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ソエルルルに捧ぐ

夏の終わりの向日葵

よろけちゃって、彼のTシャツの裾、ぎゅっって握った。
「大丈夫?」
彼は振り向いて笑顔で言ってくれた。
その笑顔が向日葵みたいに眩しくて、何にも言えなかった。
どさくさ紛れにTシャツの裾握ったままにした。

そのままずっと歩き続けた。
彼ののっぽな背中見つめながら。

いつも一所懸命な白いTシャツの背中。
悔しさも我慢も辛さも、すべてその笑顔にくるんで、だれにでも優しいあなた。
私には曝け出しちゃってもいいのにな。

切なくなって、裾を放した。
二、三歩進んで 立ち止まるTシャツ。振り向く背中。
全部脱ぎ捨てて、傷だらけの焼けた肌を曝け出しちゃってもいいんだよ?
弱いとこ見せてくれたら、私が全て包み込んであげるのに。

少し離れた君は、私に変わらない笑顔を向ける。
皆に見せるのとおんなじ笑顔を向ける。

日が暮れて、彼の影法師が伸びた。
のっぽの彼の背がまた伸びた。
彼との距離がまた遠ざかる。
夕闇の風は思いの外涼しくて、秋の足音に耳を塞ぎたくなる。

夜はもうすぐそこまで迫っている。
あなたと私の夏が終わってしまう。

「夏が、いっちゃうよ」
このまま遠ざかっていきそな向日葵に向かって言った。
彼の顔が逆光で見えない。

「大丈夫、僕はずっとここにいるから」
力強い言葉が聞こえた。

頼もしかった。なのにちょっと淋しかった。

いつまでも夏にすがってる私が悲しかった。
あなたはもっとずっと先を見てるんだね。

来年の今頃はもっとあなたに近付きますように。