らくらくISO9001講座
口語訳 ISO13485:2016
1章〜4章 基本的な仕組み
1章 ISO13485の使用に関すること
2章 ISO13485で引用している規格
3章 言葉の定義
4章 基本的な仕組み
4.1 仕組み全体に関わること
4.2 文書に関すること
赤字 ISO13485:2003及びISO9001:2015 にない決まり
紫字 ISO9001:2015 にない決まり
緑字 この口語訳の追加説明
改訂 2018.08.12
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本記事のタイトルは口語訳ですが、内容は翻訳ではなく解釈の1例です
規格への適合性は原文や対訳版で判断して下さい
1章 ISO13485の使用に関すること
◆ ISO13485の目的
ISO13485を取り入れると、次の点について、会社の実力を証明できる。
* 顧客との約束通りで、 法令に合った、医療機器を提供できる。
* 顧客との約束通りで、 法令に合った、医療機器を取り扱うサービス(販売、賃貸、保管、
輸送、修理、校正、点検など)を提供できる。
◆ ISO13485の対象分野
ISO13485は、医療機器のライフサイクル(開発から、製造、使用、廃棄まで)のあらゆる段階の
業務を対象としている。具体的には、下記のような業務がある。
* 医療機器の製造
* 設計開発
* 保管、輸送、販売、賃貸
* 設置【据付け】
* 修理、点検、校正など(アフターサービス)
* その他の業務(たとえば、試験、検査などの技術的な支援)
このように、ISO13485は設計開発や製造だけではなく、医療機器を流通させ、正しく使用して
もらうためのサービスも対象としている。
◆ ISO13485を使う組織
医療機器に関わる組織は、その形態(会社、法人)や、組織の大きさに関係なく、ISO13485を
使用することを勧める (他の仕組みで管理されている場合を除く)。
ISO13485が、医療機器の製品に対して求めているルールは、組織が行っている、医療機器の
関連サービスについても実施すること。
◆ 外注
その医療機器に関して外注している仕事があれば、自社で実施していなくても、自社の責任と
なる。これは、自社の品質に関わる仕組み【品質マネジメントシステム】に含まれており、その
実施状況を把握して管理すること。
◆ 除外
該当する国の法令で認めている場合は、ISO13485の中から7.3項(設計・開発)を除いて使って
も良い(それでも、ISO13485に合っていると認める。これは、会社が、実際にその製品の
設計・開発を行っているかどうかに関わらず当てはまる)。
その国が、7.3項(設計・開発)を除くかわりに、別の決まりを作っている場合は、その決まりを
守ること。
◆不適用
ISO13485の中に、医療機器の性格や、会社の担当業務の性格から、全く実施していない項目
がある場合は、その項目を除いて(不適用として)ISO13485を使うことができる(それでも、
ISO13485に合っていると認める)。不適用にできるのは6〜8の項目だけである。
その項目が実施できない理由を、品質マニュアルの記すこと。そのことは、4.2.2にも書かれて
いる。
2章 ISO13485で引用している規格
◆ ISO13485は次の3章で、ISO9000(2015年版)の規格の中の「3.言葉の定義」を使用している。
ただし、対象はあくまで2015年版であって、改訂版は含まない。
3章 言葉の定義
◆ ISO13485で使う言葉は、ISO9000(2015年版)に定める。
また、医療機器特有の用語は、以下の項目で定義する。
(この口語訳では省略)
◆ 適用する ISO900 の版について
ISO9001(2008年版)(旧版)の用語の定義は、ISO9000(2005年版)(旧版)である。
この規格は、ISO9001(2008年版)(旧版)をベースにしているので、用語の定義として、この
ISO9000(2005年版)(旧版)がふさわしい。
しかし、ISO9000(2005年版)(旧版)は、2018年9月(移行期間完了時)に廃止されるため、
これを引用することはできない。そのため、やむを得ず、用語の定義として、改訂版である
ISO9000(2015年版)を使用する。
ISO9000(2015年版)(改訂版)の用語の定義には、この規格に合わないものが含まれている。
(例えば、「製品」の定義、「リスク」の定義)
これらについては、0.2項 及び 3章の各条項の中でフォロー(説明)している。
たいへん分かりにくいが、やむを得ない処置である。
3.1〜3.20
<
略>
4章 基本的な仕組み
4.1 仕組み全体に関わること
【文書】
4.1.1 仕組み
を、文書で
定める
◆ ISO13485と医療機器に関する法律に合った仕事の仕組みを決めること。
それを文書で定めること。【品質マネジメントシステムを文書化する】
◆ 良い結果が出るように、必要な場合には仕組みを改めること。【有効性の維持】
