僕のあの娘は蜜柑の皮が剥けない。
手がねちゃねちゃするのが嫌
だから。
だから僕がいつも代わりに剥いてやる。
何で剥けないの?
僕は理由を知ってる。
でも聞いてみる。彼女が話す理由が好きだから。
何で何回も聞くの?
彼女はほっぺを膨らませる。
何回も聞きたいからさ。でもまた聞くよ、きっとね。膨らませたほっぺを見る為に。
そうやって同じ事何回も聞くなんて。
やっぱり動物占いのゾウは人の話を聞かないんだね。
彼女はくすくすって笑う。自分もゾウなのに。
私たちはきっと蜜柑みたいに皮の中でくっついて、一つになって生まれてきたんだよ。
本当はね、ずっとね、くっついてなきゃいけないの。
離しちゃうと可哀想でしょ。
はだかんぼだし可哀想でしょ。
だからね、剥けないの。
あ。初めて聞く理由だ。
今度は僕がほっぺを膨らませた。そして蜜柑をおコタの上で転がした。
どしたの?
僕も剥けなくなっちゃったじゃないかー。reikoのばかぁ。
そんなうるうるした目で見ても駄目だぞ。君はね、ずーっと私の蜜柑を剥ぐんだから。剥き続けるんだから。
reikoが僕のほっぺをつんつくつん。
うふふふ。かぁーいー。このほっぺ
僕は手の平の上の蜜柑みたい。いっつもころころ転がされてる。
ま、いっか。僕たちはいつまでも蜜柑の皮の中。ずっと一緒になっていよう。
そしてあったかいおコタの中、ずっと溶け合っていよう。
僕たちは今度はチヨコレイトになった。