らくらくISO9001講座


  
ISO22000
2018年版

茶字は、JISが用いている用語
緑字は、本文にない、この口語訳独自の補足


8章 食品安全を保つ仕組みとその実行(3)
(改訂 2019.07.25)

8.6 変更の実施 【更新】
8.7 測定機器の管理
8.8 仕事が確実に行なわれていることを確認する 【検証】
8.9 不良が発生した場合の管理



 8.6 変更の実施 【更新】

   作っている製品や、まわりの状況が変わった時は、それに合わせて、次の情報(文書)を変更して
   下さい。
    @ ハザード分析(食品安全のための工程の分析)の元になるデータ
  a) 原材料及び製品と接する材料に関するデータ
  b) 最終製品の性質に関するデータ
  c) 想定している食べ方・使い方
  d) フローダイアグラム(工程の分析のためのフロー図)/工程の周辺の状況を書いた文書
    A CCP・OPRPの計画書
    B 衛生的な環境づくり【PRP】)のためのルール

  



 8.7 測定機器の管理

  ◆検査・測定の実施
CCP・OPRPの管理や、衛生管理のために行う検査や測定について、次の点を理論的に説明して
下さい。
@ 行っている検査・測定のやり方は、適切である
A 使っている検査・測定機器は、適切である(目的に合っている。測定精度が適切である)

  ◆測定機器の管理方法
安全を管理するために使う測定機器は、以下のように管理して下さい(必要なレベルで良い)。
a)  <校正または精度の確認> 校正または精度の確認をして下さい(必要ならば、両方を
  行うこと)。
  このような校正や精度の確認は、定期的に行うか、またはその測定機器を使う前に行って
  下さい。
b)  <調整>調整が必要な機器は、調整して使用して下さい。必要な場合には、繰り返して
  調整を行って下さい 【再調整】
c)  <識別>「その機器が校正されているか」【校正の状態】が、使用者にわかるようにして
  下さい。 (校正ラベルなど)
d)  <校正状態の保護> 校正や調整された機器が、勝手に操作されて狂わされないように、
  対策を行って下さい。
e)  <機器の保護> 使用、持運び、保守点検、保管などの間に、測定機器が破損したり狂わ
  ないように取扱って下さい。

  ◆校正や精度の確認
@ 校正や精度の確認の結果を、記録して下さい。                       <記録>
A 校正の国際標準や国家標準があるもの(重さ、長さ、温度など)については、これらの
  標準に繋がるような仕組みで校正(または精度の確認)をして下さい。
B 国際標準や国家標準がない場合は、自社で決めた方法で校正(または精度確認)をして
  下さい。どのような基準で校正(または精度確認)したかを記録して下さい。      <記録>

  ◆異常時の処置
@ 会社は、測定機器の精度の異常や、測定機器が壊れた場合には、それまでその測定機器を
  用いた製品は大丈夫かを調べて下さい。
A その測定機器は、校正、調整、修理、廃棄などの処理を行って下さい。
B もし製品に問題があることがわかったら、適切な対策を行って下さい(不良品の処理。顧客や
  行政機関への連絡など)
C 調査の結果、処理の結果を記録して下さい。                        <記録>

  ◆ソフトウェアの確認(ソフトウェアの妥当性確認)
@ コンピュータソフトウェアが組み込まれた測定機器を使う場合は、最初に使用する前に、その
  ソフトウェアで正しい結果が出ることを確認して下さい。
  (校正を行う。値が判明しているサンプルを測定してみるなど)
  この確認は、自社で行っても、ソフトウェア業者や、外部に依頼して行っても良いです。
A ソフトウェアの確認【妥当性確認】の結果を、記録として残して下さい。
B ソフトウェアの変更があった場合は、確認をやり直して下さい。変更の内容と、変更を承認した
  記録を残して下さい。                                      <記録>

  <補足説明> 
   一般に使用されている市販のソフトウェアを、説明書通りに使う場合は、確認済みとみなして良い。

  



 8.8 仕事が確実に行なわれていることを確認する 【検証】


 8.8.1 確認する項目とその実施

  ◆ここまでに述べてきた、食品の安全管理のための活動が確実に行なわれていることを確認し
    て下さい【検証】
    確認の方法を定める時は、各々の項目について、次のことを決めて下さい。
1) その確認によって、どの項目の実施状況を確認するのか【検証の目的】
2) 確認する方法
3) どのようなタイミング(頻度・周期)で確認するか
4) 確認の作業や、その結果の判断をする責任者

