らくらくISO9001講座


口語訳 ISO13485:2003

5章 経営者の責任
 5.1 経営者の責任と役割
 5.2 顧客重視の考え方
 5.3 品質方針
 5.4 仕事のやり方を決めること
 5.5 組織に関わること
 5.6 マネジメントレビュー

改訂 2004.1.24

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宇野 通 編  

本記事のタイトルは口語訳ですが、内容は翻訳ではなく解釈の1例です
規格への適合性は原文や対訳版で判断して下さい



5章 経営者の責任


5.1 経営者の責任と役割

◆経営者は、次のことに責任を持つこと。
  ・ISO13485に合わせて会社を運営すること【品質マネジメントシステムの構築及び実施】
  ・常に良い結果が出るように、仕組みを維持・改善する【有効性の維持】

◆経営者の具体的な役割
  a)社員に顧客との約束を守らせる(そのように認識させる)
    社員に法令を守らせる(そのように認識させる)
  b)品質方針を決める
  c)品質目標を決めさせる
  d)マネジメントレビュー(経営者による仕事の点検と指示)を行う
  e)必要な人や設備など【資源】を用意する

参考 a)は医療機器の安全と性能に関わる法令について言っている



5.2 顧客重視の考え方

経営者は、次の点を、責任を持って実施させること。
 ・顧客と約束した内容をはっきりさせる(具体的には7.2.1で決める)
 ・顧客との約束を守る(守れているかどうかは8.2.1で調べる)



5.3 品質方針

経営者は品質方針を決めること。

◆品質方針の内容
  a)会社にふさわしい内容とする(会社の規模や仕事の内容に合っていること)
  b)製品の品質に関する内容を入れる【要求事項への適合】
    常に良い結果が出すこと(そのための改善)について述べる【有効性の維持】
  c)実際の活動(品質目標)に結びつく、具体的なテーマを入れる【品質目標の設定とレビューのた
    めの枠組み】

◆品質方針の運用
  d)品質方針の内容を、社員全員に理解させること。
  e)品質方針を時々点検【レビュー】して、内容を変える必要がないか確かめること(点検するための
    ルールを決めること)。



5.4 仕事のやり方を決めること

5.4.1 品質目標
経営者は、品質目標(具体的な活動目標)を決めさせること

◆品質目標の内容
  ・部ごと、課ごと、チームごとなど、実行するのにふさわしい単位で決める。
   可能ならば、全社目標−部目標−課目標 などのように階層ごとに作るのも良い。
  ・品質方針と、つじつまの合った内容にする。
  ・できる限り製品品質に関わる内容を入れる。[この内容は、7.1a)で仕事のやり方を決める際に、反
   映させること]
  ・品質目標を決める時には、活動中や終了後に達成具合がわかるように、具体的な判断の基準(達
   成基準)を決める(数値で表せる基準が理想的だが、これに限らない)。



5.4.2 品質に関する仕事の仕組み
経営者は、次の点を、責任を持って実施させること。

a)品質に関する仕事の仕組みが決められていること。この仕組みによって、品質に関する仕事を管理
  し、品質目標を実行すること。

b)周囲の状況の変化(組織の変更、設備の変更、新しい製品やプロジェクトなど)によって仕事の仕組
  みを変えなければならない時は、速やかに対応し、管理された状態を保つこと。

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5.5 組織に関わること

5.5.1 責任と権限
◆経営者は、次の点を、責任を持って実施させること。                      <文書>
  ・社員の責任分担、及び判断を任せる範囲【権限】を決め、それを文書で定めること
  ・どのように責任と権限が分担されているのか(組織と役割)を、社員全員に伝える。

◆経営者は、特に、品質に関わる仕事(管理、実行、判断)をする社員について、判断をまかせる範囲
  【権限】をはっきり決めること。独立性(判断の結果について不当な干渉を受けないこと。他の利害に
  より判断を変えないことを)が保たれるように管理すること。そのために、組織上のつながりを定める
  こと。

 ※ この項目では、ISO9001部分とISO13485追加部分で、「権限」に関する話が重複している

参考 法令で、次の点について責任者を指名することを定めている場合がある
     ・製造あるいは出荷後の製品に問題が発生していないか、情報を集める
     ・発生した問題を行政機関に報告する



