第10話 家族記念日



7月27日 その日はあたちの家族記念日なんだそうです。
1996年7月27日の夕方
おかあさんはばぁちゃんと一緒におでかけから帰る途中
駅前のロータリーであたちと運命の出会いを果たしたんだって。

最初にあたちに気づいたのはばぁちゃん。
「あそこに<子犬もらってください>って書いてあるよ。」
「見に行こう。」
おかあさんが「え?何?」と、そこを見たら
小学生の女の子がふたりたっていて足元にはダンボール箱がひとつ。
そして2匹のあかちゃんわんこがいたそうです。



最初あたちは別のおばちゃんに抱っこされていたので
おかあさんはあたちの姉妹を抱っこしてみたそうです。
その子はほとんど真っ白でところどころに茶色の模様があって
おかあさんは「かわいい〜!」って思ったって。
それでばぁちゃんに「もらって帰ったらダメかな?」
ばぁちゃんは「その子はねぇ・・・もう帰ろう」
ばぁちゃんがうんと言ってくれないので
おかあさんは「しょうがいないね」と
抱っこちていたあたちの姉妹をダンボール箱に戻し
あきらめて帰ろうとちた時
あたちを抱っこちていた人が
あたちを連れて帰るのをあきらめて
ダンボール箱の中にあたちを戻したんだそうです。
おかあさんはすぐにあたちを抱き上げて、ばぁちゃんに
「この子だったらどう?いい?」
と聞いたんだって。
そちたらばぁちゃんが
「うん、この子だったらいいよ。」
ばぁちゃんにはあたちのほうが可愛いらちく見えたのかな。
運命の糸が見えたのかな。

ばぁちゃんが「いいよ」って言ってくれて
おかあさんは「やったぁ!」っていう気分だったそうですが
心配事がひとつ。
それはチコおばちゃんとムーおばちゃんのこと。
「仲良くなれるかな」
「チコとムーはこの子を歓迎してくれるかな」
だからその小学生の女の子に
もしかして仲良くなれなかったら
お返ししないといけないかもしれないけれど
とお願いちて
あたちをおうちに連れて帰ってくれることになったのだそうです。

あたちはお母さんが両手を組んで作ってくれたベッドの上で
すやすやねんね。
「かわいいね〜 ちっちゃいねぇ」
お母さんは可愛くて可愛くて仕方なかったよって
今でも笑いながら時々話してくれます。
「おうちに着くまでおっきしたマリンを見れなかったわよ」
「マリンは出会ったときもねんねしてたし
おうちに着くまでの時間もずぅっとねんねしてたよ」
って言うの。
あたちはあかちゃんだったし
きっと眠くてちかたなかったんだと思うのよね。



こうしておかあさんのおうちに着いたあたちを
チコおばちゃんもムーおばちゃんもいじめたりしないで
素直に家族として向かえてくれたそうです。
あたちはずっとねんねちていたし
「よろちくお願いします」って
ごあいさつもできなかったみたいだけれど
それでもチコおばちゃんもムーおばちゃんも
ちゃぁんと 「新しい家族だね 家族が増えるんだね 」 って
わかってくれたんだそうです。



この日があたちの家族記念日。
あたちのお誕生日は
その日おかあさんが小学生の女の子に聞いてくれたらしいけれど
6月の後半って言うだけではっきりわからなくて
お母さんが「じゃぁ、6月20日に決めようね」って
決めてくれたから正確じゃないの。
けれど、家族記念日は正確だよ。
7月27日は 家族記念日!
運命の日だよ。



家族みんなが家族になれたことに「ありがとう」って思う大切な日なんだって。
「ありがとう!」の日、家族記念日!
みんなにもあるよね、家族記念日!

「家族になれてよかったね。みぃんな仲良し家族だね。」


(2003年12月20日)