょ。」
キョロキョロと見回してみる。確かに。そっか、それでモテてるんだ。紅一点って奴ですな。
「みんなミチルの事、男の子だと思ってんだよ。」
ガビィ〜ン。落ち込み〜。こ、こんな可愛い娘を捕まえて男の子ですってぇっ。
肩を落としていると、男の人が近づいて来てオカケンの隣に座った。
「はろ〜。OKAKEN、隣の子、連れ? 」
あたしは恐る恐るその声の主を見た。
ひぃえ〜、すごいマッチョ。皮ジャンがぴちぴちぃ。しかも胸がはだけてるぅ。怖ぁい。
「あ、あたし、女の子なんですけどっ。」
勇気を出してそのマッチョに向かって言った。そのマッチョ、ニヤリと笑う。
「そうなんだ。でも、構わないよ。僕、バイセクシャルだから。」
ひょえ〜。
オカケンの背中を指で突つく。小声で「助けてよぉ。」と泣き付いた。
BUT オカケン知らん顔。
ムカーッ。
あたしは小声でオカケンを怒鳴った。
「卑怯者っ。この人とあたしをくっつけようとしてるんでしょ。そうすればまひろを一人占め出来るからってぇ。卑怯っ、卑怯過ぎるよ。」
オカケン、ジロリとあたしを見てから、そのマッチョに向かって言う。
「ごめん、こいつ、僕の女なんだ。」
ドキッ。何もそんな嘘付かなくてもぉ。
マッチョは仕方なさそうに離れてった。
「何、そんな嘘付いてるのよぉ。」
マッチョが離れた事を確かめてからオカケンを睨んだ。
「だって、こうでも言わないと諦めないよ。アイツ、しつこいから。」
む、むうー。
「そ、そうなの。じゃ、仕方ないね。」と、渋々納得。
でも、びびったぁ。急に「僕の女」なんて言うんだもん。ドキドキしちゃったよ。ああ、このセリフをオカケンじゃなくて、まひろの口から聞きたかったなぁ、嘘でもいいから。
「卑怯者呼ばわりされたくないからね。」
オカケンが不機嫌そうに、ぷはぁと煙を吐いた。
「ご、ごめん。」
助けてもらった手前、素直に謝罪。
「なぁんだ、この子、女の子だったんスね。」
バーテンさんが声を掛けて来た。
「そ、ミチルっつーの。ミチル、これアキラ。」
そのアキラって人がペコリと頭を下げた。
年は・・・あたしと同じ位かな。オカケンみたいな短髪、ピアス。でも黒髪だし、ピアスもまだフィットしてないって感じ。「ザッツ遊び人」な誰かさんと違って好感持てる。そういえば、ここに来て初めてオカケンが紹介してくれた。やっぱり、いい人なのかも。
「小原満です。ども。」
はっ、馬鹿丁寧にフルネームで答えてしまった。
オカケンが笑い出す。
なによぉ、フルネームで言ったからって、そんなに笑う事はないでしょうよぉ。
「ミチル、僕に最初に会った時と同じように挨拶してるっ。」
「へっ? そうだっけ? 忘れちゃったよ、んな昔の事。」
そーだ、そーだ。あんな人生最悪の日の事なんか憶えてないっつーの。こーなったら何もかもぜぇんぶ忘れちまえっ。今日はとことん飲むぞーっ。
「アキラ君、同じのもう一杯おかわりねっ。」
酔いたい気分に久し振りの夜遊びの浮かれ心が加わって、あたしはぐいぐい酒を飲んだ。
「おかげで嫌な事が忘れられそうれす。サンキュ、オカケン。」
すっごい、いい気持ち。オカケンと肩を組んじゃおっと。あり? もしかしてあたし酔ってる? へべれけになっちゃってる? だぁいじょうぶいっ。まだまだいけまっせぇい。
「なっ。」
オカケンの肩をべっちぃんと叩いた。おおーっ、いい音っ。も一回叩いちゃおうかなぁ。そぉれぇい・・・ん? なによぉ、あたしの手首つかまないでよぉ。馴れ馴れしいわねぇ。
「ちょっと、人の肩バシバシ叩かないでよ、さっきから、もうっ。」
「はは、オカケン、また、怒ってやんのぉ。」
「何言ってんの、大丈夫? かなりペース早いよ。」
「なぁに言ってんれすかぁ。だぁいじょうぶいっ。」
「だいじょうぶいって、あんた古過ぎ。・・・それにしても何があったの。それだけ飲むって事は、やっぱり何かあったんでしょ。」
「ん? べぇつにぃ、なぁんにも。」
「あんた嘘付けない性格なんだから、さっさと言っちゃった方がスッキリするよ。」
