らくらくISO9001講座



口語訳 ISO9001:2008
製造業用

まえがき・序文
序文
1章 ISO9001の使い方
2章 引用する規格
3章 言葉の定義

青字 は2000年版から変更された部分です    
緑字 はこの口語訳で独自に追加した補足説明です
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改定 2009.01.16

序 文
 

0.1 ISO9001の原則

 経営戦略として
ISO9001は経営の考え方について書いてあります。ISO9001を導入するかどうかは、会
社や組織の「経営戦略」として決めるべきです。


 同じ仕組みを求めているのではない
どのような仕組み【品質マネジメントシステム】を作るかは、会社をとりまく、次
のような状況によって異なるものとなります。
a)会社の置かれた経営環境
  経営環境の変化
  会社を取り巻くリスク
b)顧客や社会からの要求
c)会社の目標
d)製品やサービスの種類
e)仕事のやり方
f)会社の大きさ
  会社の組織の形(階層、部門の分け方、事業所の数など)
ISO9001は全ての会社に同じ仕組みで仕事をしてもらおうとか、同じ文書を作っても
らおうとは考えていません。ISO9001が決めるのは、大まかな原則だけで、具体的な
方法は各々の会社や組織で考えてください。
 
 製品について決めるのではない
ISO9001は、製品の具体的な基準について決めているのではありません。個々の製品
の基準は決まっているという前提で、それをうまく管理する方法について定めてい
ます。
 
 用途(使う人)
ISO9001を使うことによって、会社が、顧客と約束した通りの製品を作る実力があるか,また法令で
定められたことを実施できるか、自らルールを決めて実行してゆく力があるか、が分かります。
そのことを、
・会社や組織が、自分の実力を評価するために使えます
・顧客や外部の関係者が、会社や組織の実力を評価するために使えます
・審査登録機関が、会社や組織の実力を評価するために使えます
(この項には2008年版で用語の変更がありますが、意味は変わりません
  規制要求事項 → 法令・規制要求事項)


 品質マネジメントシステムの原則(8原則)
このISO9001は、2000年版を作るの際にまとめられた8項目の原則を考慮して作られ
ています【品質マネジメントシステムの原則】。この8項目の説明は、ISO9000
ISO9004にあります。
    8項目とは次の通りです(JIS訳文のまま)。
     a)顧客重視
     b)リーダーシップ
     c)人々の参画
     d)プロセスアプローチ
     e)マネジメントへのシステムアプローチ
     f)継続的改善
     g)意思決定の事実に基づくアプローチ
     h)供給者との互助関係

 
0.2 プロセスアプローチ
 
   ISO9001の仕組みを有効に利用するために、「プロセスアプローチ」の考え方を取り入
  れることを薦めます。

 プロセスとは
会社や組織の活動は、いくつもの業務【プロセス】が集まって出来ており、この一
つ一つの業務を管理しなければなりません(ここで言っている業務は、個々の作業
を指すことも、ひとかたかたまりの仕事を指すこともあります)。それぞれの業務
について見れば、
・インプット (部品、原料、中間製品、必要な情報)
・アウトプット(仕事の成果)
があり、ある業務のアウトプットが、次の工程のインプットになるというように、
業務が繋がってゆきます。


 プロセスアプローチとは
プロセスアプローチとは次のような方法(考え方)です
・仕事を区分し、いくつもの業務【プロセス】に分ける
・それらの業務【プロセス】の繋がり方【相互関係】を理解する
・これを踏まえて一つ一つの業務【プロセス】を管理する
繋がっている業務の全体を一つのシステムとして管理する
・その結果として、仕事の成果を上げる

 プロセスアプローチの利点
プロセスアプローチを取り入れて管理すると、日常の業務を進める中で、自然に、
全体の仕事の流れや、各々の業務【プロセス】の間の繋がりが管理できます。

