朝、目が覚めると猫が隣で寝ていた。俺のベッドの上で気持ちよさそうにスヤスヤ眠っている。
俺は不思議に思いながらも白い毛並みを撫でた。猫は気持ちよさそうに伸びをする。寝てるくせに。
お。肉球。触ってやろ。
「やん。エッチだにゃ」
なんだ、この猫。喋るぞ。
「何で肉球触るのがHなんだよ」
悔しいからもっと触ってやるぅ。
「やーっ。乙女に何するにゃ〜」
お、乙女?
俺は猫を抱きかかえた。そして怪しい猫の顔をじっと見る。
じーっ。
「そんなに見られると照れるにゃ」
猫は照れて顔を伏せてる。
変な奴ぅ〜。
「お前、本当に地球上の生物か? なんか宇宙人が化けてるんじゃないか?」
くんくんくん。
「宇宙人なんて失礼にゃ。に、匂い嗅ぐにゃ〜っ」
んー、何か良い匂いがする。何の匂いだろう。甘い匂い。花かな?
俺は猫の首筋に鼻を近付けた。
「タバコ臭いにゃ。無精ひげがチクチクして痛いにゃ」
猫が顔を背けた。でも何だか嬉しそうだ。何で嬉しいんだ?
っんとに変な奴ぅ〜。
「ふわわわわぁ〜っ」
おっかしーなー。起きたばっかなのにまだ眠ぃーや。
「ふふふ。何故ならば私が催眠術をかけたからにゃ」
また変な事言ってる。
「ゆっくり眠るにゃ。しんちゃん」
猫が俺の頭を撫で始めた。ぷにゅぷにゅした肉球がおでこをくすぐる。
ふはは。くすぐったくて眠れねーっつーの。くすぐ、ったく……て……。
気付いたら俺はまた寝ていたようだった。今日はよく眠くなる日だ。
時計を見た。
ん?
もう一回見直す。
最初に寝た時間から少ししか経ってない。
あれ? あの猫はもしかして……。
俺は急いで周りを見回した。猫はいなくなっていた。
俺は探さなかった。
また逢える気がしたから。
その時はきっと本当の姿を見せてくれるだろう。そして今度こそ肉球を嫌という程触ってやるんだ。なっ。覚悟しておけよ。