†貧乏カメラ館†
Canon AE-1 |
★★★☆発売年月 1976.04
/標準価格 ¥5.0000 質感を保った量産電子カメラ |
![]() | 日本で最初に大量生産・低コスト化に成功した電子カメラ。「連写一眼」のキャッチコピーとともに、当時のAE機の常識を破った低価格で爆発的にヒットした。速度優先AEとマニュアルの2モード。速度優先は用途によってはとても使いやすい。ホールディング感も良いし、ファインダーも明るく合焦しやすい。シャッター音も軽快。コストダウンを図りながら、ユーザーを幸福にする質感を保ったカメラだった。 |
(2008.09.16 upd) |
このカメラを最初に手にしたときに感じたのは、ボディの質感の良さだ。軽快なのにチープじゃない。高級機のようなしっとり・ずっしりという感触はないが、金属の質感を失っていない。製品コンセプトとしてはAF時代のEOS 1000みたいなものだが、あの種のチープさは微塵も感じられない。これが金属の存在感か。ホールディングの良さ、ミラーショックの小ささ、パシャン系のシャッター音、見えのよいファインダー、指針式露出計など、触っていて嬉しくなる。写真を撮る前から嬉しい。カメラの魅力って、そういうもんだと思う。ただし、実用面でのいくつかの欠点はAE-1Pへの課題として残された。
シャッターは最速1/1000秒の横走り布幕シャッターで、動作音も心地好い。シンクロ速度は1/60秒。スペック的には実用機として必要充分。また、全体の造りが軽快で実重量よりもかなり軽く感じる。さらに、モータードライブの装着が可能で、これが爆発的ヒットの原動力ともなった。
このカメラを通して見えるのは、よく言えば「カメラの自動化」、悪く言えば「ユーザーの疎外」。職人気質の対極にあるキヤノンのポリシーを、良くも悪くも全面的に押し出してきた、メルクマークとなる一台だった。
絞り優先が優位だったのは、要するにレンズの互換性の問題だったような気がする。ニコンなどは、絞り込み測光からTTL開放測光を経てAEに移行したので、開放測光のレンズがそのまま流用できる絞り優先AEを選ぶのが自然。これに対して、キヤノンはFLレンズ(絞り込み測光)からFDレンズに移行する際に、TTL開放測光はおろか、一気に絞り優先AEにも速度優先AEにも対応してしまった。FLとFDのギャップが凄いねの。無論、FDレンズでも絞り優先AEは可能だけど、自社の技術的優位性を誇るために、あえてニコンにはできない速度優先を採用したのではないか? 技術の高さと突然の飛躍−−それはキヤノンというメーカーの伝統的な長所でもあり欠点でもある。
と言うことで、速度優先AEは主流にはなれなかったが、用途によってはかなり便利だと思う。そもそも、マニュアルで撮影するときも、多くは先に速度を決めて、それから絞りで露出合わせをすることが多いので、人間の頭は速度優先的にできているような気がする。また、手ぶれが気になるような撮影条件では、速度優先の方が便利なことも多い。逆に、ボケを重視するポートレートなどでは絞り優先の方が強いだろうなあ…。
個人的には、ISO 400のネガと75-300/4-5.6クラスのズームを多用するので、速度優先AEというのは、けっこう有り難い。1/500"に固定しておけば原則的に手ぶれは起きない。露出不足は絞りにしわ寄せが行くが、ネガなら2段くらいは救ってくれる。そういう素人丸出しユーザーのためのAEではないと思うが、便利は便利である。
ちなみに、露出補正機能は実質的に逆光補正ボタン(+1.5EV)のみ。
しかし、それでも1/15"が下限の機体があるのは釈然としない。このときはISO 400に設定していたが、それならば1/4"が下限でなくてはならない。多少露出が不正確な機体とは言え、2EVのズレは考えられない。となると、今度はレンズの開放F値の影響が考えられる。ちなみに、下限が1/15"だったときのレンズは50mm/F1.8で、基準のF1.4より1EV暗い。しかし、F4.5のレンズに交換しても下限は1/15"のまま。謎だ…
