らくらくISO9001講座


  
ISO9001
2015年版
【サービス業編】

灰字は、JISが用いている用語
緑字は、本文にない、この口語訳独自の補足


8章 サービスの実施(2)
(改訂 2018.09.02)

8.4 外注・購買
8.5 サービスの実施
8.6 検査/仕事の出来ばえの確認
8.7 サービスの不良



 8.4 外注・購買


 8.4.1 外注・購買の仕組みを作る

   ◆外注や購買の種類
外注(アウトソース)や購買がうまくゆくように管理すること。
ここで対象となるのは次の場合
a) 必要な物を購入する(サービスで提供する物品、その材料、消耗品、備品など)
b) 仕事を全面的に外注する(外部のスタッフや外注業者に丸投げする場合)
   (例えば、清掃・小工事・機械の点検や修理などの出張サービス、運送業の庸車など)
c) 仕事の一部を外注する場合(外注業者への委託、外部のスタッフをチームに参加させる
   場合など)

   ◆外注先・購買先の評価
外注先(外注業者・外部のスタッフ)や、購買先の、実力を評価すること。
評価を元に、その業者やスタッフを使うかどうかを決めること。
さらに、評価を元に、業者やスタッフを管理する方法(8.4.2)を決めること
評価の一環として、購入した製品の品質、あるいは、外注した仕事の出来栄えを、いつも
チェックすること。【パフォーマンス監視】
特に管理が必要な購買先や外注先は、時々、評価をやり直すこと(定期的に評価する
あるいは、問題の発生時に、再評価をする)。

上で述べた評価について、方法や、判断基準を決めて行うこと。
その評価の結果を記録に残すこと。また、評価を受けて行った対策の結果も記録すること。



 8.4.2 外注・購買を管理する方法を決める

   外注した仕事や、購買品が原因で、サービスの内容に悪影響が出ないように、管理すること。
   a) 外注した仕事は、自社の仕事の一部として管理すること。
   b) 外注先・購買先を、管理する方法と管理レベルを決めること。
      (管理方法の例: 仕事のやり方や検査方法の指定。 記録の提出。定期ミーティングの実施。
       契約、立入監査 など)
      外注した仕事の出来栄えについて、確認する方法とその管理レベルを決めること。
      (例: 現地確認か、報告書の受領か、口頭の報告か など)
      購入品の受入の際の、検査方法とその管理レベルを決めること。
      (例: 全数検査か、抜き取り検査か、検査成績証の確認のみか、無検査か)
   c) 1) その管理の方法やレベルは、サービスの良し悪しへの影響の大きさに合わせて決める
        こと。
      2) その管理の方法やレベルは、外注先・購買先の実力に合わせて決めること。
   d) 決めた通りに、外注した仕事の出来栄えの確認や、購入品の受入検査を行うこと。



 8.4.3 外注先・購買先との約束

   外注先(外注業者・外部のスタッフ)・購買先に、必要な指示を行うこと。
   また、必要な取り決めをすること。
  次の内容(で必要なもの)を、外注先・購買先との間で決めること。

   a) 外注をする仕事の内容(仕様書、指示書、計画書など)
      購入品の名称や規格(必要な場合には、仕様書、図面など)
   b) 必要な場合には、以下の正式な取り決めをすること
     1) 外注する仕事の詳細/ 購入品の詳細
     2) 仕事の実施方法。その際に使用する機械や道具。
     3) 外注した仕事の出来栄えや購入品の受入検査の、判定基準
   c) サービス実施者・作業者の力量についての取り決め (例:必要な資格についての取り決め、
     力量のある個人の指名など)
   d) 自社と外注先・購買先との仕事の分担、情報の連絡方法など
   e) 外注した仕事の出来栄えの確認や、購入品の受入検査の方法。その分析の方法など
   f) 外注先の事業所で行われるサービスへの立会の予定。
      立会検査の予定(大型設備の購入などで、納品前に、自社が購入先の工場に行って行う
     検査。顧客が同行する場合もある)。





 8.5 サービスの実施


 8.5.1 仕事の管理

   サービスを適切に行うこと。
   そのために、次のように、仕事の管理を行うこと。
   a) 1) 必要に応じて、サービスマニュアル、作業標準、計画書などの文書を用意すること。
        これらで決めたルールは、ちゃんと守ること。
      2) 必要に応じて、仕事の出来ばえや、検査の基準を、文書で定めること。
   b) 検査機器や測定機器があるならば、正しく使うこと (7.1.5で決めたことを正しく行う)。
   c) 出来栄えの確認や、検査を、決めた通りに行うこと。
   d) 適切な施設や設備を使うこと。サービスに必要な、接客スペースの環境や、作業環境を
      管理すること(7.1.3、7.1.4で決めたことを正しく行う)。
   e) 十分な知識を持った人や、資格を持った人に仕事をさせること(7.2で決めたことを正しく行う)。
   f) (下記に記載)
   g) ヒューマンエラーの対策をすること。
   h) 実施結果の引渡し(現場の移管、報告書の提出、物品の引渡しなど)がある場合は、決めた
      通りに行うこと。
      決まっているアフターサービスがある場合は、ちゃんと行うこと。

