らくらくISO9001講座

口語訳 ISO22000:2005
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宇野 通 編

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7章 食品安全を保つ仕組みとその実行(2)

7.4 事故の原因となるものを調査する【ハザード分析】
7.5 衛生管理状態の監視【OPRP】を行なう
7.6 重要なポイントの徹底管理【HACCPプラン】

改訂 2010.08.23



 【HACCP手順6(原則1)】 危害分析 

 7.4 事故の原因となるものを調査する【ハザード分析】
7.4.1 「ハザード分析」ですること


◆自社の食品に含まれる可能性がある、事故の原因となるもの【ハザード・危害】を調査し、その中
 で管理しなければいけないものを決めます。この一連の作業を、ハザード分析(危害分析)と呼び
 ます。

ハザード分析として、以下のことを行ないます
  @リストアップしたハザードの中で、どれを管理しなければいけないかを決めます。
  Aどのぐらいの厳しさで管理するかを決めます【管理の程度】
  Bどのような方法を組み合わせて管理をするかを決めます【管理方法の組合せ】

 
 7.4.2 ハザードのリストアップと許容水準の決定
 
7.4.2.1 ハザードのリストアップ
【記録】

◆自社の食品に含まれる可能性があり、事故の原因となるもの【ハザード・危害】(微生物・化学
 物質・異物)を全てリストアップして下さい。
 その結果は記録として管理してください

ハザードをリストアップする際には、以下の点に留意して下さい
  @製品の種類から予想されるもの
  A工程の内容(作り方、取扱いの方法など)から予想されるもの
  B自社の設備(形状、材質、置かれている場所、周辺環境など)から予想されるもの

ハザードがどこで混入するか(原料から、加工の際、輸送の際など)を記入して下さい。

◆リストアップに当たっては、次の情報を利用してください。
 a)7.3(危険の分析のための情報の整理)に従って集めた情報
 b)過去の情報(今までの実績、データ、発生した問題、ノウハウなど)【経験】
 c)書物や外部の専門家から得られる知識。その中には、次のようなものが含まれます
・微生物・食中毒に関する学術的【疫学的】な情報
・過去にあった事故の事例
 d)フードチェーン(原料・資材の生産から末端消費者まで、自社が取り扱う食品に関わる全ての関
   係者)からの情報。
   最終製品、中間製品、消費者の安全に関する情報を手に入れて下さい。

7.4.2.2 考慮すること


◆食品の事故は、製造・保管・輸送のいろいろな段階が関係して起こります。ですから、ハザードのリス
  トアップの際には、以下のことを考慮して下さい。
 a)検討している工程の、前後の作業
 b)使っている機械、
   水・スチーム・氷など【ユーティリティ】
   作業環境
 c)フードチェーン(原料・資材の生産から末端消費者まで)の流れを考えた際に、前後に来る工程

7.4.2.3 どの程度までなら入っていても大丈夫か【許容水準】
【記録】

◆各々のハザードについて、入っていても大丈夫なレベル【許容水準】を、できる限り決めて下
  さい。
  決める時は次のものを考慮してください。
  @ 法律・公的なガイドライン、国際的なガイドライン、
  A 顧客との約束
  B 取扱い方法・食べ方・使い方から予想されること
  C 他のデータ

決めたレベル(基準値)【許容水準】と、そのように決めた理由を記録に残して下さい


7.4.3 危険の程度の判断【ハザード評価】
【記録】

◆リストアップしたハザード(事故の原因となるもの)のそれぞれについて、以下のどれに当たるか
 分類してください。
 1)もとの材料や食品に含まれていて、除去しなければならないもの
 2)もとの材料や食品に含まれていて、入っていても大丈夫なレベル【許容水準】まで減らさなけれ
   ばならないもの
 3)管理していなければ、混入や増殖(細菌の場合)によって入っていても大丈夫なレベル【許容水
   準】を超える可能性があるもの。


◆この分類は、
  @ 健康被害の重大さ
  A 健康被害の起こりやすさ
 を判定して決めて下さい。
 ISO22000では使いませんが、事故の重大さと発生確率の組み合わせを「リスク」といい、この項は
 リスクの大きさから判断するように言っています)

◆評価した結果を記録して下さい
 そこには評価した方法(判断の根拠)も記載して下さい。 

7.4.4  OPRPかHACCPか
【文書】【記録】

◆管理手段の組み合わせを決める
 ・前項(7.4.3)で管理や処理が必要と分類したハザード(事故の原因となるもの)について、どのよう
  な方法で事故を防ぐか(管理手段)を決めます。
 ・食品の事故を防ぐためには、いくつもの管理手段を組み合わせて行なうことが必要ですので、ここ
  では「管理手段の組合せ」として考えます。
 ・「管理手段の組合せ」によって、次の3つの処理のいずれかを行ないます。
    @ ハザードが混入したり、増殖(細菌の場合)しないように予防する
    A ハザードを除去する(殺菌する、異物を除去する、問題の発生した食品を排除する)
    B ハザードを低減する(事故が起こらないレベルまで、細菌や異物を減少させる)

