らくらくISO9001講座

口語訳 ISO22000:2005
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宇野 通 編

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5章 経営管理

5.1 経営者の約束
5.2 食品の安全に関する方針
5.3 食品安全に関する仕事の仕組み
5.4 責任と権限
5.5 食品安全チームリーダー
5.6 情報交換(伝達、報告、取決め)
5.7 緊急事態の対応
5.8 マネジメントレビュー

改訂 2009.07.19



 5章 経営管理

 5.1 経営者の約束
ISO22000で実施するのは、次のことです
  ・食品安全の仕組み【食品安全マネジメントシステム】を決める【構築】
  ・決めた仕組みを、仕事の中で実行する【実施】
  ・より良い結果につながるように、仕組みを常に改良する【有効性を継続的に改善する】
 まず、経営者が、そのことを認識し、その実現を約束して下さい

経営者は、上の約束を実現するために、具体的には次の点を実行して下さい。
 a)食品の安全を守らなければ、会社(組織)が行う事業が成り立たないことを表明し、社員(組織のメン
   バー)に分からせる
 b)社員(組織のメンバー)に、ISO22000のルールを守ることの重要さを分からせる
   社員(組織のメンバー)に、法律や社会的な決まりを守ることの重要さを分からせる
   社員(組織のメンバー)に、顧客との食品の安全に関する約束を守ることの重要さを分からせる
 c)食品の安全に関する会社の方針【食品安全方針】を決める
 d)マネジメントレビュー(経営者による仕事の点検と指示)を行う
 e)上記の約束を実行するために必要な人や設備など【資源】を用意する


 5.2 食品の安全に関する方針
【文書】
経営者は食品の安全に関する会社の方針【食品安全方針】を決めて下さい。
この方針は文書で表して下さい【文書化】
社員(組織のメンバー)にその内容を知らせて、理解させて下さい【周知】

◆食品安全方針の内容
 a)方針の内容は、食品の安全のために会社(組織)が果たすべき役割から見て、ふさわしいものにし
   て下さい。
   食品の安全に関して、原料生産者から消費者までの製品の流れ【フードチェーン】の中で、
   会社(組織)がどの部分に対して責任を持っているかを、考慮して下さい。
 b)法律や社会的な決まりを守ることを表明して下さい。
   食品の安全に関する顧客との約束を守る(顧客の期待に答える)ことを表明して下さい。
 e)情報を適切に取り扱うことを約束して下さい(顧客や市場への情報の公開、事故情報・苦情への
   適切な対応、関係者や行政との連絡体制など)。
◆食品安全方針の運用
 c)食品安全方針を、組織のメンバー全員(パート、派遣社員を含む)に伝えて下さい【伝達】
   組織のメンバーに、食品安全方針を守らせて下さい【実施】
   方針を決めた時点だけでなく、以後も引き続き、組織のメンバーが食品安全方針を理解し、実行
   しているようにして下さい(そうなるような手立てを考えること)【維持】
 d)食品安全方針は、社内(組織内)や周囲の状況の変化により、的外れなものになるかもしれま
   せん。品質方針の内容を変更する必要がないかを、時期を決めて点検【レビュー】して下さい。
   点検するためのルールを決めて、実行して下さい。

◆食品の安全に関する目標
 f)食品安全方針を実行するために、具体的な活動目標(食品安全目標)を決めて下さい。目標を
   決める時には、活動中や終了後に達成具合がわかるように、具体的な判断の基準(達成基準)を
   決めて下さい。数値で表せる基準が理想的ですが、これに限りません。

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 5.3 食品安全に関する仕事の仕組み
経営者は、次の点が確実に行われるように会社(組織)を管理して下さい。

 a)食品の安全に関する仕事の仕組みや方法【食品安全マネジメントシステムの計画】が決め
   られていること。
   この仕事の仕組みや方法に従って、"食品安全に関する目標"を実行します。また、様々な仕事を
   行い、同時に仕事のやり方を良くしていきます。ここで言う「仕事」の内容について、4.1に考え方を
   まとめてあります。
 b)周囲の状況の変化(組織の変更、設備の変更、新しい製品やプロジェクトなど)によって仕事の仕組
   みを変えなければならない時は、速やかに対応し、管理された状態を保って下さい。


 5.4 責任と権限
【記録】
◆組織
 経営者は、食品の安全管理の仕組みを実行し、常に安全を保つために、組織を明確にして下さい。
 各々の社員(組織のメンバー)の責任分担、及び判断を任せる範囲【権限】を決めて下さい。
 どのように責任と権限が分担されているのか(組織と役割)を、社員全員に伝えて下さい【周知】

