らくらくISO9001講座



口語訳 ISO9001:2008
製造業用

7章 製品に関わる業務(2)
7.4 購買・外注
7.5 製造
7.6 計測器と試験装置の管埋

青字 は2000年版から変更された部分です    
緑字 はこの口語訳で独自に追加した補足説明です
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改訂 2008.01.16

7章 製品に関わること


7.4 購買・外注

7.4.1 購買・外注の仕組み

 購買の仕組み
会社は、購入した部品・原材料・資材、あるいは外注委託した業務に品質不良が起
こらないように、購買の管理の仕組みを作ってください(ISO9001では、外注も購買
の一部です)。
ここでいう“購買の管理”には、発注の仕組み、納入業者や外注業者の管理の仕組
み、受入検査の仕組みを含みます。
  
 管理レベルの決定
会社は、購入する物品(あるいは外注する業務)の重要さによって、業者を管理す
る方法や、受入検査の方法【管理の方式と程度】を変えてください。
購入する物品や外注する業務の重要さは、その後の製造工程や、最終製品の品質
に、どの程度影響するかによって判断します。
納入業者(外注業者)の管理の方法には、次のようなものがあります
 ・新規採用の時の調査項目を指定する
 ・資料やデータの提出の義務付ける
 ・品質保証協定書を締結する
 ・定期ミーティングや、立入監査を実施する
 ・要員を登録させる 

 業者の評価
納入業者や外注業者を採用する時は、事前に評価をしてください。【評価】
評価の結果を元に、採用を決めてください。【選定】
定期的な再評価、または問題が発生した時などに業者の再評価をしてください。
【再評価】
評価や採用は、業者の品質に関する実力を元に行ってください。
評価(再評価を含む)及び採用のための基準を決めてください。

 評価の記録
評価の記録を残してください。
評価の結果を受けて何かの対策(業者への改善の申入れ、業者の管理方法の変更、
受入検査の方法など)をした時は、その記録も残して下さい。
(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)
  


7.4.2 発注の内容

 業者と取り交わす内容
納入業者や外注業者との契約や発注に当たって、業者と取り交わす内容【購買情
報】を決めてください。
これには、次のようなものがあります。
1)購買品や外注作業の内容を決めるもの(契約)
    購買仕様書、図面、QC工程表、作業指示書、検査基準など
2)発注の際に、業者に連絡する項目(発注)
    品番、数量、納期など

 業者との取り決め
業者と取り交わす文書の中で、次の中で必要なものを決めてください。
a)購入する部品・原材料、資材などの仕様
  外注業務の内容に関する取り決め
  製造方法や購買品の取扱い方法に関する取り決め【手順・プロセス】
  使用設備に対する取り決め
b)従事者の資格に関する取り決め(公的資格、社内の資格の認定)
c)ISO9001等の認証取得の要求

 発注内容の確認
契約や発注をする前に、(責任者を決めて)その内容が適切であることを確認して
ください。


7.4.3 受入検査

 受入検査
購入した部品・原材料、資材などの品質を保つために、必要な受入検査や、内容の
確認【検証】を行ってください。また、外注した作業についても、内容を確かめて
ください。

 購買先の工場で実施する受入検査
会社やその顧客が、納入業者や外注業者の工場に直接行って、検査や現物の確認を
行う場合があります。この時は、検査や確認の方法と、出荷許可の方法を、あらか
じめ決めてください。決めた内容は、7.4.2の業者との取り決めの中に入れて下さ
い。
これには、常駐して検査を行う場合、出荷ごとに確認に行く場合、輸送に費用のか
かる大型の製品で検査確認後に輸送する場合などがあります。
  