◆管理手段の判定
 ・今、行なうことができる管理手段(食品の処理方法・衛生管理の方法)(7.3.5.2でリストアップしたも
  の) について、ここまでに判明したハザードの対策として効果があるかどうかの判定【有効性の
  レビュー】をして下さい。

◆OPRPかHACCPかの分類
 ・実施することが決まった管理手段について、以下のどちらの方法で管理するかの分類をして下さい。
   1)全ての製品が正しく処理されたことを確認する必要がある工程
      ・・・・・・・重要なポイントの徹底管理【HACCPプラン】により事故を防ぐ
   2)現場の衛生管理を徹底し、定期的または定時に点検すれば良い工程。あるいは、それ以上の管
     理が技術的や現実的にむずかしい工程
      ・・・・・・・衛生管理状態の監視【OPRP】をすることで事故を防ぐ
 ・1)HACCPプランを選択した場合は、7.6項に従って管理して下さい。
  それ以外のものは2)OPRPとなりますから、7.5項で管理して下さい。

◆管理手段の決定の理由
 管理手段の組合せの決定する時や、その管理方法の分類(OPRPHACCPか)をする時には、なぜ
 そのように決定したかが、論理立てて説明できるように行なってください。

 特に、以下の点をどのように評価したかについて、説明できる必要があります。
 a)その管理手段は、どのぐらい厳密に行えるか(例えば、連続監視や、全数が処理されたことの証明
   ができるか。それとも、抜取り検査や、定時の監視に留まるか)。
   その結果として、管理方法が、問題としているハザードに対してどれぐらい効果があるか
 b)その管理手段(処理方法)が正しく行われていることを、連続的にあるいは十分な頻度でモニターす
   ることが可能か。このモニターによって、異常時に直ちに修正することが可能となるか
 c)その管理手段が全体の工程の中のどこにあるか。他の処理方法との前後関係は。
 d)管理手段(処理方法)が正しく行なえなくなることがあるか(その起こりやすさ)。
   管理手段(処理方法)が大きく変動することがあるか(その起こりやすさ)。
 e)管理手段(処理方法)が正しく行なえなくなった時に、どのような被害が発生するか
 f)その管理手段(処理方法)は、その製品を作るために元々必要な工程か、それともハザード対策と
   して特に追加する工程か。
 g)複数の処理方法を組み合わせることで、より確実な管理ができるケースがあるか。

◆文書と記録
 分類する方法と、分類に用いた基準を文書で定めて下さい
 分類した結果を記録して下さい。 

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【衛生標準作業基準(SSOP)】に相当 
 7.5 衛生管理状態の監視【OPRP】を行なう
【文書】【記録】

7.2.3衛生的な環境作り【PRP】で決めた活動の中で、重要なものについては、衛生管理状態の
 監視【オペレーション前提プログラム OPRP】を行い、より厳重に管理します。

衛生管理状態の監視【OPRP】として行なう内容を、文書で定めて下さい

衛生管理状態の監視【OPRP】として、以下のことを決めて下さい
 a)事故の原因となるもの【ハザード・危害】(微生物・化学物質・異物)の中で、具体的にどれを防止
   するか(7.4.4.項で既に決めています)
 b)どの項目を管理するか。どのように管理するか(管理の方法や基準)(7.4.4.項で既に決めています)
 c)規則・基準が守られていることを確認【モニタリング】し、証明する方法
 d)基準を外れた時に、どのような処置や対策を行なうか。(これは7.10.1項と7.10.2項で決めます)
当面の危険な状態をどうやって除くか(清掃、殺菌、消毒、隔離、交換、修理など)
該当する食品をどうするか(出荷停止、隔離、再調理・再加工、検査、廃棄、回収など)
どうやって再発防止【是正処置】に結びつけるか。
 e)だれがその管理に責任を持っているか。 
   だれが判断をして良いことになっているか【権限】。
 f)どのような記録を残すか



 7.6 重要なポイントの徹底管理【HACCPプラン】
7.6.1 重要なポイントの徹底管理【HACCPプラン】
【文書】【記録】

徹底管理するポイント【CCP】とその管理の方法についてルールを決めて管理します【HACCPプラ
 ン】

◆決めたことを文書にして下さい

◆その文書の中で徹底管理するポイント【CCP】のそれぞれについて、以下のことを決めて下さい。
 a)事故の原因となるもの【ハザード・危害】(微生物・化学物質・異物)の中で、具体的にどれを管
   理するか(7.4.4.項で既に決めています)。
 b)どの項目を管理するか。どのような方法で管理するか(7.4.4.項で既に決めています)。
 c)管理するなかで、超えてはいけない基準【許容限界】(これは7.6.3項で決めます)。
 d)規則・基準が守られていることを確認【モニタリング】し、証明する方法(これは7.6.4項で決め
   ます)
 e)超えてはいけない基準を外れた時【許容限界の逸脱】にどのような処置や対策を行なうか。(これは
   7.6.5項で決めます)
   当面の危険な状態をどうやって除くか(清掃、殺菌、消毒、隔離、交換、修理など)
   該当する食品をどうするか(出荷停止、隔離、再調理・再加工、検査、廃棄、回収など)
   どうやって再発防止【是正処置】に結びつけるか。
 f) だれがその管理に責任を持っているか。 
   だれが判断をして良いことになっているか【権限】。
 g)どのような記録を残すか