◆問題の処理の責任者
 全ての社員(パート、派遣社員を含む)は、発見した食品の安全に関する問題を、決められた責任者に報
告しなければなりません。経営者は、全ての社員に、報告の責任があることを認識させて下さい。
 経営者は、問題の処置を行う担当者を決めて、その担当者に処置の開始を指示する責任と権限を与え
て下さい。また担当者に、処置の内容や結果を記録させて下さい


 5.5 食品安全チームリーダー
◆経営者は、食品安全チームリーダーを任命して下さい。
 食品安全チームリーダーは他の役職と兼任でも良いのですが、リーダーの仕事をするときは、兼任し
 ている部門の利害は考えず、食品安全チームリーダーとして判断をして下さい。

食品安全チームリーダーの役割(責任と権限)は、次の通りです。
 a)食品安全チームを指揮し、その業務内容を決めて、実行させて下さい(食品安全チームについて
   は、7.3.2で決めています)。
 b)食品安全チームのメンバーに、必要な訓練(技能的なもの)と教育(知識的なもの)を受けさせて下
   さい(適切な力量を持つメンバーを配置するために重要です。そのことは6.2.1項に定めます)。
 c)食品安全チームリーダーは、食品安全の仕組み【食品安全マネジメントシステム】を動かす
   ために、会社全体を指揮して下さい。
・食品安全に関わる仕事の仕組みを決めて下さい【確立】
・決めた通りに仕事をして下さい【実施】
・仕組みが常に正しく動き、食品の安全が保たれるように、管理して下さい【維持】
・状況が変わった時には、実態に合うように、仕組みを改めて下さい【更新】
 d)次の点について情報を集め、分析して、経営者に報告して下さい。
・食品安全に関わる仕事がきちんと機能しているか【有効性】
・仕事の仕組みを改めなければならない部分があるか【適切性】

参考 食品安全チームリーダーは、上の役割に加えて、行政機関、審査登録機関、顧客(主に食品の
    安全に関わる問題について)に対する、組織の窓口となることを薦めます。

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 5.6 情報交換(伝達、報告、取決め)
5.6.1 外部との情報交換
【記録】

◆情報交換
 食品の安全に関して、原料生産者から消費者までの全ての関係者【フードチェーン全体】の間で、
必要な情報を交換(伝達、報告、約束)することが必要です。
 会社(組織)は、以下の関係者と、情報を交換するための仕組みを作って下さい【確立】
 その仕組み(決めたルール)に従って、情報を交換して下さい【実施】
 常に正しく情報が交換されるように、仕組みを保って下さい【維持】
 a)購入先、外注先
原料資材の購入先、外注業者、運送業者、検査機関、契約をしている専門家など
 b)販売先、消費者
卸売業者、小売業者から消費者まで、製品が会社(組織)を出て以降のすべての関係者
 次の情報のやり取りについて、仕組みを決めて下さい
  (1) 製品の取扱いに関する説明(用途、保管の方法、消費期限 など)
  (2) 販売先や消費者との契約や注文
  (3) 販売先や消費者の反響や苦情
 c)行政機関
 d)その他の関係者
食品の安全の仕組みに関係する組織や人々(仕組みに影響を与える人、影響を受ける人)

◆フードチェーンの中の情報交換
・他社の製品(原材料、農薬、飼料など)やサービス(加工、保管、輸送)が、自社の製品の安全に影響
 する場合、あるいは自社の製品やサービスが、他社の製品の安全性に影響する場合は、確実に情報
 の交換(説明、連絡、報告、約束)をして下さい。
・既に分かっている安全上の問題があって、他社に管理してもらわなければならない時は、特にしっかり
 情報の交換をして下さい。
・やり取りした情報は記録して下さい

◆法令や規則
 食品の安全に関わる法令や、顧客が順守を求める安全上の規則は、いつでもその内容を確認できるよう
にしておいて下さい(文書として持つか、どこかで閲覧できるようにしておく)。

◆情報の取扱い
・会社(組織)は、外部(行政、顧客、その他の関係者)に対して情報を伝える責任者を決めて下さい。
 この責任者の責任と権限を決めて下さい。
・外部から情報が寄せられた場合には、安全管理の仕組みの変更が必要かどうかを検討し、必要な場合
 には変更【更新】が行われる仕組みを作って下さい(8.5.2の更新の仕組みに組み込んで下さい)。
・また、情報の内容は(必要な場合には)マネジメントレビューで報告して下さい(5.8.2の仕組みに組み
 込んで下さい)。

5.6.2 内部での情報交換

◆会社(組織)は、食品安全に関わる情報や指示事項を、従業員に知らせ、理解させるための方法を決
 めて下さい【周知】
 その方法(決めたルール)に従って、情報を伝えて下さい【実施】
 常に正しく情報が伝えられるように、仕組みを保って下さい【維持】

