らくらくISO9001講座


  
ISO9001
2015年版
【製造業編】

灰字は、JISが用いている用語
緑字は、本文にない、この口語訳独自の補足


8章 仕事を行う(会社の主要業務)(2)
(改訂 2016.08.13)

8.4 購買・外注
8.5 製造工程
8.6 製品検査
8.7 不良品の管理



 8.4 購買・外注


 8.4.1 購買・外注の仕組みを作る

   会社は、求めている品質の購買品が得られるように、また外注(アウトソース)の結果が
   得られるように、(以下のように)仕組みを作って管理して下さい。
   これには、無償で提供を受ける場合も含みます。

  購買・外注の種類
   ここで、購買・外注(アウトソース)と言うのは、次のような場合です。
a) 外部から入手した物を、自社の製品の原料、材料、部品などとして使う場合。
   (主に購買。無償の提供も含む)
b) 製品を、外注先から直接顧客に届ける場合。(OEM製品など)
   サービス業で(自社の立会なしに)外注業者が、直接顧客にサービスを行う場合。
   (製造業でも、設置工事、修理、製品の定期点検などでこのケースがある)
c) 自社の仕事の一部を、外注に実施させる場合。
   (製造工程、設計、検査、設備管理、輸送など)

  購買先・外注先の管理
   会社は、購買先や外注先について、以下の管理を行って下さい。そのための判断基準を
   決めて下さい。
◆品質管理や供給能力などの、購買先や外注先の実力を評価する。【評価】
◆購買先や外注先として使用するかを決める。【選択】
◆購買品、外注品、外注(アウトソース)したサービスの品質を評価する。
  (受入検査の結果、納期順守率など) 【プロセス パフォーマンの監視】
◆必要に応じて、定期的に評価を行う。あるいは、問題の発生時に再評価を行う。
  【再評価】

   会社は、以上の評価の結果や決定を記録して下さい。その記録を保管して下さい



 8.4.2 購買・外注を管理する方法を決める

   会社は、購買・外注(アウトソース)の管理を行って下さい。
   購買品や外注が原因で、最終的な製品やサービスに悪影響が出ないように、ルール
   を決めて管理して下さい。

a) 購買や外注は、必ず、自社の品質に関わる仕組み【品質マネジメントシステム】の
   一部として管理して下さい(管理されている状態を保ってください)。
b) 購買先・外注先(業者)に対する管理方法を決めて下さい。
    購買・外注先の管理には、仕事の指示、技術指導、仕事の方法の承認、記録を
    提出させる、定期的な打合せ、監査や評価の実施、改善の要求、これら含む契約
    などがあります
   購買品や外注の結果(製品)に対する管理方法を決めて下さい。
    購買・外注先に行わせる検査や品質チェックについて決めるなど
    (受入検査についてはd)項で定める)
    製品の取扱や保管について、購買・外注先と約束する
c) b)の管理方法(管理レベル)を決める時は、以下の点を考慮して下さい。
   1) 購買品や外注(アウトソース)が、最終的な製品やサービスの品質に与える影響
     の大きさ
   2) 購買先・外注先の、品質管理の実力
d) 購買品の受入検査の方法、あるいは外注の結果を確かめる方法を決めて下さい。



 8.4.3 購買・外注先との約束

   会社は、以下の内容(該当するものを)を購買先(または外注先)に伝え、必要な場合
   には取り決め(納入仕様書、契約など)を行って下さい。
   伝える前に、内容が正しいことを確かめて下さい。

