†貧乏カメラ館†

Canon AF35ML ★★★☆ 発売年月 1981.07/標準価格 ¥4.7800 (QD¥5.2800)
大口径レンズ搭載の高級コンパクト


通称「オートボーイ・スーパー」。初代オートボーイの上位機種。40mm/F1.9という驚異的な明るさのレンズが特長。描写も良好。際立ってシャープではないが、キヤノンとしては暖か目で好感が持てる。レンズ以外にも、AFロックや、フォーカスの事前表示など、使い勝手も改善されている。しかし、合焦が遅い、不正確、電池消耗に敏感、警告音が騒いなど課題も数多く残る。
(2001.09.11/2006.07.19)

実質的にこれが二代目のAutoboy(2よりも先)。初代より5000円高かった。レンズ、AF機構、使い勝手など、各部で改善が見られる。グッドデザイン賞受賞。初代よりも一回り小さく少し重いため、ズシリとした感触。ゆったりとした気分で、レンズの明るさを活かした雰囲気のある絵作りに使うのに適している。気軽に使うならAutoboy 2の方がよいだろう。発売から数年間、キヤノンの「最高級コンパクト」という位置付けだった。ただ、私なら軽量一眼レフ+標準レンズの方を選ぶな。長所も多いが欠点も目立つ機種。

●最大のウリはレンズ

このカメラの最大のウリは40mm/F1.9という大口径のレンズ。コンパクトカメラ史上最高の明るさではないか? ISO 400ならば夜の室内でもフラッシュなしでいける。レンズの描写力も悪くない。取り立ててシャープではないが、ふわっとした感じを出すのが得意のようで、ムーディな絵作りには向いてるかも。ボケ味も良好。ただ、AFの方がレンズ性能を引き出せてないかな〜と感じることも。また、無限遠もきちんと出てない感じ。風景よりもポートレート向きだと思う。

●AF機構に工夫あり

このAF35MLは、シャッター半押しで合焦距離(近/中/遠の3点ゾーン表示)が表示されるため、ピンボケをかなり減らすことができる。初代AutoboyやAutoboy 2、あるいはMCなどでは、シャッターを切ったあとに合焦距離が表示される方式のため、非常に不便であった。この点は値段に見合った機能強化と言えるだろう。ただし、合焦速度が遅いので、逆にシャッター切るまでにイライラするという弊害はある。

AF方式はSSTオートフォーカスという独自の方式だが、従来型とどう違うのか不明。基本的に赤外線による三角測量方式であることは間違いないのだが、SSTパッシブ方式というAF方式も存在しており(オートボーイ・ズームスーパー)、詳細は不明。なお、一説によると、LITEもこの方式を採用しているそうだ(伝聞)。

そうそう、何かで読んだんだが、確か測距用の素子を一列に並べてピントを検出する方式らしい。何でも、従来の測距法では可動部があった(首を振ってピークを検出したんだろか?)のだが、SSTでは可動部がなくなって精確かつ高速な測距が……で、これ? ホントかウソか知らないよ。

●電池消耗に敏感すぎ

ま、古い機種なので合焦が遅くて不正確なこと自体は仕方ない。だが、測距表示がされない場合、測距不可能なのか電池がへたっているのか判断できないのがとても困る。ピンはどうでもいいや、と思ってシャッター押しても実は電池へたりでシャッターが切れなくて「むき〜っ!」いと言うこともしばしば。これはかなり不愉快。新品同様の電池でもこれが起こる。電池消耗に弱いのは初期のキヤノンのAFコンパクトに共通の欠点だが、いくら何でも敏感すぎ。私の機体固有の問題かもしれないが…。

●フォーカスロックは便利だが…

もう1つの特長はシャッター半押しでフォーカスロックできること。初代はもちろん、2年後に発売されたAutoboy 2でも、3年後に発売されたMCでも、フォーカスロックはセルフタイマー兼用だから、これはけっこう贅沢な仕様。というか、初期AFカメラの場合、これでないと実用にならないのだが。特にこいつの場合、屋外ならISO 100を使うだろうし、室内ならストロボなしで撮ることが多いだろう。つまり、被写界深度はどうしても浅くなりがち。日の丸構図以外にしようと思ったらAFロックは必須。

ただし、このレベルのAFならMFかゾーンフォーカスの方が速くて正確だと思う(F1.9開放でゾーンフォーカスは無茶だが)。歴史的に見ても、この辺からボタンの掛け違いが始まるんだよなあ。慣れたユーザーには不便な技術ほど最新だと持ち上げられるという。人間の能力に対して補助的な技術ではなく、代替技術だということが問題。素人に毛の生えた程度のことしかできない代替技術では、玄人から見れば退化なのだ。

●露出はプリミティブ

露出はプリミティブで、精確という印象はないな。けっこうオーバー気味が多いような気がする。ラボのせいかもしれないが。逆光補正は日中シンクロが良好。ASA感度補正はほとんど効果がなかった。ちょっと不思議な気がする。この点に関しては、もう一度きちんとテストする必要がある。

●その他の機能

まず、近接撮影は公称で90cm、実感としては50cmくらいまで寄れそうな感じ。流石にフラッシュオフだと絞りを開かなくてはならないので無理だが、フラッシュ撮影ならば、50cmくらいでも被写界深度の中に入ってくれる。シャープではないが見れないほど酷くはない。ただし、そこまで近づくとパララックスが気になる。

手ぶれ警告音はかなり騒く好ましくない。特に、こいつは明るいレンズでフラッシュオフ・スローシャッター(と言っても1/4秒までだが)が切れるという点に大きな特長があるのに、1/60秒程度でびーびー泣かれたんではたまらん。

フィルム給送確認窓があり、フィルムが正しく給送されると銀と赤の縞模様が左右に揺れる。この「揺れる」というのが何とも不安なのだが(^_^;、無いよりマシ。

フィルムを使い終ると警告音が出る(だけ)。巻き戻しは、スプロケット空回りボタンを押して、巻き戻しスイッチを入れる。全部巻き戻しても自動的には止まらないので、スイッチを切ってやる。

●その他の問題点

この機種特有の問題は、ASA感度ダイヤルが渋くなることと、後玉にカビが生えること、モーターがへたること。ASA感度ダイヤルは、ギア?が外れたような感じなのだが、なぜか注油で直る(二台で確認)。もちろん、レンズ周りの注油は極めて危険で、よほど慎重に行わなくてはならないが。後玉のカビとモーターのへたりは現在のところ処置なし。今後の課題。

主要諸元
レンズ CANON LENS 40mm/F1.9(5群5枚)
ピント調節 アクティブAF SST方式
ピント確認 シャッター半押し
AFロック シャッター半押し(AEロックなし)
近接撮影 90cm
シャッター 1/4〜1/400秒
露出方式 プログラムAE
フラッシュ 手動制御 GN=11
外観 122×73×55mm/440g(電池含む)


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