らくらくISO9001講座


  
ISO9001
2015年版
【建設業編】

灰字は、JISが用いている用語
緑字は、本文にない、この口語訳独自の補足


8章 施工(1)
(改訂 2018.01.10)

8.1 施工計画と施工管理
8.2 受注・契約
8.3 設計



 8.1 施工計画と施工管理

   良い工事をするために、工事を計画すること。これには、施工計画書、工程表、設計図書などが
   ある(小さな工事であれば、図面や、受注の記録だけでも良い)。

   ◆ 計画では以下のことを決めること(その工事に必要な範囲でよい)
a) 施工内容を決めること。
b) 1) 作業ごと(工種ごと)の良し悪しの基準(寸法、仕上がり具合いなど)を決めること
   2) 中間検査、最終検査の検査基準を決めること
c) 使用する重機や機械を決めること
   必要な資格者(施工管理技士、溶接技能者など)を決めること

   ◆計画は以下のように実施すること
d) 計画にしたがって施工すること
e) 必要な追加の書類(施工図など)や記録を決めて、作ること
1) これらの書類によって、仕事を管理する。
2) これらの書類や記録によって、正しく施工したことを証明する。

   ◆ 工事の計画は、どんな形で作成しても良い(計画書、図面、略図など)。
   ◆ 計画を変える時は、問題が起こらないように、注意して行うこと。
   ◆ 外注も、自社の仕事の一部と考えて、責任を持って管理すること。




 8.2 受注・契約


 8.2.1 顧客との連絡

   次の項目について、担当者や、連絡方法を決めること。
a) 自社の仕事の紹介(営業活動)
b) 顧客からの問合せ、引合い、指名通知、契約、注文への対応。その内容の変更があった
  時の対応。
c) 苦情や意見の受付け。引き渡し後の問合せ。
d) 顧客支給品や、顧客からの借り物についての連絡
e) 顧客への緊急連絡の方法



 8.2.2 顧客に提示する内容の管理

   自社の企画で(顧客が未定で)、建物の企画・設計を行う場合に、下記の点に注意すること。
a) 1) 法律違反がないこと
  2) 何が必要か、よく考えて決めること
b) 広告、カタログを作る場合は、誇張や虚偽がないようにすること。



 8.2.3 受注・契約の管理

 8.2.3.1 顧客と約束をする前に、その中身を確かめること認

   顧客と約束する時は、返事する前に(書類を提出する前に)中身をチェックすること。
   顧客との約束には、工事の見積り、入札、契約、受注などがある。
   施工内容・納期などについて、できない約束はしないこと。

   その他、以下のことをチェックすること。
a) 設計・施工内容が、ちゃんと決まっている。引渡しの手続きや、アフターサービスについ
   ても決まっている(必要な場合)。
b) その他の必要なこと(顧客との約束には含まれないが必要なこと)を把握できている。
c) 社内のルールに合っている。
d) 法律に違反しない。
e) 以前の約束(見積り、契約、受注など)と変わった点がある場合に、代わることについて
   話がつている。

口頭での受注についても、(記録に控えて)中身をチェックすること。

  <補足説明>  略(建設業では該当しない)


 8.2.3.2 確かめた内容を記録する

   a) 見積書、契約書、受注記録、打合せ記録、顧客図面など、顧客と約束した内容を、文書や
      記録で残すこと。
   b) 顧客との約束が追加・変更になった時は、その記録を残すこと。



 8.2.4 受注・契約の変更

   顧客との約束の内容が変った時は(設計変更、施工内容、工期など)、関係する社内の文書
   (工程表、施工図など)を変えること。内容が変わったことを、関係者にちゃんと伝えること。





 8.3 設計


 8.3.1 設計のルールを決める

   間違いのない設計ができるように、設計業務を管理するためのルールを作ること。



 8.3.2 設計計画

   設計業務を計画的に行うこと。
   a) 設計の計画は、設計の規模や内容に合ったものとすること
      (大規模な工事の設計では、設計計画書や設計スケジュールを作る方が良い。
      小規模な工事の設計では書面はなくてもよい)。
   その計画では、次の内容を決めること。