a)  購買する製品・外注(アウトソース)する製品やサービスの内容を決めて下さい。
   (製品名、品番、製品仕様など。サービスのメニュー、内容など)
b) 必要な場合には、次の事項について、承認をして下さい
   1) 製品仕様(図面、納入仕様書など)、サービスの内容(仕様書、計画書など)
   2) 製造方法,サービスの実施方法
     製造やサービスに用いる設備(使用設備を限定する場合)
   3) 製品の出荷許可の条件
     引渡しの方法(納品の方法、サービスの報告の方法など)
c) 作業者の訓練、資格、実施者の登録などの取り決め。
d) 自社と購買先・外注先との、仕事の連携方法(仕事の分担や、情報のやり取りの
   方法など)
e) 購買先、外注先に対して行う管理(提出を求める記録、打合せや監査の実施など、
   購買先・外注先にと合意が必要な項目など)
   購買品やサービスの品質の評価として行う内容。
f) 会社が(またはその顧客が)、購買先・外注先で実施する検査や製品の評価
   (大型設備の立会検査など)





 8.5 製造工程


 8.5.1 製造工程の管理

   会社は、製造工程が正しく行われるように、管理をして下さい。
   特に、以下であてはまるものについては、ルールを決めて管理をして下さい。

   文書の使用
a) 仕事を行う人が、以下のような文書を見られるようにしておいて下さい。
   (作業手順、技術資料など)
   1) 製造する製品、実施するサービス、それに伴う様々な仕事について、知っておく
     べき情報を書いたもの。
   2) それぞれの仕事について、何がどうならなければいけないのか(うまく行ったか
     どうかを、何で判断するのか)について決めたもの。

   工程の管理
b) 必要な計測器、検査機器を用意し、使えるようにしておく
c) 仕事の進み具合や、製品・サービスの品質を確かめる方法を決めて実施する
   (チェック、確認、検査など)、
d) 仕事に必要な建物、設備、道具(コンピュータネットワーク、通信手段なども含む)
   を用意して、適切に使って下さい。
e) 必要な知識や技能を持った人に仕事をさせて下さい。必要な場合には、仕事の
   (特定の業務の)資格認定を行って下さい。

   検査で確認できない工程の管理 【プロセスの妥当性確認】
f) 仕事の結果の良し悪しについて、検査や品質チェックができない仕事については、
   あらかじめ、その製造方法で目的の品質が得られることを証明しておいて下さい。
   また、その決めた通りの方法で製造が行われていることを証明して下さい。
   定期的に、その方法に問題がないことをチェックして下さい。【妥当性確認の再確認】
   試作で、製造条件が適切であることを確めて下さい。
   試作と同じ条件で製造されていることを毎回の工程の監視で確かめて下さい。
   必要に応じて、使用する設備や計測機器の事前確認や日常管理を徹底して、
    想定通りに製造が行われていることを確かめて下さい。
   実施者の訓練を確実に行い、必要な場合には資格認定を行って下さい。
   ●定期的なチェックには、製品の検査(期限を決めて時々行うもの)、統計的なデータ
    の確認、設備の定期点検、実施者の技量の再チェックなどがあります

   ヒューマンエラーの対策
g) ヒューマンエラーを防止するための、対策を行って下さい。

   引渡し・アフターサービス
h) 次の工程への引渡し、顧客への納品を、管理して下さい(8.6項)。
   アフターサービスを管理して下さい(8.5.5項)。



 8.5.2 製品の取違えの防止・ロット追跡

  製品の区別
会社は、製品を取違えることがないように、現場で区別がつけられるようにして下さい。
(表示、色づけ、容器の色や形状、置き場所による区別など)

  合格品・未検査品・不合格品の区別
会社は、現場で、検査合格品と未検査品や不合格品との区別がつけられるようにして
下さい。

  トレーサビリティ(ロット追跡)
トレーサビリティ(ロット追跡)が必要な場合、会社は追跡のための適当な目印を決めて
下さい。(ロット番号、受注番号などの番号、製造日など)
トレーサビリティ(ロット追跡)を可能にするために、必要な情報(目印)を記録に残して
下さい。その記録を保管して下さい。
トレーサビリティでは、製造日、サービスの実施日、使用した部品や資材、その他のデータ
が分かるように記録を残します。



