†貧乏カメラ館†

Canon CB35M 未評価 発売年月 1992.09/標準価格 ¥1.5800
多重固定焦点UF機


おそらくGOKOのOEM製品。スペック的にはGOKO UF-20に、外観はGOKO K-20に良く似ている。最大の特長は固定焦点機でありながら、50cmマクロモードを持つこと。マクロ時にはレンズがせり出してピント位置が変更される。マクロ時だけでなくストロボ時にもピント位置がやや前に調整される。このように、撮影モードに応じてピント位置が変わるパンフォーカスを「ユニバーサル・フォーカス(UF)」と呼ぶ。
(2004.11.04/2005.06.03)

UFはGOKOが開発し、特許も持っているそうだ。PentaxのPinoシリーズもGOKOのOEMだと思われる。ただし、GOKO自身を含め、どのメーカーも「ユニバーサル・フォーカス」という名称を使用せず、単に「固定焦点」とすることが多い(Pentax Pino 35Mでは「ストロボ・イン・フォーカス」と呼んでいるが)。

●基本スペック

原則的に単速機械式シャッターの固定焦点機。しかも、電動巻上であるため、電池なしでは動かない。個人的には大嫌いなスペックだが、こいつは別。やはりユニバーサル・フォーカスの魅力は大きい。ただし、メーカーHPを見ても、撮影可能範囲は明記されていない。そこで、ほぼ同じ機種だと思われるGOKO UF-20のスペックを借用すると、通常撮影で1.3m〜∞。恐らくピント位置は2.5m前後だろう。それでF16まで絞れるので、風景はかなり奇麗に写るのではないだろうか? 実写が楽しみ。また、ストロボ時にはピントがやや近くなるが、これはどの程度か不明。それほど大きくは動いてない。マクロモードのピント位置はかなり大きく動く。60〜70cmくらいではないだろうか?

シャッターは単速機械式、絞りはモードに応じて変化するが、EEではないので明るさに応じて自動調節されるわけではない。CdSは手ぶれ警告ランプの閾値にしか使われていない模様。にも拘らず、メーカーHPでは露出を「プログラム制御」と書いてあるが、これは間違い−−と言うよりもJAROに告げ口したくなるような誇大な表現。まあ、同じ事をオートストロボとDX設定でやれば、「プログラム制御」と書いても誰も文句言わないから、気持ちはわかるけどね〜。

●使用感

マクロモードの使い勝手が良くない。左手にかなり大きな力を入れて撮影することになるが、これを女性や年寄りにやれと言うのは無茶だと思うし、成人男性でも注意力が散漫になって構図で失敗しそうだ。他の部分はそれなり。

●UF-20およびK-20との比較

まず、UF-20とCB35Mを比べてみよう。この二つの機種は実質的に同じ物のようだが、実はいろいろなところに違いがある。最も違いが顕著なのはボディのレイアウトで、フィルム室の天地左右が完全に逆転している。それでいて各部のパーツの配置や形状はそっくりである。なんでこんな変なことをしたのかは不明だが、ひょっとするとフィルムの上下の問題かもしれない。最近のAutoboyは上下逆転でフィルム装填するのが原則のようだし…。いずれにしろ、ボディが逆転しているので、ストロボ/マクロ・レバーやCdSの配置にも若干のしわ寄せは来ているようだ。

そして、それ以上に大きな違いは、実はカメラとしてのデキそのもの。GOKO UF-20の方が遥かに良い(と言っても、両方ともジャンク箱からのサルベージ品なので、厳密な比較は不可能ではあるが)。ちなみに、CB35Mはマレーシア製でUF-20は日本製……OEMじゃなくてライセンス生産なのかなあ? ともかく、CB35Mは可動部分がおそろしくチャチで、手許の機体もレンズバリアがいとも簡単に故障した。レンズのコーティングもUF-20の方が良さそうだ。マクロ時の操作もUF-20の方がやり易い。ファインダーもUF-20の勝ち。CB35Mは単なる逆ガリレオ式だが、UF-20はアルバダ式でしかも非常にクリア。アルバダ式にしたのは、マクロ時のパララックス補正フレームのためだろう。CB35Mにはパララックス補正はない。