 実施すべき点
プロセスアプローチの効果を出すためには、以下の点をきちんとやって下さい。
a)決まっているルールや約束【要求事項】を把握して、その通りに実施する
b)業務【プロセス】ごとに、この仕事にどのような役割【付加価値】があるかを
  意識する。
c)各々の業務【プロセス】を着実に行い、良い結果を出す
d)仕事のやり方を改良する。これは、感覚的に進めるのではなくて、各々の業務
  をきちんと評価した結果に基づいて行う

 図1の説明(図は省略)
図1は、ISO9001に定める経営の仕組み【品質マネジメントシステム】を表現したも
のです。この中では、ISO9001の4章から8章に書いた内容を「プロセスのつながり」
として図示しています。

この図の左端には「顧客」が大きく書かれています。顧客の要望が、この仕組みの
最初の段階で、大きな意味を持っていることを表しています。図の右端も「顧客」
です。顧客の期待に答えること【顧客満足】がISO9001の目的ですので、それにどの
ぐらい答えられたかを調べなければ、仕組みが回りません。 
ただし、図1に表したのは、大きな全体の仕組みだけです。実際には、この中にた
くさんの小さな業務【プロセス】があり、それぞれについて計画、実行、評価が行
われているのです。

 <補足説明> PDCAの考え方
今までの品質管理の中で強調されてきたPDCAの考え方(仕事の整理の仕方)は、ISO
9001に取り組む上でも役に立ちます。
PDCAとは、次のような内容です
P(Plan)仕事の目標と、実施する方法【プロセス】を決める
 (これは、顧客との約束と、組織の方針に基づく)
D(Do)決めた方法【プロセス】を実行する
C(Check)仕事の方法【プロセス】と、製品の品質を評価する
 (組織の方針、仕事の目標、製品についての約束が、判断の基準となる)
A(Act)仕事【プロセス】の結果を良くしてゆくための処置を行う


0.3 ISO9004について
 
  ISO9004は、ISO9001と合わせて使えるように作られています。この2つを合わせて使
  えば、より良い効果が得られます。ただし、片方ずつ使うこともできます。
 
 ISO9001の性格
ISO9001は、会社や組織の仕事の仕組み【品質マネジメントシステム】を判定す
るための基準です。次の場合の基準として使うことが出来ます
・自社(組織)の仕組みを判定するため
・審査登録機関が審査するため、
・顧客との契約の条件
ISO9001は、顧客との約束を果たす上で、役に立つ仕事の仕組みについて書かれてい
ます。
 
 ISO9004の性格
ISO9004は、2008年12月の時点で改訂の作業をしています。
ISO9004の新しい版は、世の中が激しく複雑に変化する中で、会社が良い成果を出し続けるため
の、手引きであり、経営者に使ってもらうことを想定しています。

ISO9004は、ISO9001より広く目標を設定した規格です。というのは、ISO9001が顧客の期待に答
えること(顧客の満足)を目指しているに対し、ISO9004はすべての利害関係者(顧客、株主、従業
員、取引先、行政、地域)の期待に答え【ニーズ及び期待】、納得してもらうこと【満足】を目指して
いるからです。
そのために、実態として成果を挙げ、目標が達成すること【パフォーマンス】が必要です。またそれ
は、計画的な活動に裏付けられたもので、継続できなければいけません。【体系的かつ継続的な
改善】

ただし、ISO9004は(ISO9001とは異なり)次のような用途で使うことは想定していません。
・第3者期間の認証の基準として使う
・法律で義務づける
・取引上の条件(契約)とする


0.4 他の経営システムとの組み合わせ
 
 ISO14001との関係
このISO9001は、ISO14001とを合わせて使う際に、矛盾がないように作っています。
添付資料Aに、ISO9001ISO14001の条項の対応を、表にしてあります。
 
