OLYMPUS OM-2 ★★★★ 発売年月 1975.11/標準価格 \7.6000
最高の電子カメラ!

世界初のダイレクト測光AE機。OM-1とほぼ同じボディの中にAEシステムを組み込んだ驚異的な電子カメラ。各部のパーツが大きくて操作性が良いのもOM-1ゆずり。特に露出補正ダイヤルはとても扱いやすい。また、マニュアルモードも付け足しではなくOM-1と完全に同じ。逆入射光対策が不完全なのと、電池なしでの撮影が実質的に不可能なのが問題だが、意外に耐久性もあり実用性は高い。質感や感触も良好。

現在廉価で入手できる電子カメラの中では最高の機種と断言する。NIKON FEが凡庸の魅力であるならば、このOM-2は明らかに美人の魅力。しかも、私に取って過乗な機能がなく、身の丈にあった美人だ。S&PやOM-4クラスになると機能に振り回されてしまって苦だし、AE-1/AE-1Pはマニュアル時の操作性をおろそかにしすぎている。FE/FE2の安心感は絶大だが大人的すぎる。F3/F4やLXとかになるとちょっと雲の上の存在。扱いやすいメカニカル機をベースにして、そのメリットを可能な限り損なわずに電子化したという意味で、OM-2は抜群に魅力的な存在だ。

■基本性能

絞り優先AEとマニュアルの2モード。バルブを除き全速電子シャッターのため電池なしの撮影はできない。電池がなくなるとミラーアップしてしまい、独特の「リセット」操作が必要になる。これを故障と勘違いするユーザーも多い。

シャッター速度はB・1〜1/1000。露出計は指針式で、AE時はファインダー内に速度が表示される。また、マニュアル時には±が表示される。単純ではあるが、ちょっと凝った造り。特に、マニュアル時の表示がOM-1と同じなのは偉い。ファインダーを覗きながら露出の調整ができる。通常、AE機のマニュアルモードはオマケなので、ファインダーから目を離して速度や絞りを調整してやる必要がある機種も多い(AE-1とかOM10とかね)。

サイズ、重量、ホールディング感、各部の操作性は非常に良い。520gのボディ重量は、同時期の他社の同クラス機と比較すると200gくらい軽い。ファインダーも明るいとは言いがたいが、大きくて見やすく(×0.92)、ピンも合わせやすい。使用時にほとんどストレスを感じない。

OffモードでもAEシステム自体は動いている。電池は消費していないと思うが、たぶんシャッターを切った段階で自動的にAEシステムに通電する仕組み。ただし、Offモードでは低速シャッターが切れないようになっている。どんなに暗くても、ISO100なら1/15秒でシャッターが落ちる。これは鞄の中などで意図せずシャッターが切れたときに、電池の浪費を防ぐ工夫らしい。よくわからんが。

露出補正ダイヤルもとても回しやすい。1/3ステップ±2EV。1/3ステップが泣かせるね。評価は「エクセレント」。でも、露出補正をしていることをファインダーに表示しないものだから戻し忘れが頻発。流石にこの点はOM-2Nでは改善されている。ということで、問題点は残っているが非常に気に入っている。

もっとも、OM-1みたいなマニュアル機なら、補正の戻し忘れはありえないわけで、ああ、電子カメラって不便だなぁと…ま、別の次元の話だけどね。

■ダイレクト測光

測光方式は中央重点のダイレクト測光。たぶん、世界最初のダイレクト測光機。従来の機種ではファインダーに導いた光を測っていたが、このOM-2はフィルム面から反射した光を測って露出を決定する。従来方式だと、シャッターを切る直前の値で露出を決めることになるが(シャッターを切る瞬間はミラーがアップしてファインダー系は真っ暗になるのだから)、ダイレクト測光だとシャッターを切った瞬間の光で露出が決定できる。

といっても、よほど特殊な状況でもない限り、シャッターを切る瞬間と直前でそんなに大きく明るさが変わることはない。したがって、通常撮影では従来方式でもダイレクト測光でも大差はない。ダイレクト測光の本領が発揮されるのは、TTLオートストロボと組み合わせて使用したとき。ストロボ撮影時には、シャッターを切る瞬間と直前では被写体の明るさが全然違うし、オート調光をストロボ側のセンサーで行うと、特に近接撮影時に誤差が大きくなる。米谷さんのインタビューを読むと、まさにマクロのストロボ撮影のために開発したシステムらしい。