原因や仕組は別としても、この速度の制限はけっこう実害がある。たとえば、ISO 400のフィルムと35-70mm/F3.5-4.5という廉価ズームの組み合わせは非常にポピュラーだが、この組み合わせで速度下限が1/15"となると、室内での撮影にはストロボが必須になる。もちろん、夜景もダメ。それより何より、シャッターダイヤルにAE不能な速度が刻んであること自体、何とも許しがたい気がする。
こういう感度分布だとネガでも露出補正機能は必須だ。しかし、AE-1では実質的に露出補正ができない。+1.5EVの逆光補正ボタンは付いているが、用途は限定されるし、かなり押しにくい。特に縦位置での撮影では難しい。また、ASA感度補正という手もあるが、これまた恐ろしく回しにくくて、とても現実的ではない。もちろん、慣れの問題は大きい。AE-1を使い込んだユーザーならば、露出を自由に操れるかも知れない。しかし、他に簡単に露出補正ができる機種があるのだから、そちらに乗り換える方が賢明のような気がする。
また、速度ダイヤルは直径が大きく比較的小さな力でも回転する。このため、ファインダーを覗いた状態でも簡単に変更できるのだが、それが却ってアダとなって、何かの拍子にうっかり変更されてしまうことがある。極端な言い方をすれば、ボディを握っただけで変わってしまうことがあった。
巻上感も悪くはないが良好な部類ではない。付属ストラップも固くて手に当たると邪魔である。もちろん、価格を考えると文句は言えないし、その後に各社から発売された廉価機に比べれば遥かにマシとは言え、やはり高級機に比べればチープな感触は免れない。
スクリーン固定のもう一つのデメリットはメンテナンス。AE-1はスクリーンの内側にカビが生えることがあるのだが、簡単には取り外せないので素人では掃除ができない。中古で入手したときには、かなり深刻な問題になる。
しかも、Aシリーズは電池食いで有名で、すぐに電池がなくなってしまう。ファインダー内の表示がド派手なA-1ほどではないにしろ、このAE-1も高価な電池を容赦なく消費する。この点は覚悟すること。電池アダプタを使おうと思ったが、そもそも現行品の電池なので、アダプタはないそうだ。自作も可能ではあるが…。
ちなみに、バッテリ・チェックボタンを押した時に、指針がF5.6の定点よりも下にいけば電池OK。定点より上なら要交換。【AE-1Pでも…あんまり変わんないか?】
ちなみに、FD/nFDレンズは速度優先AE用なので、レンズが開放F値情報(絞りの絶対値情報)を持っている。開放F値は絞り連動レバーの近くにあるピン(と言うより金属柱)で伝えているようだ(私は絞り連動レバーのAEの位置で判別しているかと思ったが違うようだ)。
なお、速度優先で開放F値情報が必要になるのは、ファインダー内に絞りの絶対値を表示するため。AE機構自体はすべて相対値で処理できるはず。
主要諸元 | |
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シャッター | 電子制御 横走布幕 B,2〜1/1000秒 X接点1/60秒 |
測光方式 | 中央重点測光 |
露出モード | 速度優先AE/マニュアル |
露出補正 | 逆光補正ボタン+1.5EV |
ファインダー | 倍率0.86倍、視野率93.5%×96% |
外 観 | 141×87×47.5mm 590g |
その他 | 電池4LR44(入手しにく) |
独断評価 | |
操作感 | B 全体的には良好だが、いくつか気になる点も |
耐久性 | B シャッター鳴き、電池なしで動かない |
ファインダー | B 明るいが交換不可 |
測光系 | B 平均的 |
携帯性 | B+ 実際以上に軽く感じる |
用 途 | △仕事 ○趣味 ○スナップ ○軽旅行 △海外旅行 |