くれっしぇんど 陸奥睦月&Gravity Free 綺阿がリレー小説でお届けするアスキラパラレル学園シリーズ『学園天国 〜Closer to Heaven〜』。
担当は、キラ→陸奥睦月、アスラン→綺阿で、表紙はwind mill+の朝霧紫月さまが素敵イラストを描いてくださいます。
CEもMSも関係ない、ごく普通の高校生のアスランとキラ(非幼馴染設定)の一年間を歳時記風味にお届けします。
4月からスタートし、春(4〜6月)、夏(7〜9月)、秋(10〜11月)、冬(12〜3月)の4冊発行予定。ちなみに、2巻からはR指定ですので(笑)ご注意くださいね。
キラレボ発行の春号、夏コミ発行の夏号に続く第三段、秋号が10/7のSPARKに登場!!
今回は、10月、11月の2ヶ月をお届けいたします。
2ヶ月分ですが、またもやページ数は100ページ超えとなってしまいました。
おっかしいな・・・?
こちらの表紙も朝霧紫月さんが素敵イラストを描きおろししてくださいますv
いつも、 ありがとうございまーす。
第3巻 〜Melancholic Fall〜 (10/7 SPARK新刊)
A5/FC/P136/¥1100
※虎の穴さんにも書店委託予定。
出逢いの春、名実ともに恋人同士となり、躯を重ねた夏、そして、それに続くのは・・・メランコリックな秋?
順風万帆だったふたりの恋路に、何やら暗雲が・・・??
その台風の目とは一体、誰なのか?
◆10月
なんだか、最近、アスランがよそよそしい。
彼の誕生日のプレゼントを探しにいくその前に、と立ち寄ったいつものケーキ屋。
そこでカガリとラクスと鉢合わせる。いつものようにつまらない口喧嘩をはじめるキラとカガリだったが、アスランは突然「用事が出来た」と帰ってしまう。
気になったキラは、アスランを自宅まで追いかける。
しかし、門のところでキラが目撃したのは、さきほどまでカガリと一緒だった筈のラクスとアスランが親しそうに話す姿だった。
しかも・・・ふたりの会話を耳にしたキラは、大ショックを受ける。
◆11月
高校二年生一番のイベントといえば、京都への修学旅行。
御所を見学中、列を抜け出したカガリの後を追っていたキラは、巨大な黒い穴に落ちてしまう。
意識を取り戻したキラが居たのは、なんと千年前の京都!?
そこで出逢ったのは、カガリにそっくりな篝姫と、ミリアリアにそっくりな彼女つきの女房、美里。ふたりと一緒に元の世界へ帰る手段を探すキラだが、なかなか見つからない。
ある日、自分によく似たキラを身代わりにし、街の市場へと繰り出した篝姫は、ピンチを助けてくれたひとりの青年に一目ぼれする。ところが、その日、左大臣家の一の姫である篝姫に縁談が!しかも相手は、東宮だった。
せめて、初恋の人に想いを伝えたい、と言う篝姫に、キラと美里は協力する。
菊の宴がひらかれた左大臣家。
そこには、宵闇色の髪に翡翠の瞳を持つ青年貴族の姿があった・・・。
(ちょっと、とりかえばや&遥時風味です/笑)
◇冬編は冬コミあたりにお届け予定。
イベント販売は、くれっしぇんど、Gravity Free両方のスペースにて行なう予定です。
虎の穴さまの書店委託&両サイトの自家通販を予定しています。
情報については、両方のサイトにて告知いたしますので、チェックしてくださいね!