7.5.1 製造

7.5.1 製造の管理

  会社は、製造のためのルールを決めてください。
  ルールに従い、管理された状態で、製品を作ってください。
  
  特に、次の項目が当てはまる場合には、ルールを決めて管理をしてください

 a)製品の特性について書いた資料を用意する
製造のメンバーが知っておかなければならない製品の特性について、資料を用意し
てください。
この資料を、メンバーが見ることができるようにしてください。

 b)作業基準を用意する
必要な作業基準を作成してください。これを担当の作業者が使えるように配置して
ください。

 c)適切な設備を使用する
製造に使う設備を定めて、使用してください。
その設備が確実に使えるように、保守点検のルールを決めて管理をしてください。

 d)監視・測定機器の使用
製造や検査の際に使用する、計測器や試験装置を決めてください。
これらが利用できるように、校正・調整・保管などのルールを決めて管理してくだ
さい。
(この項には2008年版原文で用語の変更がありますが、意味は変わりません)

 e)工程検査・工程監視
必要な検査(受入検査、工程検査、最終検査)や工程監視について、7.1 c)項で決め
ました。決めたとおり検査や工程監視を行なってください。

 f)-1 製造の各段階の承認/出荷許可【りりース】
製造の各段階で、業務の完了を承認し、製品を次の工程へ送る許可【リリース】を
するためのルールを決めて、実施してください。
最終の工程を承認し、顧客への出荷の許可【リリース】をするためのルールを決め
て、実施してください。
(この項には2008年で言葉の追加がありますが、意味は変わりません)

 f)-2 顧客への出荷・輸送【引渡し
顧客への出荷・輸送を管理するためのルールを決めて、実施してください。

 f)-3 アフターサービス【引渡し後の活動】
アフターサービスのルールを決めて、実施してください。
  


7.5.2 検査で確認できない工程の管理【プロセスの妥当性確認】

 目的の品質の製品ができることの証明
作った製品の品質が、後の検査で確認できない製造工程は、その製造条件で、間違
いなく目的の品質の製品ができることを、試験やデータに基づいて証明【実
証】してください(この証明を「プロセスの妥当性確認」といいます)。
1)あらかじめ実機試作を行って、決めた品質の製品ができることを証明してくだ
  さい。公的機関により証明され、規格、仕様書、法令などとして定められた製
  造条件を採用することも可能です。
2)製造条件の日常監視により、決めた製造条件が守られていることを証明してく
  ださい
3)設備の定期点検や計測機器の校正などを行い、設備が正しく稼動していること
  を証明してください。
4)作業者のテクニックによって品質が決まる場合は、作業者の力量の証明も行っ
  てください。

 証明が必要な工程
このような証明【プロセスの妥当性確認】が必要な製造工程は、次の1)2)の両
方に当たる場合です
1)作った製品の品質が、その後の検査(工程検査・製品検査)で確認できない。
2)そのため、製品不良があっても、製造時には分からず、製品を使い始めてから
  判明する。

   これに該当する製造工程の例には、次のようなものがあります。
1)現品を破壊しなければ検査できないもの
   滅菌、殺菌、溶接、半田付け、接着、メッキ、塗装、焼入れ、樹脂成形、
   ファインセラミックの内部、火薬の製造、コンクリートの打設
2)直接検査する方法がないもの(費用や時間がかかり過ぎるもの)
   混合、調合、錠剤の製造、化学反応、食品の衛生状態
3)機械による全数検査(検査が正しいことを、後で確認する手段がない)
   金属探知機、重量チェッカー

医薬や食品など、安全について厳しい要求がある製品は、ある程度の検査(抜取検
査など)を行なっていても、十分ではない(確認できていない)と考えます。

なお、サービス業でも、この項に該当するケースが多くあります
1)接客サービス、医療、介護など
業務の失敗と同時に顧客に被害が及びます。サービス実施と提供(引渡し) 
が同時のため、引渡しの前の検査ができません。
2)分析センター、校正業、調査業
仕事そのものが検査であるため、その結果の正しさを別の検査で確認すること
は現実的ではありません。

