らくらくISO9001講座

口語訳 ISO22000:2005
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宇野 通 編

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7章 食品安全を保つ仕組みとその実行(1)

7.1 7章のまとめ
7.2 衛生的な環境作り【前提条件プログラム PRP】
7.3 ハザードの分析のための情報の整理
  7.3.1 関連情報の収集
  7.3.2 食品安全チームを定める
  7.3.3 製品や原材料に関する情報をまとめる
  7.3.4 想定している食べ方・使い方【意図した用途】
  7.3.5 フローダイアグラム(調理や取扱いのステップ)

改訂 2010.08.23



 7章 食品安全を保つ仕組みとその実行

 7.1 7章のまとめ
◆会社(組織)は、食品の安全を確保するための仕組み【計画】を決めて下さい【構築】。
  ・決めた仕組みを実行して下さい【運用】
  ・また、必要があれば仕組み【活動】を修正して下さい【変更】
  ・実態として安全が保たれるように【有効性】、必要な処置を行なってください

◆食品の安全を確保するための仕組みには、次のものを含みます
  ・衛生的な環境作り【PRP】
  ・衛生管理状態の監視【OPRP】
  ・重要なポイントの徹底管理をする仕組み【HACCPプラン】


 7.2 衛生的な環境作り【前提条件プログラム PRP】 
7.2.1 衛生的な環境作り【PRP】の目的


◆会社(組織)は、食品安全の基本(前提条件)である、衛生的な環境作り【PRP】に取組んで下さい。
  ・実施する内容や、守るべきルールを決めて下さい【確立】 
  ・決めた通りに実行して下さい【実施】 
  ・状況が変わったら、実施方法やルールを変更して管理された状態を保って下さい【維持】

衛生的な環境作り【PRP】の目的は、次の通りです。
 a)事故の原因となる危険なもの【食品安全ハザード】が食品に混ざらないように、作業場所を清潔
   にします。
 b)事故の原因となる危険なもの【食品安全ハザード】が混入【汚染】しないように食品を取扱い
   ます。管理しようとする汚染は、次のものです
・生物学的汚染(有害な微生物による汚染)
・化学的汚染(有害な化学物質による汚染)
・物理的汚染(危険な異物の混入)
   交差汚染(異なる種類の食品、それらを扱った器具、異なる仕事をしている作業者などの接触に
   よる汚染の広がり)にも注意して、管理します。
 c)製品に含まれ、あるいは作業場所にある、微生物や化学物質【食品安全ハザード】の量(全くゼロ
   にはできないもの)が、安全な範囲に保たれるように管理します。
 
7.2.2 衛生的な環境作り【PRP】で決めること


衛生的な環境作り【PRP】では、次のように考えて下さい。
 a)会社(組織)が必要と考えている安全のレベルを守るために、適切な管理レベルになっていること
   (必要な管理が実施されていること。ただし過剰にする必要はない)。
 b)生産量、仕事の種類、から見て適切な管理レベルになっていること
   食品の種類(性質、危険度)から見て適切な管理レベルになっていること
 c)原料資材の入荷から出荷まで、関係する全ての業務を管理すること
   次の場合があります
・工場全体に適用する場合
・特定の製品(その製品に関係する全ての業務)に適用する場合
・一部の生産系列のみ(その生産系列に属する全ての業務)に適用する場合
 d)衛生的な環境作り【PRP】で実施する内容は、食品安全チームが承認する

◆会社(組織)は、衛生的な環境作り【PRP】に関わる、法令上の決め事にどんなものがあるか、整理
  しておいて下さい。
 
7.2.3 衛生的な環境作り【PRP】で決める項目


◆衛生的な環境作り【PRP】で考慮しなければいけない決まり
  衛生的な環境作り【PRP】で実施する内容を決める際には、様々な決まりやガイドラインを確認して、
  必要なものを取り入れて下さい。確認すべき決まりやガイドラインには、例えば次のようなものがあり
  ます。
1)法令上の決まり
2)顧客との約束
3)行政や業界が作成した指針
4)Codex委員会が定めた原則やガイドライン(附属書Cにそのリストがある)
5)公的な規格(ISO規格、JIS・JASなどの各国の規格、業界の規格)
 
