らくらくISO9001講座



口語訳 ISO9001:2008
製造業用

1章〜4章
  4.1 基本的な考え方
  4.2 文書に関すること

青字 は2000年版から変更された部分です    
緑字 はこの口語訳で独自に追加した補足説明です
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改訂 2009.01.11

4章 全体の仕組みに関わること


4.1 基本的な考え方

 全体のまとめ
ISO9001が求めている内容を、端的に言うと次の通りです。
ISOのマネジメントシステム規格は、このように最初に全体の結論を言います)

ISO9001の仕組みを取り入れる会社は、
1)ISO9001と合うよう仕事の仕組み【品質マネジメントシステム】を決めてく
  ださい。【確立】
2)その仕組みを書いた文書を作ってください。【文書化】(ただし必要なものだ
  けで良い)
3)決めた通りに、仕組みを動かしてください。【実施】
4)状況の変化に合わせて、仕組みを改めてください。【維持】
5)仕事がうまく行くように【品質マネジメントシステムの有効性】、常に仕組み
  を見直して改良をしてください。【継続的改善】


 業務の管理の考え方
会社は、次のような考え方で、仕事の仕組みを管理してください。
この考え方は、プロセスアプローチの考え方に基くものです(0.2項も見て下さい)
a)品質に関係する仕事【品質マネジメントシステム】が、どのような業務【プ
  ロセス】の組合せでできているかを、整理してください。
b)その業務【プロセス】がどのように繋がっているかを、整理してください。
  【順序及び相互関係】
c)それぞれの業務【プロセス】がうまく行くように、必要なルールを作ってくだ
  さい。また、それぞれの業務を管理するために必要な判断基準を決めてくださ
  い。
d)それぞれの業務【プロセス】を行うために、必要な人を配置してください。
  また、必要な施設や設備が使えるようにしてください。【資源】
  必要な情報が利用できるようにしてください。【情報】
e)それぞれの業務【プロセス】が、うまく進んでいるか、監視をしてください。
  【監視】
  必要な場合には、試験や測定をしてください。【測定】 
  また、得られたデータを分析してください。【分析】
f)それぞれの業務【プロセス】が、問題なく進むように【計画どおりの結果が得
  られるように】、必要ならば、業務のやりかたを改めてください。
  さらに、今より仕事がうまくゆくように、常に業務のやりかたを見直し、改め
  てください。【継続的改善】
   
それぞれの業務【プロセス】は、ISO9001に合うようにルールを決めて、実施してく
ださい。

 <補足説明1> 業務の種類
   (本項は形式的な記述であり、特に意識する必要はありません)
会社の仕組み【品質マネジメントシステム】には、次の業務【プロセス】が含まれ
ます。
1)会社の経営方針や組織の管理に関わる業務【マネジメント活動】(5章)
2)必要な人を用意し、施設や設備を使えるようにするための業務【資源の提供】
  (6章)
3)製造やサービスを実施するための業務(受注契約、設計・開発・企画、製造、
  品、サービスの実施など)【製品実現】(7章)
4)仕事の進み具合を監視し、仕事の仕組みを改善するための業務【測定、分析及
  び改善】(8章)
  (この項には2008年版で内容の変更がありますが、言いたいことは同じです 
  測定 → 測定、分析及び改善)

 外注している業務も管理してください
会社は、製品の品質に影響する業務を、外注【アウトソース】している場合は、そ
の部分も管理をしてください。
外注した業務のそれぞれについて、どのような方法で、どの程度の厳しさで管理す
るか【管理の方式と程度】を決めてください。
 外注を理由に管理する範囲から外す(審査の対象外とする)ことはできません。
 
 <補足説明2> 外注とは
ここで言っている外注【アウトソース】とは、ISO9001で定める範囲【品質マネジメ
ントシステム】の仕事を、外部(他社や他機関)に依頼して実施させるものです。
自社が外注する業務の中で、どこまでをISO9001で管理をする範囲に含めるかは、自
社で判断して下さい。
 外注には、製造、制作、工事などの主たる業務の外注の他に、設計、運送、倉庫
 検査、計測器の校正、設備のメンテナンスなどを含みます。
 
 <補足説明3> 外注の管理方法
外注した業務についても、顧客との約束を守る責任と法律を守る責任とは、外注の
依頼元にあります。問題が発生した際に「(外注先に対して)適切に指示した」あ
るいは「適切に指導した」と主張しても、その責任を外注先に押し付けることはで
きません。

