第11話 家族が増えたよ


ランがお空に行ってちまってすっかり寂しくなってちまったわん家族に
ある日突然家族が増えたの。
のりちゃんがだっこちて、おかあさんがにこにこちて、
おうちに連れて帰ってきたのよ。
それがマリン。
まだちっちゃくて1日中寝てばっかりだったわ。



のりちゃんたちはあたちやムーがちっちゃなマリンにいじわるをちないか
って心配ちてたみたいだったけど
そんなことは1度もちなかったわ。
でもねぇ、マリンはあたちのことをおかあさんだと勘違いちていたようで
おっぱいを吸いに来るし、遊ぼう遊ぼうって上に乗っかって来るし
あたちのお気に入りの休息の時間、休息の場所まで
やってきてそりゃうるさい子だったの。
怒るとおなかを半分みせたへんてこな「降参」のポーズをするんだけど
またすぐに「遊ぼうよ〜」ってしつこいのよ。
昔のあたちなら厳しく<社会のルール>を教えてあげたんだけど
その頃はもうめんどくさくてそんなことをしてあげる気になれなかったわ。
だってもう11歳だったのよ。
0歳児の相手はちょっとちんどいものがあったわ。
のりちゃんもおとうさんもおかあさんも
あたちのおっぱいに吸い付くマリンを見て
「チコは11歳にしておかあさんになったのね」
って笑っていたけど、正直ちょっと迷惑だったわ。
あ、でもね、マリンが家族に増えたことはぜんぜんいやじゃなかったのよ。
だってすごくにぎやかになったもの。



お庭をおとうさんやおかあさんやのりちゃんがお掃除している時もね
あたちやムーは近くでうとうとちながらその様子を見てるんだけど
マリンだけはほうきの後を追いかけて走り回っていたわ。
まだちっちゃくて前栽の飾りの段差も跳べなくてよじ登ってるの。
それでおかあさんがほうきを動かすたびに
「あやちいうごきをするぶったいはっけぇん!!!」
「こりゃまて!つかまえてやる〜!」
って身体全部を使ってほうきを取り押さえようとちたりね。
見ててやっぱり<子供ってかわいいもんね>って思ったわよ。
みんなでそんなマリンを見て大笑いちていたわ。



お散歩だってね、最初はいくら誘っても
「おそとはこわいからいかない」って来なかったわ。
で、あたちたちが帰ってくるまでお庭でひとりで遊んでいて
門にあたちたちの姿を見たら
「おかえりなさぁい」ってぴょんぴょん跳ぶように走ってくるのよ。

ランやムーの子供時代からたくさんの時間が流れていたから
そんなマリンの様子がとても懐かしいもののような気がちたものよ。
え?マリンはもう今6歳なの?
そうね、もうずいぶん時間が過ぎたものね。
なんだかとっても懐かしいような気がするわ。

マリンは文句なしにみんなからいっぱい愛情を受けて育った子。
あたちもムーも、おとうさんもおかあさんものりちゃんも。
あたちたちにとっては「かわいいかわいい宝物」だったのよ。