くれっしぇんど 陸奥睦月&Gravity Free 綺阿がリレー小説でお届けするアスキラパラレル学園シリーズ『学園天国 〜Closer to Heaven〜』。
担当は、キラ→陸奥睦月、アスラン→綺阿で、表紙はwind mill+の朝霧紫月さまが素敵イラストを担当!
CEもMSも関係ない、ごく普通の高校生のアスランとキラ(非幼馴染設定)の一年間を歳時記風味にお届け。4月からスタートし、春(4〜6月)、夏(7〜9月)、秋(10〜11月)、冬(12〜1月)、ふたたび春(2〜3月)の全5巻でお話は完結いたしました。
なのですが…その後のふたりのお話を読みたいというリクエストをたくさんいただき…このたび、夏コミあわせで大学生になったふたりの夏休み編という外伝を発行することになりました!
こちらの表紙も朝霧紫月さんが素敵イラストを描きおろししてくださいますv
紫月さん、ありがとう。やっぱりまだ続きがあったよ・・・。(笑)
(注:5巻の表紙が終った後、『これで本当に終わりなの?』と聞かれたのでした。/笑)
学園天国 外伝
〜Summer Aventure〜
(8/16 夏コミ新刊)
A5/FC/P72/¥600/R-18
※虎の穴さんにも書店委託予定。
大学2年生になったキラ。
今年は、自分がアスランの棲むイギリスを訪れようと決意し、旅行資金を貯めるためにバイトをがんばる。
もうすぐ夏休み。いろいろなところからお誘いの声がかかる時期だ。
そんな時、一通のエアメイルがキラの元へ届く・・・。
◇イベント販売は、くれっしぇんど(サ-26a)、Gravity Free(サ-40a)両方のスペースにて行ないます。
虎の穴さまの書店委託&両サイトの自家通販を予定しています。
販売方法によって、若干価格が異なります。ご了承ください。
販売の詳細などについては、両方のサイトにて告知いたしますので、チェックしてくださいね!
>>陸奥睦月 (くれっしぇんど)
URL http://homepage2.nifty.com/placollo/
Mail placollo★yahoo.co.jp
>>綺 阿 (Gravity Free)
URL http://www.est.hi-ho.ne.jp/shiny-g/G-S/
Mail shiny-g★est.hi-ho.ne.jp
※メールアドレスは、★を@に変えてください。
長かった梅雨が明けると一気に夏だ。
グレイの雨雲に隠されていた太陽が顔を覗かせるようになると、青い空には入道雲。
あちこちにおひさまのような向日葵の花が咲くようになる。
そして、前期試験が終れば長い長い夏休みがやってくる。
大学生の夏休みは高校生のそれとは段違いだ。七月末から九月末まで丸々二ヶ月間もの長さにも及ぶ。
一回生だった去年は、運転免許を取るために教習所に通ったり、そのお金を稼ぐためにバイトにあけくれたり、サークルの合宿に行ったりしているうちにあっという間に終ってしまった。
二回生の今年こそ、計画的にこの長期休暇を満喫しよう。キラはそう思っていた。
「でも、ラスティやディアッカ先輩たちと旅行に行こうって言ってたっけ」
バスを降りてから、家までの道を歩きながら、夏休みの計画に考えをめぐらせていたキラはふと小首を傾げる。
同じ大学に進学した悪友、ラスティ・マッケンジー。そして、1学年上の先輩にあたる、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン。
彼らとは、同じ高校出身とあって、今も親しいつきあいが続いていた。
特に、同じ学部であるラスティとは、必修や選択が同じなのでほぼ毎日顔をあわせていた。
「・・・そういえば、シンやルナマリアちゃんとも、キャンプに行こうって言ってたなぁ」
ひとつ下の部活の後輩であるシン・アスカやルナマリア・ホーク。
彼らもまた、浪人することなく現役で大学への進学を決めていた。
キラは止めてしまったが、シンとルナマリアのふたりは、大学に入っても弓道部で頑張っているらしい。
