らくらくISO9001講座


口語訳 ISO13485:2003

7.製品に関わる業務 
   7.5.1 製造工程の管理
   7.5.2 製造のバリデーション
   7.5.3 識別とトレーサビリティ
   7.5.4 顧客からの預かり品
   7.5.5 製品の保管
 7.6 監視装置・測定機器・検査機器の管理

改訂 2005.09.18

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宇野 通 編  

本記事のタイトルは口語訳ですが、内容は翻訳ではなく解釈の1例です
規格への適合性は原文や対訳版で判断して下さい



7章 製品に関わる業務(後半)



7.4 購買・外注

7.4.1 購買の手続き
                                                 <文書化された手順>
◆会社は、間違いなく意図した通りの製品を手に入れられるように、あるいは外注作業やサービスを受
 られるように、購買に関する手続きを決め、文書で定めること【文書化された手順】。この購買の手続き
 には、社内での事務処理の他、取引業者の管理、購入品の管理(受入検査など)を含む。

◆購入品(製品・サービス)の管理方法【管理の方式】と管理レベル、
 及び、取引業者の管理方法【管理の方式】と管理レベルは、
 購入する製品やサービスの重要度(製造工程で使う際の影響、最終の製品に与える影響)に応じて決
 めること。

◆取引業者の評価/選定                                        <記録>
 会社は、取引業者の実力を評価し、評価結果を元に、使う取引業者を選ぶこと。また必要に応じて
 (定期的あるいはトラブル発生時)に、取引業者を再評価すること。
 取引業者の選定/評価/再評価の、方法と基準を定めること。
 評価の記録を残すこと。また、評価を受けて、取引業者の変更や指導を行った場合は、その記録も残
 すこと(4.2.4の対象)。



7.4.2 注文内容の伝達
◆注文内容
  取引業者に、製品や作業を発注する時は、注文内容をきちんと伝えること。注文の際には、次の項
  目で必要な事が、伝えられていること。

  a) 購買品の仕様や品質、外注作業やサービスの内容(計画、実施方法、品質、設備など)
  b) 実施者の公的資格や、当方が行う資格認定
  c) ISO13485、ISO9001の認証取得の確認や、その他の業者の資格の確認

◆取引業者に伝える前に、注文内容が正しいことを確認すること。

◆購買文書及び記録                                        <文書><記録>
  会社は、7.5.3.2に定めるトレーサビリティ(追跡調査)に必要な発注文書及び記録を管理すること。 
  発注仕様(仕様書、図面など)は4.2.3に従い、版の管理及び旧版の保管などを行うこと。
  発注記録(発注書、オンラインによる発注データなど)は4.2.4に従って保管すること。



7.4.3 受入検査
◆会社は、購入した製品やサービスが注文通りであることを、受入検査やその他の方法で確認するこ
 と。

◆受入検査または確認の記録を残すこと。(4.2.4に従って管理すること)               <記録>

◆会社やその顧客が、納品前に取引業者(外注業者を含む)の工場などへ出かけて検査する場合は、
 その検査の方法及び納品許可の方法を取引業者に伝えること(7.4.2の一部となる)。

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7.5 製造工程

7.5.1 製造工程の管理
7.5.1.1 製造工程の管理(基本事項)

◆管理すべき項目           <文書化された手順><文書化された要求事項><作業指示書>
  会社は、製造やサービスの実施のための方法や基準を決めて【計画】、実行すること。特に次の点
  を行うこと。
  a)製造部門が、製品に関わる情報(製品の特徴、顧客情報、技術情報など)を利用する。
  b)製造部門が、以下の文書や基準を使う。
    ・社内規定【文書化された手順】
    ・製品規格、図面、管理基準など【文書化された要求事項】
    ・作業マニュアル【作業指示書】
    ・標準サンプルや比較サンプル・・・・必要な場合
    ・検査測定のやり方を決めた文書(ISO規格、公的試験方法など)・・・・必要な場合
  c)適切な設備を使う。
  d)適切な監視機器、測定機器、検査機器を使う。
  e)決めた通りに、検査や監視を実施する。
  f)顧客への納品及び納品後のサービスを、決めた通りに行う。
  g)決めた通りに、包装や表示を行う

◆製造の記録                                                 <記録>
  医療機器のバッチ(製造ロット)単位で、次の記録を残すこと(4.2.4に従って管理すること)
     バッチは一時に同時処理する塊のこと。薬品製造や化学工場で1つの槽で1回に処理(反応・
     混合)する単位(1釜)の意味でよく用いられる用語。 ここは、滅菌工程などを想定して、ロット
     ではなくバッチの用語を使用している。通常、1バッチを1ロットにするので実質上は同じ。
   ・追跡調査のためのロット番号、製造年月日など(7.5.3で決めた識別ができること)
   ・製造した数
   ・出荷を承認した数
  この記録は、責任者を決めて内容を確認し、承認すること。