>>陸奥睦月 (くれっしぇんど)
URL http://homepage2.nifty.com/placollo/
Mail placollo★yahoo.co.jp
>>綺 阿 (Gravity Free)
URL http://www.est.hi-ho.ne.jp/shiny-g/G-S/
Mail shiny-g★est.hi-ho.ne.jp
※メールアドレスは、★を@に変えてください。
もやもやとした気持ちを抱えたままのキラは丘の上の学園から街に降りてくる。
いつもケーキを食べる店を過ぎたところで、アスランが自転車を止めた。
「アスラン?」
「いや…キラはどこに行きたいんだ?」
「え?なんでそれ僕に聞くの?アスランがほしいものを捜しに行くのに」
アスランの問いかけに心底びっくりした、とキラは自転車を降りてアスランの隣に回った。だがアスランは本気で当惑しているらしく、困った表情を崩さない。
「……アスランのほしいものって何?」
「……」
十月に入ってから聞き続けた質問。それをもう一度アスランに投げかけたが、彼は眉をしかめたまま答えようとしない。
(アスラン…って物欲ないよね、そう言えば)
家がお金持ちだからだろうか。何でも上等なものを持っているのに、本人はあまり物に拘らない。
確かに今乗っているアスランの愛車(しつこいようだけれど自転車)だって、キラがびっくりするほどの高いものだけれど、どうしてそれを選んだのかと問えば、当の本人は『丈夫そうだったから』、とあっさりと言った。別にブランドとかを意識して購入したわけではないらしい。
学校だってもっともっとセレブな人たちが通うような、大学まで完全エスカレーター式の私立に行ってもいいのに、『弓道がしたかったから』とその理由だけで公立の高校を選んだくらいだ。
お坊ちゃまの癖に、そういうところはなんと言うか坊ちゃまらしくないというか…。
(うーん。アスランの欲しそうなものか…)
本当はキラ自身で考えてアスランにプレゼントを渡したかった。でもどう考えても思いつかなくて、悩みに悩んだ結果、どうせならアスランに決めてもらうほうがいいという結論に達したのだ。
自分の時も…欲しいものを貰ったから、それなら同じようにすればいいと安易に考えた。
でもこんなに悩まれるとは、正直キラも思っていなかったから、どうしていいのかキラも悩んでしまう。
「キラ」
「え?」
どうしよう、と悩み始めたキラに、アスランが困ったように声をかけてくる。
何?と顔を上げればとにかく一度休まないかと、キラを気遣うようにそこ、といつもお茶をする駅前のケーキ屋さんを指差していた。
今日はアスランのために来たはずなんだけどな、と思いつつも甘い誘惑にキラは勝てない。結局アスランの言うとおり?ケーキ屋さんに入り込んだキラは、なんだかんだとアスランに奢られていた。
「おかしいなあ…」
確かにもう今月のお小遣いはピンチだったから(何せアスランの誕生日のプレゼントを買うために節約しているから)、奢ってもらえるとありがたい。
でも、そもそも今日の目的は「アスランへのプレゼントを選んでもらうため」だったはずだ。
おかしいなあ、ともう一度呟いたら優雅にブラックコーヒーを飲んでいたアスランが小さく笑っていた。
「何?」
「いや…可愛いなと思って」
小さな声でそんな風に囁いてくるアスランに、キラは何を言うの、と赤くなる顔をとっさに隠した。
ここは家でもなければ、二人きりでもない。周りにはそれと分かる学校の生徒達も多数いるのだ。
お願いだからそういうことは言わないで、と恨みがましく見つめていたら、いきなり肩をぽんと叩かれてキラは文字通り飛び上がってしまった。
「わ…っ!!」
「な、なんだよ、びっくりさせるなよ」
「な、なんだカガリか」
慌てて肩を叩いた人物を振り返れば、そこにはキラの従姉であるカガリが、びっくりした表情で立っていた。
カガリはキラと同じく甘いものが大好きだ。でも女の子なのにさばさばとしていて…女性からも絶大な人気を誇っている。『お姉さまv』と、後輩たちから慕われるカガリはイメージ的になかなかこういう店に入りづらいんだと、いつも悔しそうにキラに語っていた。
だから以前この店が出来たばかりのときも、自分を付き合わせて来たことがあるのだ。まあそれでアスランにカガリと自分の仲を誤解されたというオプションもついたけれど。
だからカガリがキラ抜きでここに来るなんてありえない、とキラはじっとカガリを見つめてしまう。だがキラはカガリの後ろに見知った人物を見つけて、さらに目を丸くしてしまった。
「あれ…?ラクス…?」
「キラ、こんにちは」
お久しぶりですわ、とにこりと綺麗な笑顔を浮かべたのは、学園祭で散々世話になったラクス・クラインだった。
今日も綺麗な声で微笑むラクスは、キラから見ても十分可愛いと思う。…というか、男らしい?カガリと並んでいると、なんだか変な気分になってしまうのは自分が変?だからなのだろうか…?