さて、ダイレクト測光を実現するには、いくつかの問題点がある。

@ファインダー内表示の露出計とダイレクト測光の露出計を別々に用意する必要がある。シャッターを切る前には、レンズを通った光はすべてファインダー系に導かれるのだから、露出値を予め表示しようと思ったら従来通りファインダーに露出計を入れておかなくてはならない。そして、シャッターを切ると、今度はすべての光がフィルム面に導かれるので、ダイレクト測光用の露出計でフィルムから反射した光を測る。OM-2ではファインダー用にCdS(硫化カドミウム)素子を、ダイレクト測光用にSPD(シリコンフォトダイオード)を使用している。しかし、CdSとSPDは特性が異なる上、ファインダーの露出計には逆入射光による誤差が生じるため、ファインダーに表示されたシャッター速度と、実際のシャッター速度がかなり大きく異なることがある。ここは少し問題。逆に、どんなファインダースクリーンを使おうと、実際の露出には影響を与えないというメリットがある。2-1/2-13や他社製のスクリーンなんかも気軽に使える。もちろん、ファインダー内の速度表示はほとんど意味を持たなくなるが。

Aフィルムによって反射率が異なるため露出誤差が生じる。この点は、OLYMPUSも開発当時から気にかけていたところだが、実用精度内で影響なし、と公表している。影響が無視できないという声も聞くが、まあ、ここはメーカー発表を信じようと思う。そもそも、ネガをメインに使っている私には、その真偽を判別する能力はない。聞く所によると、一応、±0.5段くらいに収まるそうだ。もっとも、次に述べるように、ストロボ撮影でなければ実際にはシャッター幕からの反射を測定していることになるらしいので、フィルムの反射率の違いは全くと言っていいほど問題にならないはずなんだが…。本当はどうなんだろう?

Bシャッター幕の反射率の調整が必要になる。ストロボ撮影の場合は、同調速度(TTLオートなら1/30")でしか撮影しないから、露光の瞬間はシャッター幕が完全に開いた状態になり、特段の問題は発生しない。しかし、通常撮影でX接点速度(1/60")以上にすると、露光時にフィルム面の一部をシャッター幕が覆っている状態になる。このとき、フィルムを覆っているシャッター幕もフィルムと同じ反射率にしないと正しい露出が得られない(実際には、測光のタイミングの関係でほとんどがシャッター幕からの反射になるそうだ)。一番簡単なのは、シャッター幕をフィルムと同じ反射率の塗料で塗ることだが、長期間安定的に同じ反射率に保つことは難しいため、OMシリーズでは白黒のランダムパターンを印刷して、ほぼ等しい反射率得ている。当然、そこに誤差が生じるのでは?という不安はあるが、これもメーカーは実用精度内であると公表している。

ということで、技術的に物凄く面白いシステムなんだが、手間とコストの割には、それほど有難みがないようだ。そのためか、現在ではダイレクト測光を使用したカメラは少数派だが、それでもストロボ撮影時のみダイレクト測光(TTL調光)になる機種もある。

■シンクロ速度は1/30"!

【注意】OM-2にはシンクロ速度が1/30"のものと1/60"のものの二種類がある。

ストロボ・モードには、@マニュアル、A外光オート、BTTLオートの3種類がある。このうち、TTLオートはシャッター速度もカメラ任せなので特に問題はないが、マニュアル発光や外光オートのときは、マニュアル露出モードにして、ユーザーが速度を設定する必要がある。このとき、当然シンクロ速度以下に設定するのだが、問題は機体によってシンクロ速度が異なるということ。

どうも、初期ロットは1/30"、後期ロットは1/60"ではないかと思われる。特にOM-2の場合、誤発光防止機能が付いているため、1/30"の機体で1/60"に設定してシャッターを押しても、まるっきり発光しない。恐らく、幕速自体は最初から1/60"でシンクロするようになっているのだろうが、発光しないんではお話にならない。複数のOM-2を持っていると混乱しやすいので注意。OM-2のシンクロ速度はすべて1/30"と考えた方が無難かもしれない。

1/60"で発光しない機体を最初に手にしたときは、てっきり故障かと思った。しかし、私の手許にやってきた4台のOM-2のうち、2台は1/60"シンクロ、残り2台は1/30"だった。これでは仕様としか思えない。

■TTLオートストロボ撮影

ストロボモードで特筆すべきは、もちろん「TTLオートストロボ」。OM-2はまさにこのためにあるようなカメラ。ところが、私自身はまだこのTTLオートを試していない。というのは、愛用のOM-2Aのホットーシュー取り付け部が壊れていて、TTLストロボが使えないため。

TTLオートの信号線は、ホットシューのネジの手間にある穴に来ているようだ。そのため、シンクロターミナル経由では、どんなストロボを接続してもTTLオートにはならない。どうしても、ホットシュー(しかもshoe-2以降)を取り付ける必要がある。現時点で判明しているのは、shoe-2+Auto310またはshoe-3+T-32ならばTTLオートが可能なこと。ま、一番機は正常なので、近いうちにこちらで試してみたい。

