らくらくISO9001講座


ISO9001:2000 サービス業編

7.サービスの提供 
 7.6 測定機器・検査機器の管埋

改訂 2003.04.29

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7. サービスの提供

7.1 実施計画

◆計画の作成
会社は、作業計画あるいは実施計画を作ること。この計画の内容や形はどのようなものでも良く、実用的な
ものであること。計画は、他の会社の仕組みと矛盾がないこと。

◆繰り返し行う作業やサービスの計画
作業(サービス)のやり方を決めること。必要に応じて、計画表、作業手順書、作業マニュアル、検査基準
書、チェック表などを用意すること(ISO9001ではこれらの文書の全てを計画と考える)。

◆毎回異なるサービスを行う業務の計画
実施ごとに、サービスの内容を決めること。必要に応じて、実施内容を定めた書類(企画書、計画書、プログ
ラム、実施手順など)を作成すること(ISO9001ではこれらの文書の全てを計画と考える)。

◆計画の内容
上記の計画では、以下の中で、必要なものを決めること。
a) サービスの内容、その他の顧客との約束したこと、目標とする品質レベル
b) サービスの方法、使用する文書、使用する用具や設備、必要な要員
c) 検査や品質チェック
d) 適正なサービスの実施を証明するために、どのような記録を残すか(4.2.4の対象)

参考1.このような計画書を、品質計画書と呼ぶことがある。
参考2.大規模なプロジェクトでは、実施計画を作る際に、7.3に沿って実施しても良い。



7.2 顧客に関係すること

7.2.1 サービスの内容
会社は、サービスの内容について、次の事項を整理しておくこと。
a) 顧客要求事項
   顧客との約束。これにはアフターサービスについての約束を含む。
b) 用途に応じた要求事項
   ・顧客との約束はないが、当然しなければならないこと。
   ・顧客との間では詳細を決めておらず、自社の判断で対応すること。
   ・カタログやホームページで通知(不特定多数に約束)した内容。
c) 法令・規制要求事項
   サービスの実施に関わる、法律上または公的な決まり。業界の決まりなども含む。
d)組織の追加要求事項
   サービスの内容について、会社が経営的に必要と判断すること(経営方針、営業戦略、リスク回避
   などを考慮して加えるもの)


7.2.2 契約・受注
◆契約・受注の確認
会社は、顧客と約束する前に、その内容を確認すること(ルールを決めて内容を点検すること)。ここで言う
約束とは、見積書の提出、契約、受注、入札、それらの変更などを指す。約束の確認では、次の点を確か
めること。
a) サービスの実施内容について、必要なことが決まっている。
b) 以前に交わした約束(以前に出した見積書や、以前にした同等の仕事)と内容が変わっている場合に、
  変わることについて合意されている。
c) 会社が、依頼を受けたサービスを実行する能力(技術、要員、納期、金額)を持っている。

◆契約・受注の記録
顧客と約束したら、その記録を残すこと。また、内容確認の結果として約束の変更した場合は、変更の記録
も残すこと(4.2.4の対象)。
顧客が注文内容を口頭で伝えた場合にも、内容を確認し、何らかの記録を残すこと。

◆契約・注文の変更
契約や注文内容の変更があった場合には、会社は、計画表、作業マニュアル、検査基準書などの関連す
る文書を修正すること。また、変更の内容を関係者に理解させること。

参考 インターネット販売などでは、個別の注文に対する確認は難しい。このような場合のレビューでは、カ
    タログや宣伝広告資料などの製品情報を、公表前に確認すること。


7.2.3  顧客との連絡
会社は、顧客と情報のやり取りをする方法や担当者を決めること。顧客と交わす情報には、次のようなもの
がある。
a) 顧客への宣伝活動、顧客から得る仕事の情報や業界動向
b) 引き合い、契約、注文、またはそれらの変更
c) 顧客からの反響(クレーム、意見、顧客満足調査など)