   ◆検査できない工程の管理 【プロセスの妥当性確認】
   f) 顧客に引渡す前に、出来ばえの確認や検査ができない仕事は、あらかじめ仕事のやり方に
      問題が無いことを、確かめておくこと。
  仕事のやり方を変える場合、実施場所が変わる場合、実施者が変わる場合などは、必要に
     応じて再確認を行うこと。

 <対象となる仕事>
  @ 接客業務(介護、医療、教育、飲食店、ガイド、イベント)や、電気・ガス供給、通信、
    交通機関、運送業など、仕事の失敗が、その場で顧客に対するサービス不良になる
    仕事 
  A 顧客に引渡す前に(技術的に、あるいは時間的に)検査ができない仕事
    (食品の衛生管理など)
  B そもそも、仕事の結果の良し悪しがだれにもわからない仕事
    (分析センター、測定機器の校正、調査業など)

 <仕事の管理方法>
  @ 仕事のやり方を決め、事前にリハーサルや試作を行って、そのやり方が適切である
    ことを確かめること。
    ISO規格、JIS規格、法律で定めた方法などの、公的に認められた方法は (それを
    全体的に、または部分的に使う場合は)、適切な方法と見なして良い。
    (例: 環境分析の方法、食品の加熱殺菌条件など)
  A 仕事が決めた通りに行われていることを、確かめること(その方法を決めること)。
  B 個人の力量(知識やテクニック)で、仕事の良し悪しが決まる場合は、あらかじめ、その
    職員の力量を確かめること(必要に応じ、資格認定などを行うこと)。
  C サービス不良の原因となる設備は、適切なメンテナンスを行って、不具合が起こらない
    ように管理すること。測定機器は校正を行うこと。



 8.5.2 取違えを防ぐ/トレーサビリティができるようにする

   ◆取違えの防止
サービスの取違えを起こさないように、適当な方法で、間違いを防ぐこと。
@ サービスの対象者(医療の患者、介護の利用者など)の取違え起こさないように、対策を
  すること(表示や声掛けなど)。
A 対象の案件の取り違えを起こさないように、対策をすること (例えば、明確な案件の名称、
  注文番号など)。
B サービスで取扱う物品、材料を間違って使わないように、対策をすること (現物や置き場
  の表示をすること)。

   ◆検査済み/未検査などの区別
未検査/不合格のまま、サービスの結果を引き渡すことがないように、表示などの、適当な
方法で間違いを防ぐこと
次のようなケースで、このような間違いの可能性がある
@ 飲食物の提供、修理品などの物の引渡し
A 清掃、工事などの現場の引渡し
B 検査・調査などの報告書の引渡し
現物や現地への表示。合格品の置き場を決める。書類に確認印を押す、などの方法がある。

   ◆トレーサビリティ
サービスで使用した材料、備品、仕入れ販売品などの、入荷日やロット番号が、後から分か
るように記録をしておくこと。
サービスの、実施日、実施をした人、検査の結果、サービスの提供先、品物の納品先なども
記録に残すこと。
後で問題が発生した時に、原因調査や、顧客への対応、品物の回収などのために、必要な
範囲で、記録を残す。



 8.5.3 顧客から預かったもの/外注先・購買先から預かったもの

   他人のものは、壊したり無くしたりしないように、注意して扱うこと
   @ 顧客から預かった物は、それを壊したり無くしたりしないように、注意をすること。
     サービスに使用するための支給されたもの、借り物、修理依頼品など
   A 顧客を訪問して仕事をする場合は、周囲のものや建物を壊さないように、注意して仕事を
     すること。清掃、小工事、ホームヘルパー、ケータリングなど。
   B 機密情報(技術情報、個人情報など)を預かっている場合や、顧客の個人情報を保存して
     いる場合は、情報を漏らさないように、注意すること。
   C 外注先や購買先から預かった物(レンタル品、個人情報など)も、同じように扱うこと。
   このような、他人の物を壊したり、情報を漏らした時は、持ち主に連絡をして、相談をすること。
   起こった内容を、記録すること。

  <補足説明> 
対象となるものには、材料、部品、道具、機械、顧客の施設、技術情報、個人情報などがある。



 8.5.4 保管

   ◆物の保管
    顧客に提供する物(商品、サービスに使用するアイテムなど)は、壊れたり、傷んだり
    しないように、適切に保管すること。
    材料、資材なども、適切に保管すること。
    顧客、外注先、購買先から預かったものも、適切に保管すること

