らくらくISO9001講座



口語訳 ISO9001:2008
製造業用

7章 製品に関わる業務(1)
7.1 仕事の仕組みを決める
7.2 顧客との間で決めること
7.3 設計開発

青字 は2000年版から変更された部分です    
緑字 はこの口語訳で独自に追加した補足説明です
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改訂 2009.05.10

7章 製品に関わること


7.1 仕事の仕組みを決める

  製品に関する仕事の仕組み
会社は、製品を作り、顧客に提供するための仕組みやルールを決めてください。
【製品実現の計画】 
ここでは、製造工程だけではなく、契約、受注、設計開発、購買、外注、製造、検
査、在庫、納品、アフターサービスなど、製品に関わる一連の業務のことを言って
います。

そのルールは、会社の中の他の仕組みと矛盾がないように作ってください。

  個々の製品に関するルール
会社は、製品の種類や品番ごとに、必要なルールを決めてください。特に、次の中
で当てはまるものについて、どこかに決めてください。

a)製品仕様【製品に対する要求事項】
  製品の品質に関する基準値【製品に対する品質目標】
製品仕様や検査について決める文書には、製品規格、製品仕様書、図面、検査
基準書、検査チェックリストなどがあります。

b)製造の方法、作業手順、保管方法など【製品に特有のプロセス】
  使用する、施設、設備、工具、ソフトウェアなど【資源の提供の必要性】
  担当する人の条件(資格認定)【資源の提供の必要性】
これらを決める文書には、作業基準書、作業指示書、製造条件表、QC工程
表、作業チェックリストなどがあります。
  製造の過程で作る文書【文書の確立の必要性】 
例えば、生産予定表、工事計画書、作業用図面など

c)検査、工程の監視、出荷許可などの方法
  検査で確認できない工程の管理方法(7.5.2項プロセスの妥当性確認)
  検査の合否判定の基準
 (この項には2008年版で単語の追加がありますが、意味は変わりません)

d)作成する記録(製品の品質を証明する記録)(記録を保管する方法については
  4.2.4に決めます)

以上のルールは、自社で使いやすい形(の文書)に作ってください。

 <補足説明1> 品質計画書
製品の種類や品番ごとに(あるいはオーダーメードの注文ごとに)、製品仕様、製
造方法、製造条件などについて決めた文書(要するに、この節で決めている文書)
品質計画書と呼ぶことがあります。

 <補足説明2> プロジェクトの計画
大規模なプロジェクトの計画(大規模な土木建設工事の計画書など)を作る際に
は、7.3項にしたがって行うと良い。




7.2 顧客との間で決めること
 
7.2.1 製品の仕様

  会社は、製品の仕様【製品に関連する要求事項】を整理して、どこかに決めてくださ
  い。
  製品の仕様には、以下のようなものがあります。

 a)顧客と約束した製品の仕様
製品そのものの仕様
納品の方法に関しての約束
納品後のアフターサービスの内容に関する約束

 b)自社で独自に決めた製品の仕様(必須の項目)
製品の用途から考えて必須の項目
顧客があえて指定しない常識的な項目
(顧客が特定できない)カタログ製品、標準品などの仕様

 c)法律で決まっている製品の仕様
法律上で義務づけられた、製品の仕様や検査基準
その他の製品に関わる法律上の決まり(製造の許認可、表示、保管方法など)
 (この項には2008年版で表現の変更がありますが、意味は変わりません。
   製品に関連する → 製品に適用される)

 d)自社で独自に決めた製品の仕様(必須ではないが自社の考えで実施するもの)
   例)環境対策、より安全な原材料の使用、アフターサービスの充実
 (この項には2008年版原文で用語の変更がありますが、意味は変わりません。
      device → equipment)

 <補足説明>
アフターサービスの例として、次のようなものがあります
1) 販売後に、品質保証をする(品質保証期間の無償修理など)
2) 契約を結んで、定期的に、あるいは故障時のメンテナンスを行う
3) 使用後の、リサイクルや廃棄を引き受ける、


7.2.2 契約・受注

 顧客との約束の種類
会社は、顧客と製品の販売についての約束【製品を提供することのコミットメン
ト】をする前に、その約束の内容に問題がないかを確かめてください。
ここでいう、顧客との約束には、次のようなものが含まれます。
1)納入仕様書、品質保証協定書、契約書などの基本的な約束 【契約】
2)受注 (品番、納期、数量、納入場所などの連絡) 【注文の受諾】
3)見積書、企画書、入札などの提出 【提案書の提出】
4)これらの変更

