3月11日

絵を本格的に始めた20歳頃、私にとって大きなハードルだったのは、(技法の習得などよりも)柔軟な感性や思考を身につける、ということでした。

私は頭が硬く、その反映として絵も硬かったのです。(今でも硬いです。それゆえ日々、柔軟な思考を維持・発展できるよう精進しているつもりです。)

それは、五感で感じとる外界の世界を“言葉”で決めつけ、分かりやすい鋳型に押し込めて認知しなければ不安がぬぐえなかったからだと思います。

“言葉”という道具の限界を知らず、「理屈(筋道)ですべての現象は説明可能」と思い込み、言葉にならないものは認知できない状態でした。

しかも、自分で勝手に組み立てた道筋(モノの捉え方)に固執し、同じ現象でも異なる言葉を用いて異なる視点からモノを観ると異なる側面をみせる、

ということ(世界の多面性)に気がついていませんでした。 こうした一方的で狭いモノの観方しかできなかったので、絵が硬くなるのはいわば当然でした。

 

「柔軟な感性や思考」は、言葉の限界を理解しつつ用い(過信しない)、自分の観方に固執せずに、多面的な視点と価値観をイメージしながら、

対象を捉えようとすることを通して、初めて可能になると思います。そのためには、己と周りを冷静に観察する言語能力と謙虚な姿勢が必要です。

また、他者の作品や本・意見などを見聞きすることを通して異なる視点・価値観を学び、“世界”を豊かに感じとって自己に反映する必要があります。

 

このことが理解できないと、一方的に、自分の思い込みだけを頼りに強情に(周囲の共感の有無など無関係に)自分の主張を振り回すことしかできません。

現在のこの国の政府首脳陣や官僚の外交政策などをみていると、あまりに柔軟性に欠ける人ばかり勢揃いしていてうんざりしています。