らくらくISO9001講座



口語訳 ISO9001:2008
製造業用

8章 仕事の評価と改善活動
8.1 8章のまとめ
8.2 仕事の確認
8.3 不良品の取扱い
8.4 データの分析
8.5 改善活動

青字 は2000年版から変更された部分です    
緑字 はこの口語訳で独自に追加した補足説明です
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改訂 2009.05.25

8章 仕事の評価と改善


8.1 8章のまとめ

会社は、ルールを決めて、仕事がうまく行っているかどうかを確かめてください
【監視】。必要な場合には、検査や測定【測定】を行い、また得られたデータを分
析してください。
会社は、改善の仕組みを決めて実行してください。

仕事の確認、検査、測定、分析、改善を行う目的は、以下の通りです。
a)製品の品質を証明する。
 (この項には2008年版で用語の変更がありますが、意味は変わりません。
   製品の適合性 → 製品要求事項の適合)
b)会社の仕組みが、決めた通りに動くようにする。
c)仕事がうまく行くように【品質マネジメントシステムの有効性】、常に仕組み
  を見直して改良する。【継続的改善】

仕事を確認し、改善するために使う方法を決めて下さい。また、その方法を使う際
に、どのくらい詳しく確認するかを決めて下さい。
この際、統計的品質管理が使った方が良いかどうかを検討してください。




8.2 仕事の確認

8.2.1 顧客による評価

 顧客の評価の調査
販売した製品が、顧客の用途に適したものだったか(性能や品質に問題がなかった
か)について、顧客から情報を集めて下さい。
この調査の結果は、会社の仕組みがうまく行っているかを判断するための情報の1
つです。
調査の方法と、調査の結果の活用方法について決めてください。

 <補則説明> 調査方法の例
これには、例えば、次のような調査方法があります
  顧客満足アンケート
  顧客が調べた結果をもらう(受入検査の結果、不良の発生数など)
  使用者の意見を分析する
  使用を中止されたケースについて理由を調べる
  顧客から誉められたこと
  販売後に損害の補償を求められたケースの分析
  販売店からの報告
    


8.2.2 内部監査

 内部監査で実施する内容
会社は、定期的に内部監査を行ってください。
内部監査では、以下の点について、確かめてください。
a)個々の製品についてのルール(製品仕様、検査基準、作業基準など)を守って
  いるか。
  ISO9001のルールと合っているか。
  会社が決めた仕事のルールを守っているか。
b)会社の仕組みがうまく機能して、良い結果に結びついているか。その状態が保
  たれているか。

 内部監査の計画
会社は、監査の計画を作ってください。
そのなかで、以下の内容を決めてください。
1)監査の基準ISO9001、品質マニュアルなど)
2)監査の範囲(対象部門、対象現場、対称製品など)
3)監査の頻度(1年間の内部監査の実施回数、部門ごとに変えても良い)
4)監査の方法(部門ごと/製品ごと、事務所監査/現場の監査 など)

監査の頻度や方法は、業務の重要性、部門の重要性、これまでの監査結果を考慮し
て決めてください。
客観的で公平な監査になるように、スケジュールを決め、担当の監査員を決めてく
ださい。この際、監査員が、自分の仕事を監査しないように決めてください。

 内部監査のルールの文書化
内部監査のルールを決めてください。このルールは、文書で定めてください
ルールでは次の項目について、責任者と実施方法を決めてください
1)計画
2)実施
3)記録の作成
4)結果の報告

 内部監査の記録
内部監査の記録を残して下さい(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)

 是正処置
監査を受けた部門の責任者は、速やかに、指摘された全ての不適合の修正と是正処
置(再発防止)を行ってください(是正処置のやりかたについては8.5.2に決めま
す)。
処置の確認【フォローアップ】として、修正や是正処置の結果を評価し、評価結果
を報告してください。

 <補足説明>
内部監査の実施方法について。ISO19011(品質マネジメントシステム/環境マネジメ
ントシステムの監査のガイドブック)を参考にしてください。 


8.2.3 業務の進み具合の確認

会社は、各々の業務【プロセス】が予定通りに進んでいるかを、適切な方法で確か
めてください【監視】。数値で判断することが必要な場合には、そのデータを集計
あるいは測定してください【測定】製造工程などで、稼働状況の把握のために、
設備や製品の状態を測定することも、これに含まれます。
その業務が、今の進み方で最終的に予定通りの結果になりそうかを、判定してくだ
さい。

