らくらくISO9001講座


  
ISO9001
2015年版
【製造業編】

灰字は、JISが用いている用語
緑字は、本文にない、この口語訳独自の補足


8章 仕事を行う(会社の主要業務)(1)
(改訂 2016.04.05)

8.1 ルールを定める
8.2 受注・契約
8.3 設計・開発



 8.1 ルールを決める

   ISO9001を行う事で
◆決めた品質の製品やサービスを顧客に提供します
◆リスクに備え、機会を生かします
◆品質目標を達成します

   そのために会社は、次のことを行って下さい。
◆必要なルールや計画を決めて下さい【計画】
◆決めたルールに従って仕事をして下さい【実施】
◆ルールが守られ、仕事が計画通りに進むように管理をして下さい【管理】
(このような活動は4.4で説明しているプロセスアプローチの考え方に沿って行います)。

   ルールを決める
具体的には、次のことを行って下さい。
a) 製品の仕様やサービスの内容を決めて下さい。
b) 仕事【プロセス】を管理するための、判断基準を決めて下さい。
   1) 個々の作業【プロセス】を管理するための判断基準
   2) 製品の合否判定の基準
c) 決めた品質の製品を顧客に提供するために必要な、建物、設備、スタッフなど
   【資源】を決めて下さい。
d) b)で決めた基準に従って,仕事を管理して下さい。
e) 必要な文書・記録を用意して下さい
   ここで必要な文書は、次のものです
1) 会社が、ルールで決めた通りに仕事が行われたことを(自ら)確かめるために、
   必要と考える文書や記録。
2) 顧客、審査機関などに対して)製品の品質を証明するために必要と考える文書
   や記録。
   文書は必要に応じて改訂して下さい。【維持】
   また、必要な記録を作成し、保管して下さい。【保持】

  <補足説明> 

◆ルールや計画の形について、決まりはありません。会社の仕事に合ったもの(作りやすい、
  管理がしやすい、使いやすいもの)にして下さい。

   ルールの変更
◆会社は、ルールや計画を変える時は【計画した変更】、そのことで問題が発生しないように、
  (十分に事前に確かめて)管理しながら進めて下さい。
◆ また、様々な状況の変化のために、ルールや計画を変えざるを得なくなった時は【意図し
  ない変更】、その変化や変更の内容を確かめて、その影響が小さくなるように対策をして
  下さい。

   仕事の外注
◆外注(外部委託、アウトソース)した仕事も、品質マネジメントシステムに含まれます。会社は、
      外注した部分も、適切な結果を出せるように管理をして下さい(具体的な外注の管理の
      方法は、8,4に定めます)。




 8.2 受注・契約


 8.2.1 顧客との連絡

   会社は、以下の項目について、顧客と連絡を取る方法(窓口となる担当部門、情報伝達の
   手段など)を決めて下さい。
a) 自社の製品の紹介、宣伝など
b) 取引・販売に関するやり取り
   製品の購入についての問合せ.。【引合い】
   製品の中身やその納品に関する約束。【契約】(契約書があるものに限り
    ません)
   注文(数量、納期、届け先に関する連絡)
c) 販売の後に、顧客からの意見や評価を受付ける、あるいは調査 する。これには、
   苦情の受付も含みます
d) 顧客からの支給品や預かり物に関する約束(当てはまるものがある場合)。
   その支給の依頼、受渡し、日常的な管理の方法
e) 非常事態の対応に関する約束
   非常時(出荷停止、回収など)の連絡
   非常事態に備えた準備(在庫の確保、代品の用意、複数場所での製造など)
    関する約束



 8.2.2 製品の仕様やサービスの内容を決める

   会社は、製品の仕様やサービスの内容を決めて下さい。
   この際、次のことを確かめてください。
   (これは、特定の顧客か決まっていない、カタログ製品、自社の企画製品の場合に、重要な
    項目です)
a) 必要な条件を満たしていること
   1) 関係する法律に合っている
   2) 会社があらかじめ必要と決めたルールや条件に合っている
b) 会社が公表する内容(カタログ、ホームページなど)に、偽り()
   がないこと



 8.2.3 受注・契約の管理

 8.2.3.1 受注・契約の内容の確認

   会社は、製品について顧客と約束をする時は、顧客に返答する前に/書類を提出する前に
   その約束の内容を点検【レビュー】して下さい。
   この点検では、以下のa)〜e)について、必要な項目が(何らかの形で)決められていることを
   確かめて下さい。
   ここで言う約束には、見積書や企画書の提出、契約、仕様書や図面の合意、個々の受注など
   があります