「カガリ?」
そう言えば、ラクスとカガリは友達だったっけ?と思いながらことの経緯をカガリに求めてみた。するとカガリが嬉しそうにラクスをダシにしてケーキを食べにきたんだと身もふたもないことを言うものだから、キラは慌ててカガリの口を塞いでしまったくらいだ。
いくら友達といえど、そんな直球に言うものじゃないとキラは思う。
だがそんなキラとカガリを見て、ラクスが楽しそうにくすくすと笑っているのを発見して、キラは慌ててカガリから手を離した。
「カガリのせいで、笑われたじゃないか!」
「なんだと?お前がいきなり口を塞ぐから!」
カガリとは昔から喧嘩をしまくった仲だ。成長してこのごろは喧嘩することもなくなったが、昔取った杵柄というか、名残なのか時折こうして互いの不満を爆発させることもある。
そんな二人を見て、ラクスがさらにおかしそうに笑うものだから、顔を付き合わせたキラとカガリは勃発させた喧嘩を大人しくやめてしまった。
これが互いの家ならいくらでも言い合えるけれど…、さすがにこんなところで、しかも歌姫の前で無様な姿を晒すことなんて出来ない。
「キラ」
「え?あ…アスラン」
背後からまたしてもかけられる声。それは先ほどまで楽しく?語らっていたはずの恋人アスランの声だった。
どこか不機嫌も顕なのは、キラに放っておかれたからなのか、それともカガリと仲の良いところを見せたところなのか…。
何となく嫌な予感がしてそろりと振り返れば、やっぱり不機嫌も顕なアスランがいた。
(うわー…どうしよう)
さっきまで結構機嫌が良かったのに、一変して機嫌の悪くなった恋人にキラはどうしようかと真剣に悩んでしまう。
これが二人きりだったりしたら、キスの一つでもしてあげれば(キラは恥かしいけれど)アスランの機嫌は直る。けれどここはたくさんの人がいるカフェで、そして今目の前には従姉のカガリと、超が三つほどつく有名人のラクスもいる。下手なことをしたり、言ったりしたら大変だ、とキラは焦ってしまった。
「あの、アスラン?」
困ったキラはどうにかしてアスランの機嫌を上向かせようとするが、どうして良いのか分からない。
そうしているうちに、アスランがかたんと席を立ってしまった。
「え、アス…!?」
「…洗面所」
小さくキラにだけ聴こえるようにそう言ってアスランは歩いて行ってしまった。
アスランの後姿を呆然と見送ってしまったキラだが、なんだアイツ?というカガリの声でまた我に返った。
「あ、その…お手洗い、だって」
「不機嫌になるほど我慢してたのか〜?」
「カガリっ!!」
いくらなんでもその言い方は、と口の悪いカガリを叱ったキラだが、でもアスランの様子が気になってしまう。
ちらちらとアスランが消えたほうを見つめていたら、何故かラクスにくすりと笑われてしまった。
「ラクス?」
「すみません。その…キラが余りにも可愛いので」
「え、そ、その…?」
面と向かって『可愛い』と、もっと可愛い女の子であるラクスに言われて、キラはどう返答して良いものかと悩んでしまう。
どうしたら良いのだろう、とまた本気で悩み始めたキラの背中を思いっきりばしん、とカガリが叩いてきた。
何するの?と思わずごほごほとむせったキラは、半分涙目でカガリを睨みつけてしまった。そもそもカガリは力が強い。それこそ男の自分より強いのではないかと思うくらい。
時々キラの母と、キラの叔母でありカガリの母親が、この子達性別を間違えたわよね〜と、(けっこう本気で)話していたりするくらいだ。
ごほごほとむせているキラは、本気で恨みがましくカガリを睨みつけるが、カガリはそんなキラの視線を簡単に流している。そしてお前ほっそいよなーと言いながらキラの食べかけのケーキをぱくりと、口に含んでいた。
「あ、それ僕の!!」
慌てるキラに、カガリはあっさりと言った。
「いいだろ、減るものじゃあるまいし」
「減ってるってば!!」
お気に入りのベリーのタルトは、半分以下になっている。
「あー?どうせアイツのおごりだろ?だったら良いじゃんか」
「よくなーい!!」
悪びれもしないカガリに、キラはとうとう堪忍の尾が切れた、といわんばかりに噛み付いた。だがカガリはキラの怒りなど一向に気にする様子もなくからからと笑っている。
(もう…)