各々の業務について、うまく進んでいない場合には、正しく進むように対策【修
正】をしてください。さらに必要な場合には、今後に同じような問題が発生しない
ように、再発防止の対策【是正処置】をしてください。

 <補足説明>
どのような方法で確認や測定をするか、あるいはどこまで精密に集計や測定をする
かは、その業務の重要さを考えて決めてください。
ここで言う業務の重要さは、それが製品の品質【製品要求事項の適合】にどの程度
影響するか、あるいは、仕事の結果【品質マネジメントシステムの有効性】にどの
程度影響するかを考えています。   


8.2.4 製品の検査

 検査の実施
会社は、製品が決めた製品仕様に合っていることを確かめるために、検査をして下
さい。
 これには、次のようなものを含みます。
  ・製造後に行う検査(最終検査、製品検査、竣工検査など)
  ・製造の途中で行う検査(工程検査、中間検査、段階検査など)
  ・製造の途中で行う検査以外の品質チェック(全数あるいは抜取チェック)
  ・製造で連続的に測定・監視している品質(計器による連続測定など)
検査は、あらかじめ検査基準、QC工程表、図面などで、決めていた通りのタイミン
グと内容【個別製品実現の計画】で行ってください(どのような検査をするかは、7.
1項で決めています)。

製品が、検査基準に対して合格したかどうかが、分かるようにしてください。【合
否判定基準への適合の証拠を残すこと】
 多くの場合は、記録に残すことになりますが、これに限りません。現場で合格品
 であることが確認できて、正しく処理されるようになっていれば良いです。

 検査の記録
検査の結果を最終的に確認して、顧客への出荷を承認した人の名前を、記録に残し
てください。(検査した人ではなく、検査結果に責任を持っている人です)
(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)

 出荷許可
決めた検査が全て終わり、合格するまで、製品を顧客に出荷しないでください(ど
のような検査をするかは、7.1項で決めています)。

なお、あらかじめ決めておいた責任者が認めた場合には、検査が終わっていなくて
も出荷できます(そのようなルールを認めます)。ただし、製品の仕様や、検査の
実施について、顧客との約束がある場合には、顧客の許可も必要です。
      




8.3 不良品の取扱い

 不良品の誤使用の防止
会社は、不良品【不適合製品】が誤って出荷されたり、(部品や原材料として)使
用されることがないように、ちゃんと管理をしてください。そのために、まず表示
や置き場によって良品と区別し【識別】、その後は確実に処分をしてください。

 責任と権限
不適合品の処理のルールを、文書に定めてください。その中で、次のことを決めて
ください。
1)不良品が誤って使用されないように管理をする責任者
2)不良品の処理の方法を決める権限を持つ人、その決定に責任を持つ人
3)不良品の処理の実行に責任を持つ人
(この項には2008年版で文章の変更がありますが、意味は変わりません)


 不良品の処分方法
不良品の処分の方法には、次の4種類があります(いくつかの方法をあわせて実施
する場合もあります)。
(この項には2008年版で言葉の追加がありますが、意味は変わりません)

 a)合格品に変える
ISO9000によると、これに該当するのは手直し再格付けです。
手直し(何らかの手を加えて合格品に作り変える)
これには、再加工、部品の交換、前の工程に戻して作り直す、悪い部分を取り
除く、全数選別で不良を除き合格ロットに変える、などの方法があります。
再格付け(下級品の合格品として取り扱う)

 b)特別採用
不良品のまま顧客に引取ってもらう、不合格品のままで使用する(部品、原材料の
場合)、あるいはそのまま判定を合格に変える。この場合は、あらかじめ権限をも
つ人を決めておき、その人が承認をしてください
最終製品であって、その不合格となった検査項目について顧客との約束がある場合
は、顧客による特別採用の許可が必要です。

 c)使えないように処分する
これには、廃棄、つぶしてリサイクルする、返品(購入品の場合)などがありま
す。

 d)出荷済みの不良品の回収などを行う
既に顧客に引き渡されている製品に不良が見つかった場合は、その不良による(予
想される)被害の重大さに見合う、適切な対策を取ってください。
これに該当するのは、クレーム情報や、社内での問題発覚などから、出荷した製品
が不良である(あるいは、出荷済みのロットに不良品が含まれている)ことが分か
った場合です。対策方法としては、使用中止の申し入れ、修理、回収などがありま
す。
また、接客サービスのように、不具合が発生すると同時に顧客に迷惑をかけてしま
うような業務も、この項の対象となります。
 