 8.5.3 顧客や購買・外注先から預かるもの

   会社は、顧客や購買・外注先から預かった(支給や貸出しを受けた)物品がある場合、
   自社で預かっている間に、それを壊したり無くしたりすることがないように、注意をして管理
   をして下さい。
   また、機密情報(技術情報、個人情報など)を預かっている場合や、自社で集めた顧客の
   個人情報を保存している場合は、情報を、消失したり外部に漏らしたりしないように、注意
   をして管理して下さい。

   会社は、預かっている物について、次の管理を行って下さい。
◆その物品を、使用者が取違えることがないように、適当な表示や目印を行う。【識別】。
◆受入れた時や使用する時に行う、検査や確認の方法を決めて、実施する。【検証】。
◆預かった物品を、壊したり無くしたりすることがないように、適切に保管し、また取扱う。
  【保護・防護】。
◆預かった情報を、消失したり外部に漏らしたりしないように、セキュリティ対策を行う。
  【保護・防護】。

   会社は、預かった物品や情報について問題が発生した場合には、そのことを預けた顧客や
   業者に連絡して下さい(壊したり無くした場合、使えないと分かった場合、情報を消失したり
   外部に漏らした場合が該当します)。
   会社は、発生した問題について記録して下さい。その記録を保管して下さい。

  <補足説明> 
   顧客や購買・外注先から預かる(支給や貸出しを受ける)物には、材料、部品、道具、設備、
   顧客の施設、知的財産(図面、マニュアル、データなど)、個人情報などがあります。



 8.5.4 製品の保管・保護

   会社は、製品が劣化したり破損して不適合品にならないように、あるいは仕事の結果が無効
   にならないように、必要な保存(在庫あるいは一時保管)の方法を決めて、実施して下さい。
   これには、以下のような場合が該当します。
◆最終製品、中間製品、資材、原料、部品、サービスに使う物品の保存
◆ソフトウェアや、情報(電子情報、文書)の保存(これらが、製品に当たる場合)

  <補足説明> 
   保存のルールには、以下のことを含めることが望ましい。
◆責任者、置き場、期間などを決めて保管すること。【保管】
◆使用者が取違えることがないように、適当な表示や目印を行うこと。【識別】
◆製品が劣化したり破損しないように、取扱うこと。【取扱い】
◆製品の劣化、破損、紛失を防ぐための対策を行うこと。【保護】
◆製品の汚れ、特に食品や医薬品などの衛生的な製品の場合に、汚染の防止を行うこと。
  【汚染防止】
◆製品の保護をするための包装を行うこと。【包装】
◆製品を保護した状態で輸送すること。【輸送】
◆ソフトウェア製品や電子化された情報の場合に、インターネットなどの通信手段で(保護
  した状態で)顧客に送ること。【伝送】



 8.5.5 アフターサービス

   会社は、(製品の販売にともなって)アフターサービスが必要な場合には、以下の管理を
   行って下さい。そのアフターサービスについて、基準を定め、これを満たすように管理を
   して下さい。
   会社は、アフターサービスの基準や管理レベルを決める時は、以下の点を考慮して下さい。
a) 法律で義務づけられたアフターサービス(たとえば、家電リサイクル法)
b) 販売後に予想される、故障、異常、事故など
   これは、修理やメンテナンスサービスの実施、保証期間などについて決めるための
   情報になります。
c) 製品及びサービスの性質,用途。製品の寿命(会社が想定したもの)
d) アフターサービスに関する顧客との約束
e) 顧客からの情報 (使用上の問題点、故障の情報など)

  <補足説明>
   アフターサービスの例には、以下のようなものがあります
◆無償の修理保証
◆定期的なメンテナンス、点検、校正などを契約して行う場合
◆使用終了後に、引き取ってリサイクルする、あるいは廃棄する