参考 生産数量が少ない機械等では、1バッチが1台ということもある
7.5.1.2 製造工程の管理(全ての医療機器に共通のルール)

7.5.1.2.1 洗浄、汚染防止
                                           <文書化された要求事項>
◆製造する医療機器が、次のケースに当てはまる場合は、洗浄や汚染防止のための管理基準を決
  め、文書で定めること【文書化された要求事項】
  a)洗浄して販売する製品(滅菌前に洗浄、または使用する前に洗浄するもの)
  b)顧客が洗浄して使用する製品(滅菌前に洗浄、または使用する前に洗浄するもの)
  c)清浄さを保つ必要がある製品(滅菌をしない商品)
  d)製品に残ってはいけない薬剤(エチレンオキサイド、オイル、離型剤など)を使っている時

◆洗浄を行う医療機器(上のa)b))では、洗浄前の工程には、作業者や室内の衛生管理(6.4a)b))
  を義務づけない

7.5.1.2.2 製品(機械)の設置
                                       <文書化された要求事項><記録>
◆納品のために製品(機械)の設置が必要な場合には【適切ならば(1.2参照)】、その設置の方法
 と設置後の検査基準を決め、文書で定めること。【文書化された要求事項】

◆会社またはその正規の代理店が、製品(機械)の設置を行った場合は、設置作業及び検査の記
 録を残すこと(4.2.4に従って管理すること)。

◆顧客の了解の下、製品(機械)の設置を、代理店以外の業者や顧客に任せる場合には "設置
  の方法と設置後の検査基準"を定めた文書【文書化された要求事項】を、提供すること。 

7.5.1.2.3 納品後のサービス
                                 <文書化された手順><作業指示書><記録>
◆納品後のサービスを行う場合には、そのサービスが決めた通りに行えるように、
  ・社内規定【文書化された手順】
  ・作業マニュアル【作業指示書】
  ・標準サンプルや比較サンプル・・・・必要な場合
  ・測定のやり方を決めた文書・・・・必要な場合
 を用意すること

◆納品後のサービスを行ったら、記録を残すこと(4.2.4に従って管理すること)

参考 納品後のサービスには、修理や保守が含まれる

7.5.1.3 製造工程の管理(滅菌医療機器の特別ルール)
                                                        <記録>
滅菌医療機器については、滅菌条件を測定・監視した記録【プロセスパラメータの記録】を残すこと。こ
の測定・監視の記録は、滅菌のバッチ単位で行うこと。また、どの製品を、どのバッチで滅菌したかが分
かるように記録すること(4.2.4に従って管理すること)。



7.5.2 製造のバリデーション
7.5.2.1 製造のバリデーション(全ての医療機器に共通のルール)

◆バリデーションが必要なケース
  会社は、作った後の検査では確認できない工程について、作り方に問題がないことを予め確認(バ
  リデーション)すること
  製品を納品した後にしか、結果が判明しない場合も、同じ様に、作り方に問題がないことを予め確認
  (バリデーション)すること。
  実施した後や、期間を経過した後でしか良し悪しが判断できないサービスも、これに該当する。

◆バリデーションの記録                                          <記録>
  バリデーションを行ったら、記録を残すこと(4.2.4に従って管理すること)。

◆製造条件の証明
  バリデーションに用いている確認方法や判断基準が適切で、きちんと製品が作れる(サービスが提
  供できる)ことを、証明しておくこと。

◆管理する項目                                               <記録>
  以下の中で当てはまるものについて、決めて実行すること。
   a)製造条件(実施方法)が適切であることを確認し、承認するためのルールを作る
   b)設備を承認する方法を決める
     作業者の能力を確認する方法を決める
   c)作業方法を決める
   d)残すべき記録を決める(4.2.4に従って管理すること)
   e)再確認のためのルールを決める(設備や作業者の能力、製造条件などを定期的にチェックす
     る)