「べぇつに、なぁんでもないれすよぉ。ただ、まひろにキョゼツされちゃっただけぇ。」
「拒絶って?。」
「キョゼツはキョゼツよ、おにいさん。んー、でも、キョゼツでもないんだよねぇ。でも、すすんでってことでもないのよねぇ。なんかそれってキョゼツよりツライのよ。よよよよよよ。」
「あんたの話分かりづらい。酔ってるから? ・・・いつもか。マヒロに拒絶されたっていつの話してるの。マヒロ、福井に行ってるでしょ。」
「かえってきてたんだよぉん。ないしょに、しぃてましたぁ、ごめんちゃぁ〜いぃ。でも、きょうのあさ、またいっちゃったけど。えーん。」
「ああ、そうなんだ。帰って来てたんだ。」
「むむっ。『そうなんだ』だとぉ。『なんでぼくにいわないのさ』とかいわないのぉ?」
「言わないよ、別に。」
「ええっ。だって、まひろにあえなかったんだよぉ。」
「別にもう二度と会えない訳じゃないんだから、大袈裟だねぇ。」
「むむっ。オカケンって、もしかして、あんまし、まひろのこと、すきじゃないれしょー?」
「好きだよ。だけど、あんたみたいに執着してないだけ。」
「はあっ。まぁただよ、まぁたシュウチャクだって。なんだよ、どいつもこいつも、シュウチャクしないとかぬかしやがって。そんなにシュウチャクすることがわるいことかよ。バカヤロォ、シュウチャクして、なにがわるいんだぁ。うぇ〜ん。」
「やだ、泣き上戸。アキラ、こいつ何とかしてよ。」
「嫌っスよ。オレ、女苦手なのOKAKENさん知ってるっしょ? しかもこんな酔って泣いてるし。」
「あ〜あ、連れて来るんじゃなかった。何悩んでるかと思えば・・・。」
「ぬわぁにぃ、あたしのなやみごとに、ケチつけるっていうのかい。あー、あー、どーせオカケンは、まひろとニクタイカンケーだから、そんなにヨユーぶっこいてるんだよ。」
「ん? もしかしてあんた、拒絶って、SEXの事言ってんの。」
「ふわぁっ、そんなはっきりと。あーやだやだ、これだから、でりかしーのないオカマは。」
「僕はオカマじゃないって言ってるでしょ。・・・そうなんだ。マヒロがSEX拒むのって珍しいな。」
「ええっ? そーなのぉ。あたし、やっぱり、きらわれてるんだ。えーん。ちゅーはしたのに。えーん。」
「でもそれってちょっと羨ましいけど。」
「なんでよぉっ。」
「マヒロは取り敢えず、そーゆーシチュエーションになったらするよ、いつも。でも、しなかったって事は特別扱いされてるって事じゃないのかなぁ。大事にされてるって事かもよ、あんた。」
「えー、そーかなぁー。そうは、かんじないんれすけどぉ。それにキョゼツっていってもぉ、はっきりキョゼツされたわけじゃないしぃ、トクベツアツカイっつーのとぉ、ちがうようなきが、するのよねぇん。・・・アキラくうんっ、もういっぷぁい、おかわりっ。」
「・・・OKAKENさん、いいんスか?」
「ったくもぉ、あんたはぁ。僕が連れて帰んないといけないんだからねっ。それ位にしときなよ。酔った女の介抱なんて嫌だからねっ。」
「なぁんだよ、っるっせぇんだよ。おやじぃ、サケもってこいっつーんだ。サケえぇ・・・サケぇぇ・・・さけぇぇ・・・さけぇ・・・」
気が付くと朝だった。あたしはいつものように、まひろの家のベッドで寝ていた。
ん? なんか頭がガンガンする。ううっ。気持ち悪い。あ、そっか、昨日オカケンに連れられて、変な店でガンガンに酒飲んだんだった。ん? その後どうしたんだっけ? ・・・・・・全然思い出せない。あたし、どーやって家に帰って来たんだ?
あたしに背を向けて寝ているオカケンが目に入った。
オカケンが連れてきてくれたのかなぁ。・・・・・・おわっ、しまったぁっ。一緒にベッドに寝てしまったぁっ・・・・・・うおーっ。頭痛ーい。・・・・・・昨日、何があったか聞いてみようかな。うーん、何故か聞くのが恐い。何だろう、この嫌な予感は。あたしは一体何をしたんだろう。
がーっ。それにしても頭痛ぁい。バイト休みたぁい。寝ちゃいたぁい。・・・遅れて行こうかな。・・・バイト代減るな。・・・頭痛薬、飲むか。