"初めての海外旅行はウィーン"

ゲヴァントハウス合唱団X欧州演奏旅行記

1993.8.18〜8.29

1993 | 1995 | 1997 | 2001

8月18日夕方大阪発。

8月19日朝フランクフルト経由ウイーン着。昨年の「四季」でハンネを歌って頂いた後藤さんの出迎えをうける。後藤さんには7日にわたるウィーン滞在中大変なお世話になった。

 バスでバーデンを経由してアイゼンシュタットを訪れ、ハイドンの仕えたエステルハーツィ侯城(写真)、ハイドンの家(博物館)などを見学。


8月20日はホテルで終日練習。夜も練習の予定だったが、ノイマンの振るチェコフィルの券が入ったため、夜の練習を中止してコンツェルトハウスへ全員出かける。ベートーベンの8番とチャイコフスキーのロココ風主題によるチェロ協奏曲その他のプログラム。チェロに足踏みまで入るアンコール。


8月21日 午前中はフリーになったので、有志連れ立ってシェーンブルン宮殿へ行く。カンカン照りでと埃でくたくた。気温は29〜30°になる。

 午後ホテルで全曲練習。皆少し緊張気味。

夜9時シュテファン大聖堂に出向き練習。凄い残響だが、上の方で鳴っていて、決して戻ってきて邪魔することがない。しかし私たちの出来は疲れと緊張からか決してよくない。林先生は「気持ちの持ちようで声はパッと変わる。明朝それを期待しよう」と。


8月22日本番。シュテファン大聖堂は朝の陽光のもとで一段と凄く荘厳この上ない。オケ合わせののち9時半からミサ。聖歌隊席は正面祭壇に向かって右側。CCD3回生のとき栄光館で無我夢中のうちに振ったミサ曲(ハイドンのネルソンミサ)から何年経っただろう。初めての儀式の中のミサ曲(シューベルト/ト長調ミサ)演奏を経験し、感激であった。キリエ、グローリア、クレド、ラウダーテ・ドミヌム(モーツアルト)、サンクトゥス−ベネディクトゥス、アグヌス・デイ、アヴェ・ヴェルム・コルプス(モーツアルト)。マエストロ林先生の顔はまさに感無量を絵に描いたようであった。おそらくは先生も遥かな昔、一留学生のころ、一度はこのドムでミサを指揮したいと願い、実現した感慨にふけっておられたのかもしれない。聖餐にアヴェ・ヴェルムを歌ったが、聖餐に与らない人たちが聖歌隊席を取り囲み、歌いおわった瞬間ミサの最中一切なかった拍手がわき起こった。まさに立ち去りがたい思いであった。

 午後、バスでウィーン北西60qの町・ホルン郊外のブライテンアイヒ城を訪れ、ここで開かれている国際室内楽フェスティバルに出演。小さな城郭の中庭に向かって、向い側の二階の林先生の指揮で約10m離れた三階バルコンで歌う。ブルックナーその他。歌う方は日をサンサンと受けて暑いことこの上なし。

 終了後、更に西方30qの町ツヴェトゥルへ。修道院の聖堂で演奏会。残響はシュテファンより長く感じる。「ブルックナーのモテトのG.P.(ゲネラルパウゼ)は何のためにあるか」という出発前の林先生の宿題は、この残響を聴くことによっておのずと解決した思い。素朴で熱心な聴衆の支えで気持ちよく歌えた。充実した、そして快い疲れの一日であった。


8月23日はバスでリンツを経由し、サウンド・オブ・ミュージックの舞台・ザルツカマーグートを観光してウィーンに戻る。写真はトラウン湖畔トラウンキルヒェンで憩う林先生と乃公


8月24日はシューベルトゆかりのリヒテンタール教会を全員で訪れる。ブルックナーを2曲正面祭壇前と二階オルガン後ろの聖歌隊席で歌う。ここもよく響く。全員で写真を撮って解散。
 有志でハイリゲンシュタットを訪れ、小雨の中ベートーヴェンの遺跡を歩く。ハイリゲンシュタットの駅前で傘を落したが、あとを来た娘さんが車中まで届けてくれる。その親切に感激。

 夕方ホーフブルクのフェストザールでウィンナワルツ・オペレッタ演奏会をきく。「今、ウィーンで、ホーフブルク宮殿で、ウィーンのオーケストラで、ウィンナワルツを聴いているのだ」と、何度も何度も天井画を仰ぎながら感慨にふけった夕べであった。

8月25日朝フィガロハウスを訪れる。昼前発声練習ののち、フランクフルト経由デュッセルドルフへ移動。今年の定演にご協力願った原さんほかの方々の出迎えを受ける。夕方ラインの川向こう、オーバーカッセルの聖アントニウス教会で練習。少し響き過ぎでやや音が混ざる。

 練習後、かのブラウワライ・シューマッハーでドイツの味を堪能した。


8月26日午前中フリーなのでケルンを訪れ、ドム(大聖堂)に詣でる。

 昼デュッセルドルフへ戻り、午後聖アントニウス教会で練習。夕食後再び教会に向い、夕拝のあと演奏会。エルガーとカサルスは上の聖歌隊席で、女声による高田三郎、及びブルックナーとアンコールは正面祭壇前で歌う。スタンディングアプローズを受けたうえ、みんな1本ずつバラの花を頂いて大感激。


8月27日午前中聖ヨハネス教会で練習。今までの中で一番小ぶりのドームで残響も少ない。午後少し時間があったので、ハイネの旧居、シューマンザールなどをめぐり歩く。夕方教会へ。リストのミサコラリス、ブルックナーその他のプログラム。熱心な聴衆に支えられて最後のステージを終える。あとホテル前の中国料理店でサヨナラパーティ。


8月28日朝ホーフガルテンを歩く。野鳥の群れる池では通りすがりの老人に教わり、リンゴのような小さい木の実をつぶして鳥たちに与える。お世話になった方々に別れを告げ、昼前フランクフルト経由帰国の途につく。


演奏曲目 シューベルト:ミサ曲ト長調全曲
     モーツアルト:ラウダーテ・ドミヌム(ヴェスペレより)
     モーツアルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
     リスト:ミサ・コラリス全曲
     ピトーニ:モテト1曲
     ヴィアダーナ:モテト1曲
     ハスラー:モテト1曲
     ブルックナー:モテト3曲
     エルガー:モテト3曲
     カサルス:モテト2曲
     高田三郎:女声によるマリア賛歌4曲
     信時潔:あかがり他1曲
アンコール曲 日本のわらべ歌4曲
       大島節

     指  揮:林達次
     オルガン:住山玖爾子
     合  唱:京都・大阪ゲヴァントハウス合唱団
     独  唱:野村恵子(S),小西和子(A),荘雅弘(T),次田和彦(B)他