◆衛生的な環境作り【PRP】の内容
 衛生的な環境作り【PRP】のために決めなければいけない項目は次の通りです。
 a)建物の構造と配置
   使用する設備の構造と配置
 b)作業場所の配置
   更衣室、休憩室、洗面所、トイレなど【従業員施設】の配置
 c)ガス、圧縮空気、水、スチーム、氷などのユーティリティの、供給源や供給設備の管理方法
 d)廃棄物、排水の処理の仕方
 e)適切な設備
   清掃、洗浄、修理、整備、点検【保守及び予防保全】のしやすい設備を使用すること
 f)食品や資材の、保管、移動、輸送の方法
@ 原料・材料
A 製品
B 化学薬品(洗浄剤など)
C 包装材料
D ガス、圧縮空気、水、スチーム、氷などのユーティリティ
E 廃棄物・排水
 g)交差汚染(異なる種類の食品、それらを扱った器具、異なる仕事をしている作業者などの接触によ
   る汚染の広がり)を防止するためのルール
 h)施設の清掃や、設備や道具の洗浄の方法。
   施設や設備の消毒、道具や食材の殺菌の方法。
 i)鼠、昆虫などの防除の方法【ペストコントロール】
 j)作業者の衛生管理のルール
 k)その他
【記録】
◆衛生的な環境作り【PRP】の結果を確認する【検証】
 1)衛生的な環境作り【PRP】が実行され、効果が上っていることを確認【検証】して下さい(詳しくは
   7.8で決めます)。
 2)確認の結果、問題があったら、衛生的な環境作り【PRP】で実施する内容を変更して下さい(詳し
   くは7.7で決めます)
 3)検証の結果を記録して下さい。変更した項目があったら記録して下さい
【文書】
◆衛生的な環境作り【PRP】を文書に定める
 衛生的な環境作り【PRP】で決めた内容は、できる限り文書にして、内容が分かるようにして下さい。


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 7.3 ハザードの分析のための情報の整理
7.3.1 関連情報の収集
【文書】【記録】

◆食品に含まれるハザードの分析(事故の原因となる危険なものの調査)をする際に、必要となる情報
  を集めて下さい【収集】。
  ・集めなければならない情報の内容を7.3.3〜7.3.5に定めています。
  ・集めた情報は全て、文書または記録として保管して下さい【文書化】
  ・問題があったら修正して下さい【維持】
  ・情報の内容が古くなったものは、新しい情報に取り替えて下さい【更新】

◆記録に該当するもものは、記録の管理のルールに従って保管して下さい


【HACCP手順1】 専門家チームの編成 
7.3.2 食品安全チームを定める


◆食品安全チームとして、固定したメンバーを決めて下さい【指名】

◆食品安全チームは、食品の安全管理のために、必要な各分野の知識や経験を持った人が含まれる
  ように、メンバーを構成して下さい。
  ここでいう必要な知識や経験とは
@ 製品に関する知識や経験
A 製造工程(またはサービス)に関する知識や経験
B 設備や器具に関する知識や経験
C 事故の原因となるもの【ハザード・危害】(微生物・化学物質・異物)に関する知識や経験
D その他の必要な知識や経験

◆食品安全チーム(各メンバーあるいはチーム全体)が知識や経験を持っていることを証明する記録を
  保管して下さい。ここでいう記録には、教育や訓練の記録、資格の証明、業務経歴の記録などがあり
  ます(要員の能力の管理については6.2.2項の参照して下さい)。


【HACCP手順2】 製品の記述 
 
 7.3.3 製品や原材料に関する情報をまとめる
 
7.3.3.1 原材料及び食品と接触する資材
【文書】

◆製品に使用する原材料、そのほか食品と接触する資材(包装資材、付属品など)の各々について、
 情報を整理し、その結果を文書にまとめてください

7.4で行うハザード分析(事故の原因となるものの調査)をする時に必要な情報を、ちゃんと含むよう
 にして下さい。

◆情報には、以下の内容を入れてください。
 a)原材料の性質
・生物的特性(混入する可能性がある微生物については特に注意する)
・化学的特性(混入する可能性がある化学物質については特に注意する)
・物理的特性(混入する可能性がある異物については特に注意する)
 b)その原材料や資材に含まれるもの
・配合材料・添加物・加工助剤の種類・その組成
 c)その来歴
・生産者、入荷するまでの経路
 d)その製造方法
 e)包装(どのように包装されているか)、運送方法(どのようにして運ばれてくるか)
 f)保管方法・保管条件(指定されたもの、必要なもの)、使用期限(指定されたもの、必要なもの)
 g)使う前に準備が必要なこと、取扱い上の注意
 h)検査の合否判定の基準/仕様
・合否判定には、購入先が行なう検査、自社の受入検査の両方がある。
 ただし、ISO22000が管理を義務付けるのは、食品安全に係わる項目に限定する。
・仕様書は、自社で決めた原料規格や、購入先と取り交わした購入仕様書や納入仕様書など
 がある。

◆会社(組織)は、上で取り上げた原材料や資材について、法律上の決まりを、整理して示せるように
  しておいて下さい。

◆上の内容に変更があった場合は、それを整理した文書も変更【更新】して下さい。その文書が、最新
  の情報となっているように管理してください。ここで言う文書は、7.7項の"文書の更新"の対象とな
  る場合もあります。


7.3.3.2 製品
【文書】

◆最終製品について、情報を整理し、その結果を文書にまとめてください

◆この情報は7.4で行うハザード分析(事故の原因となるものの調査)で使います。その時に必要な
 範囲で情報をまとめてください。

◆情報には、以下の内容(その製品に当てはまるもの)を入れてください。
 a)製品名・品番
・製品名 ・その製品を特定できる品番など
 b)その製品に含まれるもの
・材料 ・添加物 ・その配合割合
 c)食品安全に関係する、製品の性質
・生物的特性(存在するあるいは混入する可能性がある微生物)
・化学的特性(存在するあるいは混入する可能性がある化学物質)
・物理的特性(存在するあるいは混入する可能性がある異物)
 d)消費期限・賞味期限・保管条件
 e)包装形態
 f)表示・説明文(食品安全のかかわるもの)
・表示の内容、表示の方法、表示のデザイン
・取扱い方法、保管方法、調整方法、使用方法などの説明文
 g)配送の方法

