"メンデルスゾーン150年祭招聘"

ゲヴァントハウス合唱団Z欧州演奏旅行記

1997.10.31〜11.8

1993 | 1995 | 1997 | 2001


林先生のもとへライプツィヒのメンデルスゾーン協会から没後150年祭参加の招待があって、われわれゲヴァントハウス合唱団の喜びはひとしおでした。まず、本家のゲヴァントハウスから「ゲヴァントハウス」の名前を使うことにお墨付きをいただいたこと。ライプツィヒ市内に掲示されるポスターやプログラムにも堂々と「Kyoto-Gewandhauschor」と記載されました。ついで、短いこの記念週間のうち2回も演奏会を要請されたこと。メンデルスゾーンザールという愛称をもつゲヴァントハウス小ホール及びメンデルスゾーンが復活演奏したマタイ受難曲ゆかりのトマス教会での公演。CCDOBOGからは乃公を含め3人、都合30人のメンバーで出発しました。

10月31日関空出発、フランクフルト経由で同日夕刻ライプツィヒに到着。

翌11月1日一日を練習に費やしました。MDR(中部ドイツ放送)のテレビが取材に訪れ、林先生へのインタービューがあり、練習中のDie Nachtigal(夜鶯)を録って帰りました。ただ放映は4日夕刻我々がエリアを鑑賞中とのことで見られず残念でした。ゲヴァントハウスの小ホールは変形六角形で定員450人の、実に響きの良いホール。


2日は厚い曇りで、日中も用意していったコート+手袋が役立たないくらいの寒さでした。ステージ練習ののち11時から小ホールで演奏会が始まります。ドイツ語に悪戦苦闘しながらブラームスの愛の歌、新・愛の歌、メンデルスゾーンの6つの歌曲、そして唱歌の四季。協会の方々にも喜んでいただきましたが、それ以上に聴衆の温かさに感激ひとしおでした。
 夕方トマス教会で練習のあと、近くのニコライ教会を訪れました。ここが89年の東西ドイツ統一のきっかけをつくる集会の場であったことを知り、暗くなるまで聖堂に坐って感懐にひたったのでした。


3日に訪れたバッハ博物館で、展示の三分の一近くがメンデルスゾーン関係なのにはびっくりしました。楽譜店のショーウィンドウもメンデルスゾーン一色。そういえば街中ポスター、看板、横断幕などで「メンデルスゾーン祭へようこそ!」という感じなのです。メンデルスゾーンが埋もれていたバッハの「マタイ受難曲」を掘り起こし、復活演奏したことはとみに有名ですが、活動時期は100年以上違います。脈々と受け継がれてきたライプツィヒの、そしてドイツの音楽の系譜を感じました。


 夜、トマス教会で演奏会。祭壇にあるバッハのお墓に献花し、それを囲んでまずコラールを歌いました。皆非常に緊張しましたが、270年前にもここで作曲者の手によってこれらの曲が鳴り響いたのかと思うと言い知れぬ感動を覚えました。お墓の中でバッハ先生は拍手してくれたでしょうか。このあと聖歌隊席に上がって近藤圭のアヴェヴェルム、メンデルスゾーンのモテト(女声合唱)などを演奏。非常に素朴な造りなのに、なぜこんなにうまく響くのでしょう。まるで夢のような宵でした。


4日は雲一つないライプツィヒ晴れになったものの、朝は霜が降りており寒い一日でした。午前中はまずメンデルスゾーンハウス=博物館=を訪れました。日本はじめ各方面からの寄付をもとに最近大修理が完成したとのこと。遺品など大変興味深いものでした。

午後関係者一同ゲヴァントハウス前に集まり、クルト・マズア氏の挨拶でメンデルスゾーン像の除幕式が始まりました。今日がメンデルスゾーン150年の命日であり、フェストの最終日なのです。ゲヴァントハウス少年合唱団の歌に続き我々は「森に別るる歌」と「夜鶯」を歌いました。鶯もブッ飛んでしまいそうな寒風が吹きすさび、寒いことこの上なし。マズア氏は毛皮の帽子とコート姿でしたが、林先生はコートを脱いだままスタンバイを余儀なくされ、このときひいた“ライプツィヒ風邪”を日本にまでもって帰られるハメになりました。

 夜、フェストの掉尾を飾り、ゲヴァントハウス大ホールでオラトリオ・エリアの演奏会が行われました。1,800人入るホールとしては規模全体が大きくゆったりした、これも六角形の非常に近代的なホール。原典である英語版での演奏のため招かれたバーミンガム市シンフォニー合唱団が実にすばらしく、これがこの演奏会を盛り上げました。指揮のマズア、エリア役のハゲガード、女声三重唱も印象的でした。とどまるところを知らないスタンディングアプローズの中で、私はふと42年前同志社混声合唱団でこの全曲を歌ったことを思い出したのでした。(栄光館・指揮織田幹雄、オルガン鴛淵紹子)


5日ミュンヘン経由でウィーンへ。シューベルトにゆかりのリヒテンタール教区教会(通称シューベルト教会)で7時のミサに2階の聖歌隊席から献唱。あと祭壇前で榎本八重子・灘井誠両先生のシューベルトのリートを交え演奏会を行い好評でした。終了後グリンツィングのホイリゲでワインパーティが盛り上がりました。


翌6日の夜はシュターツオパーでマスネのマノンを聴き、最後の夜を楽しみました。

7日昼出発し、ミュンヘン経由でCCD創立50周年記念パーティの前日帰国しました。

実は今年はメンデルスゾーンのみならずシューベルト生誕200年、ブラームス没後100年など大いなる節目の年でもありました。この年にライプツィヒに正式招待され、過去6回のいずれにも増して意義深い、そして感銘深い演奏旅行ができました。この機会を与えて下さった林先生に、そしてミューズの神にあらためて感謝することしきりです。


今回旅行のRepertoire 11/2 11/3 11/4
Mendelssohn Saal Thomanenkirche Schubertkirche
Brahms: Liebeslieder op.52   ○抜粋
Brahms: Neue Liebeslieder op.65   ○抜粋
Mendelssohn: Sechs Lieder im Freien zu singen op.59    
三善晃: 唱歌の四季  
Schumann: 流浪の民(邦訳歌詞) ○Encore   ○Encore
Bach: Vier Choralen aus Kantaten    
Bruckner: Drei Motetten(注)  
Mendelssohn: Drei Motetten für Frauenchor op.31    
近藤圭: Ave verum corpus    
Mozart: Ave verum corpus   ○Encore  
Bruckner: Kyrie, Gloria aus Messe e-moll    
Schubert: Lieder     ○(Soli)
(注) Bruckner: Drei Motetten=Ave Maria, Graduale“ Locus iste”, Graduale“ Os justi”


Members
Dirigent 林達次
Orgel 住山玖爾子
Flügel 中野寛, 中村展子
Soli 野村恵子, 榎本八重子(S), 森田佳子(MS), 岡本明美(A), 尾形光雄・宮本佳計(T), 灘井誠(B)
Chor 京都ゲヴァントハウス合唱団(Kyoto Gewandhauschor)
大阪ゲヴァントハウス7名応援
Wienでは同行者より大阪の4名加わる