  ◆確認する項目は以下の通りです
a) 衛生的な環境作り【PRP】が正しく実施されていること
b)  CCP・OPRPの計画が決めた通りに行なわれていること
  その結果として、問題が発生していないこと(あるいは解決していること)【効果的】
c) 全てのハザードが、安全なレベル【許容水準】に収まっていること。
d) ハザードの分析のための情報(8.5.1項で決めている内容)が、変化に応じて最新の内容
  に改められていること【更新】
e) その他の会社(組織)で決めたルールが守られていること。その結果として、問題が発生
  していないこと(あるいは解決していること)【効果的】

  ◆この確認【検証】は、測定や目視検査の担当者以外の人が行って下さい。
                                                       <記録>
  ◆確認【検証】の結果は記録として残して下さい。また、食品安全チームに報告して下さい。

  ◆製品検査の不合格
最終製品や工程から抜き取った製品が、ハザードに関係する検査(微生物検査、外観検査、
異物検査、製品温度など)で不合格になった場合は、該当する製品のロットは、8.9.4.3
(安全でない可能性がある製品)に従って処理して下さい。
また、再発防止対策を行って下さい(8.9.3項)。



 8.8.2 結果の分析

  食品安全チームは、この確認【検証】の結果を、分析すること。
  その結果は、9.1.2で行うFSMSの全体の評価のために活用すること。





 8.9 不良が発生した場合の管理


 8.9.1 判断する人

   CCP・OPRPの測定・目視検査の結果を、確認する人を決めて下さい。
   その人に、製品の再加工【修正】や、再発防止対策【是正処置】を、指示する権限を与えて下さい。
   この役割には、適切な指示ができる力量を持った人を当てて下さい。



 8.9.2  CCP・OPRPが不合格の製品


 8.9.2.1 再加工や追加の処理                       <文書>

  ◆ CCP・OPRPの測定・目視検査が不合格になった場合、対象となる製品を特定して下さい。
    その製品が出荷されないよう(原料、中間製品の場合は使用されないように)管理をして
    下さい。
  ◆ CCP・OPRPが不合格の製品の管理について、次のルールを文書に定めて下さい。
a)  対象の製品の範囲を決める。
   製品の状態を評価する。
   再加工や追加の処理の方法を決める
b)  再加工や追加の処理を行なった時に、その結果を確認するためのルールを決める。



 8.9.2.2 CCPが不合格の製品

   CCPが不合格の製品は、8.9.4(安全でない可能性がある製品)に従って管理して下さい。
  


 8.9.2.3 OPRPが不合格の製品

  ◆ OPRPが不合格の製品は、次のように処理して下さい。
a) その不合格によって、実際の製品にどのような影響があったか、判定して下さい。
b) なぜ不合格になったのか、原因を調べて下さい。
c) 対象の製品の範囲を決めて、その製品を8.9.4(安全でない可能性がある製品)に従って
  管理して下さい。
  ◆ 調べた結果を、記録に残して下さい。                             <記録>



 8.9.2.4 記録                                            <記録>

   CCP・OPRPが不合格の時の対応について記録して下さい(次の内容を含めて下さい)。
a) 不合格になった項目
b) 不合格になった原因
c) その不合格によって起こった結果の重大さ
*) 不合格となった製品をどのように処理したか
*) 工程をどのように復旧したか




 8.9.3 再発を防止する 【是正処置】                           <文書>

  ◆CCP・OPRPが不合格になった場合で、同じことが再び起こりそうな場合には、再発防止対策
   【是正処置】を行って下さい。
ここではCCP・OPRPの不合格のみを扱います。それ以外の問題の再発防止【是正処置】に
ついては、10.1項で定めます。

  ◆CCP・OPRP不合格の再発防止のルールを、文書で定めて下さい。これによって、
1) 不良発生の原因を突き止めます
2) 原因を除いて、再発を防止します(是正処置)
3) 問題を起こした工程を正しく復旧します

  ◆次の内容を、再発防止のルールに含めて下さい
    <CCP・OPRPの異常の兆候をとらえる>   
a) 次の場合には、CCP・OPRPの異常がないか、確認して下さい。
  @ 顧客から製品の異常を指摘された場合
  A 顧客クレームがあった場合
  B 行政の調査で指摘された場合
b) 検査や、工程のチェックで、悪い傾向がみられた場合
   <再発防止のための対策>
c) 不良の原因を突き止めて下さい。
d) 再発防止対策(原因を除く方法)を決めて下さい。
e) 再発防止対策でルールを決めた(改めた)場合は、それを文書に定めて下さい。
f) 対策によって、本当に再発防止ができたかを確認して下さい。