 管理する項目
各々の工程について、次のルール(該当するもの)を決めてください。
a)製造条件を決めるためのルール【プロセスのレビュー】
  製造条件を承認する人【プロセスの承認】
実機試作の方法や判断基準を決めてください。
実機試作を行わない場合は、よりどころになる理論やデータをはっきりさせて
ください。
b)使用する設備の承認の方法(責任者を決めて承認してください)
設備が品質の決め手となる工程では、最初に設備の能力や性能に問題がないか
を確かめる必要があります。
確認の後、その承認した設備で実機試作、実際の製造を行います。
  作業者のテクニックを認定する方法
作業者のテクニックによって品質が決まる場合は、作業者の力量を確かめ、証
明する方法を決めます。
c)作業方法(作業基準)
実機試作などで決めた作業条件が、実際の製造の際に守られるように手順を決
めます。
d)どの記録を残すか(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)
日々の工程のチェックの記録を残します。また、実機試作や、設備や作業者の
能力確認の記録なども対象です。
e)証明のやり直しが必要なケース【妥当性の再確認】
製品の仕様の変更、資材部品の変更、設備の変更があった場合や、定期的な実
施が必要な場合に行います。変更により影響のあった製造条件、設備や要員の
能力などを確認します。


7.5.3 製品の区別とトレーサビリティ

 製品の区別【製品の識別】
会社は、製品や資材を取り違えないように、現場で、その種類やロット番号の見分
け【製品の識別】がつくようにしてください。これは、資材・部品の入荷から製品
の出荷までの、全ての工程で行ってください。
方法として、現物、外装、運搬用コンテナへの表示、置き場の表示、コンピュータ
画面上での表示などがあります。

 合格品/不合格品/未検査品の区別【製品の状態の識別】
会社は、製品や資材について、現場で、合格品/不合格品/未検査品その他の見分
け【製品の状態の識別】がつくようにしてください。これは、資材・部品の入荷か
ら製品の出荷までの、全ての工程で行ってください。
方法として、現物、外装、運搬用コンテナへの表示、置き場の表示、トラベルシー
トによる管理、コンピュータ画面上での表示などがあります。

 トレーサビリティ(ロットの追跡)
1)会社は、製品について、どの程度の詳しさで、トレーサビリティ(ロット追
  跡)が行えるようにするのかを決めてください。
2)会社は、トレーサビリティを行うために、製品にロット番号、シリアル番号、
  受注番号など(区別が出来れば日付でも良い)【一意の識別】をつけて管理し
  てください。
3)その番号を記録に書き込んで、どの番号の製品をいつ、誰が、どのように処理
  したかが、分かるようにしてください(記録を保管する方法については4.2.4
  決めます)。
  (この項には2008年で言葉の変更がありますが、意味は変わりません)

 <補足説明>構成管理
情報システム開発などの分野では、構成管理(構成部品ごとに、変更やその影響を
管理するシステム)が、製品の種類を見分け、トレーサビリティに必要な情報を記
録する手段となります。
   


7.5.4 顧客から預ったもの

 管理の方法
会社は、顧客から預かった品物(製品に使用する資材・部品、製造に使う設備・試
験装置、図面や作業指示文書など)がある場合は、気をつけて管理してください。
特に、次の点は、しっかりと行ってください。
1)表示や区分(取り違えないように、現場で区別がつくようにしてください)
  【識別】
2)受入検査、使用の際の確認 【検証】
3)紛失や損傷しないように管理する【保護・防護】

 顧客への報告
次の場合は、顧客に状況を報告してください。
1)紛失した
2)損傷させた
3)不合格品だった(受入検査や、使用の際に、使えないと分かった場合)
報告した内容は記録に残して下さい(記録を保管する方法については4.2.4に決めま
す)。
(この項には2008年版で言葉の追加がありますが、意味は変わりません)

 <補足説明>
漏らしてはいけない情報(技術情報、販売情報、個人情報など)も、顧客から預っ
た物と考えて下さい。


7.5.5 製品の保存

製品、資材や部品は、損傷して使えなくならない用に、ルールを決めて保管してく
ださい。
(この項には2008年版で用語の変更がありますが、意味は変わりません)

