〜印象に残っている文章〜
■排除の現象学■ 赤坂 憲雄 著
第一章から抜粋の抜粋
体系の内部から見れば、さまざまな差異しか存在しない。
逆に外部からは、同一性しか存在しない。
内部からは同一性が見えないし、外からは差異が見えない。
・・・この体系の解明のためには、内部からと外部からの両方の見方の融合を
土台にしなければならない。(ジラール「暴力と聖なるもの」)
第五章から抜粋
偏見とはむしろ、異質なものに遭遇したとき、対象との差異を自己との関わりにおいて
鮮明に把握しようとつとめることなく、旧来のカテゴリーの鋳型に封じ込めようとするか、
あるいは、関係の構築自体を断念して忌避しようという心理的な硬さのゆえに他ならない。
(略)
心理的な硬さとは、あらゆる事象が孕んでいる曖昧性や多義性をそのままに引きうけ、
そこに生じる苦痛や不安に耐えていく意思の欠如した生のありようである。
このような心理的に硬い人々にあっては、自己および世界についての
明確で理路整然としたイメージに適合するもの以外は、現実として許容されず排斥されてしまう。
新しい事象や経験は、あらかじめ存在する首尾一貫した定型としての価値規範を
ゆいいつの尺度としてはかられ、吸収か排除かが決定される。
自己および世界にかんするイメージは凍結され、純粋培養的に、
カテゴリカルな図式へと身を細らせていく。