らくらくISO9001講座


  
ISO9001
2015年版
【建設業編】

灰字は、JISが用いている用語
緑字は、本文にない、この口語訳独自の補足


7章 設備・従業員・文書
(改訂 2018.01.09)

7.1 建物・設備・従業員など
7.2 従業員・作業者の力量
7.3 従業員・作業者の認識
7.4 情報交換
7.5 文書・記録



 7.1 建物・設備・従業員など 【資源】


 7.1.1 必要な建物・設備・従業員など

   必要な建物(事務所、倉庫など)や設備(機械、重機、車両、仮設など)を用意すること。
   また、従業員・作業者(協力業者を含む)を確保すること。
a) 現在の、機械や従業員でできることと、できないことを考えて決めること。
b) 新たに購入する設備、レンタルする設備、必要な協力業者について、考えて決めること。



 7.1.2 従業員・作業者

   どのような能力を持つ従業員・作業者(協力業者を含む)が必要かを決めること。
   必要な従業員・作業者を確保すること。(詳しくは7.2で決める)



 7.1.3 建物、設備、サポート業務など 【インフラストラクチャ】

   仕事に必要な、施設、機械、ソフトウェアなどを用意すること。
   これらが正しく使えるように、メンテナンスをすること。
   また、通信手段、IT環境、運送手段なども確保すること。

  <補足説明> 
   インフラストラクチャには次のものがある
a)  建物(事務所、現場事務所、倉庫、車庫など)
b)  設備(機械、重機、仮設)、工具、ソフトウェア(CADなど)
c)  資材・機械・重機・作業者などの運搬手段(車両や運転者の確保、運送業者の手配
   などを行う)
d)  通信・連絡手段、IT環境(電話、インターネット、社内ネットやテレビ電話などの用意、
   通信会社との契約などを行う)



 7.1.4 作業場所の環境

   作業場の環境が、工事の出来栄えに影響する時は、その環境を保つように管理すること
   (例:コンクリートの養生温度)。

  <補足説明>
   作業者の心理状態が大きく品質に影響する仕事では、働き甲斐、人間関係、ストレスの軽減
   などの、心理的な環境にも配慮すること。

  ※ この条項は、建設業では、あまり該当する物はない



 7.1.5 監視・測定のための装置や道具

 7.1.5.1 装置や道具の管理

   測量器、測定機器(工事や設備の検査、建造物の点検や診断に使う機械)を管理すること。
a)  目的に合った種類や性能のものを選ぶこと。
b)  正しく機能するように(必要な)点検、調整、校正、修理をすること。
   点検、調整、校正、修理の記録があるのならば、残しておくこと。


 7.1.5.2 測定値を保証する(校正または精度の確認)

   測量・検査・診断の測定値の精度が必要な時は、その測定が確かな標準に基づいて行われて
   いることを証明すること(確かな品質が求められている時、自社の信用を高めたい時)。

a) 測量器・測定機器の校正または精度の確認を行うこと。
   校正・確認は、国際的(または国が)が定めた標準(比較対象)との繋がりが証明できる
   方法で行うこと。【測定のトレーサビリティ】
   そのような標準がない時には、自社で適切な方法や標準を決めること。その時は、用い
   た方法と標準を記した文書または記録を作ること。

b) 測量器・測定機器の校正・確認が正しく行われて、使って良い状態にあることが、現場
   で分かるようにすること(校正ラベルなど)。

c) 測量器・測定機器は、壊れないように、また精度が狂わないように、正しく取り扱うこと。
   精度の調整が狂わされることが無いように、管理すること。

   測量器・測定機器が正確でないことが判った時、あるいは壊れた時には、これまでの測定
  (前回の校正・確認以降)で、誤った計測や測定を行っていないか調べること。また、誤った
  計測や測定を行っていた時は、問題の大きさに応じて、適切な対策を行うこと。



 7.1.6 会社が持つ情報

   仕事を進める上で必要な情報(資料、データ、ノウハウなど)が失われないように管理すること
   (書類や図面で残す。電子データで管理する。現場のノウハウとして伝承する)。
   この情報は、必要な人が使えるようにしておくこと。
   状況の変化に合わせて、新しい情報を入手し、または最新の内容に改めること。その情報を
   収集する方法を決めること。