◆ソフトウェアのバリデーション                              <文書化された手順>
  コンピュータソフトウェアが、製造設備に組み込まれていて、そのプログラムの設定や作動状況が製品
  品質に影響を与える場合は(それが後に検査できない場合は)、バリデーションを行うこと。
  そのバリデーションの方法を決めて、文書に定めること【文書化された手順】。
  このようなソフトウェアは、最初に使う前にバリデーションを行うこと。プログラムを変更した後や、新たな
  用途での使用開始の際も、バリデーションを行うこと。
7.5.2.2 製造のバリデーション(滅菌医療機器の特別ルール) 
                                             <文書化された手順><記録>
◆滅菌の工程は必ずバリデーションを行うこと。バリデーションの方法を決め、文書に定めること。【文書
 化された手順】

◆滅菌の工程は、最初に実行する前に、バリデーションを行うこと。

◆バリデーションの記録を残すこと(4.2.4に従って管理すること)。

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7.5.3 識別とトレーサビリティ
7.5.3.1 識別

◆製品の種類を見分ける                                <文書化された手順>
  会社は、取り違えるおそれがある製品について、適当な方法(一般的には表示)で、見分け【識別】
  がつくようにすること。
  これは、製造から納品まですべての工程について行い、原料、資材、部品や中間製品についても
  行うこと。これらの見分けをつける方法を決め、文書で定めること。【文書化された手順】

◆返却品を区別する                                    <文書化された手順>
  会社は、一旦ラインからはずした医療機器が、通常の製品に混ざらないように、区別【識別】して取
  扱うこと。これに該当するものとして、市場から返却された製品や、検査や修理のために取り出した
  ものがある。
  区別するための方法を決め、文書に定めること【文書化された手順】。(清浄さが必要な製品では、
  6.4d)の汚染物の管理に従うこと)。
7.5.3.2 トレーサビリティ

7.5.3.2.1 トレーサビリティ(全ての医療機器に共通のルール)

◆トレーサビリティの規定                         <文書化された手順><記録>
  会社は、トレーサビリティ(追跡調査)についてルールを決めて、文書で定めること【文書化され
  た手順】。その中で、次の点について決めること。
   ・トレーサビリティの範囲(ロットの大きさ。調査対象の業務、部品、材料、設備、要員など)
   ・トレーサビリティのために必要な記録(4.2.4に従って管理すること)

◆必要な情報の記録                                         <記録>
  トレーサビリティ(追跡調査できる状態になっていること)が必要な場合には、製造から出荷まで、
  ロットが分からなくならないように管理すること。各ロットの動きや関連データなど、必要な情報
  を記録の中に残すこと。(4.2.4に従って管理すること)。

 ※この項では、記録についての要求が重複している

参考 構成管理
  情報システム開発などの分野では、構成管理(構成部品ごとに、変更やその影響を管理するシ
  ステム)が、製品の種類を見分け【識別】、トレーサビリティに必要な情報を記録する手段となる。 

7.5.3.2.2 トレーサビリティ(能動埋め込み/埋め込み医療機器の特別ルール)
◆トレーサビリティの調査対象
  能動埋め込み/埋め込み医療機器の製造において、構成部品、材料や、作業環境が、製品
  不良の原因になる可能性がある場合は、その構成部品、材料のロットや、作業環境のデータを
  トレーサビリティの記録に含めること。

◆出荷後のトレーサビリティ                                     <記録>
  会社は、代理店や販売者に対して、医療機器の販売先を調査(トレーサビリティ)するための記
  録を残させること。この記録は、監査の際に提示できるように保管させること。
  出荷の際、荷物を受け取った人の氏名及び連絡先の記録を残すこと(4.2.4に従って管理するこ
  と)。

7.5.3.3 合格品と不合格品の区別

会社は、合格品以外の製品が誤って使用、出荷、設置することを防ぐために、検査合格品、不合格品、
特別採用品、未検査品などの見分け【識別】がつくようにすること。
これは、製造から納品・アフターサービスまで全ての工程について行い、原料、資材、部品や中間製品
についても行うこと。



7.5.4 顧客からの預かり品
◆顧客からの預かり品の取扱い
  会社は、顧客からの預かり品(材料、試験サンプル、用具、設備、書類、機密情報など)について、そ
  れが自社の管理下にある間、注意を払うこと。
  受入や使用時に、確認(検査・点検)を行うこと。また、紛失しないような表示し、損傷を防ぐ保管や取
  扱いを行うこと。

◆紛失・損傷時の処置                                            <記録>
  顧客からの預かり品を紛失・損傷させたり、使えないことが分かった場合、あるいは機密情報を漏洩
  させた場合には、顧客に報告すること。この際には、記録を残すこと(4.2.4に従って管理するこ
  と)。

参考 顧客所有物としての情報 【知的所有権】
  顧客から預かるものには、技術情報、コンピュータプログラム、治験データ(個人に関する医学的な
  情報)などの、関係者以外には知られてはいけない情報【知的所有権】を含める。