外注【アウトソース】した業務を管理する方法とその管理の厳しさは、(外注先ご
とに)以下の事情を考慮して決めてください。
a)外注の影響  外注する業務が、製品の品質にどのくらい影響するか。
b)外注の範囲  外注先との間で、その業務の管理について、どのように分担し
         ているか。
c)購買の仕組み 会社の購買管理の仕組み(7.4項)がどうなっているか。
 多くの場合、外注は購買の対象であり、購買の仕組みの中で管理をします。




4.2 文書に関すること

4.2.1 必要な文書

 必要な文書
会社は、以下の文書を用意して下さい。
a)品質方針 
  品質目標
b)品質マニュアル
c)ISO9001が必要と決めている文書と記録
必要な文書は次の6種類です。
文書管理(4.2.3)、記録の管理(4.2.4)、内部監査(8.2.2)、不良品の管
理(8.3)、是正処置(8.5.2)、予防処置(8.5.3)。
必要な記録は21種類です
d)会社が必要と決めた文書と記録
仕組みやルールを決め【計画】、それを実施し、管理するための、どのような
文書や記録が必要かを、自社で判断して、決めて下さい。
文書には規定、図面、計画書、作業指示書、帳票、検査見本などがあります。
 
 <補足説明1> 文書で決めたことの実施
ISO9001が、ルールを文書で定めることを求めている時は、単に文書を作るだけでは
なく、以下のことを含めて言っています。
1)仕事の仕組みを作る。【手順を確立】
2)決めたルールを文書で定める。【文書化】
3)決めたルールの通りに、仕組みを動かす。【実施】
4)必要な場合には、仕組みを修正する。【維持】

ISO9001は、6つの項目について、ルールを文書にするように決めていますが、1つず
つ独立した文書にする必要はありません。いくつかの項目をまとめて文書を作って
も良く、逆に1つの項目をいくつかの文書に分けても構いません。
 独立した文書にせず、品質マニュアルの中に書き込むことでも良い。

  <補足説明2> 文書のくわしさ
文書の中身のくわしさは,会社(組織)の実情に合わせて決めて下さい。特に、次のような事情によ
って、会社ごとに必要なくわしさの程度が違います。
a)会社(組織)の大きさと,仕事の種類
b)仕事の複雑さ,仕事のつながりの複雑さ
c)仕事をする人々の能力

  <補足説明3> 文書の形
ここでいう文書は,どんな媒体を使っていても結構です。紙に文字で書いたものだけでなく,図や写
真によるもの,ビデオ,コンピュータで記憶されたもの,現物のサンプルなども含みます。


4.2.2 品質マニュアル

 品質マニュアルの作成
会社は、自社の仕事の仕組み【品質マネジメントシステム】の全体を示す文書とし
て、品質マニュアルを作ってください【作成】
品質マニュアルは、必要な場合には改訂し、実態と合っているようにしてください
【維持】。

 品質マニュアルの内容
品質マニュアルの内容は、会社の判断により、自由に設定できます。
ただし、少なくとも、以下の内容については、どこかに記してください。
a)この品質マニュアルで定める仕組みを実施する仕事の範囲【品質マネジメント
  システムの適用範囲】
ここで範囲といっているものには、次の3種類があります。
1)対象とする製品
2)対象とする組織(部門、事業所、関連会社など)
3)ISO9001の中で該当する項目
   ISO9001は、正当な理由がある場合だけ、一部の項目を除いて使うことができま
  す(そのことは1.2項に書いてある)。除いた項目がある場合は、その項目名
  と、除いた理由を品質マニュアルに明記してください。
b)ISO9001が必要と決めている文書
6種類  文書管理(4.2.3)、記録の管理(4.2.4)、内部監査(8.2.2)、
不良品の管理(8.3)、是正処置(8.5.2)、予防処置(8.5.3)
  そのルールを、直接「品質マニュアル」に書くか、またはそれが書かれた文書
  名を記してください。
c)品質に関係する仕事【品質マネジメントシステム】が、どのような業務の
  組合せでできていて、それがどのように繋がっているか【プロセスの相互関
  係】を、書いてください。


4.2.3 文書の管理

  文書を管理してください。
ここで管理する文書は、4.2.1でリストアップしたもので、品質マニュアル、規定、
図面、計画書、作業指示書、帳票、検査見本などです。
  ただし、記録は次の4.2.4項で管理するので、ここでは除きます。

