らくらくISO9001講座

口語訳 ISO22000:2005
 4章へ
宇野 通 編

トップへ
戻る
序文・1〜3章

 序文
 1章 ISO22000を使う組織
 2章 引用する規格
 3章 用語の定義

作成 2010.12.12


 序文

◆食品の安全を守るために
 食品の安全とは、要するに、食べる時に、危険な物【食品安全ハザード】が混ざっていないことです。
 ただし、この"危険な物"は、いつどこで紛れ込むか分かりません。原料の生産者から消費者までその
食品が通ってきたすべての段階【フードチェーン】で、混入の可能性があると言っても良いでしょう。だ
から、食品の安全を保つためには、その食品に関るすべての段階の会社や組織【フードチェーン全
体】が、揃って努力することが必要なのです。

◆フードチェーン
 このような食品に関る会社や組織【フードチェーン】には、次のような業種が含まれます。
  ・飼料の生産者
  ・農家、酪農家、漁業者など【一次生産者】
  ・食品加工業、食品製造業
  ・輸送業者、倉庫業者
  ・以上の業種で仕事をする外注業者、
  ・小売業者、飲食店【食品サービス業】
  ・生産設備の製造業者
  ・包装材料の製造業者
  ・洗浄剤の製造業者
  ・食品の材料や、食品添加物の製造業者
  ・これらに関連するサービス業

◆ISO22000に取り入れた仕組み
 ISO22000は、このような食品に関る会社や組織【フードチェーン】が、食品の安全を守るのための仕
組みです。 そのために、 ISO22000は、次の4つの仕組みや考え方を組み合わせて作りました。
  1) 関連する組織の間の情報交換の仕組み
  2) システム マネジメント (仕事の仕組みによって、組織の目的を実現するという考え方)
  3) 前提条件プログラム (PRP/食品工場等の衛生管理の仕組み)
  4) HACCPの7原則 (食品安全上の重要なポイントを徹底管理する手法)

◆フードチェーンの中での情報交換
 その食品にどのような危険があるか【食品安全ハザード】について調査するには、原料の生産者か
ら消費者までの各段階【フードチェーン】の情報が必要です。 また、その食品安全ハザードをコントロ
ールして安全を保つためには、フードチェーンの組織が、各々の段階で適切に管理することが必要です。
 このような管理をきちんとするためには、フードチェーンの組織の間での、適切な情報交換が欠かせま
せん。
 食品の安全に取組む組織は、フードチェーンの中で、自分よりも、上流にある組織とも、下流にある組織
とも、連携しなければいけません。特に、顧客(1つ下流の組織)及び購入先(1つ上流の組織)との情報交
換は重要です。 これによって、販売側と購入側のそれぞれに必要なことを把握し、その管理の分担や、
管理のレベルを適切に決めることができます。

◆フードチェーン内での位置を認識する
 フードチェーンの組織の間で、確実に情報のやり取りをするためには、各々の組織が、フードチェーン
の中で、自分がどの位置にいて、どのような役割を果たしているかを認識することが重要です。図1は、そ
の一例として、フードチェーンの中で行われる情報交換を、図で示したものです。

この口語訳では、図1を省略しています

◆マネジメントシステムの効果
 食品安全に関して最大の効果を出すためには、この問題を、全社のマネジメントの一環として取組む必
要があります。 そのため、ISO22000は、食品安全を軸としたマネジメントシステム(組織の方針や目標を
実現するシステム)として作られています。 このマネジメントシステムを、会社(組織)の経営に組み込む
ことよって、組織や関係者に大きなメリットを与えることができます。
 ISO22000は、マネジメントシステムとして使いやすいように、ISO9001の構成に合わせて作っています。
ISO9001とISO22000の対比表を、付属書Aに載せました。

◆他のマネジメントシステムとの関係
 会社(組織)が、品質マネジメントシステム(ISO9001)や環境マネジメントシステム(ISO14001)などの他
のマネジメントシステムを既に取り入れている場合に、食品安全マネジメントシステム(ISO22000)の位置
づけは、次のように考えて下さい。
 ISO22000は独立したマネジメントシステムであり、既存のISO9001やISO14001などとは異なる範囲(対
象製品や対象部門【適用】)の仕組みとして定める(あるいは認証を受ける)ことができます。
 ただし、これらはあくまで、書面上で定める対象範囲の問題です。実際の仕事の中では、ISO9001や
ISO14001と共通する部分は、1つの仕組みとして実施しても構いません。また、ISO22000を取り入れる時
に、既に存在するISO9001やISO14001の仕組みを利用しても構いません。