◆会社(組織)は、製品について、法律上の決まりを、整理して示せるようにしておいて下さい。

◆上の内容に変更があった場合は、それを整理した文書も変更【更新】して下さい。その文書が、最新
  の情報となっているように管理してください。ここで言う文書は、7.7項の"文書の更新"の対象とな
  る場合もあります。


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【HACCP手順3】 使用についての確認 
7.3.4 想定している食べ方・使い方【意図した用途】
【文書】

想定している製品の食べ方・使い方【意図した用途】について整理し、その結果を文書にまとめて
  下さい

◆この情報は7.4で行うハザード分析(事故の原因となるものの調査)で使います。その時に必要な
 範囲で情報をまとめてください。

◆情報には、以下の内容を入れてください。
 1)食べ方・使い方・取扱い方法
・想定している食べ方
・想定している使い方(加工方法、調理方法)
・予想される取扱い方法(加工や調理の際の取扱い、保管や輸送の際の取扱いなど)
・予想される誤った取扱い方法(例えば、保管温度、消費期限など)
・予想される誤った食べ方、使い方
 2)製品の使用者、消費者
・使用者(それを使って加工や調理をする人)
・消費者(食べる人)
・消費者に、食品事故の被害を受けやすい人(幼児、高齢者、病人、妊婦、免疫低下者、アレル
 ギー患者など)が含まれる場合は、そのことを明らかにしてください
 
◆以上の情報をまとめた文書は、最新の情報となるように、内容を変更【更新】して下さい。ここで言う文
 書は、7.7項の文書の更新の対象となる場合もあります。


【HACCP手順4】 製造工程の一覧図 
【HACCP手順5】 現場確認       
 
  7.3.5 フローダイアグラム(調理や取扱いのステップ)
 
7.3.5.1 フローダイアグラム
【記録】

◆フローダイアグラムの目的
 ・製品の製造、調理や取扱いのステップを図に表して下さい【フローダイアグラム】
 ・これは、品番ごとか、または製品のグループ(同じステップで多種類の品番が作られる場合)ごとに
  作って下さい。
 ・この図は、どの段階で、どのようなハザードが、混入し、あるいは発生し、増加するかを判断するため
  の資料となります。

◆フローダイアグラムの内容
 フローダイアグラムは、このような目的で使うために適度な詳しさで、分かりやすく、正確なものでなけ
 ればいけません。
 フローダイアグラムには、次の内容を入れて下さい。
  a)仕事の全ステップを記入する。その順序とつながりが分かるように記入する。
  b)外注しているステップも必ず記入する(アウトソース、一部作業の下請け)
  c)原材料や中間製品が、どの段階で工程に入るかを記入する
  d)余剰品や手直し品の、再加工や再利用が行われる場合は、そのステップや経路も記入して下さい
  e)最終製品、中間製品、副産物を、どの段階(フローダイアグラムに記す工程)で外部に引渡すか
    廃棄物を、どの段階で工程の外に出すか。

◆現場確認
 食品安全チームは、フローダイアグラムの内容が正確かどうか、製造現場と照合しながら確認して下
 さい (注 ISO22000規格には7.8参照とあるが、この項と7.8項では検証の段階が異なり、うまく話が
 繋がらない)。

◆記録
 完成し、確認したフローダイアグラム記録として保管して下さい


7.3.5.2 仕事の全ステップと管理方法の整理


フローダイアグラムには仕事の全ステップが記載されています。このステップごとに、食品安全に関
  わる項目で、管理しているもの/管理することができるものを整理して下さい。
  (規格では文書にしろとは書いていませんが、実態として文書が必要です)

◆ここで整理するのは、次の内容です。
 1)現在行なっている(行なえる)食品安全のための処理方法
例えば、食品の加熱、冷却、冷蔵、pHの監視、塩・酢・保存料などの添加、異物検査、包装の手
段、細菌検査、設備の消毒など
 2)モニターしている項目【工程のパラメーター】
例えば食品の温度、設備の温度、加工時間、配合量、pH、設備の洗浄度、ふき取り検査、残留塩
素濃度
この管理をどのぐらい厳しく行なう必要があるか(許容範囲や測定精度)についても、まとめて下さ
い。
 3)仕事の手順(食品安全に関係あるもの)
上で挙げた、管理やモニターの具体的なやり方。

 この情報は7.4で行うハザード分析(事故の原因となるものの調査)で使います。その時に必要な
 で範囲情報をまとめてください。

◆食品の処理方法や、管理項目について、法令上の決まりや顧客との約束がある場合は、それも記載
  して下さい。

◆以上の情報(文書)は、最新の情報となるように、内容を変更【更新】して下さい。このことは、7.7項に
  も書いています。




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