らくらくISO9001講座



口語訳 ISO9001:2008
サービス業編

7章 サービスの実施(1)
 7.1 仕事の仕組みを決める
 7.2 顧客との間で決めること
 7.3 企画・デザイン・開発

青字 は2000年版から変更された部分です    
緑字 はこの口語訳で独自に追加した補足説明です
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改訂 2009.05.23

7章 サービスの実施


7.1 仕事の仕組みを決める

  仕事の仕組み
会社は、仕事(サービスの提供)の仕組みやルールを決めてください。その仕組み
やルールは、会社の中の他の仕組みと矛盾がないように作ってください。【製品実
現の計画】 
ここでは、契約、受注、企画、準備、物品の購買、外注の使用、サービスの実施、
実施内容の点検、アフターサービスなど、顧客にサービスを提供する中で行う一連
の仕事のことを言っています。

   繰り返し行う作業やサービスの場合
会社は、業務の種類やメニューごとに(あるいは顧客ごとに)、その内容や実施方
法を決めてください
例えば、業務仕様書、計画書、図面、レシピ、業務マニュアル、作業手順書、検査
基準書、チェックリスト(業種や会社によって、使用する書類は異なります)

  毎回新たな企画や計画を作成する場合
会社は、案件ごとに、実施内容を定めてください
例えば、企画書、計画書、プログラム、タイムテーブル、作業指示書(業種や会社
によって、使用する書類は異なります)

  決めるべき内容
特に、次の中で必要なものについて、どこかに決めてください。

a)実施する仕事(サービス)の内容【製品に対する要求事項】
  仕事の良し悪しを決める判断基準【製品に対する品質目標】
企画書、計画書、レシピ、業務マニュアル、作業指示書、チェックリストなど
の中に決めます。
b)仕事(サービス)の具体的なやり方【製品に特有のプロセス】
  使用する、施設、設備、備品、ソフトウェアなど【資源の提供の必要性】
  担当する人の条件(資格認定)【資源の提供の必要性】
計画書、業務マニュアル、作業指示書、業務チェックリストなどの中に決めま
す。
  業務の過程で作る文書【文書の確立の必要性】 
例えば、詳細計画書、作業用図面など
c)検査の方法(結果の良し悪し、提供する物品の検査、使用する物品の検査)
  仕事(サービス)の結果や進捗状況を確認する方法
  これらを行う際の、合否判定の基準あるいは判断基準
 (この項には2008年版で単語の追加がありますが、意味は変わりません)
d)作成する記録(仕事の質を証明する記録)(記録を保管する方法について
  4.2.4に決めます)

以上のルールは、自社で使いやすい形(の文書)に作ってください。

 <補足説明1> 品質計画書
仕事(サービス)の種類やメニューごとに(あるいは案件ごとに)、その内容、実
施方法、判断基準などについて決めた文書(要するに、この節で決めている文書)
品質計画書と呼ぶことがあります。

 <補足説明2> 大規模なイベントの計画
複雑なサービスや、大規模なイベントの計画を作る際には、7.3項にしたがって行う
と良い。



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7.2 顧客との間で決めること
 
7.2.1 仕事(サービス)の内容

  会社は、実施する仕事(サービス)の内容【製品に関連する要求事項】を整理して、
  どこかに決めてください。
  
 a)顧客と約束した内容
仕事(サービス)の内容に関して、顧客と約束した内容。
報告や、成果の引渡しについての約束(必要な場合)
アフターサービスについての約束

 b)自社で独自に決めた内容(必須の項目)
仕事(サービス)の性格から考えて必須の項目
顧客があえて指定しない常識的な項目
カタログ、ホームページで提示する定型のメニュー

 c)仕事(サービス)の内容について法律で決まっていること
 (この項には2008年版で表現の変更がありますが、意味は変わりません。
   製品に関連する → 製品に適用される)

 d)自社で独自に追加する内容(必須ではないが、自社の方針として行うもの)
   例)環境対策、より安全な材料の使用、アフターサービスの充実
 (この項には2008年版原文で用語の変更がありますが、意味は変わりません。
      device → equipment)

 <補足説明>
アフターサービスの例として、次のようなものがあります
1) 実施後に仕事(サービス)の品質保証をする(品質保証期間の無償修理など)
2) 契約を結んで、定期的に、あるいは故障時のメンテナンスを行う
3) 使用後の、リサイクルや廃棄を引き受ける、


7.2.2 契約・受注

 顧客との約束の種類
会社は、業務の実施について、顧客と約束【製品を提供することのコミットメン
ト】をする前に、その約束の内容に問題がないかを確かめてください。
ここでいう、顧客との約束には、次のようなものが含まれます。
1)仕事(サービス)の内容についての合意、契約書、覚書などの基本的な約束 
  【契約】
2)受注(実施内容、実施時期、実施場所、納期、納入場所などの連絡)    
  【注文の受諾】
3)見積書、企画書、入札などの提出 【提案書の提出】
4)これらの変更

