第2話 はさまったぁ!




あたちが小さかった頃おかあさんはお仕事をちてなくて
ずっとおうちにいてくれたの。
だからあたちはいつも自由にお庭で遊んでいたのよ。
だけどある日あたちはお庭にあるわんこハウスに
チコおばちゃんやムーおばちゃんといっちょに閉じ込められてちまったの。
お庭では知らないおじさんとおにいちゃんがふたり
お庭の木をちょんちょんと散髪ちてた。
「ねぇ、どうちて閉じ込めるのぉ!お外に出してよ〜!」
チコおばちゃんもムーおばちゃんも
「今日と明日だけだから我慢ちなさい。」
「夕方には出してもらえるから。」
って言っていたけど、あたちはそんなに長い間我慢なんかできないもん。
「いやだぁ!お庭で遊びたいもん。」
「出してぇ!お外に出してぇ!」

そのときあたちは気がついたの。
よぉく見たら扉と床の間に隙間があるのよ。
床って言ってもお外だからね、石やブロックが並べてあるだけだよ。
この隙間から出られるかもちれない。
あたちはまだちっちゃいから通れるかもちれない。
だれもあたちをお外に出してくれないなら
自分で勝手にお外にでちゃうもんね!

その隙間に頭をつっこんで見たわ。
ほらほらちゃんと入ったわ。
次は・・・次は・・・
あれ?お手手が入らないわ。
これじゃ前へ進めない。
もうちょっと左っかわに寄ってみたらどうかちら。
そしたらますます窮屈になってちまって
それまでまっすぐ前を向いていられたのに
横を向いたままお顔が動かなくなってちまったの。
頭を抜こうと思ったけれど、それもできないの。
ぜぇんぜん動けなくなってちまったの。
「チコおばちゃん、ムーおばちゃん、助けてぇ!」
「おかあさぁん、助けてぇ!」
あたしは必死でキャンキャンって助けを呼んだ。
チコおばちゃんもムーおばちゃんもいっちょになって
「ウォーンウォーン!マリンちゃんが大変だぁ!」

そちたら勝手口の戸ががらりと開いて
おかあさんが血相を変えて走って来てくれたの。
「マリン、何してるの!?」
「なんでこんなことになったの?」
「のりちゃん、大変なの。マリンちゃんが、マリンちゃんが・・・」
あたちはおかあさんの顔を見たらもう大丈夫と思って
おとなちくしたけれど、チコおばちゃんとムーおばちゃんは
すっごく心配ちてくれて、一生懸命説明ちてくれていた。

お母さんは扉の下に並べてあった石やブロックを少しずつ
動かしてどかちてくれてやっとあたちは自由になったわ。
「あぁ、びっくりちたぁ!すっきりちたわぁ!」
あたちはうれしくて尻尾をびゅんびゅん振ったのよ。

そちたら最初心配そうにちていておかあさんがすっごく怒りだちたの。
「夕方までお利口にしてなさいって言ったでしょ。」
「首が絞まって息ができなくて死んでしまうかもしれないのよ。」
「チコちゃんとムーちゃんにありがとうって言いなさい。」



おかあさんはチコおばちゃんとムーおばちゃんの
普通じゃないなきごえにびっくりしておうちから飛び出してきたみたい。
あたちはお外に出たいだけだったのに
すっごく叱られてちまって、あたちはすっかりシュンたろうになってちまったの。
もう絶対にしません、ってお約束させられてちまったわ。
まだちっちゃかったんだもん。
わからなかったんだもん。
今はそんなことは絶対にしないよぉ。

(2003年4月20日)