〜印象に残っている文章〜
■現代思想の冒険■ 竹田青嗣 著
「ポスト構造主義の思想」から抜粋
人間は、じつはある意味では言葉によって捉えられた形でしか〈現実〉というものを把握していない。
〈客観〉とか理念とかいう言葉は、
捉えられ決定されたものとしての〈現実〉を意味しているのである。
だが、わたしたちにとって世界は、どれほどそれを言葉で限定しようと、
決して捉え尽せず、常に予断を許さない新しい相を持って現れてくるもの、
という性格を失うことなく持っている。
そしてわたしたちは、まさしくそういった世界の性格を〈現実〉と呼んでいるのではないだろうか。
〈世界〉(対象)は、人間がそれに向き合う一定の態度(=観点)に応じて、
つねに言葉によって限定されるし、言葉はその限定をいくらでも増やしていくことができる。
しかし、どれほど観点を複雑にし、遠望的なものにしても、
〈世界〉は絶えず人間にとって新しい相で現れ出てくるという性格を決して失わない。
(つまり分析し尽くせない)
それが〈世界〉とそれに向き合う人間との原理的な関係なのである。