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7.3 サービスの企画

本項のサービス業への適用
ここでは、以下の管理について定める。
 ・新規のサービスの企画
 ・サービスの実施計画の作成(サービスの設計)
 ・新規のサービスメニューの開発
ただし、単なるサービスメニューの組み合わせ(ルーティン作業)で対応できるものに、本項を当てはめる必
要はない。なお、以下ではこれらの活動を「企画」と呼ぶ。この単語がイメージに合わない会社は、適当な単
語に読み替えること。


7.3.1 企画のスケジュール
◆スケジュールの内容
会社は、サービスを企画するためのスケジュールを決めること。このスケジュールには次の事項を含めるこ
と。
a) 企画の完成までのステップ
b)  企画のレビュー、検証及び妥当性確認の実施予定
c) 責任者と担当者

◆異なるチームとの連携
企画に複数のチームが参加する場合には、会社は、責任の区分と、確実に情報交換をするための方法【イ
ンタフェース】を決め、実行すること。

◆スケジュールの変更
スケジュールを変更する必要が生じたら、適宜見直すこと。


7.3.2 企画の元になる情報(企画へのインプット)
企画で考慮しなければならない情報を整理して、記録として残すこと(4.2.4の対象)。その中には、次の項
目を入れること。
a) サービスの内容に関する顧客の要望、自社の要望、サービス実施の上で配慮すべき条件
b) 適用される法令・規制
c) 可能な場合、以前に実施した類似の企画に関する資料
d) 企画を行うために不可欠なその他の事柄
これらの情報の適切さを確認すること。考慮する項目に漏れがなく、曖昧でなく、かつ、矛盾がないこと。


7.3.3 企画書の内容(企画からのアウトプット)
完成した企画書(企画の成果をまとめた文書を仮にこう呼ぶ)では、インプット(7.3.2)で取り上げた事項をど
のように処理したかが説明できること。
企画書は、次の段階に進む前に、決められた責任者の承認を受けること。

企画書は次の条件を満たしていること。
a) 企画へのインプットで求められていた事項を満足している。
b) サービスの実施手順、必要な資材や材料、アウトソーシング(外注)について適切な情報を含む。
c) サービス内容の検査や品質チェックの際の、判断基準が決まっている。
d) サービスを実施する際に、安全上考慮しなければならない事柄が明確になっている。


7.3.4 企画のレビュー(関係者による検討)
企画の適当な段階に、「企画のレビュー」(関係者による検討)を行うこと。
「企画のレビュー」には、関連する全てのチーム(企画を分担する各チーム、サービスの実施者、専門技術
者、営業担当など)が参加すること。ただし、一回にまとめて行うのではなく、何回にも分けて、または繰り
返し行うことでも良い。また、会議や打合せとして行っても、書面で行っても良い。

「企画のレビュー」では、次の観点から企画内容を確認すること。
a) 求められていた通りの企画ができているか(できそうか)。
b) 問題があれば指摘し、対策を提案する。

「企画のレビュー」は必要な確認が行えるように、体系的に行うこと。
「企画のレビュー」は企画のスケジュール(7.3.1)に従って行うこと。
「企画のレビュー」の記録を残すこと。また、「企画のレビュー」の結果を受けて処置を行った場合はその記
録も残すこと(4.2.4の対象)。


7.3.5 企画の検証(企画書の確認)
「企画の検証」(企画書の確認)として、企画書がインプット(7.3.2)で求められていた通りの内容になってい
ることを確認すること。

「企画の検証」は企画のスケジュール(7.3.1)に従って行うこと。
「企画の検証」の記録を残すこと。また、「企画の検証」の結果を受けて処置を行った場合はその記録も残す
こと(4.2.4の対象)。


7.3.6 企画の妥当性確認(リハーサル)
「企画の妥当性確認」として、企画したサービスが狙い通りに実施できることを確認すること。リハーサル、
モニター、設備の試運転などの実地確認を行うことが望ましい。もし不可能な場合にも、他の適切な方法で
実施上の問題がないことを確認すること。
この「企画の妥当性確認」は、できる限り最初にサービスを実施する前に行うこと。