以下の項目で、必要なものについて、ルールを決めて管理して下さい。
1)表示【識別】(現場で製品を取り違えないための表示)
2)特別な取扱いの方法や注意事項
3)包装(製品の保護を目的としたもの)
4)保管(置き場所、在庫管理など)
5)保護(保管条件、損傷・紛失・盗難などを防ぐ手段など) 




7.6 計測器と試験装置の管埋

 計測器や試験装置の選定
会社は、製品の品質を証明するために、どのような測定や検査をするかを決めてく
ださい。そして、そこにどのような計測器や試験装置を使うかを決めてください。
(この項には2008年版で参照が削除されています)

 測定精度の考慮
計測器や試験装置は、それぞれの測定に必要な測定精度に合ったものを選んでくだ
さい【監視及び測定の要求事項との整合性】。

 品質を保証するため機器
顧客に品質を保証するために必要な計測器や試験装置は、以下のa)〜e)の方法
で、正しい測定値が出るように管理してください。
顧客に品質を保証するために必要な計測器や試験装置とは、次のようなものです
1)検査に使う機器(それ以降に再測定がある場合はのぞく)
2)品質に影響する製造条件を管理するための計測器(特に、7.5.2項で製造条件が
  管理の対象となっている場合は必須)
3)寸法や重量などの品質の調整に使う計測器(それ以降に再測定がある場合はの
  ぞく)
4)充填に使う重量計
5)これらの計測器の管理(校正・点検・調整)につかう標準器

a)校正・検証
計測器や試験装置は、定期的に、あるいは使用ごとに、校正や精度の確認【検
証】をしてください(校正と精度の確認は、両方が必要なこともあります)

校正や精度の確認の結果を記録してください(記録を保管する方法については
4.2.4に決めます)(この文は原文ではずっと下のほうにあります)

寸法、重量、温度など、世界の標準(あるいは国の標準)がある項目について
は、その標準とのつながりが証明できる【トレーサブルな】方法で校正してく
ださい。(通常は、校正の専門業者に依頼すれば、証明ができる方法で校正し
てくれます)
そのような公的に決まった方法がない場合は、どのような基準で、校正や精度
の確認をしたかを記録に残して下さい(記録を保管する方法については4.2.4
決めます)。
b)調整
使用開始時や、毎回の使用の前に、精度の調整が必要な計測器や試験装置は、
確実に調整をしてください。
c)校正の識別
計測器や試験装置の現物(あるいは保管箱など)に、正しく校正がされてお
り、校正の有効期限内にあることが分かるように、表示をしてください。
   (この項には2008年版で文章の変更がありますが、意味は変わりません)
d)校正が狂わされないようにする 
校正や調整がずらされないように、必要な対策(表示、防護カバーなど)をし
てください。
e)保護
   計測器や試験装置が、壊れたり、機能が低下したりしないように、次の点
   について管理方法を決めてください
・取扱い方法
・保守管理の方法(点検、メンテナンス、修理)
・保管(場所、保管環境)

 計測器や試験装置に異常があった場合の処置
計測器や試験装置が正常でないことが分かった場合は、次のような対策が必要です
1)その計測器や試験装置を用いた過去の測定結果を検証して、その時に測定をし
  た製品に問題がなかったかを、調査してください。
2)調査結果を記録して下さい
3)計測器や試験装置を修理してください。
4)影響を受けた製品に対して、適切な対策をしてください

 コンピューターソフトウェアを組み込んだ機器
計測器や試験装置に、コンピューターソフトウェアが組み込まれている場合は、使
い始める前にその機器で目的の測定ができることを確認して下さい。必要な場合
は、繰り返し確認をしてください。

 <補足説明>
コンピューターソフトウェアの機能を確認する際は、継続的に機器が正しく働くよ
うに設定されていることを確かめてください。また、そのために必要な構成管理
(ソフトウェアを構成する要素のバージョン管理)をしてください。


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