晴れて全員大学生になった今年の夏は、インターハイ前の強化合宿の参加メンバーでどこかに旅行に行こうという話がもちあがっていた。
「・・・でも……は居ないんだよね」
ぽつりと呟いたキラはふと空を見上げる。
あの時、急に校内の合宿所が使えなくなり、自分の家の別荘を提供してくれた人。
合宿の間も練習に、それ以外にも一行をまとめあげてくれた人は、多分、今年のキャンプには参加できない。
眩しい太陽を遮るように、掌をかざす。遠い海の向こう。この空が続いている場所に居る恋人の名を呟く。
「・・・アスラン…」
キラの恋人、アスラン・ザラが高校卒業と同時に渡英したのは去年の春のことだ。
高校の入学式の日に偶然出逢ったふたりは、ひと目で恋に落ちたものの、一瞬すれ違っただけだったので互いの名前を知ることもなかった。
1年生の時は違うクラスだったため、自分が想いを寄せる相手が誰だか分からないままに想いを募らせたまま、出逢ったのは二年生に進級した時だった。
『ヤマト』と『ザラ』。偶然同じクラスになった二人の席は、五十音順で並べられていたために前後していたのだ。
この時、既にアスランは一年前に出逢った少女がキラだということに気づいていたらしい。(ちなみに、彼が一目ぼれした少女が実は少年だったという事実に気づいたのは、その前の年の学園祭でキラがラスティに騙され、『彼女にしたい子ナンバーワン』の称号をありがたくもいただいた時だったらしい。キラにとっては人生の汚点のひとつなのだが)
しかし、キラの方もアスランがあの時のかれそうではないかと疑いつつも、それをなかなか言い出せなかった。
高校二年生で初めて同じクラスになったにもかかわらず、ふたりの共通の友人であるラスティが首を傾げて『おまえら、本当に出逢ったばかりなの?』と首を傾げるくらいにキラとアスランはまるで昔からずっと一緒の親友のように仲良くなった。
万事におっとりしたキラと、かっちりしたアスラン。ふたりの性格は全く異なるが、それが上手い具合に互いをフォローしあい、互いを向上させる結果となったのだ。キラがアスランの所属する弓道部に入部し、彼の指導のもと、インターハイの団体戦で優勝することになったのも、アスランがずっと断り続けていた生徒会長の座につくことになったのも、互いの存在の賜物だ。
そんなふたりが互いに秘めた想いが通じ合うまでに時間はかからなかった。夏が来るより早く、ふたりは友人から恋人へとその関係を変えた。
時折、すれ違ったり小さな喧嘩をしたりしながらも、ふたりは高校二年生の十二ヶ月を共に過ごしてゆく。しかし…高校三年生への進級を目前にし、アスランがイギリスに留学するという騒ぎになった。それはイギリスを本拠地にして事業を展開しているアスランの父、パトリックの意向によるものだった。一度はそれを拒否したアスラン。しかし、ふたりの交際をアスランの父、パトリックに認めてもらい、ふたりが互いに成長してまた共に居ることができる日まで、たとえ離れて過ごすことになっても頑張ろうと・・・そう言ったのはキラだった。
そういう訳で、アスランは高校卒業と同時にイギリスへ留学し、キラは、ラスティと同じ地元の工科大学へ進学していた。
「アスラン…元気かな」
青い空にすうっと横一文字に伸びる飛行機雲。あの白いラインを辿っていけば、イギリスまで行けるだろうか。
「…でも、今年は僕が…」
キラは、今年の初めにひとつの計画を立てていた。それは、アスランの留学しているイギリスへ旅行に行こうというものだった。もちろん、びっくりさせたかったので彼にはナイショだ。時折、基礎ゼミを担当しているカトー教授から頼まれるバイト代わりの情報解析も、できるだけたくさん引き受け、バイトのシフトも大目に入れた。おかげで、目標額まであと少しだ。長い夏休みの前半にもう少しがんばれば、二週間くらいイギリスで過ごすことも可能だろう。
「…逢いにいくから」
そう言って、キラは青い空へ微笑みかける。この笑顔が、遠い異国の恋人に届きますように、と思いながら。
門扉を開けると同時に、郵便受けのチェックをするのはキラの習慣だ。