 確かめる項目
顧客と約束する時に確かめなければならない内容は、次の通りです。
会社は、これを確認する担当者を決め、また確認できる仕組みを作ってください。
見積り、契約、受注などの各段階で、a)〜c)の内で該当するものを確認して下さ


a)販売する製品の仕様が決まっていること。
既製品の場合は、カタログなどで製品の概要が知らされていることで良い
b)継続的に販売している製品で、製品の仕様が変わるときは、変わることについ
  て顧客と話しがついていること。また、見積りなどで約束した内容をやむを得
  ず変更する時も、同様に、顧客と合意できていること。
c)技術、納期、価格の面で対応できること。
1)オーダーメードの製品で、製造する技術があるか。
2)受注生産の場合は、納期までに製造できるか。
 在庫品の場合は、注文に答えるだけの在庫があるか。
 特殊な輸送が必要な場合は、その手配ができるか。
3)価格が合うか。

 契約・受注の記録
顧客と約束した内容(確認して決まった内容)を記録として残してください。【レ
ビューの結果の記録】
確認を行った結果、内容を変えた場合には、その経緯も記録に残してください。
【レビューを受けて取られた処置の記録】
(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)

口頭の注文についても、内容を確認し、約束した内容を記録に残してください。

 契約・受注内容の変更
契約、受注の内容(特に製品の仕様)が変更された時は、そのことを関係者に、確
実に伝えてください。
もし、社内の文書(製品規格、図面、検査基準、作業指示書など)を変えなければ
ならない場合には、確実に対応してください。

 <補足説明>
インターネット販売などでは,個別の注文ごとに確認するのは,非現実的です。こ
のような場合には,カタログや宣伝広告などで顧客に情報を発信する前に,その内
容を確認してください。


7.2.3 顧客との連絡体制

  顧客と連絡を取る方法を決めてください

 a)製品に関する情報
自社が発信する情報(製品の紹介、技術の紹介など) 
  どの部門が、顧客に対して、どのような情報提供をするかを決めてください
顧客から得る情報(顧客ニーズ、市場動向など) 
  どの部門が受付けて、社内に伝えるかを決めてください。

 b)引き合い情報・契約・受注に関する連絡  
受付ける部門と、処理をする部門を決めてください。
その処理をする担当者に、間違いなく伝える仕組みを作ってください。

 c)製品に対する顧客の意見・要望、苦情  
受付ける部門と、処理をする部門を決めてください。
どの部門が受けても、その処理をする担当者に、間違いなく伝える仕組みを作って
ください。




7.3 設計・開発

7.3.1 設計・開発の計画

 設計・開発に当たって、計画を作ってください。
 
 計画書の内容
計画の中で、次のことを決めてください。
a)設計・開発がどのような段階に分かれているか
b)設計開発のレビュー/検証/妥当性確認を、どのようなタイミングで、どの
  ような内容(実施者、承認者、確認方法、試験方法 など)で行うか
  これは、a)で決めた段階ごとに(必要なものを)決めてください
c)設計・開発の実施者、承認者

 チーム間の連携
複数のチームが設計・開発に参加している場合には、チーム間の連絡や情報交換の
方法【インタフェース】を決めてください。
例えば、定期的な会議、報告書の発行、データベースの利用など

 計画書の変更
設計・開発の開始の後、状況の変化に合わせて、計画書を改めてください。

 <補則事項>
設計開発のレビュー/検証/妥当性確認は、それぞれ別の役割を持っているの
で、それぞれを確実に行ってください。
しかし、これらを、同時に行ったり、1つの記録にまとめてはいけないということで
はありません。それぞれの役割を果たせれば良く、製品の性格や会社の事情に合っ
た形で実施してください。


7.3.2 設計・開発に使用する情報(インプット)

 設計・開発をする製品について、考慮しなければいけない項目【設計・開発へのインプ
 ット】をリストアップしてください。リストアップした結果は、記録として残してくだ
 さい(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)。

 リストアップする項目
リストアップするのは次の項目です
a)開発する製品の機能や品質
必要な機能
満たすべき基準
必要な試験  など
b)法律上で守らなければいけない項目
製造の許認可の必要性
法律で決まっている品質基準、
禁止されていること
表示の内容  など
c)類似した製品から得られる情報
踏襲すべき性能や品質基準
過去の不良に対して行った対策  など
d)その他の必要な情報

 リストアップした項目の確認
リストアップした項目が正しいかどうか、担当者を決めて内容を確認して下さい。
設計・開発に組み込まなければいけない項目が、抜け落ちないようにしてください
曖昧な内容を避けて、考慮すべきことを明確に書いてください
リストアップした項目同士で、矛盾がないようにしてください
(この項には2008年版で言葉の変更がありますが、意味は変わりません)