 確かめる項目
顧客と約束する時に確かめなければならない内容は、次の通りです。
会社は、これを確認する担当者を決め、また確認できる仕組みを作ってください。
見積り、契約、受注などの各段階で、a)〜c)の内で該当するものを確認して下さ


a)実施する仕事(サービス)の内容が決まっていること。
定型の業務の場合は、カタログなどでその内容が知らされていることで良い
b)継続的に実施している仕事(サービス)で、内容が変わるときは、変わること
  について顧客と話しがついていること。また、見積り、規格書などで約束した
  内容をやむを得ず変更する時も、同様に、顧客と合意できていること。
c)技術、設備や人の能力、実施時期、納期、価格などの面で対応できること。
1)業務を実施する能力や技術があるか。
2)報告や納品がある場合は、納期に間に合うか。
  必要な人の手配が出来るか
3)価格が合うか。

 契約・受注の記録
顧客と約束した内容(確認して決まった内容)を記録として残してください。【レ
ビューの結果の記録】
確認を行った結果、内容を変えた場合には、その経緯も記録に残してください。
【レビューを受けて取られた処置の記録】
(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)

口頭の注文についても、内容を確認し、約束した内容を記録に残してください。

 契約・受注内容の変更
契約、受注の内容(特にサービスの内容)が変更された時は、そのことを関係者
に、確実に伝えてください。
もし、社内の文書(計画書、スケジュール表、作業指示書など)を変えなければな
らない場合には、確実に対応してください。

 <補足説明>
インターネット受注などでは,個別の注文ごとに確認するのは,非現実的です。こ
のような場合には,カタログや宣伝広告などで顧客に情報を発信する前に,その内
容を確認してください。


7.2.3 顧客との連絡体制

  顧客と連絡を取る方法を決めてください

 a)仕事(サービス)の内容に関する情報
自社が発信する情報
  業務メニューの紹介、人や施設の紹介など 
  どの部門が、顧客に対して、どのような情報提供をするかを決めてください
顧客から得る情報
  顧客ニーズ、市場動向など 
  どの部門が受付けて、社内に伝えるかを決めてください。

 b)引き合い情報・契約・受注に関する連絡
受付ける担当者と、処理をする担当者を決めてください。
その処理をする担当者に、間違いなく伝える仕組みを作ってください。

 c)仕事(サービス)に対する顧客の意見・要望、苦情
受付ける担当者と、処理をする担当者を決めてください。
だれが受付けても、その処理をする担当者に、間違いなく伝える仕組みを作ってく
ださい。


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 7.3 企画・デザイン・開発
本項のサービス業への適用
ここで定める仕組みは、以下の場合に使います
 ・新しい仕事(サービス)の企画・デザイン
 ・実施計画の作成(サービスの設計)
 ・新しい仕事(サービス)のメニューの開発
ただし、単なるサービスメニューの組み合わせ(ルーティン作業)で対応できるものに、本
項を当てはめる必要はありません。なお、以下ではこれらの活動を「企画」と呼びます。こ
の単語がイメージに合わない会社は、適当な単語に読み替えてください。

7.3.1 企画のスケジュール

 企画の検討に当たって、企画が完成するまでのスケジュールを作ってください。
 
 スケジュールの内容
スケジュールの中で、次のことを決めてください。
a)企画の検討がどのような段階に分かれているか
b)企画のレビュー/検証/妥当性確認を、どのようなタイミングで、どの
  ような内容(実施者、承認者、確認方法、試験方法 など)で行うか
  これは、a)で決めた段階ごとに(必要なものを)決めてください
c)企画の実施者、承認者

 チーム間の連携
複数のチームが企画に参加している場合には、チーム間の連絡や情報交換の方法
【インタフェース】を決めてください。
例えば、定期的な会議、報告書の発行、データベースの利用など

 計画書の変更
企画の検討開始の後、状況の変化に合わせて、スケジュールを改めてください。

 <補則事項>
企画のレビュー/検証/妥当性確認は、それぞれ別の役割を持っているので、そ
れぞれを確実に行ってください。
しかし、これらを、同時に行ったり、1つの記録にまとめてはいけないということで
はありません。それぞれの役割を果たせれば良く、仕事(サービス)の性格や会社
の事情に合った形で実施してください。


7.3.2 企画の元になる情報(インプット)

 企画をする業務(サービス)について、考慮しなければいけない項目【設計・開発への
 インプット】をリストアップしてください。リストアップした結果は、記録として残し
 てください(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)。

 リストアップする項目
リストアップするのは次の項目です
a)企画するサービスの内容や品質
必要なサービスの目的、役割、内容など
満たすべき基準
それを確認するために必要な検査 など
b)法律上で守らなければいけない項目
許認可の必要性
法律で決まっている品質の基準
禁止されていること など
c)類似したサービスから得られる情報
踏襲すべきサービスの内容や基準
過去のトラブルに対して行った対策 など
d)その他の必要な情報