「企画の妥当性確認」は企画のスケジュール(7.3.1)に従って行うこと。
「企画の妥当性確認」の記録を残すこと。また、「企画の妥当性確認」の結果を受けて処置を行った場合は
その記録も残すこと(4.2.4の対象)。


7.3.7 企画の変更
企画の変更を行ったら、その記録を残すこと。変更の際には、必要に応じて「企画のレビュー」「企画の検
証」あるいは「企画の妥当性確認」を行うこと。この際、企画の変更が、サービスの他の部分に及ぼす影響
を確認すること。
これらの「企画のレビュー」「企画の検証」及び「企画の妥当性確認」の記録を残すこと。また、その結果を受
けて処置を行った場合はその記録も残すこと(4.2.4の対象)。

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7.4 購買・外注

7.4.1 購買・外注の手順
◆取引業者と購買品の管理
会社は、意図した通りの購買や外注委託ができるように管理すること。ここで対象となるのは、材料や用具
の購買、及び外注委託(外部のスタッフを自社のチームに加える場合を含む)で、サービスの品質に直結す
るものである。
取引業者(納入業者、外注業者)及び購買品(用具や材料、外注作業の品質)の管理方法は、その重要さ
によって決めること。

◆取引業者の評価/選定
会社は、取引業者の実力を評価し、評価結果を元に使用する取引業者を選定すること。また必要に応じ(定
期的あるいはトラブル発生時)に、取引業者を再評価すること。
取引業者の選定/評価/再評価の、方法と基準を定めること。
評価の記録を残すこと。また、評価を受けて、取引業者の変更や指導を行った場合は、その記録も残すこと
(4.2.4の対象)。


7.4.2 注文内容の伝達
取引業者に、材料、用具、外注作業を発注する時は、注文内容をきちんと伝えること。注文の際には、次の
項目で必要な事が、伝えられていること。
a) 材料や用具の仕様や品質、外注作業の内容(計画、実施方法、品質、設備など)
b) 実施者の資格や個人の指定
c) ISO9001の取得の確認や、その他の業者の資格の確認
取引業者に伝える前に、注文内容が正しいことを確認すること。


7.4.3 購買製品の検証
会社は、材料や用具の受入検査や、外注作業の実施状況の確認を行うこと。

会社やその顧客が、納入前に取引業者の事務所や現場へ出かけて検査する場合は、その検査の方法及
び納入許可の方法を取引業者に伝えること(7.4.2の一部となる)。

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7.5 サービスの実施

7.5.1  サービスの実施の管理
会社は、サービスを管理して実施すること。

この際、下記で必要なことがあれば実行すること。
a) サービスに関わる情報(企画の内容、顧客情報、技術情報など)を提供する。
b) 必要に応じて、作業マニュアルや作業手順を作成して利用する。
c) 適切な用具や設備を使用する。
d) 適切な測定機器を使用する(サービス業では該当しない業種も多い)。
e) 決められた検査や品質チェックを実施する。
f)  顧客への引渡し及びアフターサービスを決めた通りに行なう。


7.5.2 サービスの実施の事前確認
顧客に引渡す前に、検査や品質チェックが出来ないサービスは、事前に実施方法が良いかどうかを確認す
ること【プロセスの妥当性確認】。
これに該当するのは、
顧客に直接働きかけるサービス(失敗をしたらその時点で顧客に迷惑がかかる)
        ・・・・・接客サービス、医療、介護、通信、運送、イベント進行など
サービスの効果が後にならないと判明しないもの
       ・・・・・医療の外来診療、予測を伴う調査、保存性が要求される修理や処理など

事前にやり方が適切かどうかを確認し、実施の過程を管理することで、そのサービスの品質の良さを証明す
ること。会社は、適切なサービスの実施のために、次の中で当てはまるものについて決めておくこと。
a) サービスの実施方法をどのようにして決めるか。その判定方法と承認者
b) 要員に求められる条件(能力、資格、経験)。
  設備や用具に求められる条件。
c) 個々のサービスメニューの実施手順
d) 作成する記録(4.2.4の対象)
e) 適切さの再確認の方法(設備や要員の能力が低下していないか)