5.5.2 管理責任者
◆経営者は、会社(組織)の管理職の中から、管理責任者を任命すること。

◆管理責任者は他の役職と兼任でも良いが、管理責任者の仕事をするときは、兼任している部門の利
 害は考えず、管理責任者として判断をすること。
 また、経営者は、管理責任者が本来の地位(部長であるとか、課長であるとか)と関わり無く、経営者
 の代行として会社(組織)全体を指揮できるように、責任と権限を与えること。

◆管理責任者の役割(責任と権限)は、次の通り。

  a)管理責任者は、品質に関わる仕事の仕組み(品質マネジメントシステム)を動かすために、会社
    全体を指揮すること。
     ・品質に関わる仕事の仕組みを決める【確立】
     ・決めた通りに仕事をする【実施】
     ・状況の変化に応じて、適切に仕組みを変更して、管理された状態を保つ【維持】

  b)次の点について情報を集め、分析して、経営者に報告すること。
     ・品質に関わる仕事がきちんと機能しているか
     ・仕事の仕組みを改めなければならない部分があるか
     (8.5で取り上げる、顧客の苦情や、是正処置、予防処置をすべき問題点の報告は、確実に実
      施すること)

  c)法令上の決まりと顧客との約束を守ることの大切さを、すべてのメンバーに理解させること。

参考 管理責任者は、上の役割に加えて、行政機関、審査登録機関、顧客(主に品質保証に関わる問
    題について)に対する、組織の窓口となることを推奨する。



5.5.3 社内のコミュニケーション
経営者は、会社が次の点を確実に行うように管理すること。

◆社内で、必要な情報を正しく伝える仕組みを作ること。
  ・情報の伝達の機会(打合せ、会議など)を作る
  ・情報の伝達のためのツール(電話、コンピューターネットワークなど)を用意する
  ・情報の伝達のためのルールを作る

◆品質に関わる仕事(品質マネジメントシステム)についての情報を、正しくやり取りすること。

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5.6 マネジメントレビュー

5.6.1 マネジメントレビューの目的
◆経営者は、会社の品質に関わる仕事(品質マネジメントシステム)が上手く働いているかどうかを評
 価して、指示を与える機会(マネジメントレビュー)を作ること。マネジメントレビューを実施する間隔(時
 期)を決めること。

◆マネジメントレビューでは、次の観点で仕事の仕組みを評価すること。
  ・品質に関わる会社の仕組み【品質マネジメントシステム】は適切か。
  ・実態とずれていないか【妥当】
  ・良い結果が出ているか【有効】

◆マネジメントレビューでは、次の点も評価すること。
  ・仕事の仕組みで、改善できるところはあるか【改善の機会】
  ・仕事の仕組みで、変えなければならないところはないか【変更の必要性】
  ・品質方針や品質目標を変えなくても良いか。

◆マネジメントレビューの結果を、記録として残すこと(4.2.4に従って管理すること)       <記録>



5.6.2 マネジメントレビューへの報告事項
◆マネジメントレビューを行うに当たって、次の情報【インプット】を経営者に報告すること。

 a)監査の結果
   内部監査の結果。審査登録機関、行政機関、関連団体、顧客などによって行われた監査(審査)
   の結果。

 b)顧客の反響
   会社の活動について、顧客から返ってきた情報(顧客アンケート、顧客からの意見、クレームなど)

 c)仕事がうまく進んでいるか・製品の品質は良いか
   日常の活動が上手くいっているかどうかが分かる情報(品質目標、検査結果、不具合の発生、仕
   事の進捗状況など)

 d)是正処置と予防処置の結果
   マネジメントレビューの対象期間に始めた、または終わった是正処置と予防処置(8.5.2、8.5.3)

 e)以前のマネジメントレビューへの対応
   以前のマネジメントレビューで経営者が指示した事項が、どのように処理されたかの報告。

 f)品質に関係がある変更
   マネジメントレビューの対象期間に変えた事項(製品、仕事の仕組み、要員、設備など)。

 g)改善のための提案
   仕事のやり方を良くするための提案

 h)法令の制定や変更
   新しい法令上の決まりまたはその変更



5.6.3 マネジメントレビューに基づく指示
◆経営者が出す指示【アウトプット】の中に、次の内容を含めること。

  a)仕事の仕組みの改善
    常に良い結果が出るように【有効性の維持】、仕事の進め方や管理方法を改善すること。

  b)製品の改良
    顧客と約束した品質を確保するために製品を改良すること。

  c)資源の必要性
    品質に関わる活動に必要な資源(要員、施設、設備、技術など)を用意することの指示。

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