  文書の管理のルールを決めてください。このルールは、文書で定めてください。
  このルールの中で、以下の点について、決めてください。

 a)文書の承認
文書ごとに責任者を決めて、その文書を承認してください。
承認をする前に(適当な担当者が)内容が適切かどうか確かめてください(審査・
レビュー)。
内容を確かめて、承認した文書だけが、効力をもちます(仕事で使ってよい)。
 b)文書の改訂
発行して使用している文書について、その内容が適切かどうか、適当なタイミング
で点検【レビュー】をしてください。
必要に応じて、文書を改訂してください。この時も責任者が承認してください。
 c)改訂が分かるようにする
文書を改訂した時は、必要な範囲で、文書のどこが変わったかが分かるようにして
ください。改訂履歴、改訂通知、あるいは文書内に書き込むなどの方法があります
文書には、改訂日あるいは改訂番号を記入して、新旧の文書の見分けがつくように
してください。
 d)文書の配付
それぞれの文書を使う人が、最新版の文書を使えるように、文書を配置(配付)し
てください。特別な事情で、旧版を使うように指定される時は、指定されている版
が使えるようにしてください。
ただし、関係者全員に配付することを求めているのではありません。業務に差し支
えない範囲で、見ることができる場所にあること。コンピューターの端末で見られ
ることでも良い。
 e)文書が読めるように保つ
文書が汚れたり、退色したり、破損して読めなくならないように管理してくださ
い。もし、読めなくなりそうだったら、再印刷するなどして取り替えてください。
 f)外部で作られた文書
自社以外で作成された文書の中で、自社の仕事のために必要なものがどれか、決め
てください。【外部文書】
 外部文書には、法律、JIS規格、業界規格、共通仕様書、顧客の購入仕様書、顧客
 図面、顧客から支給した作業基準書などがあります。
 最新版(あるいは適切な版)の管理が必要なものが対象です。
ここで決めた外部文書も、配付をする時は、最新版(あるいは適切な版)の管理を
してください。
 g)廃止した文書の取扱い
旧版の文書【廃止文書】は、間違って使用しないように、廃棄するか、別の場所に
移動するか、あるいは目印をするなどの方法で管理をしてください。
旧版の文書を保存する場合は(例え別の場所に移動したとしても)それが旧版であ
ることが分かるように、文書自体に目印をしてください。


4.2.4 記録の管理

 記録の役割
記録は、製品の品質が保たれ、関連する業務がルール通りに行われていること【要
求事項への適合】の証拠です。また、品質に関係する会社の仕組み【品質マネジメ
ントシステム】がうまく機能して、結果に結びついていること【効果的な運用】を
示す証拠です。したがって、適切に保管してください。
(この項には2008年版で文章の変更がありますが、意味は変わりません)

 記録の管理方法
会社は、記録の管理について、ルールを決めてください。
このルールは文書にしてください。
ルールの中で、以下のことを決めてください。
(この項には2008年版で文章の変更がありますが、意味は変わりません)
 1)表示
何の記録かが、容易にわかるように、記録自身やそのファイルへの表示(表題、対
象の製品、日付、番号など)の方法を決めてください。
 2)保管
それぞれの記録について保管方法(責任者、場所、記録媒体など)を決めてくださ
い。
 3)保護
記録を保護するためのルールを決めてください。
記録の性格や重要さに応じて、次のような点について決めてください
 ・記録が劣化したり、傷つかないように保管するためのルール。
 ・記録が紛失したり、事故で消失しないように保護するためのルール。
 ・記録を改ざんされないためのルール。
 ・電子媒体の記録の場合は、改ざん防止、バックアップ、ウイルス対策、流出
  防止対策などのルール。
 4)検索
記録が、必要な時に探し出せるように、整理して保管するためのルールを決めてく
ださい。
 5)保管期間
記録ごとの保管期間を決めてください。
 6)廃棄方法
保管期間を過ぎた記録を、廃棄するためのルールを決めてください。

 記録の管理の考え方
記録は、読みやすく作ってください。
記録には、その種類、対象の製品や業務、日付けなどが分かるように、表示をして
ください。【識別可能】
記録は、必要な時に、探し出せるように整理してください。【検索可能】
(この項には2008年版で記述の位置の変更があります)



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