Canon FTb |
★★★☆ 発売年月 1971.03/標準価格 \3.5000 ゴツくて頑丈なF-1のサブボディ |
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Fシリーズの測光方式の変遷 | ||
1964 | FX | 内蔵露出計(非TTL) |
1966 | FT | TTL絞込測光 |
1971 | FTb F-1 | TTL開放測光 |
基本的に良くできたカメラだが、こいつがウリとしたTTL開放測光は現在では余りに当たり前の機能で、特に有難みは感じない。現在から見て魅力的なのは、むしろそのゴツイ風格と頑丈さ。人を殴るのに便利:-P FDレンズユーザーなら保険に一台持っておくべきだろう。F-1を除けば、FDレンズが使用できる唯一のフルメカニカル機という存在意義は大きい。Aシリーズは電子系が不安だし。
ファインダー系の問題点は、@接眼レンズの裏側の汚れ、Aプリズム自体の汚れ、Bスクリーンの汚れ、の3点。
このうち、@の接眼レンズの汚れは後年のAシリーズでもしばしば見られるもの。他社製品でも同様な汚れは見られるが、Canon製品は特に顕著のように感じられる。ただし、トップカバーを開けてプリズムを外せば、この部分は奇麗に掃除できる。
また、Aのプリズムの汚れもかなり多い。当時の製造工程に問題でもあったのか、黒い点状のサビ?が発生している例が非常に多い。これはプリズムの分解掃除でかなり改善されるが、腐蝕してしまった場合は再蒸着するしかない。OMシリーズほど酷くはないが、視野にまんべんなく黒点が発生するので、むしろタチはFTbの方が悪いかもしれない。
そして一番深刻なのがBのスクリーンの汚れ。まず、ミラークッションのモルトがボロボロになってスクリーンを汚す可能性が非常に高い。スクリーンのミゾが外側に刻んであるため、うっかりこのモルトカスをこすったりすると、掃除は困難を極める。しかも、このピント板は公式的にも実質的にも交換不可能。少なくとも極めて困難。というのは、露出計のCdS受光部と一体化したユニットになっているので、たとえ分解してもピント板単体を取り出すことはほとんど不可能。もちろん、ユニットを分解するという選択肢もないことはないが、ちょっと見た感じではかなり難しそうだ。
もっとも、以上のような問題は修理業者にOHに出せばかなりの程度改善される。私も素人仕事ながら、ちょっと分解掃除をしてみたが、ものすごく奇麗になった。それでようやく、当時の評価記事にある「ファインダーが明るい」という記述に納得できた。しかし、FTbのファインダーには合焦のしにくさ(ピントの山の掴みにくさ)というもう一つの問題点がある。
実はこれも前述の通り、正常な視力を持った人間にはほどんど問題にならない。ただ、矯正視力でも0.5ないくらいの私にはかなり深刻な問題だった。目が悪けりゃアタリマエじゃないか、と思われるかもしれないが、そんなことはない。実際、同時期のCanonのカメラでも、FXならば私の視力で十分楽に合焦できる。FXの方がファインダーは暗いのにもかかわらず、だ。理由は、FXが大きなスプリット・プリズムを採用しているのに対して、FTbはマイクロプリズムしかないため。正確に言えば、中央の円形部がマイクロプリズム、その周囲のドーナツ部が単純マット、その他がフレネルマットだが、スプリットプリズムはない。
ミドルクラス・ユーザーをターゲットにしたFTbがスプリットプリズムを採用しなかったのは理解できる。しかし、ビギナーや強度近視のユーザーにはとてもピンが合わせにくくなってしまった。こうなると、ピント板固定式というのは非常に痛い。F-1との差別化を意識したのかも知れないが、結果的にはこの機種の価値を大きく下げている。倍率0.85、視野率94%はかなり立派で、プレビューの操作性もとても良いのだが。
さて、そうなると、視度補正を入れればいいじゃないか、ということになる。しかし、今日びFTbの視度補正レンズが入手できるのか……と思ったら、なんと初期EOSの視度補正レンズがそのまま使えることが判明。へ〜。過去の資産を一顧だにしない酷薄無情なCanaoにしては随分立派なことであるよ。ということで、現在手許にあるFTbのファインダーは、入手当時よりも格段に見やすくなっている。