7.5.5 製品の保管
◆製品の保管のルール                         <文書化された手順><作業指示書>
  会社は、保管中や取扱い中に製品不良(破損、劣化、汚染、機能異常など)が発生することがないよ
  うに製品を管理【保存】すること。この管理は、製造から納品まで全ての過程で行い、原料、資材、部
  品や中間製品についても行うこと。
  製品の保存ついてルールを決め、文書(社内規定または作業マニュアル)で定めること。【文書化され
  た手順】【文書化された作業指示】

◆決めるべき内容
  次の点について決めて、実施すること
   ・識別  間違いを防止し、在庫管理するための識別(7.5.3)
   ・取扱い 破損、劣化などを防ぐための取扱い方法
   ・包装  包装の方法。製品、製造途中の製品、資材や部品を破損や劣化から守るための包装
   ・保管  保管場所、保管方法、在庫管理の方法など
   ・保護  製品の破損、劣化などを防ぐために実施する対策

◆保管期間・保管条件が定められた製品の保管    <文書化された手順><作業指示書><記録>
  会社は、特に保管期間や保管条件が定められた製品について、管理のルールを決め、文書(社内
  規定または作業マニュアル)で定めること。【文書化された手順】【文書化された作業指示】
  このような保管条件を管理した記録を残すこと(4.2.4に従って管理すること)。

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7.6 監視装置・測定機器・検査機器の管理

◆どのような測定機器を使うかを決める                        <文書化された手順>
  ・会社は、製品が決めた通りにできたか、あるいは工程が決めた通りに進んでいるかを確かめるため
   に(あるいは証明するために)、どのような工程監視・測定・検査をするかを決めること。
  ・また、そのために、どのような装置や機器を使うかを決めること。
  ・求められる工程監視・測定の精度に対して適切な、管理方法や測定機器を決めること。決めた内容
   を、文書に定めること。【文書化された手順】

◆測定機器の管理方法
  製品の品質を証明するのに必要な測定機器は、その精度の管理を行うこと。このような測定機器は、
  以下の通り管理すること。

a)校正(または精度の確認) 
  ・定期的に校正、または使用前に校正すること。
  ・校正ができないものについても、定期的または使用前に精度を確認すること。
                                                           <記録>
  ・測定機器の校正または精度確認の記録を残すること。(4.2.4に従って管理すること)
  ・重さ、長さ、温度、時間のように国際標準や国家標準があるものについては、これらの標準に繋が
   るような仕組みで校正(または精度確認)すること。 
                                                           <記録>
  ・国際標準や国家標準がないものについては、自社で校正(または精度確認)の方法を決めて実施
   し、どのような基準で校正(または精度確認)を行ったかを記録すること。(4.2.4に従って管理する
   こと)  

b)調整
  ・調整の必要な機器については、確実に調整すること。繰り返し調整の必要な機器については、それ
   を確実に行うこと【再調整】。

c)識別
  ・個々の測定機器について「その機器が校正されて、使ってよい状態にあるのかどうか」【校正の状
   態】が、使用者にわかるようにすること。

d)校正状態の保護
  ・校正や調整された機器が、勝手に操作されて狂わされるようなことがないように、対策を行うこと。
   

e)機器の保護
  ・使用、持運び、保守点検、保管などの間に、測定機器が破損したり、狂ったりしないように、正しく
   保護し、取扱うこと。

◆異常時の処置                                                <記録>
  ・会社は、測定機器の精度が狂っていたことがわかったら、それまでにその測定機器を用いた製品
   について、問題がないかどうかを調べ、調査結果を記録に残すこと。(4.2.4に従って管理すること)
  ・狂っていた測定機器は、校正、調整、修理、廃棄などの処理を行うこと。
  ・もし製品に問題があることがわかったら、顧客や行政機関への連絡を含む、適切な対策を行うこと。

◆コンピュータソフトウェア
  ・コンピュータプログラム(ソフトウェア)を用いて製品の検査や性能確認を行う場合は、そのプログラ
   ムで思った通りの測定ができることを確認すること。
  ・コンピュータソフトウェアが組み込まれた測定機器を使う場合も、同様にそのソフトウェアが狙い通り
   に機能し、予定した測定ができることを確認すること。
  ・これらの確認は、最初に使う前に行って下さい。また必要があれば、その後にも繰り返し確認する
   こと。

参考 ISO10012 測定機器の管理方法について述べたISO規格(指針=参考資料)。

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