◆ ISO13485及び法律が求めている文書を作ること。これには、管理規定、作業手順、計画、
顧客との取決めなどがある。【要求事項、手順、活動及び取決め】
◆ 文書で決めたことを実行すること。【実施】
◆ 必要な場合には、文書を改めること。【維持】
◆ 会社の業務の、法律上の位置づけ(業種)について文書に記すこと。
<
補足説明>
法律上の位置づけには、製造業、指定代理人(CEマーキング)、米国代理人(FDA)、輸入業者、
代理店【ディストリビュータ】などがある。
日本国内での(薬機法による)位置づけ(業種)には、製造販売業、製造業、販売業、修理業、
貸与業、選任外国製造医療機器等製造販売業者(外国から日本に輸出する業者の代理人)
などがある。
4.1.2 プロセスを考える
プロセスとリスクの考え方を取り入れること。
a)
自社の業務が、どのような仕事【プロセス】の組合せでできているかを、整理すること。
その中には、会社が法律上で(業種によって)義務付けられている仕事を含めること。
b)
各々の仕事【プロセス】の方法を決める時は、その仕事にどのようなリスクがあるかを考え
ること。
c)
仕事の繋がり方【プロセスの相互関係】を、適当な形(図や表)で示すこと。
4.1.3 各々の仕事(プロセス)を管理する
仕事を、次のように管理すること。
a)
各々の仕事【プロセス】について、仕事のやり方と、仕事の良し悪しを判断する基準を決める
こと。
b)
仕事に必要な、施設、設備【資源】を用意すること。要員を揃えること。また、必要な情報が
得られるようにすること。
c)
仕事がうまくゆくように、必要な改善を行うこと。【有効性の維持】
d)
仕事がうまく行っているかを確かめること。そのために必要な、検査や測定を行うこと。また、
得られたデータを分析すること。
e)
仕事の結果が、ISO13485と法律に合っていることを証明するために、必要な記録を残すこ
と。その記録を、正しく作成し、保管すること。
4.1.4 仕組みを作る/仕組みを変える
各々の仕事【プロセス】を、ISO13485と法律に合うように行うこと。
仕組みを変える時も、ISO13485と法律で決まっているルールに従って行うこと。
その際、変更によって問題が発生しないように、次の点をよく調べて、必要な対応をすること。
a)
この変更が全体の仕組にどのように影響するのか
b)
この変更が製品(医療機器)にどのように影響するのか
c)
ISO13485のルールを守るために、必要な手続き。
法律上で必要な手続き
(一部変更届など)
【文書】
4.1.5 外注を管理する
◆ 製品の品質に影響する仕事【プロセス】を外注【アウトソース】する時は、その実施状況を監視
し、正しく実施されるように管理すること。
◆ 外注委託した仕事が、正しく実施されるように(顧客との約束や、法令に合うように)管理する
ことは、委託した側の責任です。
◆ 外注管理のレベルは、その仕事の重要性(リスクの大きさ)と、外注先の実力によって決める
こと。その管理は、7.4項(購買プロセス)に従って行うこと。
◆ 品質管理のために重要なことは、文書で約束すること(製品仕様書、図面、品質保証協定書
など)。
【文書】 【記録】
4.1.6 ソフトウェアのバリデーション
◆ ISO13485に関わる仕事に、コンピュータソフトウェアを使用するときは、あらかじめ、そのソフト
ウェアを、様々な条件で動かしてみて、常に正しい結果が出ることを確かめること。
【妥当性確認/バリデーション】
◆ その確認のルールを、文書で定めること。
◆ その確認は、そのソフトウェアを最初に使用する前に行こと。
また、ソフトウェアが変更された 時にも行うこと。
◆ ソフトウェアの確認の結果を,、記録に残すこと。
ページ頭に戻
る
4.2 文書に関すること
【文書】 【記録】
4.2.1 必要な文書
◆ 次のものを文書にすること
a)
品質方針と品質目標
b)
品質マニュアル
c)
ISO13485が求めている文書(ルールを文書にしたもの)
ISO13485が求めている記録。
d)
仕事を正しく行うために必要な文書や記録(必要な文書と記録は自社で決める)
e)
法律で作ることが決められた文書
【文書】
4.2.2 品質マニュアル
◆ 品質マニュアルを作ること。次の内容を品質マニュアルに記すこと。
a)
この品質マニュアルを使う仕事の範囲を記す【適用範囲】。
@ 会社・事業所・部門
A 対象とする製品
B 仕事の内容(製造、設計・開発、販売など)【プロセス】
自社に存在せず、実施しないISO13485の条項がある場合は、それが自社に当てはまら
ない理由を書くこと。
b)
この仕組みで使用する文書を示す(文書名を記載する。または品質マニュアルに直接
規定する)。
c)
自社にどのような仕事【プロセス】があって、どのように繋がっているかを示すこと。
(4.1.2と同じ)
◆ 使用する文書の構成(種類、区分、階層など)を記すこと。
【文書】
4.2.3 製品ファイル
◆ 製品の品番またはシリーズ毎に、ファイルを用意すること (複数のファイルの組合せでも良い)。
