TOPです
 BBS  アンケート
 メール リンク
 

風に吹かれて

 今日ぼくは学校をズル休みしたんだ。
「頭が痛い」って洗濯物干してるお母さんの背中に言った時、怒られると思った。お母さんが振り向いた時、凄くドキドキした。物凄く怖い顔してると思ったんだ。でもお母さんは「休みなさい」って、ぼくに言ったんだ。何だか疲れた顔をして。
 お母さんが学校に電話をしようとしたから、ぼくは急いで布団に潜り込んだ。ぼく、悪い子だな。お母さんが仕事に行くまで、ぼくは布団の中で寝たフリをしていた。布団の中がすごく熱くなっていった。本当に熱があるんじゃないかって思う位。
 午前中はずーっとテレビを見てた。いつも見れない教育番組。懐かしいお兄さんお姉さんの顔が何だかうそ臭く見えたんだ。ぼくも大人になったって事かな。あとはワイドショー見ながらパンを食べた。「お腹空いてない」って言って、朝、あんまり食べなかったから。本当はお腹ペコペコだったんだ。
 その後、長〜い昼寝をした。で、起きたら今だった。もう夕方だった。遠くの工場が真っ赤に染まってる。きっと今頃教室は空っぽだ。少しホッとした。
ぼくはパジャマが見えないようにレースのカーテンを体に巻きつけながら窓から顔を出した。下の三角公園には誰もいない。きっと、たっくんもよしのりも、ケンちゃん家のマンションの公園に遊びに行ってるんだ。ぼくは少し安心してカーテンを持つ手の力を抜いた。遠くから下手っぴいな縦笛の音が聞こえる。隣の棟かな。アマリリスだ。違う、そこはミだよ。
 学校休んだぼく、今日学校行ったぼく、きっとそんなに違わない。そう思った。良い事も、悪い事も、きっと同じ位の数だ。ぼくは深呼吸みたいな溜息を吐いた。
 向かいの棟の部屋の電気が少しずつ点き始めた。ミカちゃんの部屋の電気が点いてる。勉強してるのかな。今日、宿題出たのかな。へんなの。宿題やらなくてすんだのに、あんまり嬉しくないや。
 どっかの家から焼き魚の匂いがしてきた。カレーの匂いもする。雲が流れてる。ぼくは鼻をぴくぴくさせた。夕方の匂いがする。ぼくのおでこを風がなでた。
明日は、学校、行こうかな。