【HACCP手順8(原則2)】 重要管理点の決定 
7.6.2 徹底管理するポイント【CCP】を決める


 事故の原因となるもの【ハザード・危害】(微生物・化学物質・異物)ごとに、何を管理することで事故を防ぐ
か=徹底管理するポイント【CCP】を決めて下さい(CCPを決めることが必要な工程は7.4.4.項で選んで
います)。


【HACCP手順8(原則3)】 管理基準の設定 
7.6.3 超えてはいけない基準【許容限界】を決める
【文書化(文書または記録)】

徹底管理するポイント【CCP】のそれぞれについて、超えてはいけない基準【許容限界】を決めて
 ください。

◆基準の決め方
 ・一方、7.4.2.3で、おのおののハザードについて、入っていても大丈夫なレベル【許容水準】
  決めています。
  ここで決める超えてはいけない基準【許容限界】は、入っていても大丈夫なレベル【許容水準】
  が守れるように、それよりも厳しい値に、決めて下さい。
 ・超えてはいけない基準【許容限界】は、その適否の判断がはっきり分かることが必要です。数値
  で判断できることが理想的です。

◆感覚的な基準
 超えてはいけない基準【許容限界】の判定を感覚に頼らなければいけない場合(目視検査など)は、
それが確実にできるように管理してください。その方法には、次のものがあります。
・作業指示書で作業の仕方を決める
・作業基準(適否の判断の基準)を決める(例えば、限度見本など)
・作業者への教育と訓練

◆基準を決めた根拠は何か
 その超えてはいけない基準【許容限界】をどのようにして決めたのか、その根拠を文書または記録に
書いて残してください

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【HACCP手順9(原則4)】 モニタリング方法の設定 
7.6.4 徹底管理するポイント【CCP】をどのように監視をするか
【記録】

徹底管理するポイント【CCP】のそれぞれについて、それが正しく実施されていることをどうやっ
 て監視するか【モニタリングシステム】について決めてください。
 超えてはいけない基準【許容限界】を管理するために必要な測定や点検【観察】は、必ずこの監視
 の中に含めてください。

◆決めるべき項目
 CCPが正しく実施されていることを監視するために、以下のa)〜f)について決めて下さい。
 これらのやり方をルール(手順)を決め、具遺体的な作業指示を行なってください。
 実施したら、記録を残して下さい
 a)測定や点検の方法
ここで使用する測定や点検は、異常時にすばやく対応ができるように、タイムリーに【適切な時間枠
内に】結果が出る方法を選んでください
 b)測定や点検に使用する機器
 c)測定機器の校正方法 (8.3項も参照下さい)
 d)測定や点検の頻度(連続測定、バッチ単位で測定回数を決定、決まった工程を行うごとにで測定
   する、測定時間を決める など)
 e)測定や点検を実施する責任者、実施して良い人(権限者)
   測定や点検の結果を判断する責任者、判断して良い人(権限者)
 f)測定や点検の結果の記録方法、記録名

◆測定間隔の決め方
 ・測定や点検の結果、超えてはいけない基準【許容限界】を超えていることが分かった場合、該当する
  食品が食べられたり、材料として使われる前に止める必要があります。
 ・そのために、測定や点検の方法は、タイムリーに結果が出るものを選んでください。
 ・測定や点検で異常があった場合は、前の測定・点検以後に処理された食品の全てを、食べられる/使
  われる前にストップできることが必要です。そのために、直前の測定・点検から、次の測定・点検までの
  時間間隔が開き過ぎないように、測定・点検のタイミングを決めて下さい。


【HACCP手順10(原則5)】 改善措置の設定 
7.6.5 基準はずれの処置
【文書】

HACCPプランの中で、超えてはいけない基準【許容限界】を超えていることが分かった場合の処
 置を決めてください。
  1)当面の危険な状態をどうやって除くか(清掃、殺菌、消毒、隔離、交換、修理など)【修正】
  2)該当する食品をどうするか(出荷停止、隔離、再調理・再加工、検査、廃棄、回収など)【修正】
  3)どうやって再発防止【是正処置】に結びつける(是正処置は7.10.2項に決めています)

是正処置では、以下の点を確実に行なって下さい。
 ・基準はずれが発生した原因を突き止めて下さい。
 ・異常が発生したCCPの項目を、きちんとコントロールできるように戻して下さい。
 ・同じことが再び起こらないように、対策をして下さい。

◆測定や点検で異常が見つかった場合は、安全でない可能性がある製品がどの範囲なのかを判断し、
 出荷あるいは(次工程で)使用されないように管理して下さい。その管理の方法について、ルールを文
 書で決め【文書化された手順】、決めたことを実行して下さい。このルールは、必要があれ ば実情
 に合わせて内容を変更【維持】して下さい。(安全でない可能性がある製品の扱いについては、7.10.3
 で詳しく決めています)。



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