夕刊と一緒に入っているダイレクトメールに眉を顰めていると・・・自分宛のエアメイルが交じっていることに気がついた。
異国の住所が記された差出人欄を見なくても分かる。性格をそのまま文字にしたような、かっちりとしてまるで習字のお手本のような文字。
「…アスラン!」
自分の声が喜びに弾んでいることにキラはまだ気づいていない。エアメイルをまるで宝物のように抱きしめると、一刻も早くその中の文面を目にしたくて・・・足早に家の中へと向かった。
「ただいまっ!」
スニーカーを脱ぎ散らかし、慌てて階段を駆け上がる。
「おかえりなさい。…キーラ?」
いつもならば、真っ先にキッチンに顔を出す息子が、一目散に二階の自室へ駆け込んで行く後姿にカリダは声を投げかける。
「どうしたのー?そんなに慌てて。セセシオンのケーキ、買ってあるわよ?」
母が口にしたケーキショップの名前は、キラのお気に入りのお店のひとつだ。ドイツ菓子をベースにしているため、クリーム系は少ないが、バターをたっぷりと織り込んでいながらサクっとした口ざわりのパイや、どっしりとしたタルト。ベルギーチョコをふんだんにつかったガトーショコラなどがとても美味しいのだ。
「うん。後で!」
「あら、そう?」
甘いものには自分以上に目がない息子が、ケーキを後回しにするほどの用事だ。
一体、何事だろうと首を傾げながらカリダはお茶の準備をするためにキッチンへと戻っていった。
「珍しいな。エアメイルなんて」
赤と青のストライプで縁取られた封筒の端にキラは慎重に鋏を入れる。
日頃、アスランとのやりとりはパソコンでのメールがほとんどだ。
いつまでも声を聞きたくてどうしても長電話になってしまうため、国際電話はあまりかけないようにしている。確か、昨日も彼からのメールが届いていた。その時には、エアメイルを送っただなんて、一言も言っていなかったのに。
封筒の中には淡いブルーの薄いオニオンスキンの便箋。取り出すと、カサリという音をたてる。
「…あれ?」
しかし、三つ折にされた便箋の中にはまだ何かが挟まれている。
「何だろう」
キラは便箋を開き、それを取り出す。
「…え…これ…飛行機のチケット!?」
キラは思わず声をあげる。それは、成田からヒースローへの航空券だったのだ。
当然、キラもイギリスへ遊びに行くつもりだったから、それが一体いくらくらいするものなのかは知っている。気軽にプレゼントとしてもらえるような額ではないことも。
「ち…ちょっと…!」
キラは焦る。時々、恋人は自分をびっくりさせようとして、とんでもないプレゼント攻撃をしかけてくることがある。しかし、これは全くの想定外だった。
「もぅ…アスランってば」
『―――この夏は、日本へは帰れそうにない』
この前の電話で、残念そうにそう言っていた彼の言葉を思い出す。イギリスへ留学してから、彼は時折、パトリックの仕事を手伝っているのだと聞いたことがある。
おそらく、その仕事が忙しいのだろう。キラにしてみれば、一年に一度か二度しか逢えない恋人との逢瀬がダメになってしまうのは確かに寂しい。けれど…アスランが頑張っているのに、子供みたいに駄々を捏ねる訳にもいかない。だからからこそ、キラは自分がアスランに逢うためにイギリスを訪れることを決意したのだった。
「先…越されちゃったな」
チケットを弄びながらキラは呟く。
確かに、『じゃあ、この夏は僕がイギリスに遊びに行こうかな』とは冗談交じりに言ったような気がする。しかし、何時から行くとも、まだ何も相談していなかった。彼の邪魔をしたくなかったから、航空券もホテルも全部予約してからアスランには連絡をするつもりだったのだ。キラにアスランが仕事の予定をあわせるのではなく、アスランが空いているにキラが時間をあわせ、たとえ一日だっていい。その日をアスランと…彼が過ごしているイギリスを一緒に見ることができればそれで満足だと思っていた。
... To Be Continued...
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