らくらくISO9001講座

口語訳 ISO22000:2005
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宇野 通 編

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4章 基本的な仕組み

 4.1 ISO22000の基本的な考え方
 4.2 文書に関すること

改訂 2010.12.12


 4章 基本的な仕組み

 4.1 ISO22000の基本的な考え方
◆行わなければならないこと
 ISO22000の仕組みを取り入れる会社(組織)は、次のことを全て実行して下さい(単にルールを決めるだ
けではありません)。
 ・ISO22000に従い、食品安全の管理の仕組み【食品安全マネジメントシステム】を決めて下さい
  【確立】。その仕組みは、確実に食品の安全が守れる【効果的な】ものとして下さい。
 ・作った仕組みを文書に決めて下さい【文書化】(ただし、すべてのことを文書化する必要はありません。
  どこまで文書に書くかは、ISO22000のルールと、実務の上での必要に合わせて判断して下さい)
 ・決めた通りに仕組みを動かして下さい【実施】。
 ・仕組みが決めた通りに動くように管理して下さい。仕組みがうまく働かない時や、結果に問題がある
  時は、仕組みを修正して下さい【維持】。
 ・ルールに従って仕組み(管理方法や基準値)の点検を行い、必要ならば仕組みを変更して下さい
  【更新】。

◆適用範囲
 ISO22000の仕組みを、どの範囲で実行するのかを決めて下さい。範囲を決めなければならないのは、
次の3つの項目です(この範囲が登録審査を受ける範囲になります)。
 1)製品
    ISO22000の仕組みで管理する製品の種類
 2)仕事の種類
    その製品に関して実施する仕事の内容
    開発、製造、保管、運搬、調理、販売など、どの業務が該当するか
 3)仕事をする場所
    生産・製造・調理・その他の仕事を行う施設(その施設の名称)

◆ISO22000で実施すること(まとめ)
 ISO22000で実施することをまとめると、以下の通りです。
 a)安全管理の仕組みの実施
@ 取扱う製品に混入する可能性があって、事故の原因となる物【ハザード】(病原菌、化学物
  質、アレルゲン、異物など)をリストアップして下さい。
A リストアップした"ハザード"について、実際にどの程度危ないか(事故の深刻さ、事故の起こり 
  やすさ)を判断して下さい
B 製品が事故を起こさないように(あるいは、実施したサービス業務が事故に結びつかないよう
  に)管理して下さい。
C ここで言う事故には、次の2つのケースを含みます
  直接的な事故:取り扱う製品(商品)が最終的な食品の場合で、飲食した消費者が被害に合う
            ケース
  間接的な事故:取り扱う製品(商品)は最終的な食品ではないが、それが原因となって、末端
            の消費者が被害に合うケース。これに該当する製品(商品)は
            原料(農産物、加工品)、添加物、資材(包装材、洗浄剤)、道具類、
            機械類、農薬、肥料、動物医薬品、などがあります
 b)社外の関係者への情報の周知
原料・資材の生産から末端消費者まで、自社が取り扱う食品に関わる全ての関係者【フードチェー
ン】に、製品の安全を守るために必要な情報を、確実に知らせるように【周知】して下さい。
 c)社内への情報の周知
食品の安全のために、守るべきルール【構築】、その実行【実施】、ルールの変更【更新】につい
て、全社員(パート、アルバイト、派遣社員などを含む)に、必要な情報が伝わるようにして下さい。
【周知】
 d)仕組みの点検
会社(組織)は、この食品安全の仕組み【食品安全マネジメントシステム】が、正しく動いてい
て、食品の安全が保たれていることを、定期的に確認をして下さい。
確認の結果、状況の変化により実態に合わなくなった点があったら、仕組みを改めて下さい。特に
注意しなければならないのは、次のような状況の変化があった時です。
 @ 会社(組織)の仕事の内容の変化
 A 食品の安全に関わる新しい情報
【文書】
◆外注委託について
会社(組織)は、食品の安全に影響する仕事【プロセス】を外注委託【アウトソーシング】する場合
は、確実に管理して下さい。管理の方法は、それぞれの重要性に応じて決めて下さい。
また、どの仕事を外注しているかが、いずれかの文書で分かるようにして置いてください。

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 【HACCP手順12(原則7)】 文書・記録の維持 
4.2 文書に関すること
4.2.1 必要な文書
【文書】