で、TTLオートが何故凄いのかと言うと、要するにフィルム面の光量でストロボを制御できるから。通常の外光オートストロボだと、ストロボの付け根あたりに測光素子が付いているので、被写体から反射してストロボの付け根に戻ってくる光を測っていることになる。被写体が比較的遠くにあれば、フィルム面でもストロボの付け根でも明るさに大差はないが、近接撮影時はかなり大きく異なる。一種のパララックスと考えればよいだろう。

TTLオートの場合、フィルムに届いた光を測り、それが一定の光量に達すると、信号をストロボ側に送って発光を停止させる(ストロボの光量というのは発光時間のこと)。したがって、通常のシンクロ接点の他に、TTL制御用の信号線が必要になる。また、当然ストロボもTTLオートに対応した専用のものが必要になる。

TTLオートを使えば、絞り値は自由に設定できる。ストロボ撮影でボケがコントロールできるのはかなり大きな魅力。しかし、速度は同調速度以下でしか使えない。ここが少し問題。特に、OM-2のTTL同調速度は1/30"なので、日中シンクロなんかはかなり難しいだろう。

一般にストロボは1/10000"〜1/1000"程度の時間でしか発光しない。言わば、一瞬光るだけなので、フィルムがすべて露光されている状態(=シンクロ速度以下の状態)にしないと、フィルム全体に光が当たらない。ちなみに、フォーカルプレーンシャッターの場合、X接点速度よりも速い速度というのは、実際にその速度でシャッター幕が開閉するのではなく、フィルム面の一部だけを露光させるスリットを走らせている。たとえば、X接点1/60"のカメラで1/250"を実現するには、シャッター幕の1/4だけをスリットのように開けて、そのスリットをフィルム面の端から端に動かしている。もし、この状態でストロボを発光させると、画面の1/4しか露光しないことになる。

被写体が充分暗いものであるならば、実はこの仕組でも全然困らない。1/30"で写しても、1/2"でも、たとえ1/1000"が可能でも、写るものはほとんど同じだろう。どんな速度でも、写るのはストロボ光が当たった瞬間だけだから。あえて高速でのシンクロは必要ない。しかし、背景の明るさが問題になるとそうはいかない。日中シンクロなんかは、相当絞らないと露出がオーバーになってしまう。1/30"なんて言われたら低感度のフィルムかNDフィルターが必要になるだろう。また逆に、夜景を背景にスローシンクロをする場合は、手前の被写体は速度に拘らず同じものが写るが、夜景はスローでないと写らない。ストロボ撮影でも速度が大きな意味を持つようになる。

ということで、OM-2のシンクロ速度はかなり不満の残る所だ。New FM2の1/250"と比較するとはっきり見劣りしてしまう。しかし、横走り布幕シャッターを使っている以上(それは正統OMシリーズの必須条件だ)、速度を上げるのは原理的に難しい。では、OLYMPUSはその問題をどうやって解決したかと言うと……実は長時間発光するスーパーFP発光で、任意速度での同調を目論んだのだった(高速にするために長時間発光ってのは、錯覚を起こしそうだけどね)。でも、私はスーパーFP発光のストロボを持っていないので……。

■耐久性とメンテナンス

OM-2は電子カメラだが、純粋に電子系がイカれることは余り多くないようだ。比較的丈夫な電子カメラだというのが実感。OM-4の電子系の耐久性がアレコレ言われるのとは対照的だ。やはりシンプル・イズ・ベストかな。また、OM-1と違って電池も入手しやすいので、案外長く付き合えるコのような気がする。ただし、いくつかの注意点がある。
主要諸元
シャッター 電子制御 横走布幕 B・1〜1/1000 X接点1/60?
測光方式 ダイレクト測光(AE時)、中央重点測光
露出モード 絞り優先AE/マニュアル(定点合致式)
露出補正 ±2EV、1/3EV step、専用ダイヤル
ファインダー 倍率0.92倍、視野率97%、スクリーン交換可
外観 136×83×50mm/520g
その他 TTLオートストロボ対応、ストロボ誤発光防止
独断評価
操作感 A+ 各部が大きく扱いやすい、手に馴染む、品格もある
堅牢性 B オイル切れで速度が不安定になることも/電池必須
機能 A 必要充分
携帯性 A 520g/システム全体が小型
用途 ◎仕事 ◎趣味 ◎スナップ ◎軽旅行 △海外旅行

(2004.01.08 upd)

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