せっかくアスランが奢ってくれたケーキ。美味しく食べていたのに、とキラはむくれてしまう。
「それにしても…アイツ長くないか?」
「え?あ、そう言えば」
キラとアスランが座っていた席の真正面に、ラクスと共にちゃっかり座ったカガリがそんなことを言ってくる。
そう言えば遅いなあ、とキラもちらりと時計を確かめようと携帯を見た。
「え?嘘…!?」
ディスプレイにはメールの着信が来ている。しかもそれは先ほどお手洗いへと消えたアスランからのもので…。
何だろう?とキラは慌ててカガリとラクスにちょっとごめんと謝ってからメールを確認した。
その内容は、あまりにもそっけないものだった。日頃、優しいアスランのそんなメールに、キラは思わず眉を顰めてしまう。
「どうした?」
そんなキラの百面相に気付いたのだろう。怪訝そうな顔でカガリが見つめている。
「え…?あ…うん…。ごめん、僕帰るね」
メールを素早く確認したキラは、もう一度ごめんと謝ると席を立った。
急に態度を変え、いそいそと帰り支度を始めたキラをカガリは呼び止めるが、キラはそれに対して『ごめん!』とそれだけを言って、慌てたように店を後にした。従姉妹に構っている余裕など、今のキラにはなかったのだ。
「…何なんだ?あいつ」
荷物を手に持って慌てたように店を駆け出したキラに、カガリは唇を尖らせる。
「さぁ…何か用事でも思い出されたのではありませんか?」
その問いに、おっとりとラクスは答える。
「そっか…まぁいいや。あいつが残していったケーキは私がもらおう」
キラに負けず、甘いものが大好きなカガリは、机にぽつんと残されたままのベリータルトをフォークで切り分けると、ぱくりと飲み込んだ。
* * *
「…なんであいつがこんなところに」
苛々とする心を抱いたまま、アスランは足早に歩いていた。
ゆるやかにウェーヴのかかった桜色の長い髪を揺らし、愛らしい微笑みを浮かべる美少女。
その歌声には、どんなに傷ついた心もたちどころに癒されると言う。
学園のアイドル…いや、自分たちの世代の少年たちには絶大な人気を誇る歌姫、ラクス・クライン。
しかしながら、アスランにとって彼女は厄病神以外の何者でもなかった。
彼女のせいでささくれだった心をどうしてくれよう。そんなことを思いながら歩くアスランは、ずんずんと店を遠ざかっていた。
元はといえばキラと必要以上に仲のよいカガリとのやりとりを見ていて…妬けてしまったのだ。キラと一番近い場所に居るのは自分だと、そう思っている。実際、去年からの友人であるトールや部活も一緒のラスティより、自分がキラと一番近い場所に居ると想う。キラの気持ちを疑う訳でもない。
しかし…カガリだけはキラにとってどうにも特別らしい。
血の繋がった従姉妹同士で、しかも幼い頃からよく互いの家に預けられていたこともあり、まるで姉弟のようだ。(逆だよ!とキラからはつっこまれそうだが)
その親密感が、何気ないところに見え隠れするたびに、狭量だとは想うがつまらないことに嫉妬してしまう。
しかも、今日、偶然ばったり出くわしたのは、カガリだけではなかった。
「大体…なんであいつがカガリと」
ぶつぶつと、アスランは呟く。
確か…四月頃、自分がキラと同じクラスになり、うきうきしていた頃、彼女も『憧れのかっこいいお姉さまと同じクラスになったのですわ!』と手を叩いて喜んでいたような気がする。できることなら、あまり顔をあわせたくない彼女と同じクラスにならなかったのは幸いだと当時は想ったものだったが、カガリと仲よくなったのは大誤算だった。
自分の中で、ラクス+カガリ(嫌)>キラ(好)らしい。
そういえば、あまりに機嫌が急降下したあまり、恋人には短いメールを打ったきりで店においてきてしまった。明日、迎えに行った時に顔をあわせれば「何で急に帰っちゃうのさ!」と怒られるかもしれないが、生憎、今のアスランにはあの場に一緒に居ること自体が限界だった。
「…キラ、悪い」
ふう、とひとつ溜息をつき、アスランは愛車に跨った。
To Be Continued...
物憂げな秋。
恋人の間にも、なんだか嵐が??
続きは本をどうぞ!
夏号に続き、エロロ満載です。苦手な方はご注意を。スミマセン・・・。
>>学園春号 >>学園夏号
© - くれっしぇんど& Gravity Free - 2007