また、CB35Mの外観はGOKO K-20にかなり似ている。ファインダー部からCdS、ストロボに掛けての配置がそっくり。レンズバリアのスイッチやストロボ/マクロ・レバーも良く似ている。もちろんデザインは多少異なるが、全体的なイメージは酷似している。外観だけから言えば、UF-20よりもK-20の方が遥かにCB35Mに似ている。ただし、K-20はCB35Mよりもレンズが1ランク落ちているし、フィルム感度がDXになってしまった。

発売順序やスペックの変遷から推測すると、まずGOKOがUF-20という比較的まともな機種を開発し、次にCanonがUF-20をベースにした廉価機CB35Mを注文し、さらにGOKOはCB35Mの製造ラインを生かした超廉価のK-20を作ったという順序になると思う。

●分解方法

入手後すぐにレンズバリアが故障したので、分解を試みた。CB35Mは安く作ってはいるが、元々の設計がUF-20という真面目な機種なので、実は構造自体は比較的まともにできている。きちんとした手順を踏めば、分解はそれほど難しくない。

@まず底のネジ2本、側面のネジ2本、裏蓋のネジ1本を外す。
A裏蓋の蝶番のカバーが外れるので、心棒を抜いて裏蓋を取り外してしまう(取らなくても分解は可能)。
B右手側のフィルム室の2本のネジを外す。
C左手側は、まずフィルム室の上部(手前部)にある2本のネジを外して細長いカバーを取る。
Dカバーの下にあるフィルム室の2本のネジを外す。
Eあとは出っ張っているパーツに注意しつつフロントパネルを引き剥がす。

今回問題を起こしたレンズバリアはフロントパネルの内側にある。金具が外れていてだけだが、噛み合わせが不安定で、これじゃあちょっとした経年変化ですぐに外れやすくなろうだろう、という感じ。何だかねえ…

●補記

このCB35Mは、Minoltaの輸出専用機(?)FREEDOM 50Nとかなり似ている。FREEDOMの方にはマクロモードがないが、パーツの配置や形状はほとんど同じ。特に底蓋の類似性は顕著で、形状やネジの位置はもちろん、電池蓋のつまみの刻印まで一緒。ただし、FREEDOMにはISO感度スイッチがない。おそらく、同一OEM元から供給されたモデルで、CB35Mの機能省略版がFREEDOM 50Nだろう(CB35Mの前モデルのCB35とは別物と思われるが、CB35も何等かの形でGOKOが関っているような気がする)。

その後、FREEDOM 50Nの国内版と思われるMinolta FS-35Uを入手したが、確かにCB35Mと似ている。フィルム室を比較すると同一メーカー製であることが一目瞭然。また、スペックや外観から言うと、FS-35UはGOKO K-20に酷似している。K-20からマクロ機能を省略したのが35F-Uだろう。GOKOはOEMと言っても、メーカーのニーズに応じて、少しづつスペックを変更していたようだ。

主要諸元
型式[電動巻上][ユニバーサル焦点][マクロ付]
レンズ35mm/F3.8 (3群3枚)
シャッター1/125" 単速機械式
絞りISO100/200:通常/フラッシュ/マクロ=F8/F3.8/F16
ISO400  :通常/フラッシュ/マクロ=F16/F8/F16
ピント通常/ストロボ/マクロの3段階ユニバーサル・フォーカス
最短撮影距離通常モード:不明(たぶん1.3m)/マクロモード:50cm
ストロボ手動制御 GN=10
ファインダー逆ガリレオ式、×0.5/80%
外観24×69×51mm/265g(電池込み)
発売年月1992年9月/15800円
仕様出典キヤノンカメラミュージアム ※リンク切れ
その他 ◎固定焦点カメラとしては珍しいマクロモード付き。マクロモードにすると、レンズが前にせり出してきて、絞りもF16まで絞り込まれ、ストロボが発光する。GOKO特許のユニバーサル・フォーカス・システム。
◎マクロモードだけでなく、ストロボモードでも、僅かながらピント位置が手前に修正されるようだ。
◎CB35の後継機種で「Snappy」シリーズらしい(北米名Snappy EL)。あまりメジャーではないが、一応国内販売もされていたようだ。


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