◆以下の情報が、確実に食品安全チームに伝わるように、報告や連絡のルールを決めて下さい。
 a)製品の変更、新製品の生産
 b)原料や材料の変更。外注業者の業務の変更
 c)生産方法・設備の変更
 d)施設の変更。機器の配置の変更。作業場の環境条件の変更
 e)清掃・洗浄方法の変更。殺菌・消毒の方法や計画の変更。
 f)包装の方法、保管方法、配送の仕組みの変更
 g)必要な作業者の資格、責任分担の変更
 h)法令上の規制内容の変更
 i)食品の危険に関する新たな情報、安全の管理方法
 j)守らなければいけない約束(顧客との約束、社内の決まり、その他)
 k)外部からの問合せ
 l製品(食品)の安全に関わる苦情
 m)その他、食品の安全に関わる情報

◆情報の取扱い
・情報を受けた食品安全チームは、食品の安全管理の仕組みの変更が必要かどうかを検討し、必要な場
  合には変更【更新】をしてください(8.5.2項の更新の仕組みに組み込んで下さい)。
・また、情報の内容は(必要な場合には)マネジメントレビューで報告して下さい(5.8.2の仕組みに組み込
 んで下さい)。

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 5.7 緊急事態の対応
 会社(組織)は、食品の安全に関する緊急事態や事故への、対応方法(情報提供、出荷停止、回収な
ど)のルールを決めて下さい。
 原材料の生産から消費者までの流れ【フードチェーン】の中で、自社がどのような役割を果たしているか
(最終段階の食品にどのような影響を与えるか)を考えた上で、緊急事態や事故の対応方法を判断して下
さい。
 決めたルールは実行して下さい【実施】。また、状況が変わったらルールを変更し、いつでも実行できるも
のにしておいて下さい【維持】。


 5.8 マネジメントレビュー
5.8.1 マネジメントレビューの目的
【記録】

◆経営者は、会社(組織)の食品安全の仕組み【食品安全マネジメントシステム】が上手く働いてい
 るかどうかを評価して、指示を与える機会(マネジメントレビュー)を作って下さい。マネジメントレビュー
 を実施する間隔(時期)を決めて下さい。

◆マネジメントレビューでは、次の観点で仕事の仕組みを評価して下さい。
・食品の安全に関わる会社の仕組み【品質マネジメントシステム】は適切か。
・実態とずれていないか【妥当】
・良い結果が出ているか【有効】
 マネジメントレビューでは、次の点も評価して下さい。
・仕事の仕組みで、改善できるところはあるか【改善の機会】
・仕事の仕組みで、変えなければならないところはないか【変更の必要性】
・食品の安全の方針や目標を変えなくても良いか。

◆マネジメントレビューの結果を、記録として残して下さい

5.8.2 マネジメントレビューへの報告内容


◆マネジメントレビューでは、次の情報【インプット】を経営者に報告して下さい。
 a)以前のマネジメントレビューのフォローアップ
以前のマネジメントレビューで経営者が指示した事項が、どのように処理されたかの報告をして下
さい。
 b)管理がうまく進んでいるか、内部監査の結果、データ分析の結果
仕組みがうまく働いているか、分析をした結果の報告(8.4.3項で実施するもの)
 c)食品の安全に関係がある変更
マネジメントレビューの対象期間に変わった事項(社内の状況、外部の状況)で、食品の安全に関
わるものについての報告をして下さい (変更の際の管理について5.6.2項で決めます)。
 d)緊急事態、事故、回収、リコールの発生状況
(緊急事態や事故の際の対応について5.7項で決めます。
 回収やリコールの際の管理について7.10.4項で決めます)
 e)システムの変更の結果
システムの変更をした部分と、その変更内容の確認結果 (変更の際の管理について8.5.2項
決めます)。
 f)顧客の反響、その他外部から得た情報の要点
    (外部からの情報の管理方法について5.6.1項に決めます)
 g)行政、顧客などの外部の機関による、立入検査の結果
◆マネジメントレビューで報告する内容は、これに限定されません。その他、経営者に知らせるべき事項
  を決めて、報告してください。
◆マネジメントレビューでの報告は、経営者が食品安全の目標を達成するための情報として利用するもの
 です。 報告は、経営者が、目標を達成のための判断材料として使えるようにまとめて下さい。

5.8.3 マネジメントレビューに基づく指示


◆マネジメントレビューで経営者が出す指示【アウトプット】の中に、次の内容を含めて下さい。
 a)食品の安全の保証
食品の安全を確保し、それを証明し、情報提供することに関する指示
 b)仕事の仕組みの改善
食品安全の仕組み【食品安全マネジメントシステム】が考えた通りの結果を出すように、その
仕組みを改善すること。改善する項目と方法についての指示。
 c)資源の必要性
必要な資源(要員、施設、設備、技術など)を用意することの指示。
 d)方針や目標の変更
食品の安全の方針の変更。活動目標を変えることの指示


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