 リストアップした項目の確認
リストアップした項目が正しいかどうか、担当者を決めて内容を確認して下さい。
企画に組み込まなければいけない項目が、抜け落ちないようにしてください
曖昧な内容を避けて、考慮すべきことを明確に書いてください
リストアップした項目同士で、矛盾がないようにしてください
(この項には2008年版で言葉の変更がありますが、意味は変わりません)


7.3.3 企画書にまとめる内容(アウトプット)

 企画の結果のまとめ方
完成した企画【設計・開発からのアウトプット】を、どのような形(文書や図面)
で報告するかを決めてください。
報告の中には、最初にリストアップした項目【設計・開発へのインプット】と比較
ができる資料を含めてください。
(この項には2008年版で言葉の変更がありますが、意味は変わりません)
 結果の報告に含める資料の例として、次のようなものがあります
業務仕様書、計画書、処方、レシピ、検査基準書など(製品仕様)
業務マニュアル、作業手順書、チェックリストなどの、サービスの実施のため
の文書

 結果の承認
完成した企画を、責任者が承認してください。
承認してから、次のステップ(次の企画段階、サービスの実施など)へ進めて下さ
い。

 必要な項目
完成した企画は、次の点が分かるようにまとめてください
a)最初にリストアップした項目(その中の必須条件)【設計・開発へのインプッ
  ト】をクリアしていること
b)企画した仕事(サービス)を実施するために必要なことが決まっている。
  資材の調達や外注のために必要な事(部品・資材・原材料の仕様)が決まって
  いる
c)仕事(サービス)の良し悪しを判断する基準(合否判定基準)。
d)企画した仕事(サービス)を実施する際に(安全や、正しい手続きの面から)
  注意しなければいけない項目が分かるようになっている。

 <補足説明>
製品の保管方法、保管条件、包装や梱包の仕方についても、詳しく決めておくこと
が望ましい(必要な場合)。


7.3.4 企画のレビュー(関係者による確認)

 会社は、企画のレビューを、スケジュールに沿って行ってください。
 レビューは、必要なチェックが漏れないように、その回数・時期・内容・参加者などを
 計画して、実行してください。【体系的なレビュー】

 レビューの内容
企画のレビューとして、その企画に関係している、各セクションの代表者のチェッ
クを受けて下さい。
ここで言う代表者は、部門長ではなく、仕事の内容を分かっている人です。
レビューは会議でも、文書でもよく、また何度やってもかまいません。
各部門を一堂に集めるのでも、時期を分けて行うのでも良いです。

 レビューで評価すること
レビューでは、次のことを行ってください。
a)目的に合ったサービスを、企画できそうかどうか評価する
b)問題点を見つけて、対策について考える

 レビューの記録
企画のレビューの記録を残して下さい。レビューの結果、何かの対策をした場合
は、その記録も残してください(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)。


7.3.5 企画の検証(企画の内容確認)

 会社は、企画の検証を、スケジュールに沿って行ってください。

 検証の内容
完成した企画【設計・開発からのアウトプット】が、最初にリストアップした項目
(その中の必須条件)【設計・開発へのインプット】をクリアしていることを確認
してください。

 検証の記録
企画の検証の記録を残して下さい。検証の結果、何かの対策をした場合は、その記
録も残してください(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)。


7.3.6 企画の妥当性確認(リハーサル)

 会社は、企画の妥当性確認を、スケジュールに沿って行ってください。

 妥当性確認の内容
会社は、企画した業務(サービス)が狙い通りに実施できることを、(可能なら
ば)実際にやってみてください【指定された用途又は意図された用途】。
これに当たるものに、リハーサル、モニター、設備の試運転などがあります。実地
で確認ができない場合には、他の適切な方法で実施上の問題がないことを確かめて
下さい。
この「企画の妥当性確認」は、できる限り最初にその仕事(サービス)を実施する
前に行ってください。

 妥当性確認の記録
企画の妥当性確認の記録を残して下さい。妥当性確認の結果、何かの変更をした場
合は、その記録も残してください(記録を保管する方法については4.2.4に決めま
す)。


7.3.7 企画の変更管理

 企画の変更内容の記録
会社は、企画の内容を変更する時は、その変更について記録を残してください。

 レビュー・検証・妥当性確認の実施
変更を行なうに当たり、企画のレビュー/検証/妥当性確認の中で必要なものを
(スケジュールに)決めて、実行してください。
既に実施している仕事(サービス)の内容を変更する際には、その変更によって、
既にサービスを受けた人(受けている人)にどのような影響が出るかを、企画のレ
ビューの中でチェックしてください。(例えば、変更後のサービスのためのソフト
ウェアや消耗品が、変更前から受けているサービスにも使えるかなど)

 レビュー・検証・妥当性確認の記録
企画のレビュー/検証/妥当性確認の記録を残してください。その結果、何かの
変更をした場合は、その記録も残してください(記録を保管する方法については4.2.4
に決めます)。
 (この項には2008年版で段落構成が変更されています)



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