庭付き一戸建て住宅

 

チコとニーナが我が家に養女にやってくる少し前にドロボウに入られました。

その時来られた刑事さんが 

『こんな広い屋敷で庭の隅っこに犬をつないでいたら番犬にはならんやろ。

庭で放し飼いにしたらいいんや。』

とおっしゃいました。

父はその意見を参考に、放し飼いにしてしまったら人や車の出入りが不便だと

庭の東側と西側の一角をフェンスで囲い、一部屋根をつけてその下に犬小屋を

置く、という設定で早速工事をお願いしました。

わんこの庭付き一戸建て住宅です。

2箇所作ったのは、日によってわんこの居場所を変えて、どこにわんこがいるのか

わかりづらくして、どろぼうに入られにくくするためだと思います。

工事が終わり、わんこを迎えることになり、どういう縁なのか、

我が家は2匹のわんこ---チコとニーナ---を迎えました。

『ちょうどいいね。1匹づつ入れたらいいんや。』

ずっと勝手口で飼っていたらお外に出したらなじめないでなくかもしれない、と

いつ頃だったでしょうか、庭付き一戸建て住宅にお引越しをしてもらうことになりました。

ずっと2匹一緒でしたので、バラバラにするのはかわいそう、とりあえずしばらく2匹

一緒に囲いの中に入ってもらおう、ということになりました。

チコとニーナは揃ってお引越しです。

やっぱり・・・なきます。 『ワン!ワン!ワン!』

ここが我慢のしどころ、と私はお家の中でじぃっと知らん顔をして耐えます。

気になって仕方がない。

なにか危険なことをしていないかしら。大丈夫かな。

やがて静かになりました。 ん? もう慣れたのかな。

しばらくしてそっとお外を覗くと、ニーナがひとり庭を自由に歩いているではありませんか!?

なんで?どこから出たん???

あわてて見に行くと、ニーナは尻尾を振ってやってきます。

チコは?  

チコはフェンスの中で小さな声で 『クーン、クーン』 とないていました。

フェンスの下は柱の部分を除いて土のままでした。

ニーナは地面を掘って、フェンスの下にトンネル状に穴をあけ、そこから脱出したのです。

チコもニーナのまねをしたら、お庭に出てこれるのに、それには気がつかないようで、

ひとりフェンスの囲いの中に取り残されてないていたのです。

ニーナは賢いなぁ、チコはちょっと頭が悪いのかな、そんな評価が下ります。

フェンスの下には石やらレンガを敷いて穴を掘れないようにして再度中に入れます。

やっぱり鳴きます。 そしてニーナはなんとか穴を掘ろうと必死です。

なんだかかわいそうじゃない?

結局、チコとニーナはお庭で放し飼い状態になり、お客さんが来られたり、どうしても

放しておけない時だけフェンスの中に入れることになりました。

夜は犬小屋で眠ったり、暑い季節にはめいめい庭の好きな場所にねそべって

眠っていました。

こうして我が家でのわんこの放し飼いの習慣がつきました。

チコとニーナの自由きままなお留守番が始まったのです。

せっかくの庭付き一戸建て住宅は、門扉がいつも開いたままの

戸締りのいいかげんなおうちとなってしまいました。

結構りっぱな? 一戸建てだったんですけどね。

 

ニーナはとても頭のいいわんこでした。

成犬になってからはどんなに工夫をしてもフェンスの囲いから脱出してしまいます。

フェンスをよじ登って脱出するので、波板の屋根をつけたらその屋根を頭で押し上げて

出てしまうし・・・人とニーナの知恵比べ状態になり、結局人が忙しさ等のために

あきらめてしまいました。そしてその頭のよさが、脱出グセが、最終的にはニーナとの

悲しい別れにつながったのです。