   また、この際、これらの約束(決めた内容)が実施可能な内容であることを確かめて下さい
   (約束の内容が、実施できるかどうか分からない場合には、実施可能であることを確かめて
    から返答する仕組みを作って下さい)。
   実施可能かどうかについては、技術レベル、サービスの内容、納期、実施時期、価格の面
   から判断します。

   明確になっていなければいけない内容は、以下の通りです
a) 製品の仕様や取扱い方法が、約束されている。
   引渡し(出荷、納品)に関する約束や、アフターサービス(8.5.5)についての約束にも、
   注意して下さい。 
b) 製品の仕様や取扱い方法について、その製品の用途や目的から判断して必要なもの
   (顧客との約束に含まれないもの)。
カタログ販売などで、顧客との間で、いちいち詳細な製品の仕様を確かめずに
  取引をする場合で、会社内部で決めている仕様や内容。
顧客との約束事項には明記していないが(わざわざ約束までしないが)、用途や
  目的から判断して、会社が当然必要な品質として決めているもの。
  【暗黙の要求事項】
c) a)b)以外で、自社で定めたルール.
d) 製品の仕様や取扱いに関する、法律上の制約
e) 顧客と約束(契約、受注)で、以前の約束との変更点
継続的に取引しているケースで、製品の仕様が変わる場合。
見積書などで約束していた内容を、正式受注に当たって変更するケースなど

   上のe)に該当する変更点がある場合は、顧客に返答する前に/契約を締結する前に、変更に
   ついて顧客と合意するようにして下さい。

   顧客からの口頭の注文についても、(記録に控えて)上のルールに従って、内容の確認を
   行って下さい。


 8.2.3.2 受注契約の記録

   会社は,以下の項目について、必ず記録を残してください
a) 製品の仕様やサービスの内容について、確認したことを示す記録(顧客と約束した内容、
   決定した製品の仕様やサービスの内容、確認・承認・決定した内容など)。
b) 製品の仕様やサービスの内容について、変更になった項目がある場合は、その内容。



 8.2.4 受注・契約の変更

   製品の仕様やサービスの内容を変更した場合には(顧客との約束が変更になった場合、自社で
   変更した場合)、会社は、その内容や基準を引用した社内文書も、間違いなく変更して下さい。

   変更の内容を、必要な関係者に確実に伝えて下さい。そして、どのような対応をしなければなら
   ないかを、理解させて下さい。





 8.3 設計・開発


 8.3.1 設計・開発のルールを決める

   会社は、新製品に問題が起こらないように、設計・開発を管理するためのルールを作って
   下さい。【確立】
   そのルールの通りに実施して下さい。【実施】
   状況の変化に合わせて、ルールを改めてください。【維持】



 8.3.2 設計・開発の計画

   設計・開発を計画的に行って下さい。
   設計・開発の進め方(計画)を決める時は、次の点を考えに入れて下さい。
a) 計画する設計・開発の性質
製品の種類、用途、求められる品質のレベルなど
設計・開発の種類(新規、改良、変更など)
  設計・開発に要する期間
  設計・開発の複雑さ
製品の複雑さ
設計・開発の作業の複雑さ

   設計・開発を始める時には、次の中で必要なものを計画して下さい。
b) 設計・開発のステップに組込まなければならない活動
   実施しなければならない、設計・開発のレビュー(どのタイミングで、誰から、何に
   ついての評価をもらうか)
c) 実施しなければならない、設計・開発の検証(どのタイミングで、誰が、何を
   するのか)
   実施しなければならない、設計・開発の妥当性確認(どのタイミングで、どんな試験
   や検討をするのか)
d) 設計・開発の各ステップの責任者や承認の権限を持つ人。
e) 必要なスタッフ、設備、サポート体制など。
内部のもの(実施者、社内の協力者、作業場所、設備、ソフトウェアなど)
外部のもの(社外の協力者、作業の外注、外部機関・外部施設の利用など)
f) 設計・開発に関わる関係者の間での、情報交換の方法、あるいは情報を
   共有する方法(打合せ、定期報告、データベースなど)を決める。【インタフェース】
g) 設計・開発に、顧客あるいは製品の使用者に参加してもらう必要があるか
   (共同開発、レビューへの参加、妥当性確認への協力など)。
h) 開発した製品を製造する際に、また顧客に出す際に、特に考慮しなければならない
   こと
i) 設計・開発の管理の手法、検証や試験のためのツールなどで、顧客から実施
   を求められているもの、あるいは法律で決まっているもの。【管理レベル】
j) 設計・開発に関わる記録として何を残すか。
   


