ペロとペス

ペロは土間の一角につないでありました。

ペスはお庭につないで飼う予定でしたが、あまりに小さすぎるので、

しばらくは勝手口におくことになりました。 小さいのでリードもなにもなしです。

勝手口と土間は行き来できるようになっています。

犬と猫は仲が悪い、と信じていた私たちはペスがペロの方に行ってしまわないように、

高さ30cm位の板を通路にたてて仕切りにしておきました。

ペスはまだ小さい小さいわんこだったので、これで通せんぼには十分だと思ったのです。

ある日 『ペス、ただいま〜。』 と勝手口の鍵を開けて入ってみたら、ペスがいません。

『ペス? ペス?』 お家の中にあがりこんでしまったのかな? いる様子はありません。

まさか・・・ペロのとこ? 

ペスはペロの寝床である脱衣籠の中でペロに抱かれていました。ペロに身体中を

舐められて安心しきった顔ですやすやとお休み中です。

後日様子を観察していると、ペスはその短い頼りない手足を精一杯使って仕切り板によじ登り、

一目散にペロのところに行きます。

『よっこらしょ!どっこいしょ!』

そして一番先にペロのために置いてあるキャットフードをたいらげるのです。

ペロは当時の我が家のあたりのにゃんことしてはめずらしくキャットフードを常食にしており、

日中留守になる我が家ではいつもたくさんお皿に入れて出かけていました。

そのお皿に上に身体のほとんどが入ってしまうくらい小さなペスが

寝そべってカリカリとキャットフードを食べるのです。 ペロはそれをじぃっと見ているだけです。

残さず全部たいらげたペスはその後ペロの寝床によじ登り、ペロに抱かれてねんねです。 

ペロは綺麗綺麗に舐めてあげています。

ペロはその時までに、元の家で1回、うちで1回、出産を経験しているお母さん猫です。

あまりに幼い子犬の様子に3度目の子育てを始めたのでしょうね。

そのほほえましい姿! 写真がないのがとても残念。

けれどペスは本来秋田犬の血を半分引いているわんこです。

あれよ、あれよ、という間に大きくなり、お庭につながれることになりました。 

そして数年後、ペスが亡くなるまで2匹の交流は続いたのです。

たまに庭に放してやるとペスはまず1番にペロのところにやってきます。そしてペロの

食べ残しのキャットフードを 『これがおいしいんや! お母ちゃん、頂戴ね!』 と

言うが如くガツガツと食べるのです。 ペロはそのペスの近くにある椅子や机やがらくたの

上に登り、前足でペスを自分の方に引き寄せて、一生懸命舐めります。

ペスのおなかの下にすっぽりと入ってしまうくらい小さなペロ。

どこかに登らないとペスの背中に届かないんだよね。

『この子ったらこんなに汚いなりをして。。。ちょっとこっちに来なさい。綺麗にしてあげるから。』

そんな感じです。小さなペロが大きなペスの身体を一生懸命舐めている姿、

これも写真に残しておくんだったな。

残念ながら、私の、そしてたぶん妹の、心のアルバムに残っているだけ。

ペスはお皿の中のキャットフードをたいらべると 『お母ちゃん、ご馳走さん!』 と

庭に飛び出して行ってしまいます。

ペロはきっと、『しゃあない子やなぁ。』 とあきらめ顔だったでしょうね。

どんなに大きくなってもペスはペロのかわいい子供だったんだよね、ペロちゃん!