第5話 妹自慢

あたちのおうちの周囲はブロック塀っていうのがあって
その上にフェンスっていうのが張ってあるの。
とっても高いものだからあたちたちは飛び越えることができない。
だけど、お外の世界にはちょっとだけ興味があって
だからあたちはよくお外の世界を眺めて午後を過ごちていたの。
ブロックの塀の内側にある石やブロックの上にピョンと跳び乗って
フェンスのところからお外を見るのよ。
それがとっても楽しかった。



でも妹のニーナは違っていたの。
あの子はただ眺めるだけじゃ満足できなかったのね。
あるときからこっそりおうちを抜け出し始めたの。
どうやって抜け出したかって?
それがねぇ、すごいのよ。
門と塀がつながる部分ってL字になってるでちょ。
そこをね、背中と両手両足をつかって、
背中を塀に押し当てて、両手両足背中を使って
テコテコと登って行ってひょいって飛び越えるの。
すっごい早業よ。
後ろを見て前を見たら、あれ?もういない。。。って感じ。
で、ニーナがすごいって思うのは
そうやっておうちを抜け出すのは昼間だけってこと。
勝手におうちを抜け出したら、すっごく叱られるに決まってる。
だから夕方までには必ず帰ってくるの。
みんながお家に帰ってくるころにはちゃんとお家に帰ってきていて、
門の内側で「おかえりなさぁい!」って迎えるの。
だからみんなは随分長い間ニーナが時々お家を抜け出していることに
気がつかなかったわ。
どうやらご近所のだれかが「ニーナが脱走ちてる」って
お母さんに告げ口ちたみたい。
でもだぁれも抜け出す現場を見たワケじゃないから
「ニーナ、ほんとなの?本当に脱走してるの?」
ってみんな半信半疑。
どこから抜け出しているのか、全然わからなかったみたい。
まさかそんな器用なことをちて
抜け出しているなんて考えもちなかったのね。

ね、すごいでちょ!
運動神経は抜群、頭もとびきりいいのよ。
運動がいくら上手でも頭がよくないとそんなことは考えつかないもの。

ニーナはただ頭がよくて運動が出来るだけじゃなかったわ。
すっごく優しいお母さんでもあったの。
ランは前にも言ったと思うけれど、弱虫のくせに我の強い子で
よくあたちに逆らっていたの。
あたちが「ガウウー」って叱るとすぅーっとあたちとランの間に入って
「ラン、こっちにいらっちゃい。どうちたの?」
ってとっても優しくランのお話を聞いてあげてた。
ランはとっても食いしん坊で
ご飯の時間なんて自分の分はほとんど飲み込むみたいに
大急ぎで食べて、あたちたちの分を横取りに来るの。
そんな時も、その気配を察したら
「ラン、お母さんはもうおなかがいっぱいだから、あたちの分を食べなさい。」
って、残っている分をランにあげてちまうよ。
おなかがいっぱいのわけなんてないのに。
まだ半分以上残っているのに。

美人で運動神経が抜群で頭がとってもよくて優しくて・・・
時々妬けてちまうこともあったけれど、
やっぱりニーナはあたちの自慢の妹でちた。