◆ISO22000で必要な文書
 次のような文書を作って下さい。
 a)方針及び目標
食品安全に関わる経営者の方針【食品安全方針】を文書で定めたもの
方針を実現するための具体的な目標(食品安全目標)を文書で定めたもの
 b)ISO22000が決めた文書と記録
ISO22000が文書を作成することを決めているもの(7項目)
ISO22000が記録を作成することを決めているもの(22項目)
    詳しくは右の表を参照 → ISO22000requirements.doc (N.Katahoanoさん作)
 c)会社が必要と考える文書
食品安全のための仕組み【食品安全マネジメントシステム】を運用するために必要な文書。
次のことが確実にできるように、どのような文書が必要か考えて下さい。
 ・食品安全のためのルールや管理方法を決める【構築】 
 ・決めた通りに仕組みを動かす【実施】 
 ・状況の変化に合わせて仕組みを変更する【更新】


4.2.2 文書の管理
【文書】

◆管理が必要な文書の範囲
 食品安全の仕組み【食品安全マネジメントシステム】で使う文書(4.2.1でリストアップしたもの)は、
ここで求めている内容を守って管理して下さい。ただし、文書のうち「記録」の管理は次の4.2.3で決めるの
で、ここでは除きます。

◆文書管理のルール
 「文書の管理のルール」を決めて、そのルールを文書で定めて下さい【文書化された手順】。ルール
は必要に応じて見直して下さい。
 文書の管理のルールの中には、次の内容を含めて下さい。
 a)承認
文書を作ったら、文書ごとに決めた責任者が承認すること。承認された文書しか、使用しないこと。
 b)文書の点検と変更
文書はルールを決めて時々内容を点検【レビュー】すること。
文書は必要に応じて変更や改訂をすること
 c)変更が分かるようにする
文書を変更したときは、使う人が、文書のどこが変更されたのかが分かるようにすること。
改訂番号や改訂日付をつけること。
現在の最新版が第何版か(あるいはいつ発行のものか)が確認できる仕組みを作ること
 d)適切な文書の使用(最新版管理を含む)
文書は、使う人が見たい時に見られるようにすること。適当な場所に配置するか、コンピューターの
端末で見られるようにする。
文書は、最新版を使うこと(同時に、旧版を誤って使わないようにすること)。そのため、文書の置場
には、常に最新版を置くこと。ただし、顧客から指定されて旧版の文書を使うようなケースでは、指
定の版が使えるようにすること。
 e)文書を見やすい状態に保つ
文書は汚れたり、ボロボロになって読めなくなることがないように取扱うこと。
文書にはタイトルをつけて、それを見やすい形で表示すること。
 f)外部文書
外部から入手する文書でも、仕事の方法を決めるものについては、文書として管理すること(契約
書、仕様書、図面、操作マニュアル、関係する法令やJAS規格など)。どれが管理する外部文書で
あるのかを決めること。
これらを社内に配布する時は、上のd)に記したように、配付の管理をすること。
 g)廃止文書
廃止した文書(改訂した文書の古い版)は、誤って使うことがないように、使用場所から撤去するこ
と。
廃止した文書を保管する場合は、「旧版」「廃止」「使用禁止」など、誤って使わないような表示を行
うこと。

◆文書の変更
 文書を変更する場合には、必ず次の点を確認して下さい。
  ・この文書の変更によって、取り扱う食品の安全を守るために、どのような効果があるか。
  ・食品の安全管理の仕組みに、どのような影響があるか。
 (この確認が必ず行われるように、ルールを決めて下さい)



【HACCP手順12(原則7)】 記録の維持管理 
4.2.3 記録の管理
【文書】

◆記録はルールを決めて作成し、保管すること。ルールは必要に応じて見直して下さい。

◆目的
 以下の目的のために、記録を作って保管して下さい。
  ・食品の安全上のルール、顧客との約束、法令などの決まりを守っていることを示す証拠
  ・食品の安全管理の仕組みが、予定通りの結果を出していることを示す証拠

◆読みやすさ/識別/検索
  ・記録は読みやすく作って下さい。
  ・記録は、何の記録か(内容、日時など)がすぐに見分けられるように作って下さい。
  ・記録は、すぐに出せるように整理して保管して下さい。

◆記録の管理のルール
 記録の管理のルールを決めて、そのルールを書いた文書を作って下さい【文書化された手順】
 その中で、次の点を決めて下さい。。
  ・識別    何の記録か(内容、日時など)がすぐに見分けられるように作る
  ・保管    保管場所とその管理方法
  ・保護    保管している記録の紛失や損傷を防ぐ方法。
          保管環境の整備、施錠、電子データのバックアップなど
  ・検索    保管している記録を、すぐに探し出すための整理方法
  ・保管期間 記録の種類ごとに決める
  ・処分    保管期間を過ぎた記録をどのような方法で処分するか


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