 8.3.3 設計・開発に使う情報

   設計・開発をする製品について、考慮しなければいけない項目【設計・開発へのインプット】
   をリストアップしてください。
   リストアップする時は、次の項目で、該当するものを含めて下さい。
a) 設計・開発する製品に求められている機能や品質
   必要な機能、満たすべき基準、必要な試験など
b) 以前に設計・開発をした製品に関わるデータで、参考になるもの
   踏襲すべき性能、構造、基準など。利用できる仕組みや部品。不良に対して行った
   対策など
c) 法律上で守らなければいけないこと
   製造の許認可の必要性、法律で決まっている品質基準、表示の内容など
d) 会社が決めた、設計・開発の管理のルール。
   社内のルール、品質管理やリスクマネジメントの規格や手法(ツール)の利用など
e) 設計・開発をしている製品について、予想される不良やトラブル
   【失敗の起こり得る結果】。

   設計・開発に組み込まなければいけない項目が、抜け落ちないようにして下さい。
   曖昧な決め方を避けて、考慮すべきことを明確に書いて下さい。
   リストアップした項目同士で、矛盾がないようにして下さい。
   このリストアップした結果を記録して下さい。この記録は保管して下さい。



 8.3.4 設計・開発の管理

   会社は、設計・開発が、正しく行われるように管理をして下さい。

a) 設計・開発の結果として用意するものを決める
   設計・開発・企画の結果(8.3.5)として、どのような製品・サービスを作り、そのため
   にどのような資料を揃えるかを決めて下さい
b) 設計・開発のレビュー
   設計・開発で行っている内容が適切かどうか【要求事項を満たす能力】 を、関係
   する部門の人に、評価してもらって下さい。
   場合によっては専門家、顧客、使用者などに参加してもらうこともあります。
c) 設計・開発の検証
   できあがった製品(8.3.4)が、8.3.3でリストアップした項目(必須の項目)をクリアして
   いることを確かめて下さい.。
   試験、検査、計算、点検などの方法があります。
d) 設計・開発の妥当性確認
   できあがった製品(8.3.4)が、本当に現場で使えるか(実施が可能か)を、確かめて
   下さい。
   実機による現場での試験、現場でのリハーサル、あるいは(現場での実施が不可能
   な場合には)これらを想定した試験やリハーサルなどを行って下さい。
e) 判明した問題の解決
   レビュー、検証、妥当性確認の中で判明した問題や課題があったら、一つ一つ検討
   して決着をつけて下さい。
f) 記録
   レビュー、検証、妥当性確認の結果は、記録して下さい。この記録を保管して下さい。

  <補足説明>
   設計・開発の、レビュー/検証/妥当性確認は、それぞれに異なる役割があるので、
   一つ一つを確実に行って下さい。ただし、それぞれの役割が果たせるのであれば、
   一回の試験やチェックで、これらのいくつかを同時に実施することもできます。



 8.3.5 設計・開発の結果

   会社は、設計・開発を完了する時は、設計・開発の結果が次の条件を持たしていることを
   確かめて下さい。
a) 設計・開発でできあがった製品が、8.3.3でリストアップした項目をクリアしている
   (そのことが分かるようになっている)。
   設計の結果には、図面、配合表、レシピ、サービスのマニュアル、実施要領、
   試作品、実際の製品(最初の製造品)などがある。

   設計・開発の結果には、次の文書や資料を含めて下さい
b) 実際に、製造・販売したり、サービスを行うための使う文書や資料。
   作業基準書、マニュアル、QC工程表、使用説明書
c) 検査の合否判定基準や、品質をチェックするための基準を決めたもの(これは、
   それぞれの製品に必要なレベルを考えて決めて下さい)。
   製品規格、検査基準、チェックリストなど
d) 製品を、正しく安全に使うために必要な情報を記したもの。
   使用上の注意、メンテナンスの方法など

   会社は、これらの設計・開発の結果を示す文書や資料を、記録として保管して下さい。



 8.3.6 設計・開発の変更

   会社は、設計・開発した製品の仕様を変更する時は、そのことで問題【悪影響】が発生
   しないように、管理をして下さい。
   設計・開発の途中に変更する場合と、一旦、設計・開発が完了した製品を変更する場合が
   あります。
   どのようなケースを、設計・開発・企画の変更と位置付けるかは、会社が決めて下さい。
◆何をどこまで変更するのかを決めて、計画的に行って下さい。【特定】
◆設計・開発のレビューを行って下さい。【レビュー】
◆進み具合を管理し、必要に応じて、検証/妥当性確認を行って下さい。【管理】

   会社は、以下の項目について、記録を残して下さい
a) 変更の内容
b) レビューの結果
c) 変更の承認の記録(責任者、承認内容、承認日)
d) 予想される問題【悪影響】と、それを防止するために行った処置




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