  ◆以上の、再発防止対策の経緯を記録して下さい。                       <記録>




 8.9.4 問題がある製品


 8.9.4.1 「安全でない可能性がある製品」の管理

  ◆「安全でない可能性がある製品」(CCP・OPRPが不合格、製品検査が不合格、工程でのトラ
    ブル、衛生管理上の問題など)は、安全が確かめられるまで、出荷や使用をしないで下さい。

  ◆安全が確かめられたと言えるのは、次の場合です。
a) 問題になっているハザード(事故の原因となるもの)が安全なレベル【許容水準】になる
  ように、処理をした場合(再加工、追加の処理)。
b) 問題になっているハザード(事故の原因となるもの)が、安全なレベル【許容水準】になる
  ように、処理してから使うことが決まっている場合。
c) 管理基準は外れていたが、結果としてハザード(事故の原因となるもの)が、安全なレベル
  【許容水準】であることが確認できた場合(例えば、途中の管理基準は外れていたが、
  細菌検査で安全が確認された場合など)。

  ◆「安全でない可能性がある製品」は、どう処理するか決まるまで、出荷したり使用しないように、
    しっかり管理して下さい。

  ◆既に出荷された製品が「安全でない可能性がある」と分かった場合は、販売店、消費者、流通
    業者などに連絡して、回収して下さい。

  ◆以下の点を記録して下さい                                    <記録>
@ その製品がどうなったか
A 販売店、消費者、流通業者などがどのように対応したか
B 誰がその製品の処理方法を決めたか



 8.9.4.2 出荷の条件

   ◆CCPが不合格の製品の出荷を許可する場合は、必ず何らかの再加工をして下さい。
     「CCPは不合格だが製品は安全」と判定することは認めません。再加工できない場合は、
     廃棄あるいは用途変更をして下さい(8.9.4.3項で定める方法)。

   ◆OPRPが不合格の製品は、次の条件が整えば(再加工をしなくても)安全と見なして、出荷
    や使用ができます。
a) OPRPで基準外れがあったが、工程全体から見れば、ハザードが安全なレベル【許容水準】 
  を超えていないことが確実な場合
b) OPRPの測定や目視検査では基準外れがあったが、他の工程で、該当するハザードの
  除去が行われることが確実な場合
c) 製品検査(追加の検査)などの結果、安全が確認できた場合

   ◆このような評価をした内容は、記録に残して下さい。                    <記録>
  


 8.9.4.3 不良品の処理

  ◆そのまま出荷できないと決まった製品は、次のいずれかの方法で処理します。
a) 再加工するか追加の処理をする。これによって、ハザードを安全なレベル【許容水準】
  まで下げます。この処理は、外部で行っても構いません。
b) 用途を変更する。もちろん、食品安全が確認されることが条件です。
c) 廃棄する(そのために破壊する)
                                                   <記録>
  ◆このような処理をした場合は、その内容を記録して下さい。この記録には、このような処理を
    決定した責任者の名前を記録して下さい。




  
 8.9.5 回収                                              <文書>

  ◆回収の仕組み
納品後の製品が、安全でないことが分かった場合は、該当するロットを、速やかに、かつ
確実に回収して下さい。
そのために、回収を決定し、指揮する人【権限】を決めて下さい。その人は、適切な判断を
する力量のある人を指名して下さい。
回収の仕組みを文書で決めて下さい。その中で以下のことを定めて下さい。
 1) 関係者への連絡のルール(行政当局、顧客、消費者ほか)
 2) 回収した製品、及び社内に残っている製品(ロット)の管理のルール
 3) 回収に関る仕事の流れ

  ◆回収した製品の処理
回収した製品は、処理方法が決まるまで(8.9.4.3)、自社または自社が管理できる場所で
保管して下さい。

  ◆回収の記録                                             <記録>
回収の結果を記録して下さい。記録には、次の内容を記して下さい。
 ・回収に至った原因 
 ・回収した製品の範囲 
 ・回収を実施した結果
回収の結果は、マネジメントレビューで経営者に報告して下さい。

  ◆回収のテスト
会社(組織)は、回収の仕組みが本当にうまくゆくかどういか、適当な方法でテストをして
下さい(模擬回収、回収のシミュレーションなど)。
その結果を記録して下さい。                                   <記録>




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