 他の経営の仕組みとの組み合わせ
ISO9001の中では、品質以外の経営の仕組み(環境に関わる仕組み、労働の安全に関
わる仕組み、財務に関わる仕組み、リスクマネジメントなど)について触れていま
せん。
しかし、実際の会社の活動の中では、品質の仕組みと他の仕組みが組合わせ、一つ
の経営の仕組みとしてまとめて動かします。そこで、ISO9001は他の仕組みと合わせ
やすいように考えて作りました。
会社がISO9001に従った品質の仕組みを作る際に、既に動いている他の仕組みと共通
する部分があれば、それを利用することも可能です。
 



1章 ISO9001の使い方

 
1.1 ISO9001導入の目的
ISO9001を取り入れると、次の効果があります。このような目的を持った会社や組織
が使って下さい。

 a)会社や組織の実力を証明できます
ISO9001に従っていることは、次の証明となります
・常に顧客と約束した通りの製品を、届けられます
・常に法律上の決まりに従った製品を、届けられます
(この項には2008年版で用語の変更がありますが、意味は変わりません
  規制要求事項 → 法令・規制要求事項)

 b)顧客の期待に答えます【顧客満足の向上】
次のことを実行して、顧客の期待に答えます。
ISO9001で決めた仕事の仕組み【品質マネジメントシステム】をうまく動かし、良
 い結果に結びつけます
・常に仕事のやり方を改良します
・顧客との約束を守ります
・法律上の決まりに従います
(この項には2008年版で用語の変更がありますが、意味は変わりません
  規制要求事項 → 法令・規制要求事項)

 <補足説明1> 製品の定義
ISO9001でいう製品には、次のものがあります。
1)最終製品
2)全ての購入品(原材料、資材、部品)及び中間製品
ただし、不要の副産物や廃棄物【意図しない製品】は含みません。ISO14001ではこ
れらを含むため、注意事項として書いています)

 <補足説明2> 法的要求事項の用語の説明
ISO9001:2008の「法令・規制要求事項」と、ISO14001に出てくる「法的要求事項」は、同じ意味で
す。(口語訳にはこれらの単語は出てきません)
 

 
1.2 ISO9001を使える会社

 どんな会社でも使える
ISO9001は、あらゆる会社や組織で使えるように作ってあります。ISO9001はどのよう
な業種、組織の形、組織の大きさ、取扱う製品(またはサービス)であっても使え
ます。
 
 適用除外
会社によっては、ISO9001に書かれている項目【プロセス】の一部が全く当てはまら
ないことがあるかもしれません。例えば、設計・開発をやっていない場合や測定機
器を全く使わない場合などです。
その場合は、当てはまらない項目を除いてISO9001を使って下さい【適用除外】。除
いていても、ISO9001に合っているものと認めます。
 
 適用除外の条件
ただし、除いて良いのは7章(製品に関する業務)の中の項目だけです。4〜6章
及び8章の項目を除いた場合は、ISO9001に合っているとは認めません。
また、除いて良いのは、本当にその項目に当てはまる仕事がない場合、または製品
の品質(顧客との約束、法律上の決まり)に全く関係ない場合だけです。品質に影
響する項目を除いた場合は、ISO9001に合っているとは認めません。
(この項には2008年版で用語の変更がありますが、意味は変わりません
  規制要求事項 → 法令・規制要求事項)



2章 引用する規格

 
ISO9001は次の3章で、ISO9000:2005(JIS Q 9000:2006)の規格の中の「3.言葉の定
義」を使用することを述べています。この「3.言葉の定義」の部分も、ISO9001
含まれるものと考えて下さい。
ただし、ISO9000:2005が改訂された場合でも、対象はあくまで2005年版であって、
改訂版を使うことにはなりませんので注意して下さい。
(この項には規格の年号の他にも、文章の変更がありますが、意味は変わりません)
 



3章 用語の定義

 
ISO9001で使う言葉の定義は、ISO9000の「3.言葉の定義」に従います。

ISO9001で「製品」と言う場合には、「サービス」(無形の製品)のことも含めて言っています。



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