◆ISO22000の内容(1)
 ISO22000は、「HACCPの7原則」と、Codex委員会が作成した「HACCPの適用の手順」を、取り入
れています。また、「HACCP7原則」と「前提条件プログラム(PRP/食品工場等の衛生管理の仕組
み)」との2つの管理の仕組みを組み合わせています。
 ISO22000では、以下のようなことを決めています

 1)ハザード分析(事故の原因となるものの調査)を実施します。この分析によって、食品安全のため
   に必要な情報を整理することができます。 この情報は、ISO22000(食品安全マネジメントシステム)
   を正しく機能させ、食品の安全を確保するために重要なものです。

 2)ハザード分析によって、フードチェーンで発生・混入する可能性がある、すべての食品安全ハザード
   (事故の原因となるもの)をリストアップします。 この際、製造工程や施設の種類により発生する
   食品安全ハザードにも注意します。 こうして明らかになった食品安全ハザードについて、その危
   険の程度を判定します。

 3)会社(組織)は、各々の食品安全ハザードについて、管理が必要かどうかを決めます。 この時の
   判断の理由(それはなぜ管理が必要なのか、あるいはなぜ管理を必要としないのか)を、文書にして
   残します。

ISO22000の内容(2)
 ハザード分析と同時に、HACCPの7原則と、衛生的な環境作り【PRP】(前提条件プログラム、食品
工場等の衛生管理の仕組み)と、衛生管理状態の監視【OPRP】とを組合せて、食品安全ハザードを管理
する戦略を決定します。

◆付属書Bの内容
 Codex委員会のHACCPの7原則/HACCPの適用の手順/ISO22000 の対比表を付属書Bとして掲
載しました。

◆ISO22000に従ったシステム構築について
 ISO22000は、監査の基準として作りました。 ですから、自社の仕組みをISO22000で監査してチェックし
ながら、仕組み作りを進めることがができます。 ただし、使う手法や進め方を指定するものではなく、個々
の会社(組織)が自由に考えてもらって結構です。
 ISO22000に取組む会社(組織)のための参考書として、ISO/TS22004があります。

◆食品安全以外の問題の取扱い
 ISO22000は、食品の安全の問題だけを取上げています。 しかし、食品に関する他の問題(使用原料・
産地・等級・重量のなど保証、味、接客サービスなど)の管理に、ISO22000の方法を応用しても構いませ
ん。

◆小さな組織の取組み
 ISO22000を取り入れる際には、全ての仕組みを自分で作るのではなく、外部の仕組みを利用する部分
があっても構いません。例えば、納入先が発行した規定で管理している場合、あるいは、納入先の仕組み
に加わって、その一部として管理されている場合などです (特に、小さな組織や、会社としての体勢の整
っていない組織には、そのような例が多いでしょう)。

◆ISO22000と法令の関係
 ISO22000の目的は、食品安全のレベルを、世界的に合わせようとすることです。 ISO22000は、法令で
決まられた食品安全のルールよりも、焦点を絞っており、一貫性があるマネジメントシステムになっていま
す。
 一方で、ISO22000は、食品安全にかかわる、あらゆる法令を守ることを求めています。

ページ頭へ

 1章 ISO22000を使う組織

◆ISO22000の目的
 ISO2200は、食品を扱う会社(または組織)が、事故の原因となる病原菌や物質【ハザード】を管理する
能力があることを、証明するための仕組みです。
 ISO22000は、直接食品を扱う組織に限らず、食品の原料、資材、製造設備などを扱う会社(組織)【フー
ドチェーン内の組織】が、能力の証明のために使うこともできます。


◆ISO22000が想定している会社(組織)
 ・ISO22000は、安全な食品を提供したい会社が使う規格です。
 ・原料生産者から消費者までの間【フードチェーン】で、何らかの食品に関る業務を行っている会社
  (組織) を対象としています
 ・どのような規模の会社(組織)でも使えます
 ・その業務(ISO22000で定めている業務)を、自社で行っている場合にも、外注を使って行っている場合
  にも対象となります。


