†貧乏カメラ館†

Konica KZ-600 未評価 発売年月 19xx.xx/標準価格 ¥x.xxxx
ユニバーサルフォーカスのズームコンパクト


極めて珍しい固定焦点のズームコンパクト。ユニバーサルフォーカスを採用しているため、固定焦点でありながら撮影可能範囲が広いのが特長。通常/フラッシュ/マクロの3種類の撮影モードがあり、マクロ時には望遠端60mmで60cmまで寄れる。また、AE機構はないが、一応撮影モードに応じて絞りは変化する。Z-up 60の廉価版と思われるが、コストダウンのために外装は非常に安っぽくなっている。おそらくGOKOのOEMではないかと思われる。
(*)ボディ表記は「KZ600」(2006.09.26)

ズームで固定焦点という超珍品。正確には固定焦点(パンフォーカス)ではなく、半固定焦点(ユニバーサルフォーカス)だが、それにしたって、AFなしのズームコンパクトなんて、後にも先にもこれ(とこいつの兄弟機)だけじゃないだろうか? 簡易カメラの中には、望遠BeneやSELBY、HANIMEXの一部の機種ような二焦点のパンフォーカス機はあったが…。もっとも、2倍に満たない比率ではズームでも二焦点でも大差はない。むしろこのKZ-600の特筆すべき点は、撮影可能範囲の広さ。AFなしで望遠側で60cmまで寄れる。A4判がほぼ画面いっぱに写せる。ユニバーサルフォーカスの本領発揮である。望遠Beneなんか、55mmで最短が2.5mだったからね。その差は歴然。

●基本スペック

固定焦点式ズームコンパクト。レンズは35-60mm/F5.6-9.3。通常/フラッシュ/マクロの3種類の撮影モードを持つ。絞りはモードによって変化するがAEではない(モード固定絞り)。シャッターは1/150"単速機械式。望遠側を意識してか、通常よりもやや速い設定になっている。固定焦点、固定絞り、固定速度のため撮影自体には電池不要。ただし、ズームと巻き上げは電動式のため電池なしの使用は不可能。いっそ、フルメカニカルにして欲しかった。

なお、ストロボは完全手動式。そのため、シャッターを押さない限り、どこにも通電しない。したがって、このカメラには電源スイッチがない。電源スイッチがないズームコンパクトというのは、けっこう異様な感じがする(別段、不便は感じないが)。

モード切替はレンズ脇のストロボスイッチで行う。オフで通常撮影、オンでストロボ撮影、オン状態でさらに押し下げるとマクロ撮影。この操作自体は、GOKOのユニバーサルフォーカス・カメラ共通のものだが、KZ-600では外観からオンとオフの区別が付きにくく、やや戸惑う。マクロモードでは広角(35mm)で55cmまで、望遠(60mm)で60cmまで寄れる。

●ユニバーサルフォーカス

ユニバーサルフォーカスについては別項で述べているが、要するに、基本的に固定焦点だが、ストロボ撮影時にはピント位置が近くなるシステムのこと。ストロボ撮影時には被写体はおおよそ3m以内の距離なので、遠景を被写界に収める必要はなくなる(ストロボが飛ばない)。ならば、ピント位置を近くして3m以内がシャープに写るようにする方が合理的だ。このように、ストロボ到達距離が被写界自体を規定する点に着目し、ストロボスイッチに連動してピント位置が近くなるようにしたのが、ユニバーサルフォーカスの第一のポイント。

そして、第二のポイントはピント位置と絞りとの連動。多くの場合、ユニバーサルフォーカス機はストロボモードの拡張としてマクロモードを備えている。一般に、マクロ撮影では深度が極端に浅くなるので、目測撮影は非常に難しい。そこで、この種のマクロモードでは、絞ることで被写界深度を稼ぎ、絞ることで不足する露出はストロボで補うことにしている。しかも、絞っているおかげで、至近距離からのフル発光でも露出オーバーにならならい。ストロボ調光システムが不要なのである。このように、絞り、ピント、深度の関係をうまく利用したのがユニバーサルフォーカスなのだ。

ユニバーサルフォーカスはGOKOの特許技術で、各メーカーのOEM機種に採用されている。たとえば、PentaxのPinoシリーズやCanonのCB35シリーズ、MinoltaのFS35シリーズなどの中には、ユニバーサルフォーカスが採用されているものがある。ただし、GOKO自社ブランドの機種も含めて、正面切って「UNIVERSAL FOCUS」という名称を使ったものはないはずだ(GOKOが広告で使っていたのは見たことがあるが)。ところが、このKZ-600はボディ(レンズ上部)に「UNIVERSAL FOCUS」と明記している。この点は特筆しても良いかもしれない。

さて、ではこのKZ-600では具体的にどのような設定になっているのかと言うと、たとえば広角端(35mm)では次のようになる。

モード絞り値 ピント位置 撮影範囲
通常  F6.7くらい? 3m強かな? 1.9m〜∞
フラッシュ F5.6開放 1.8mくらい?1.3m〜2.9m
マクロ F8くらい? 70cmくらいかな? 0.55m〜0.95m

撮影範囲は取扱説明書からの転載だが、絞り値やピント位置は私の推測。確証はないが、だいたいあってんじゃないかな? 各モードで明らかにピント位置が移動しているし、絞り羽根も変化している。実写テストはまだ行っていないが、もしスペック表通りであれば、固定焦点でマクロから風景まで破綻なく撮影できる、非常に優れたカメラだということになる。

●存在意義

従来、広角単焦点に留まっていたユニバーサルフォーカスを、標準域の焦点距離にまで拡張したのは、特筆すべきことだと思う。ただ、スペックはスペックとして、60mmって何に使うんだろう? いわゆる望遠としては無価値だし、ポートレートなんては無茶だし…(望遠が望遠としての価値を持つのは200mm以上。また、ポートレートには80mmほしいし、何よりピンが目にこない、背景がボケないんじゃ…ととと、私はナニヲイッテオルノカ……)。要するに、売るときに「ズーム」という看板が掲げられる以上の価値はないのね。あと、カメラ構造おたくのココロをくすぐるくらいか(^^;

というワケで(どういうワケだ)このカメラの存在意義というのは実はよく判らない。これをやったのは凄いと思う反面、やる価値がなかったから今まで誰も手を出さなかったような気もする。ユニバーサルフォーカス(UF)よりも安物のAFを乗っける方が現実的ではないのかと思ったりする。そしたら、「AFズーム」って看板を掲げられるしね。今や、「28mm/F8固定、シャッターは単速機械式、AFが2ステップ」なんてAFコンパクトがまかり通る世の中だから、AFとUFでコストがそんなに違うとも思えないのだが…

もし、私がこの手のカメラを作るなら、ズームじゃなくて2焦点にするよ。もちろん、フルメカニカル。UFの場合、モーター巻き上げにする必然性は全くないからね。二焦点・フルメカのUF機ということになれば、これは凄い価値があると思うんだがね。


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