    ◆電子データの保管
    顧客に提出する、ソフトウェアや電子ファイルは、失われたり流出しないように、適切に保管
    すること(バックアップ、流出防止、ウイルス対策など)

   ◆サービスの後の現場の維持
    清掃業や、小工事などでは、サービスを行った後の現場が、顧客に引渡すまでに、汚され
    たり壊されたりしないように、管理をすること。
    (カバーや養生などによる保護、立入りの制限など)

  <補足説明> 
保管に関係して、(該当する場合は)次のようなことも管理すること
@ 商品、資材、材料など間違えそうな場合は、表示等で区別する 【識別】
A 取扱い上の注意を決める  
B 汚れないようにする
C 商品、資材、材料の保護のための包装する 
D 保管の場所、担当などを決める  
E 商品、資材、材料の輸送について決める
F 電子データをメールで送る時は、その方法を決める
G 壊れやすいものは保護する方法を決める



 8.5.5 アフターサービス

   アフターサービスについても、ルールを決めて管理すること。
   次のことを考えておくこと(当てはまる場合)。
   a) 法律で決まっていること
   b) サービスを実施したり、結果を引き渡した後に、起こりそうな不具合
   c) 商品の耐用期間
   d) 顧客の希望/顧客と約束したこと
   e) 以前にあった、顧客からの要望や苦情

  <補足説明>
   サービス業のアフターサービスの例には、以下のものがある
@ 商品、修理済み品などの保証期間を設ける
A 商品の修理(無償・有償)、定期点検など
B 使用後の商品(廃棄品)の引取り
C 情報の提供、相談・問合せへの対応、運送業での荷物の追跡情報の提供
D リピート・紹介者・関連施設などの割引き、イベント等への招待
E 景品やプレゼント



 8.5.6 変更の管理

   仕事のやり方(繰り返し行う仕事や作業)を変える場合は、あらかじめ変更の影響を調べて、
   それが原因で不具合が発生しないようにすること(必要であれば何らかの対策をすること)。
   例えば、サービスメニューの一部、使用する設備、商品や資材の種類や購入先、外注業者を
   変える場合など。
   調べた結果と、行った対策と、変更を承認した人を記録すること。





 8.6 検査/仕事の出来ばえの確認

   ◆検査・点検・確認  
ルールで決めた商品の検査、仕事の点検、出来ばえの確認などを行うこと
顧客に引渡すまえに、検査や確認を行うことになっている場合は、それが終わってから、顧客に
引渡すこと。

   ◆特別許可
責任者が特別に許可した時は、検査が終わっていなくても、あるいは検査を省略して引渡せる。
ただし、顧客とその検査について約束をしている時は、顧客の許可も必要になる。

   ◆記録
a) 検査・点検・確認に合格したことを示す記録を残すこと。
b) 引渡しを承認した人を記録すること。




 8.7 サービスの不具合

 8.7.1 不良品/不具合の処理

検査、点検、確認などで見つかった不具合品は、表示、目印、置き場などで区別して、誤って
顧客に渡すことが無いようにすること。
不具合品には次のようなものがある
 ・不良の商品
 ・依頼品の不具合(修理、点検、洗浄、加工などの依頼品)
 ・報告書の不具合(検査報告書、調査報告書など)
 ・材料や資材の不具合

サービスに不具合があった時は、適切に対応をすること。
商品を引渡した後や、サービスの実施後に不具合が判明した時にも、適切に対応すること。
このような不具合の対応は、その内容や影響の大きさに合わせて行うこと。

サービスの不具合の対応には、次のような方法がある。
a) サービスをやり直す。
   不具合品(商品、依頼品、報告書、材料・資材など)を手直しして、合格品にする。
b) <接客サービスの不具合など>
    サービスの提供を中止にする。
  <商品の不良の場合>
    出荷停止にする。市場から回収する。廃棄するなど。
  <材料・資材・その他の購入品など>
    返品する。廃棄する。
c) 不具合があったことを、顧客に連絡し、お詫びする。
   商品の不良などを、世の中に公表する。
d) 特別に許可をして(必要な場合は、顧客の許可をもらって)、不具合をそのままにして
   サービスを完了する。【特別採用】
上のa)の手直しややり直しを行ったときは、改めて検査や確認を行うこと。

  
 8.7.2 サービスの不具合の記録

   サービスの不具合を処理した記録を残すこと。記録には次の内容を書くこと。
a)  不具合の内容
b) どのように対応や処理をしたか
c) 特別採用をした時は、その記録(誰が何を承認したか)
d) 対応方法を決めた人の名前



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