第6話 あたちの青春

ランやムーが家族に加わってラクになったことがあるの。
それはね、番犬。
ランもムーもニーナに似て知らない人が表に来たら
ワンワンってそれは賑やかに吠えるの。
これだけしっかり番犬ちてたらあたちまで番犬しなくてもいいわねぇ。
うるさくって迷惑だわね。
あたちはそう思って時々番犬ってのをおさぼりちていたの。
一応ワンって何回かは言うのよ。
でもいちいち門のところまで行くのもめんどくさいし
時々、時々よ、手抜きっていうのをちてたわ。

人間家族はいつもお仕事で忙しくって
あたちたちはお留守番ばっかりだった。
だから日曜日が来るのがすごく楽しみだったよ。
長いお散歩にいけるもん!
お散歩では張り切ったわよ〜。
だってあたちはわん家族のリーダーだもん。
お外には知らないこと、怖いことがあるかもちれない。
そこで家族を守るのはあたちのお仕事でちょ。
だから絶対に先頭を歩く!って決めていたの。
なのに、あたちが先頭を歩こうとちたら
他の皆もあたちについて一生懸命歩くの。
みんな先頭を行こうとするのよねぇ。
だから最後は競争になるの。
だれが1番におうちにつくか、いっつも競争ちてたよ。
で、ゴールインちたときに思うの。
あれれ〜?もうお散歩が終わってちまった・・・
今から思えばちょっともったいなかったわね。

春になると人間家族はお山に「筍堀り」っていうのに行くの。
それがまたすっごく楽しみ!
え?筍を食べるのが楽しみなんじゃないわよ。
その時に一緒に連れていってもらえたら
お山で自由に走り回れるのよ!
それがもう楽しくって!
知ってる?
お山には怪しいにおいがいっぱいよ。
うさぎさんやたぬきさんがいるのよ。
みんなでワンワンって追いかけたりするのよ。
でねぇ、人間ってお山では皆目ダメね。
あたちたちは平気で走り回っているのに
人間たちはしょっちゅう滑って転んで、キャーとか騒いでたわ。
帰り道が大変なの。
のりちゃんなんてお手手にあたちたちのリードを持ってるでちょ。
それで背中にはたっくさんの筍を背負っているの。
その格好で急な下り坂になっている山道を降りるの。
そりゃころぶわよね。
すってんころりん。
その度に「引っ張らないでぇー。」ってあたちたちは叱られてた。
けど、引っ張ってなんていないのよ。
あたちたちは身軽にトントン歩いていただけ。
欲張ってたくさん筍を持って帰ろうとするから
すってんころりんになるのよね。
みんながお山に行く準備を始めたら
もうワクワク、そわそわ。
元気一杯、きらきら輝いていたあの頃
あの頃があたちの青春だった。