  <補足説明1>
   この情報は、それぞれの会社が、今までの仕事の中で得てきたものである。この情報を、品質
   向上・顧客満足・業績アップのために役立てる。

  <補足説明2>
   a) 内部で得た情報の例
@技術情報や特許、A経験から得た知識、B成功例、C失敗例、D文書になっていない
現場のノウハウ、E改善の結果
   b) 外部から入手する情報の例
@ISOの規格、行政・建築学会・土木学会・顧客などの仕様書、
A顧客・購買先・協力業者からの情報





 7.2 従業員・作業者の力量

a) 従業員・作業者にどのような力量(知識やテクニック)が必要かを把握すること。
   社員以外で、自社の指揮下にある者も含めて考えること。
b) 仕事は、十分な力量がある従業員・作業者に実施させること。
   力量の把握のために、従業員・作業者が受けた教育(学歴、専門教育など)、訓練(技能的
   なもの)、経験について管理すること。
c) 力量を持つ人が足らない時は、従業員・作業者を訓練するか、新たに確保すること。
   訓練・確保した従業員・作業者の力量を確認すること。
d) 力量を証明する記録を保管すること。 

  <補足説明>
力量を持つ従業員や作業者を確保する方法には、訓練、熟練者による指導、配置転換、
新規雇用、協力業者の使用などがある。





 7.3 従業員・作業者の認識

   従業員や作業者に、以下のことを認識させること(社員以外の、自社の指揮下にある者を含む)。
a) 品質方針
b) 自分の仕事に関わる品質目標
c) 品質の向上や、会社の目標の実現のために、自分がどのような役割を担っているか。
d) 自分がルールを守らないと、どんな問題が起こるか。




 7.4 情報の交換

   社内で、仕事に必要な情報が正しく伝わるように管理すること。
   また、社外の関係者との情報の交換を正しく行うこと。
   それぞれについて、ルールを決めること。
a)  やり取りする情報の種類を決める
b)  実施時期を決める
c)  相手を決める
d)  方法を決める
e)  担当者を決める

◆ 社内の情報交換   日常的な連絡、毎日の打合せ、定期的な会議、書類による通知、
  意見や情報を受けるための仕組み。
◆ 社外との情報交換  監督官庁、業界団体、地域などとの連絡体制(顧客については、
  8.2.1で決めるので、ここではその他の相手について決める)。
  情報交換の相手ごとに、担当者、連絡方法や情報の受付の仕組みを決める。




 7.5 文書・記録 【文書化した情報】


 7.5.1 必要な文書・記録

a) IISO9001が求めている文書と記録を作ること。
b) 仕事を管理するために、どのような文書と記録が必要かを決めること。

  <補足説明>
   文書や記録の内容の詳しさは、会社の状況に 合わせて決めて良い。次のような事情で、
   詳しさは異なる。
・会社の大きさ、仕事の種類
・仕事の複雑さ
・スタッフの能力や熟練度



 7.5.2 文書・記録の形式

a) 文書・記録には、タイトル、文書番号、改訂番号、日付、作成者などを表示すること。
b) 文書・記録の用途や使い方に合わせて、その形(例えば,文章、ソフトウェア、図面など)、
   文書の媒体(紙か、電子ファイルか)を決めること。
c) 文書を制定または改訂する時には、内容を点検し【審査】、承認すること。記録について
  も、必要に応じて行うこと。



 7.5.3 文書・記録の管理

 7.5.3.1 文書・記録を使う
   
a) 文書を使う人が、必要な時に使えるように、文書を配置すること(またはコンピュータで
  見られるようにする)。記録についても、必要に応じて同じように行うこと。
b) 文書・記録のセキュリティ対策を行うこと(特に電子情報)。


 7.5.3.2 文書・記録を保管する

   a) 文書・記録を使える状態にすること。そのために
   ・適切に配付する。
  ・アクセスできるようにする。
  ・検索できるように整理する。
   b) 文書・記録を正しく保管すること。
  文書は、読める(使える)状態を保つ。
  記録が、劣化、破損、紛失しないようにする。
   c) 文書・記録の最新版の管理をする。どれが最新版か分かるようにすること。
   d) 記録は期限を決めて保管すること。文書の旧版のコピーの保管についても決めること。
  期限を過ぎた後の廃棄のルールを決めること。

   外部で作られた文書や記録も、同じように管理すること。
   品質の証拠になる記録や文書は、不正な改竄が行われないように管理すること。

  <補足説明>
   アクセスの管理では、機密性が高い文書や記録の閲覧の許可について決めること。また、
  コンピュータ内の文書・記録へのアクセス(閲覧の許可、変更の許可)について決めること。




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