   ◆スケジュール
   b) 設計のスケジュール/レビュー(関係者との打合せ)の予定を決める
   c) 検証(構造計算、図面の最終チェックなど)の予定を決める
 妥当性確認として何を行うか。その予定(完成予想図や3Dパース図による確認、施工後
 の使用者による確認など)

   ◆実施体制
   d) 設計の責任者・承認者を決める
   e) 設計に参加するメンバー、ソフトウェア、外注業者の使用(設計業務のアウトソース、
      デザイナー、構造計算など)などを決める
   f) 関係者の間で、情報の交換や情報の共有をする方法を決める
   g) 設計に、顧客(発注者や建物のユーザー)に参加してもらう必要があるかを決める
      (作業の分担、 設計内容のチェック=レビュー、など)。

   ◆管理方法
   h) 後の施工のために、設計の際に用意するべきことを決める。
   i) 顧客から求められている、設計の管理手法(設計業務の共通仕様書など)を使う。
   j) 記録として何を残すかを決める(正しく設計をしたことを証明する)。
   


 8.3.3 設計に使う情報

   設計が、クリアしなければいけない条件【インプット】を、あらかじめリストアップすること。

   この時、次の内容で、当てはまるものを含めること。
   a) 設計する建物や構造物に、求められている機能、必要な安全性など
    (顧客の要望、指定された共通仕様書や規格、ガイドライン、経験上で必要なこと、など)
   b) 以前の設計から引き継ぐこと
      (以前の設計の一部分を流用する。以前の工事で使用した 技法や資材を使う。実施した
  トラブル対策を組み込む など)
   c) 法律で守らなければならないこと(建築基準法、都市計画法など)
   d) 会社が自主的に使うことを決めたルールや基準
   e) 設計する建物や構造物に、予想される不良やトラブルへの対策

   項目が抜け落ちないようにすること。
   曖昧な内容にせず、明確に決めること。
   リストアップした項目同士で、矛盾がないようにすること。
   このリストアップした結果を記録すること。



 8.3.4 設計の管理

   設計が、正しく行われるように管理をすること。
   a) 設計の結果を、どのような形にまとめるかを決めること(設計図書、図面など)
   b) 設計の内容が適切かどうかを確かめること【レビュー】
      (施工部門、協力会社、顧客などの関係者に、適切なタイミングで内容を確認してもらうこと)
   c) 設計の結果が、8.3.3でリストアップした条件をクリアしていることを確かめること。【検証】
      (図面のチェック、構造計算などを通じて確認する)
   d) 設計した建物や構造物が、実用的に問題がないか、あるいは顧客の希望に合っているか
      を確かめること。【妥当性確認】
      (完成予想図や3Dパース図による確認、施工後の使用者による確認などが、これに当たる)
   e) レビュー、検証、妥当性確認で分かった問題点について、対策を行うこと
   f)  レビュー、検証、妥当性確認の結果を記録に残すこと

特殊な工事や、小規模工事では、設計と施工が同時に進められ、設計が完了した時点で、
建物や構造物が完成しているケースがある。その場合は、完成した建物や構造物で、
【検証】や【妥当性確認】を行うことで良い。

  <補足説明>
   設計の[レビュー/検証/妥当性確認]は、それぞれの役割がある。それぞれの役割が
   果たせるのであれば、いくつかを同時に実施しても良い。



 8.3.5 設計の結果(設計図書など)【アウトプット】

   設計の結果(設計図書や図面、その付属資料など)は、次の通りになっていること。
   a) 設計の結果は、8.3.3でリストアップした項目をクリアしていること。
   b) 施工方法が決まっていること。
   c) 検査の合否判定の基準や、品質チェックの基準が決まっていること。
   d) 設計した施設を、正しく安全に使うために必要なことが決まっていること。
  設計の結果を、記録として残すこと。

設計と施工が同時に進められ、設計が完了した時点で、建物や構造物が完成している
場合は、完成した建物や構造物で、上記を確認することでも良い。



 8.3.6 設計を変更する

   施工中や完了後に、設計を変更する時は、そのことで問題が発生しないように、管理すること。
   次の内容を記録に残すこと。
   a) 変更の内容
   b) 問題がないことを確認した結果
   c) 変更の承認の記録(責任者、承認内容)
   d) 予想される問題と、それを防止するために行った対策




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