7.3.3 設計・開発の結果(アウトプット)

 設計・開発の結果のまとめ方
設計・開発の結果【設計・開発のアウトプット】を、どのような形(文書や図面)
で報告するかを決めてください。
結果の中には、最初にリストアップした項目【設計・開発へのインプット】と比較
ができる資料を含めてください。
(この項には2008年版で言葉の変更がありますが、意味は変わりません)
 結果の報告に含める資料の例として、次のようなものがあります
製品規格、図面、処方など(製品仕様)
製造作業基準、検査基準、QC工程表、部品・原材料の規格などの、製造のた
めの文書
開発記録、試験記録、FMEAの結果など、製品に関するデータ

 結果の承認
設計・開発の結果を、責任者が承認してください。
承認してから、次のステップ(次の開発段階、製造移管、製品化など)へ進めて下
さい

 必要な項目
設計・開発の結果は、次の点が分かるようにまとめてください
a)最初にリストアップした項目(その中の必須条件)【設計・開発へのインプ
  ット】をクリアしていること
b)製造のために必要なこと(作業基準、QC工程表など)が決まっている。
  購買品や外注のために必要な事(部品・資材・原材料の仕様)が決まっている
c)製品の合否判定基準が決まっている。
d)製品の使用時に(安全や、正しい使用の面から)、注意しなければいけない項
  目が分かるようになっている。

 <補足説明>
製品の保管方法、保管条件、包装や梱包の仕方についても、詳しく決めておくこと
が望ましい(必要な場合)。


7.3.4 設計・開発のレビュー

 会社は、設計・開発のレビューを、計画に従って行ってください。
 レビューは、必要なチェックが漏れないように、その回数・時期・内容・参加者などを
 計画して、実行してください。【体系的なレビュー】

 レビューの参加者
設計・開発のレビューとして、その設計・開発に関係している、各部門の代表者か
ら、評価を受けてください(ここで言う代表者は、部門長ではなく、業務の内容を
分かっている人です)。
レビューは会議でも、文書でもよく、また何度やってもかまいません。
各部門を一堂に集めるのでも、時期を分けて行うのでも良いです。

 レビューの内容
レビューでは、次のことを行ってください。
a)目的通りの製品を、開発できそうかどうか評価する
b)問題点を見つけて、対策について考える

 レビューの記録
設計・開発のレビューの記録を残して下さい。レビューの結果、何かの対策をした
場合は、その記録も残してください(記録を保管する方法については4.2.4に決めま
す)。


7.3.5 設計・開発の検証

 会社は、設計・開発の検証を、計画に従って行ってください。

 検証の内容
設計・開発の結果【設計・開発へのアウトプット】が、最初にリストアップした項
目(その中の必須条件)【設計・開発へのインプット】をクリアしていることを確
認してください。

 検証の記録
設計・開発の検証の記録を残して下さい。検証の結果、何かの対策をした場合は、
その記録も残してください(記録を保管する方法については4.2.4に決めます)。


7.3.6 設計・開発の妥当性確認

 会社は、設計・開発の妥当性確認を、計画に従って行ってください。

 妥当性確認の内容
製品が、実際の使用条件【指定された用途又は意図された用途】で使えることを、
実機試験、現地テスト、またはそれを想定した試験で確認してください。
妥当性確認は、できるだけ、納品前に行ってください 
(逆に納品後に行うのは、例えば、オーダーメイドの機械を、顧客で実際に使用し
ながら妥当性確認をするような場合です)。

 妥当性確認の記録
設計・開発の妥当性確認の記録を残して下さい。妥当性確認の結果、何かの変更を
した場合は、その記録も残してください(記録を保管する方法については4.2.4に決め
ます)。


7.3.7 設計・開発の変更管理

 設計・開発の変更内容の記録
会社は、設計・開発した製品の仕様を変更する時は、その変更の内容を記録に残し
てください。

 レビュー・検証・妥当性確認の実施
変更を行なうに当たり、設計開発のレビュー/検証/妥当性確認の中で必要なも
のを(計画書に)決めて、実行してください。
既に販売されている製品の仕様を変更する際には、その変更によって、販売済みの
製品にどのような影響が出るかを、設計・開発のレビューの中でチェックしてくだ
さい。(例えば、変更後の製品に合わせて作られたソフトウェアや消耗品が、変更
前の製品でも使えるかなど)

 レビュー・検証・妥当性確認の記録
設計開発のレビュー/検証/妥当性確認の記録を残してください。その結果、何
かの変更をした場合は、その記録も残してください(記録を保管する方法について
4.2.4に決めます)。
 (この項には2008年版で段落構成が変更されています)


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