◆ISO22000の効能
 ISO22000を使えば、次のことができます。
 a)食品安全の仕組みの導入【食品安全マネジメントシステム】
ISO22000を利用することで、自社の食品安全の仕組を作り【計画】、それを実行し【実施、運用】、
また仕組みを保ってゆくことができます【維持、更新】。
そのことで、消費者に安全な製品を提供します。
 b)法律を守っていることの証明
食品の安全に関する法令を守っていることを証明できます。
 c)顧客との約束を守っていることの証明
食品の安全について顧客と約束する時に、その内容が適切かどうかを確認し、その結果を示すこと
ができます【評価、判定】。
食品の安全に関して、顧客との約束を守っていることを、証明できます。
このようにして、食品の安全性に関する、顧客の信頼を高めます【顧客満足の向上】。
 d)関係者に食品の安全に関する情報を伝える
消費者、販売店、購入先、外注先などの関係者【フードチェーン】に、製品の安全を守るための情報
を、確実に伝えることができます。
 e)“食品安全に関するの方針”に沿った活動ができる
自社が決めた“食品安全に関するの方針”に沿って活動し、結果を出します。
 f)“食品安全に関するの方針”に合っていることの証明
“食品安全に関するの方針”に沿って活動し、結果を出していることを、消費者、販売店、購入先、
外注先など【利害関係者】に対して証明できます
 g)認証の基準として使う/自己宣言に使う
このISO22000を基準として、審査機関などの外部の期間の認証を受けることができます。
また、ISO22000に合っていることを自社で評価し、さらに、それを外部に宣言することができます
【自己宣言】。


◆ISO22000を使用できる会社・組織
 ISO22000は、食品に関わる全ての会社(組織)【フードチェーンのすべての組織】が、使えるように作って
います。
  ・食品を直接扱う会社だけでなく、間接的に影響する会社(組織)も対象になります。
  ・どのような大きさの会社(組織)でも使えます。
  ・仕事の複雑さに関係なく使うことが出来ます。
 ここで言う“食品に関わる会社(組織)”とは、次のような仕事をしている会社(組織)です。
 食品に直接影響する会社(組織)
  ・飼料の生産者
  ・農家、酪農家【収穫者、農家】
  ・食品の材料の製造業者(食材、食品添加物)
  ・食品の製造業者
  ・小売業者
  ・飲食店
  ・ケータリング業者(食事の提供の出張サービス)
  ・清掃業者【清掃・洗浄サービス業者】
  ・消毒業者【殺菌・消毒サービス業者】
  ・輸送・倉庫・配送業者
 食品に間接的に影響する会社(組織)
  ・装置の製造・販売業者
  ・洗浄剤・殺菌剤・消毒剤の製造・販売業者
  ・容器・包装材料の製造業者
  ・その他の食品と接触する物を取り扱う業者


◆小さな組織の取組み
 小さな組織や、会社としての体勢の整っていない組織がISO22000を取り入れる際には、全ての仕組み
を自分で作るのではなく、外部の仕組みを利用する部分があっても構いません。
 例えば、納入先が発行した規定で管理している場合、あるいは、納入先の仕組みに加わって、その一部
として管理されている場合などです。
 ここで言う小さな組織は、小規模な農家、梱包業者、配送業者、小売店、飲食店などを想定しています。



 2章 引用する規格
 ISO22001は次の3章で、ISO9000:2000(JIS Q 9000:2000)の規格の中の「3.言葉の定義」を使用す
ることを述べています。この「3.言葉の定義」の部分も、ISO22000に含まれるものと考えて下さい。
 ただし、ISO9000:2000が改訂された場合でも、対象はあくまで2000年版であって、改訂版を使うことに
はなりませんので注意して下さい(既に2005年版が発行されていますが、ここでは使いません)。
 



 3章 用語及び定義
ISO22000で使う言葉の定義として、以下のものを使います。
 1) ISO9000の「3.言葉の定義」
 2) この3章で決める言葉の定義。その中には、ISO9000にある用語が含まれますが、これは、この  
    ISO22000で特別な補足事項を付け加えるものです。

この後、ISO22000で使用する用語の定義が載せられていますが、この口語訳は、用語の定義を参照しな
くても読めることを目指していますから、省略します。


4章へ

ページ頭へ

トップへ
戻る