 8.5.6 変更の管理

   会社は、製造条件やサービスの実施条件を変更する場合には、変更が原因で不合格品
   (不適切なサービス)が発生しないように管理をして下さい。
◆変更の過程を管理して下さい。
◆あらかじめ変更の影響を調査して下さい【レビュー】
◆調査の結果を受けて、必要な確認や対策を行って下さい。
   どこまで、詳しく調査や管理をするかは、不合格品(不適切なサービス)の発生を防止する
   ために、必要な程度に応じて決めて下さい。
   ここで言う変更には、製造方法やサービス実施方法の変更、建物や設備の変更、
   作業者の変更、材料・原料・部品の変更、購買・外注先の変更などが含まれます(4M変更
   とも呼ばれます)。

   次の内容を記録して下さい。その記録を保管して下さい。
◆変更の影響について調べた結果【レビュー】
◆それを受けて行った対策の内容と結果
◆変更を承認した人





 8.6 製品検査

   会社は、検査や品質チェックを行って、製品が、規格・基準に合っていることを確かめてください。
   このような、検査や品質チェックは、適切なタイミングで行わなければいけません。あらかじめ
   (8.1で)決めたタイミングや実施方法の通りに行って下さい。
   決められた全ての検査や品質チェックを行って、合格するまでは顧客に納品しないで下さい。
   ただし、特別な事情があって、責任者(あらかじめ決めておくこと)が許可した場合は、検査
   が終わっていなくても納品できます。ただし、顧客にその検査の実施を約束をしている場合
   には、顧客の許可も必要です。

   会社は、検査、品質チェック、出荷承認の結果を記録して下さい。その記録を保管して下さい。
   これには、以下の内容を必ず入れて下さい
a) 合格したことを示す記録。その際に使った、合否判定基準が分かるようにして下さい。
b) 出荷承認をした人を記録して下さい。あるいは、だれが承認したかが分かる(たどって
   いける)ようにしてください。




 8.7 不良品の管理

 8.7.1 不良品の管理の方法

   会社は、不良品が誤って納品されたり(最終製品)、使用される(材料、部品、中間製品)こと
   がないように、管理して下さい。
   そのために、不良品に目印を付けるか、あるいは良品とは離れた場所に保管し【識別】、
   管理下においてください。

   会社は、不良品を正しく処理して下さい。
   既に納品されて、顧客の手元に渡っている不良品についても、適切な処理をして下さい。
   このような、不良品の処理の方法は、不良の内容や、それが与える影響の大きさ(重大さ)
   に合わせて決めて下さい。

   不良品の対応には、次のような方法があります。この中に、当てはまるものがあるならば、
   確実に行って下さい(1回の不良品の発生に対して、2つ以上の方法を行うこともあります)。
a) 何らかの手を加えて合格品にする。【手直し】 (組み直し、不良部品の交換、再加工、
   前の工程に戻す、不合格ロットの全数選別など)
   下級の製品とする。【再格付け】
b) 不良品を、良品と引き離して保管する。【隔離】
   保管されている不良品(自社倉庫、販売店、顧客)の出荷や使用を止める。【散逸防止】
   不良品を、倉庫や顧客から回収する。【返却】
   実施中のサービスを中止する。【提供停止】
c) 顧客に連絡する。
納品した製品が不良だったことを連絡する。
マスコミなどを通じて公表する。
(受注生産の場合などに)納品予定の製品が不良になったことを連絡する。
d) 特別に許可をして、不良品のまま納品する(最終製品)。または使用する(材料、部品
   部品など)。【特別採用】
   これらは、あらかじめ決めていた手続きに従って許可しなければいけません。
   【正式の許可】
   最終製品の場合や、最終製品の品質に影響する場合は、顧客の許可も必要です。

     a)の手直しを行ったときは、合格品になったかどうか確かめるために、改めて検査を行って
     下さい。


 8.7.2 不良品/サービス失敗の記録

   会社は、不良品を処理した結果を記録して、保管して下さい。記録には、次の内容を記載して下
   さい。
a) 不良品の品名、数量、状態
b) 不良品をどのように処理したか
c) 特別採用を行った場合は、その内容(誰が何を承認したか)
d) 不良品の処置方法を承認した人の名前



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