7.5.3 識別及びトレーサビリティ
◆本項のサービス業への適用について
本項は、製品の取違えの防止を定めた項目で、製造業においては重要な項目である。しかし、サービス業
では特定の業種を除いて重要度は低く、全く該当しない業種もある。実態に合った管理をすること。

◆取違えの防止
提出書類、商品、アイテム(顧客に渡す品物)、試験サンプル、材料、用具などには、必要に応じて名称や
番号をつけ、表示や置き場で区別し、取り違えないようにすること。
サービスの対象者や対象組織について、取り違える可能性がある場合は、名称や番号の表示、確認行動
などを行って間違いを防止すること。

◆合格品と不合格品の取違えの防止
商品、アイテム(顧客に渡す品物)、材料、用具等について、合格品/未検査品/不合格品の区別が存在
する場合には、表示や置き場で区別し、取違えないようにすること。

◆トレーサビリティ
トレーサビリティ(追跡調査)を行なうために必要なデータを、記録に含めること。(4.2.4の対象)。

参考  略

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7.5.4 顧客からの預かり品
会社は、顧客からの預かり品(サービスに用いる材料、試験サンプル、用具、設備、書類、機密情報など)
について、それが自社の管理下にある間、注意を払うこと。
受け取りや使用時に、確認(検査・点検)を行うこと。また、紛失しないような表示し、損傷を防ぐ保管や取り
扱いを行うこと。
顧客からの預かり品を紛失・損傷させたり、使えないことが分かった場合、あるいは機密情報を漏洩させた
場合には、顧客に報告すること。この際には、記録を残すこと(4.2.4の対象)。

参考 顧客からの預かり品には、知的財産(機密情報)も含まれる。


7.5.5 商品や材料の保管
◆本項のサービス業への適用について
本項は、製造業において重要な項目であり、サービス業でも一部の業種では重要である(例えば、医薬
品、食品、試験サンプルなどの保管)。一方で、全く該当しない業種もある。重要度に合わせ、実態に合っ
た管理をすること。

◆製品や材料の保管
会社は、商品、アイテム(顧客に渡す品物)、試験サンプル、材料、用具が損傷しないように、適切な取扱
い、保管を行うこと。



7.6測定機器・検査機器の管埋

◆本項のサービス業への適用について
本項もまた、製造業において重視される項目である。しかし、サービス業には測定機器を用いない業種も多
く、無理に該当する機器を探し出す必要はない。もし、監視や測定に用いる機器で、その測定精度が品質
の良否に直接影響を与えるものがあれば、本項で管理すること。

◆適切な測定の実施
会社は、サービスの品質を確保するために必要な検査や測定を決め(7.2.1を考慮すること)、これに使用す
る測定機器・検査機器を決めること。会社は、適切な精度を持った方法で、測定を行うこと。

◆測定機器の管埋
顧客に品質を保証するために必要な測量機器は、次のように管理すること。
a) 定期的(または使用ごと)に校正あるいは精度の確認を行う。国際又は国家標準のあるものについて
  は、これにつながる方法で校正する。自社で基準を設定した場合は、どのような基準を用いたかを記録 
  する。(4.2.4の対象)
b) 必要に応じて機器の調整をする
c) 校正や精度確認の有効期限を表示する
d) 校正や調整を狂わされないように管理する
e) 損傷しないように取扱い、保守し、保管する。
校正及び精度の確認の結果は記録に残すこと(4.2.4の対象)。

◆異常時の処置
測定機器が狂っていることが判明したら、それを用いて行われたサービスに問題がないか調査すること。調
査結果は記録すること(4.2.4の対象)。会社は、狂っていた機器の調整や修理を行うこと。また、サービスに
問題があった場合には、適切な対策を行うこと。

◆ソフトウェアの確認
コンピュータソフトウェアを組み込んだ測定機器を使う場合には、最初に使用する時に、それが正しく機能す
ることを確認すること。また、必要に応じて、定期的または使用時にも確認すること。

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