ただ、物理重量だけが問題とは言えないかも。合焦しやすくホールディングしやすければ、この程度の重さは大したことないような気もする。ほぼ同じ重さのFXは物凄く軽快に感じるもんなあ。逆に、OM-1でも暗くてマイクロプリズムだけのピント板だと、すごく重く感じる。合焦しやすければ構えている時間は短くて済む。手に掛かる負担も少ないのだ。
ふむふむ。そうすると、FTbを分解して適当なスプリットプリズムのピント板に載せかえれば、軽く感じるということかな? あるいは、正常な視力を持っているユーザーには、そもそも重く感じられないのかもしれない。
上レバー | :正面時計周りで絞り込み(プレビュー)、反時計周りでセルフタイマー。 |
下レバー | :「・」で開放測光、「L」で絞り込み測光、「M」でミラーアップ。 |
「・」は開放測光モード。このモードで使うには、上レバーは垂直に立っていなくてはならない。もし、上レバーがレンズ側に倒れていたら、下レバーが正しく「・」にセットされていない証拠。下レバーを反時計周りに回して正しく「・」に合わせる。これで上レバーがリセットされる。
ミラーアップをするときは、上レバーをレンズ側に倒した状態で下レバーを「M」に合わせる。上レバーを倒さないと下レバーを「M」にできないので注意。
「L」は絞り込み測光モード。FLレンズなどはこのモードで使う。上レバーを立てた状態(開放)でピン合わせをして、上レバーをレンズ側に倒した状態(絞り込み)で測光を行う。ファインダーが暗くなるのが気になるし速写性も落ちる。その点、FXはFLレンズでも開放状態のまま操作できるが、これはそもそもFXがTTL測光ではないから。その点ではFXの方が便利だとも言える。FTはTTL絞り込み測光だけど、操作性はどうなんだろう?
主要諸元 | |
---|---|
シャッター | 機械制御 横走布幕 B、1〜1/1000秒 X接点1/60秒 |
測光方式 | 中央部分測光(12%) |
露出制御 | マニュアルのみ |
ファインダー | 倍率0.85倍、視野率94% |
外 観 | 144×93×43mm、750g |
その他 | フィルム給送にQLシステム採用 |
独断評価 | |
操作感 | B 操作性自体は悪くないが重過ぎる |
耐久性 | A メカニカル機の中でも特に頑丈そう |
ファインダー | B 交換不能、マイクロプリズム、メンテが重要 |
測光系 | B 平均的という意味ではなく功罪あい半ば |
携帯性 | D 750g |
用 途 | △仕事 ○趣味 ○スナップ ×軽旅行 ×海外旅行 |
2001.10.15/前期型を5000円で落札。露出計不動とのことだったが、間違えて落札してしまった。しかし、チェックして見ると完動品。外観や程度は1台目よりも遥かによい。純正ボディキャップ付き。これで5000円ならば大ラッキーというところ。怪我の功名。
2001.10.16/前期型を3800円で落札。コミコミで4800円くらい。外観は良くないが機能は完動。メッキ剥がれあり。巻き上げはスムーズだが、ファインダーの汚れが目立つ。この値段なら納得。メンテすれば充分実用機。あ、あれ?…QLのロゴが逆さまだ(@_@)
で、まあこれで3台になったのだが、これからどうする?最低1台は手許に置きたい。できれば前期型・後期型1台ずつ欲しいな。まず、売るとしたら3台目だろうなあ。でも、分解掃除しないと、ちょっとねえ、使ってもらえないよ。
おっと、4台目(前期型)を落札しちゃったぜ。今度は本当に露出計不動らしいジャンク品だが、50mmと28mm付きで4400円。28mmはコムラーだけどね。この値段なら納得。28mmレンズ狙い。4台目は分解の練習用に使って、汚い2台のOHをしよう。
2001.10.20/4台目到着。やはりと言うべきか、露出計正常の完動品(^_^; う〜む、どうしてみんな露出計不動と間違うのか…ま、あのレバーでは仕方ないか。うっかりモードいじると確かに動かないように錯覚するし、電池も入手不能だし、レンズを付けないと追針が動かないし。全体的には並品。これなら安い。