 手直し後の再検査(この項には2008年版で段落の順番の変更があります)
不良品を手直し【修正】した場合は、合格品になったことを確かめるために、再検
査をしてください。


 不良品の記録(この項には2008年版で段落の順番の変更があります)
不良品の記録を残して下さい。その中には次の内容を記録してください。
・不良品の状態
・不良品に対して行った処置(特別採用の記録を含む)
(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)    




8.4 データ分析

 データ分析の目的
会社は、データを集め、分析をしてください。
このデータ分析は、次の目的のために行います
1)会社の仕組みがうまく機能し、良い結果に結びついていること【品質マネジ
  メントシステムの適切性及び有効性】を確かめる
2)さらに良い結果が出るように仕事の仕組みを改良できる部分を見つける
  【品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善】

このデータ分析には、仕事の実施情況を確認した結果(8.2項)を使ってください。
また、それ以外に有効な情報があれば使ってください。

 不良品の処分方法
データ分析をする項目に、次のものを含めてください
a)顧客の期待に答えているかどうかの情報(8.2.1項で得た市場調査データ)
b)製品の品質8.2.4項で得た検査データなど)
c)製品の傾向やばらつき/製造工程【プロセス】の傾向やばらつき
  これらのデータを基に、予防処置を開始することがあります
  (8.2.3や8.2.4項で得た、製造工程の監視データなど)
(例えば、管理図やヒストグラムなどの統計的品質管理から得られるデータ。
稼働率、リードタイム、製造原価などの製造工程に関わるデータ。)
d)納入業者・外注業者の実力7.4項で得た、業者の評価や受入検査のデータ)




8.5 改善活動

8.5.1 仕事のやり方を改良すること

会社は、仕事がうまく行くように【品質マネジメントシステムの有効性】、常に仕
組みを見直して改良してください。【継続的改善】

そのために活用する活動は、次のものです。
・品質方針
・品質目標
・外部監査と内部監査
・データの分析
・是正処置
・予防処置
・マネジメントレビュー


8.5.2 是正処置(再発防止)

 再発防止は原因の除去
会社は、発生した問題(不良品、クレーム、工程トラブル、ルール違反、仕組みの
不整合など)に対して、是正処置(再発防止対策)を行ってください。
是正処置(再発防止対策)とは、問題が発生した原因を突き止め、原因を取り除く
ことをいいます。

 是正処置の程度
是正処置として実施する内容は、発生した問題の重大さとのバランスを考えて、適
切な程度にしてください。

 是正処置の進め方
是正処置のルールを文書に定めてください。このルールには、以下の内容を含めて
ください。
a)発生した問題の内容を確かめる
  顧客のクレームは、是正処置の対象に含めてください
b)原因を突き止める
c)原因を除き、再発防止をするために、どのような対策が必要かを判断する
d)対策の内容を決める
  対策を行う
e)行った対策の内容と結果を記録する(記録を保管する方法については4.2.4に決
  めます)
f)対策が行われ、問題が解決したこと【是正処置の有効性】を確かめる


8.5.3 予防処置(未然防止)

 予防処置は未然防止
会社は、今のままでは、発生が予想される問題(不良品、クレーム、工程トラブ
ル、仕組みの不整合など)に対して、予防処置(未然防止対策)を行ってくださ
い。

 予防処置の程度
予防処置として実施する内容は、予想される問題の重大さとのバランスを考えて、
適切な程度にしてください。

 予防処置の進め方
予防処置のルールを文書に定めてください。このルールには、以下の内容を含めて
ください。
a)予想される問題の内容を確定し、その発生原因を推定する
b)原因を除き、発生防止をするために、どのような対策が必要かを判断する
c)対策の内容を決める
  対策を行う
d)行った対策の内容と結果を記録する(記録を保管する方法については4.2.4に決
  めます)
e)対策が行われ、問題が解決したこと【予防処置の有効性】を確かめる


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