※ 日本の薬機法の求める「製品標準書」、CEマーキングの「テクニカルファイル」、米国
FDAの「DMR」に 相当する
◆ このファイルに、その製品の品質保証・法規制に関わる文書をまとめること。(文書名を挙げ
て引用するのでも良い)。
◆ ファイルは、必要に応じて変更し、最新の状態を保つこと。【維持】
◆ 次の内容を含めること。これ以外にも、必要なものがあれば加えること。
a)
基本の情報(名称、種類、クラス分類、法律上の分類など)
想定している用途(適用症)や効能。
製品ラベル・添付文書・使用説明書の内容。【ラベリング】
b)
製品の仕様
c)
製造方法、保管方法、取扱い方法、配送方法、使用方法など
d)
検査の方法、その他の品質のチェックの方法
e)
設置に関するルール(必要な場合)。精度の調整を含む。
f)
アフターサービスのルール(必要な場合)。特に、点検、修理、校正は重要。
【文書】
4.2.4 文書の管理
◆ この仕組みで使う文書(4.2.1で決めたもの)は、ルールを決めて管理すること。ただし「記録」
の管理は4.2.5で決めるのでここでは除く。
◆ 「文書の管理のルール」を文書で決めること。
◆ その中で、以下のことを決めること。
a) 《承認》
文書を発行する時は、その内容を点検【レビュー】して、文書ごとの責任者が承認
をすること。
b) 《文書の点検と変更》
文書は(制定後も)必要に応じて、内容を点検【レビュー】すること。
必要な改訂を行うこと。この時も、責任者が承認をすること。
c) 《変更が分かるようにする》
文書の版が見分けられるように、改訂番号や制改定日を記
すこと。文書を変更したときは、どこが変わったのかが分かるようにすること(改訂履歴や
説明の文書を付ける。文字色や下線で変わった部分を示す。など)。
d) 《配付管理》
文書は、使う人が、必要な時に最新版(またはその時に必要な版)を使るよう
に、適切な場所に配置すること。あるいは端末で見られるようにすること。
e) 《見やすい状態に保つ》
文書は汚れたり、ボロボロになって読めなくならないように管理
すること(読めなくなる前に取り換えること)。
f) 《外部文書》
外部から入手した文書も(管理が必要なものは)、社内の文書と同じように
管理すること.。
(
購買仕様書、図面、作業マニュアル、契約書、規格など)
。
管理する外部の文書がどれであるか決めること。
社内に配布する時は、上の
d)
に記したように、配付の管理をするkこと。
g) 《文書の保護》
文書を紛失しないように、ルールを決めて管理すること。これには、電子
データの保護も含む。
(バックアップ、ウイルス対策など)
h) 《旧版の取扱い》
旧版の文書は、間違って使わないように管理すること。
(現場から撤去
する。不要なコピーは廃棄する。専用の場所に保管するなど)
。
保管する旧版の文書には「旧版」「廃止」などの表示をすること。
◆
《文書の改訂の担当部署》
文書の改訂の際は、最初に制定した部署が点検【レビュー】
/承認をすること。他の部署に担当を移管する場合には、その文書の背景となった情報
(理論的根拠、考慮するべきリスクなど)を引き継ぐこと。
◆ 《旧版の文書の保管》
医療機器の製造と検査に関わる文書の旧版は、保管期間を決めて、
少なくとも1冊を残しておくこと。
@ その保管期間は、医療機器の使用期限や寿命(=会社が決めた期間)より長くすること。
A 法律で保管期間が決まっている場合は、それより長く保管すること。
B 記録の保管期間を決めている場合、その記録の元になった文書は(廃止後も)記録より
長く保管すること。
【文書】 【記録】
4.2.5 記録の管理
◆ 記録は次の目的で作る。
・顧客との約束、法令などの決まりを守っていることの証拠
・仕事の仕組みがうまく働いて、結果を出していることの証拠
◆ 記録の管理のルールを決めて、そのルールを書いた文書を作ること。
その中で、次の点を決めること。
@ 表示の方法(何の記録かが見分けられるようにする)
A 保管場所とその管理方法
B 記録の紛失や損傷を防ぐ方法。
電子データのセキュリティ。
(損傷、改竄、流出)
C 検索できるように保管する
D 記録ごとの保管期間
E 保管期間を過ぎた記録の廃棄方法
◆ 臨床試験データ(個人の健康情報)を取り扱う場合は、流出させないように管理すること。
法規制がある場合は、それに従うこと。
◆ 次の点に注意すること
・記録は読みやすく作る。
・何の記録か(内容、日時など)見分けられるように表示する
・すぐに探し出せるよう整理して保管する。
・記録を変更する時は、どこをどのように変えたか分かるようにする。
(見え消し、文書管理
ソフトによる記録、など)
◆ 記録の保管期間は、次のように決めること
・対象の医療機器の寿命(=会社が決めた期間)より長く保管する。
・法律で保管期間が決まっている記録は、それより長く保管する。
・少なくとも、出荷から2年間は保管する。
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