それよりもコムラーの28mm/2.5はちょっとショック。大した明るさでもない単焦点のくせに500g近くある。しかも、分解可能と言えば聞こえが良いが、な〜んか、ガタが気になる。常用の超広角にするつもりだったが、これはちょっと…。おまけに、いきなり壊れて分解修理するハメになったし。やっぱ、分解可能=壊れやすい、という感じ。FDマウントの超広角が欲しいんだけどねえ……まあ、アダプトール2を買えば安上がりだが。
2001.10.31/3台目(一番程度が悪いやつ)試写。Windows XPのインストール画面撮りに使用。やはりファインダーが暗いのがかなり気になる。ピン合わせも厳しい。巻き尺で測って設定。フィルムのローディングもダメ。QLなんて言うが、従来式の巻き上げ軸のスリットにフィルムを差し込む方がずっと速くて確実。巻き上げも、枚数が増えてくるととても重く感じる。ま、この辺はグリスアップすれば直るとは思うが…。あと、今回はNewFD 35-70を使ったが、これがひどく軽いレンズなもんで、ボディとのアンバランスが何とも言えない。少なくとも、今回は幸福ではなかったなあ…
でも、仕上がりはと言うと、これがけっこういいわ。シャープだし平行もちゃんと出てる。ま、昼間撮ったから写り込みはどうしてもあるけど、夜なら文句なしだな。もっとも、スペースとレンズの関係で70mmでしか撮れなかったから、周辺はかなりピンが甘くなるが…。基本的に写りはレンズの問題だが、充分使えるボディであることが確認できた。
2001.12.20/【ギアの噛み込みの修理】当初はBのミラークッションのモルトの張り替えとピント板の掃除だけのつもりだった。しかし、動きが固いので空シャッターを切っていたら突然動作不能に。原因はグリス切れによるギアの噛み込み。底ブタを外して注油と修復。そのままではよく判らなかったから、正常動作する別のFTbの底ブタを外して、動作を比較して弄り回していたら何とかなった。
しかし、困った事にまたもや部品を紛失。直径2mm、高さ1.5mm程度の金属円柱と、それについていた小さなバネ。どうやら、巻き上げ後にレバーを元に戻すときに使うもののようだが、ギアのカバーを開けて回したら飛んで行ってしまった。まさかこんなに簡単に外れるものだとは思っていなかった。結局、かなり長い時間を使って発見したが時間の浪費も甚だしい。
教訓1:ギアの噛み込みは底ブタを開ければ直る(こともある)。
教訓2:同一機種を複数持っていると修理のときに便利である。
教訓3:外れない保証のない部品は飛んで行くと思え。
結果的に巻き上げがスムーズになり、修理は成功…と言いたいところだが、実はときどきミラーが上がりっぱなしになるようになってしまった。起きる頻度は高くないし、巻き上げれば元に戻るから実害はあまりないが、ちょっと気になっている。
2001.12.21/【ミラーの戻りの修理】底ブタを開けると、左手側にミラーを制御するテコがある。ここを回転ハンマーが叩いてミラーを戻している様子。で、ときどき、このハンマーがテコを十分に叩かないために、ミラーが戻らないように見える。とりあえず、テコの端をハンマー側に少しだけ曲げてみた。今のところ上手くいっているようだし、特にタイミングに狂いも出ていないようだが…
2003.04.20/【義父のFTbの修理】露出計不動とのこと。案の定、電池室の発錆と電池の不適合だった。水銀電池が入手不能なのでアダプタを利用していたのだが、なぜかSR-44ではななくSR-43が入れてあった。接点が密着していなかったんだな、きっと。2003.04.28/【ファインダー系の掃除】懸案だった三番機の掃除。トップカバーを開いてプリズムを外し、接眼レンズとプリズムを掃除。これは概ね成功。しかし、ピント板の取り出しは不可能と判明。限定的な清掃にとどまる。詳しくは「カメラ修理記」参照。ついでなので視度補正レンズも入手。EOS用がそのまま流用できる。清掃+視度補正で見違えるほど見やすいファインダーになった。