第2話 魔法つかい

あたちたちはずっと勝手口のたたきのところで過ごしていたのだけれど
大きくなったらお外にあるわんこハウスで暮らすことに
なっていたらちいの。
ある日のりちゃんに 「おいで」 と言われ
あたちたちはピョンピョン飛び跳ねて
わんこハウスに行ったの。
そこには何度も行った事があったけれど
いつも扉は開いていたから出入りは自由。
好きなときに入っていたわ。
なのにその日、のりちゃんはあたちたちの中に残したまま
「いい子にしててね」
と言って扉を閉めて自分だけおうちの中に入ってちまったの。

「ワンワン!出して〜」
あたちもニーナも一生懸命のりちゃんを呼んだのに
のりちゃんはおうちの中から出てこないの。
だんだんくたびれてきたあたちは 「もういいや」 と思い始めて
わんこハウスの中をうろうろし始めたの。
そのときニーナが急に穴掘りを始めたの。
「何ちてるの? 面白いこと?」
ニーナは返事もちないで、一生懸命穴掘りちてた。
つまんなそうだったから、あたちは一人で遊んでいたの。



ふと気がついたらニーナがいない!!!
「あれ?ニーナどこに行ったのかちら」
捜していると扉の向こう側のお庭で尻尾を振って
ピョンピョン走って遊んでるのよ。
「どうちて? どうやって出たのかちら?」
扉はちゃんと閉まってるし、あたちは全然ワケがわからなかった。

そうこうするうちにのりちゃんがお家から出てきて
お目目をまんまるにして
自分の方にうれしそうに走って来るニーナを見ていたわ。
「どうしてお外にいるの〜?」

あたちははっと気がついたわ。
これって魔法ね!
もちかちてニーナは魔法つかいだったのかも。
だってどこも開いていないのに
お外にでているもん。
魔法・・・「魔法つかいニーナ」
すごいなぁ。
あたちはずっとそう思っていたわ。

ずうっとずうっと後になってのりちゃんから
「ニーナは自分で自分の通れる穴を掘って
そこからお外に出たんだよ」って聞かされたわ。
え〜?そうだったの???
あの穴掘りはトンネルを作っていたんだ・・・
ちょっとびっくり、ちょっとざぁんねん!
だってそのときまであたちは
ニーナは魔法がつかえるんだって
信じていたんだもん。
ニーナが魔法つかいだったら面白かったのになぁ。
今でもあたちはそう思っています。