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当時は、どこへ行くにも原チャリ(スクーター)を使っていた。
「大体、横浜から池袋まで原チャリで行くなよ」とお思いでしょうが、
池袋どころか、上野に行くのも原チャリってくらいに愛用していた。
あの、車体の軽さと扱いやすさ、それでいて燃費のかからない事この上なし

・・・HONDAのメットイン・タクト・・・

そこには故本田宗一郎のパイオニア精神と、バイクへの惜しみない愛情が結晶となって

・・・そんな事は事故とは関係ない。

とにかく、今はYAMAHAビラーゴ250CCに載っているが、時折、原チャリに乗りたくなる
わたくしであった。ビラーゴ(アメリカン・タイプなので大きめ)に乗るようになって
改めて気が付いたが、慢性的な渋滞が続く下(高速じゃない)の道を走る時には、
夜中でもない限り、原チャリの方がよっぽど速い(しょっちゅう抜かれる)。
エンジンが元気なら70キロは軽く出る。しかし、それでいて車体の安定度は非常に悪い

・・・危険だ・・・

この事故はまさにそれを実証したと言えるんではないだろうか?

帰り際に雨が降り出して、しかもどんどん激しくなりそうな気配。
やむのを待つ状況でもなかったので、やむを得ずに出発した。
案の定、どんどん雨足は強まり、ちょっと前も見づらいくらいだ。
早く帰りたい一心で、ひたすらアクセルをまわしていた。
原チャリというのは、車のドライバーにとっては

“遅くて、チョロチョロと邪魔な存在”

だと思われている。

流れている(渋滞していない)環八ならなおさらだ。

御存知のとおり環八には本線と側道に分かれるバイパスが次々と現れる。
本来なら、原チャリは側道に入らなければならない(例外もあったかな?)
しかし面倒くさいのでなんとか本線に入り込んで走るのがよくある走り方だ。

そう、あの日もそうやって走っていた・・・

右のミラーに目をやるとタクシーが映っている。

経験上、一般車に比べてタクシーというのは必要以上にあおってくる傾向にある。
・・・予想通り、ピタリと後ろについている。

-------(さっさと抜かさせろ)-------

アンテナ3本分のメッセージが伝わってくる。

-------(ちょっと待ってくれ。
こっちだって70キロ以上も出してるんだぞ。
あんたそりゃ危なすぎるぜ)-------


こちらのメッセージは圏外のようだ。

--------(くそー、腹立つなー。まったくタクシーってやつは・・・
でも客を乗せてる時はわざと制限速度で走ったりするんだから、
空車なんだろうな。
でも空車だったら客を探さなきゃならないんだから
もっとゆっくり走るはずだよな。
あっ、分かった。
たぶん車庫に帰るんだな。だからあんなに急いでんだ。
それともただストレスたまってるだけかな?)-----------


タクシーはさらにどんどん近付いてくる。もうほとんど並走状態になりかけている。

----------(うわっ、近っ!ちっ、近っ!)-------------

と、折からの雨でバイザーが曇りがちで視界が不良だったところに

縦に並んだ2つのランプが現れた

----------(・・・マズイ。分離帯だ!
なんとしても本線に戻らねば!!)-------------


あっという間にランプは近付いてくる。

すごい迫力だ。

----------(とっ、とりあえずもう一度後ろを・・・
・・・かっ、確認して・・・)-------------


ズザーーーーーガガガッーーー#!$
----%ーーー?><?
〜ーーーッッッッッ?!?!?!?!


・・・気が付くと自分の身体が路上を滑っている・・・

あんなにピタリとくっついていたタクシーはきれいに僕をよけていったらしい

・・・身体は滑っている・・・

・・・止まらない・・・

-------(「満員電車で貧血になって倒れたら、
きれいに人型にスペースが空いた」
って高校の先生が言ってたなぁ)---------


・・・滑りつづけている・・・

・・・止まらない・・・

--------(あら?止まんないぞ。
・・・ダメだこりゃ・・・
あきらめるか?)---------


・・・止まった・・・

雨だったから15mくらいは滑ったんじゃないだろうか。

原チャリは本線上、僕の身体は分離帯の直前まで滑っていた。

路上に大の字になりながら、ふと我にかえると

後方にトラックらしきヘッドライトが・・・。

----------(あれ?なんかまたヤバイぞ)------------

と、ヘッドライト越しに人影が見えた。

僕の後方を走っていたらしいバイクのお兄さんが停車して
トラックに危険を知らせてくれている。
お兄さんは僕の原チャリを横へどかしてから、
僕を助け起こしてくれた

お兄さん「大丈夫?」

「はい・・・。あれ、僕どうなったんですかね?」

お兄さん「急にケツから滑って転んでた。ケガない?」

「たぶん・・・。」

と、言っても全身が“ビタン”と叩き付けられて、
しびれていたのでケガしたかどうかがよくわからない。

とりあえず、ヘルメットに続いてグローブをはずしてみると・・・

-------(うっ!・・・指が・・・
・・・折れてる・・・・??)----------


右手の中指の爪が真横に割れて指先がプランプランになっている。
第一関節の手前にもう一つ関節があるような状態だ。

お兄さん「とにかく交番行こうか」

そう、偶然にも事故現場のはす向かいには交番があったのだ。

お兄さんは僕の前を小走りで交番へ向かっている

・・・・・・小走りで・・・・・・

・・・・・・速い・・・・・・・・

・・・・追いつけない・・・・・

転倒直後の身体ではとても追いつけない。

いきなり走ったのでちょっと貧血気味になって交番の手前でへたりこんでしまった。

お兄さんが交番で事情を話して、座り込んでいる僕の所までお巡りさんを連れて来た。

若いお巡りさん「どーしたー?」

「指が・・・」

若いお巡りさん「じゃなくって事故の状況は?」

「タクシーにあおられて・・・指が・・・」

若いお巡りさん「とりあえず交番まで歩こうか」

知らぬ間にお兄さんはいなくなっている。

交番に入ると、もう一人ベテランのお巡りさんがいる。

事情を説明すると、単独事故だとわかったお巡りさん達は現場検証をするでもなく、
むしろなごみムードだ。

「指が・・・」

ベテランのお巡りさん「いやー、横浜まで帰んの?ひゃー、遠いねー!」

「いや、血も出てるし・・・」

若いお巡りさん「しっかしスクーターってのは丈夫だねー。
ちゃんとエンジンかかるよー」


なんか僕の話をあまり聞いてない。二人ともそれぞれ勝手にしゃべっている。

指からは血がタラタラとしたたっている。

「とにかく手を洗ってもいいですか?」

ベテランお巡りさん「うい、奥で洗いなー」

手を洗う僕。

---------(うっ!これは痛い)---------

手を洗う僕。

----------(でも頑張って帰んなきゃな)---------

手を洗う僕。

----------(すぐ病院行かなくても平気なのかな?)----------

かたわらのタオルに手をやる僕

お巡りさん×2「ちょっ、ちょっ、ちょっ、
それで拭くなっ!!!」




お兄さん・・・ありがとう。

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